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第2話 戻った時間
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「!!!ハッ!!!」
はぁはぁはぁはぁ…
目の前には天蓋。
ここは…ベッドの上…?
目から涙が流れている事に気が付き、手で拭う。
最期に見たレナード様とカレリアの姿が思い浮かび、しばらく両手で目を抑えた。
「私…階段から落ちて死んだんじゃなかったの?」
両手を目から離し、手を開いたり閉じたりしてみる。
「生きている…」
怪我をしただけだったのかしら?
それにしては…全然身体が痛くない。
身体を起こし袖を捲ってみるが、かすり傷一つない。痛みもない。
階段から落ちたのに…そんな事ある?
私はベッドから降りて顔に怪我をしていないか鏡台を覗いた。
…なんともなっていない。
「何で…? どういう事?」
夢? ううん、違う! 絶対に夢なんかじゃない!!
私は確かに階段から落ちた。
あちこち身体をぶつけた衝撃を覚えている。
最期に頭を打ち付けた瞬間、目の前が真っ暗になった事も……
私は机の上にある日記を急いで開いた。
毎晩寝る前に日記をつける事が習慣になっていたから。
最後の日付が帝国歴302年7月2日…
ならば今日は7月3日…カレリアが我が家に来る一週間前だ。
過去に戻った!?!?
そんな夢物語のような事が本当に起きるものなの!?
にわかには信じがたいけれど…
「でも…それならまだ、レナード様とカレリアは出会っていない…」
コンコン
「どうぞ」
メイドのリラが入ってきた。
「失礼致します、お嬢様。レナード様がお見えです」
「え!?」
何で今日の今、レナード様が来るの!?
あれ? 今日レナード様っていらしてたかしら?
回帰前の記憶を探ったが…覚えがない。
私は戸惑いながらもレナード様に会うため、急いで身支度をした。
「ねぇ、リラ。今日って何年何月何日?」
「え? て、帝国歴302年7月3日ですけど…?」
「間違いない!」
「お、お嬢様??」
リラの戸惑いを他所に、私は着替え終わるとレナード様が待つ応接室へ向かった。
最期に彼を見たのは寝所でカレリアと裸で抱き合っていた姿。
怒りと悲しみが込み上げてくる。
どんな顔をすればいいの?
でも、ずっと避ける訳にはいかない。
頭を振って、呼吸を整える。
コンコン
ノックをし、意を決してドアを開けた。
「ブロンシュ!」
そこにはいつもと変わらない笑顔の彼がいた。
そのいつもと変わらない笑顔が不快になり、私はふいっと少し顔を背けお辞儀をした。
「…ごきげんよう。レナード様」
ダメ! やっぱり顔を見られないっ 見たくない!
「…何だか…今日はあまり気分が良くないみたいだね」
私の雰囲気を察してか、彼が遠慮がちに言葉をかけた。
「…実は一週間後にお客様がお見えになるので、その準備に追われておりまして…」
「そうだったのか。いや、先触れもなく急に訪ねてきた僕が悪かった。君の顔が見たくなってね。また日を改めるよ」
「…申し訳ございません」
私は何を話せばいいのか分からなかった。
今まで彼とはどう話していたのかしら?
二人でエントランスまで下り、私は彼を乗せた馬車を見送った。
なぜ、過去に戻ってきたのかは全くわからないけれど、今の彼はカレリアとは関係を持っていない。
それどころか顔さえ合わせてもいない。
まだ何も起こっていない事は分かっているけれど…彼は確かに私を裏切った。
過去に戻ってもその出来事は私の中で生々しく残り、消す事のできない事実なのだ。
遠ざかる馬車を眺めながら、私は死ぬ前の光景を思い出していた。
はぁはぁはぁはぁ…
目の前には天蓋。
ここは…ベッドの上…?
目から涙が流れている事に気が付き、手で拭う。
最期に見たレナード様とカレリアの姿が思い浮かび、しばらく両手で目を抑えた。
「私…階段から落ちて死んだんじゃなかったの?」
両手を目から離し、手を開いたり閉じたりしてみる。
「生きている…」
怪我をしただけだったのかしら?
それにしては…全然身体が痛くない。
身体を起こし袖を捲ってみるが、かすり傷一つない。痛みもない。
階段から落ちたのに…そんな事ある?
私はベッドから降りて顔に怪我をしていないか鏡台を覗いた。
…なんともなっていない。
「何で…? どういう事?」
夢? ううん、違う! 絶対に夢なんかじゃない!!
私は確かに階段から落ちた。
あちこち身体をぶつけた衝撃を覚えている。
最期に頭を打ち付けた瞬間、目の前が真っ暗になった事も……
私は机の上にある日記を急いで開いた。
毎晩寝る前に日記をつける事が習慣になっていたから。
最後の日付が帝国歴302年7月2日…
ならば今日は7月3日…カレリアが我が家に来る一週間前だ。
過去に戻った!?!?
そんな夢物語のような事が本当に起きるものなの!?
にわかには信じがたいけれど…
「でも…それならまだ、レナード様とカレリアは出会っていない…」
コンコン
「どうぞ」
メイドのリラが入ってきた。
「失礼致します、お嬢様。レナード様がお見えです」
「え!?」
何で今日の今、レナード様が来るの!?
あれ? 今日レナード様っていらしてたかしら?
回帰前の記憶を探ったが…覚えがない。
私は戸惑いながらもレナード様に会うため、急いで身支度をした。
「ねぇ、リラ。今日って何年何月何日?」
「え? て、帝国歴302年7月3日ですけど…?」
「間違いない!」
「お、お嬢様??」
リラの戸惑いを他所に、私は着替え終わるとレナード様が待つ応接室へ向かった。
最期に彼を見たのは寝所でカレリアと裸で抱き合っていた姿。
怒りと悲しみが込み上げてくる。
どんな顔をすればいいの?
でも、ずっと避ける訳にはいかない。
頭を振って、呼吸を整える。
コンコン
ノックをし、意を決してドアを開けた。
「ブロンシュ!」
そこにはいつもと変わらない笑顔の彼がいた。
そのいつもと変わらない笑顔が不快になり、私はふいっと少し顔を背けお辞儀をした。
「…ごきげんよう。レナード様」
ダメ! やっぱり顔を見られないっ 見たくない!
「…何だか…今日はあまり気分が良くないみたいだね」
私の雰囲気を察してか、彼が遠慮がちに言葉をかけた。
「…実は一週間後にお客様がお見えになるので、その準備に追われておりまして…」
「そうだったのか。いや、先触れもなく急に訪ねてきた僕が悪かった。君の顔が見たくなってね。また日を改めるよ」
「…申し訳ございません」
私は何を話せばいいのか分からなかった。
今まで彼とはどう話していたのかしら?
二人でエントランスまで下り、私は彼を乗せた馬車を見送った。
なぜ、過去に戻ってきたのかは全くわからないけれど、今の彼はカレリアとは関係を持っていない。
それどころか顔さえ合わせてもいない。
まだ何も起こっていない事は分かっているけれど…彼は確かに私を裏切った。
過去に戻ってもその出来事は私の中で生々しく残り、消す事のできない事実なのだ。
遠ざかる馬車を眺めながら、私は死ぬ前の光景を思い出していた。
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