7 / 9
第7話 戸惑う婚約者 1(ノックス視点)
しおりを挟む
「ノックス様っ どうぞあ、愛する人を迎え入れて下さいっ わ、私は…二番目でも…っ お飾りの妻で構いません!」
「………え!?」
「長い美しい黒髪の女性の方…ですよね?」
僕の婚約者であるマリトニーが突然、思いもよらない事を言い出した。
ソフィアを知っている? なぜ?
愛する人を迎え入れる? 僕たち婚約しているよね?
二番目? お飾りの妻? 誰の事!?
僕が愛する人は……君だよ、マリトニー!
◇◇◇◇
容姿端麗 博学多才 文武両道
学院では、この三つが僕を現わす言葉のようだ。
…簡単に言ってくれる。
伯爵家の一人息子としての…後継者としての重圧を知る者はどこにもいない。
勉学も洋弓も、何もせずに首位を維持しているわけではないし、練習失くして的を射れるはずもない。
容姿端麗……まぁ…これは…母に感謝だ。
父の顔は……漢らしすぎるからな。
洋弓場には毎日たくさんの女生徒がやってくる。
そんな中で一人の女の子が目についた。
一瞬見えては消える蜂蜜色の髪。
一生懸命、ぴょんぴょんぴょんぴょん飛び跳ねながら洋弓を見ている子。
ふわふわの頭が出たり引っ込んだりする姿が妙に可愛くて、その日から彼女の姿を探すのが癖になっていた。
いつも早めに来るにも関わらず、毎回後から走ってくる女生徒に追い抜かされて最前列に入ってこられない。
そして今日も後ろの方でぴょんぴょんぴょんぴょん……ふっ
いつかは木に登ろうとして、教師に注意を受けていたっけ。
運動神経は悪くないようだけれど、走るのは遅…んんっ 不得意なのかもしれない。
…そこまでして彼女はいつも誰を見に、洋弓場に来ているのかな…
ある日の放課後、図書室で勉強している彼女がいた。
ちょうど夕日が差し込み始め、日に照らされた彼女の髪がキラキラと輝いて…しばらく見惚れてた。
そんな事…彼女は気が付いていないだろうけど…
「きゃーっ マリトニーすごいすごい!!」
提示された定期考査の順位表を見ていた時の事。
僕は今回も首位を維持でき、ホッとしていた。
そんな時、後ろの方で奇声を発する女生徒がいた。
「しーっ! しーっ! みんな見てる!」
奇声を発した友人であろう女性に、自分の口に人差し指を押し当てながら注意していたのは…彼女!
彼女は友人を引っ張るようにあわててその場を立ち去った。
僕は彼女がいた場所へと向かい、順位表を見上げる。
確かマリトニーって言っていたよな。
マリトニー・ラクリモサ 48位(94位)
成績は100位以内までの名前が載る。
カッコ内には前回の順位が表示され、その上に今回の順位が載せられる。
「すごいな…」
相当努力しなければ、こんなに急激に順位は上がらないだろう。
早めに洋弓場に現れても、後から来た女生徒に抜かされる彼女
木に登ろうとして教師に注意されていた彼女
夕日に染まる図書館で勉強している彼女
いろいろな彼女の姿が目に浮かんだ。
そして僕の中で、彼女への関心がどんどん高まっていく。
しかしそんな僕の気持ちとは関係なく、帰宅すると父から見合いの話を持ち出された。
貴族であるならばいつかはこんな日が来ることは分かっていた。
ましてや僕は後継者だ。
ただ…頭の隅で蜂蜜色の髪をした彼女の姿が浮かび、やるせない気持ちでいっぱいになる。
だから、まさか彼女が婚約者になるとは思いもしなかった。
「………え!?」
「長い美しい黒髪の女性の方…ですよね?」
僕の婚約者であるマリトニーが突然、思いもよらない事を言い出した。
ソフィアを知っている? なぜ?
愛する人を迎え入れる? 僕たち婚約しているよね?
二番目? お飾りの妻? 誰の事!?
僕が愛する人は……君だよ、マリトニー!
◇◇◇◇
容姿端麗 博学多才 文武両道
学院では、この三つが僕を現わす言葉のようだ。
…簡単に言ってくれる。
伯爵家の一人息子としての…後継者としての重圧を知る者はどこにもいない。
勉学も洋弓も、何もせずに首位を維持しているわけではないし、練習失くして的を射れるはずもない。
容姿端麗……まぁ…これは…母に感謝だ。
父の顔は……漢らしすぎるからな。
洋弓場には毎日たくさんの女生徒がやってくる。
そんな中で一人の女の子が目についた。
一瞬見えては消える蜂蜜色の髪。
一生懸命、ぴょんぴょんぴょんぴょん飛び跳ねながら洋弓を見ている子。
ふわふわの頭が出たり引っ込んだりする姿が妙に可愛くて、その日から彼女の姿を探すのが癖になっていた。
いつも早めに来るにも関わらず、毎回後から走ってくる女生徒に追い抜かされて最前列に入ってこられない。
そして今日も後ろの方でぴょんぴょんぴょんぴょん……ふっ
いつかは木に登ろうとして、教師に注意を受けていたっけ。
運動神経は悪くないようだけれど、走るのは遅…んんっ 不得意なのかもしれない。
…そこまでして彼女はいつも誰を見に、洋弓場に来ているのかな…
ある日の放課後、図書室で勉強している彼女がいた。
ちょうど夕日が差し込み始め、日に照らされた彼女の髪がキラキラと輝いて…しばらく見惚れてた。
そんな事…彼女は気が付いていないだろうけど…
「きゃーっ マリトニーすごいすごい!!」
提示された定期考査の順位表を見ていた時の事。
僕は今回も首位を維持でき、ホッとしていた。
そんな時、後ろの方で奇声を発する女生徒がいた。
「しーっ! しーっ! みんな見てる!」
奇声を発した友人であろう女性に、自分の口に人差し指を押し当てながら注意していたのは…彼女!
彼女は友人を引っ張るようにあわててその場を立ち去った。
僕は彼女がいた場所へと向かい、順位表を見上げる。
確かマリトニーって言っていたよな。
マリトニー・ラクリモサ 48位(94位)
成績は100位以内までの名前が載る。
カッコ内には前回の順位が表示され、その上に今回の順位が載せられる。
「すごいな…」
相当努力しなければ、こんなに急激に順位は上がらないだろう。
早めに洋弓場に現れても、後から来た女生徒に抜かされる彼女
木に登ろうとして教師に注意されていた彼女
夕日に染まる図書館で勉強している彼女
いろいろな彼女の姿が目に浮かんだ。
そして僕の中で、彼女への関心がどんどん高まっていく。
しかしそんな僕の気持ちとは関係なく、帰宅すると父から見合いの話を持ち出された。
貴族であるならばいつかはこんな日が来ることは分かっていた。
ましてや僕は後継者だ。
ただ…頭の隅で蜂蜜色の髪をした彼女の姿が浮かび、やるせない気持ちでいっぱいになる。
だから、まさか彼女が婚約者になるとは思いもしなかった。
603
お気に入りに追加
697
あなたにおすすめの小説
私をもう愛していないなら。
水垣するめ
恋愛
その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。
空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。
私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。
街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。
見知った女性と一緒に。
私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。
「え?」
思わず私は声をあげた。
なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。
二人に接点は無いはずだ。
会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。
それが、何故?
ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。
結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。
私の胸の内に不安が湧いてくる。
(駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)
その瞬間。
二人は手を繋いで。
キスをした。
「──」
言葉にならない声が漏れた。
胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。
──アイクは浮気していた。
【完】愛していますよ。だから幸せになってくださいね!
さこの
恋愛
「僕の事愛してる?」
「はい、愛しています」
「ごめん。僕は……婚約が決まりそうなんだ、何度も何度も説得しようと試みたけれど、本当にごめん」
「はい。その件はお聞きしました。どうかお幸せになってください」
「え……?」
「さようなら、どうかお元気で」
愛しているから身を引きます。
*全22話【執筆済み】です( .ˬ.)"
ホットランキング入りありがとうございます
2021/09/12
※頂いた感想欄にはネタバレが含まれていますので、ご覧の際にはお気をつけください!
2021/09/20
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し
「華がない」と婚約破棄された私が、王家主催の舞踏会で人気です。
百谷シカ
恋愛
「君には『華』というものがない。そんな妻は必要ない」
いるんだかいないんだかわからない、存在感のない私。
ニネヴィー伯爵令嬢ローズマリー・ボイスは婚約を破棄された。
「無難な妻を選んだつもりが、こうも無能な娘を生むとは」
父も私を見放し、母は意気消沈。
唯一の望みは、年末に控えた王家主催の舞踏会。
第1王子フランシス殿下と第2王子ピーター殿下の花嫁選びが行われる。
高望みはしない。
でも多くの貴族が集う舞踏会にはチャンスがある……はず。
「これで結果を出せなければお前を修道院に入れて離婚する」
父は無慈悲で母は絶望。
そんな私の推薦人となったのは、ゼント伯爵ジョシュア・ロス卿だった。
「ローズマリー、君は可愛い。君は君であれば完璧なんだ」
メルー侯爵令息でもありピーター殿下の親友でもあるゼント伯爵。
彼は私に勇気をくれた。希望をくれた。
初めて私自身を見て、褒めてくれる人だった。
3ヶ月の準備期間を経て迎える王家主催の舞踏会。
華がないという理由で婚約破棄された私は、私のままだった。
でも最有力候補と噂されたレーテルカルノ伯爵令嬢と共に注目の的。
そして親友が推薦した花嫁候補にピーター殿下はとても好意的だった。
でも、私の心は……
===================
(他「エブリスタ」様に投稿)
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
愛する貴方はいつもあの子の元へと駆け付けてしまう~私を愛しているというのは嘘だったの?~
乙
恋愛
熱烈なアプローチを受け、アッシュと付き合う事になったシェリー。
今日もアッシュとのデートのはずが、待ち合わせに現れたのはアッシュと幼馴染のミレル。
いつもそうよ。
アッシュ。あんなに私を愛していると言ってくれたのは嘘だったの?
【完結】婚約者は私を大切にしてくれるけれど、好きでは無かったみたい。
まりぃべる
恋愛
伯爵家の娘、クラーラ。彼女の婚約者は、いつも優しくエスコートしてくれる。そして蕩けるような甘い言葉をくれる。
少しだけ疑問に思う部分もあるけれど、彼が不器用なだけなのだと思っていた。
そんな甘い言葉に騙されて、きっと幸せな結婚生活が送れると思ったのに、それは偽りだった……。
そんな人と結婚生活を送りたくないと両親に相談すると、それに向けて動いてくれる。
人生を変える人にも出会い、学院生活を送りながら新しい一歩を踏み出していくお話。
☆※感想頂いたからからのご指摘により、この一文を追加します。
王道(?)の、世間にありふれたお話とは多分一味違います。
王道のお話がいい方は、引っ掛かるご様子ですので、申し訳ありませんが引き返して下さいませ。
☆現実にも似たような名前、言い回し、言葉、表現などがあると思いますが、作者の世界観の為、現実世界とは少し異なります。
作者の、緩い世界観だと思って頂けると幸いです。
☆以前投稿した作品の中に出てくる子がチラッと出てきます。分かる人は少ないと思いますが、万が一分かって下さった方がいましたら嬉しいです。(全く物語には響きませんので、読んでいなくても全く問題ありません。)
☆完結してますので、随時更新していきます。番外編も含めて全35話です。
★感想いただきまして、さすがにちょっと可哀想かなと最後の35話、文を少し付けたしました。私めの表現の力不足でした…それでも読んで下さいまして嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる