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第1話 婚約者の密会
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「ソフィア…もう少し待ってくれ。なかなかマリトニーに話すタイミングが取れなくて…」
「いいのよ、ノックス。私の存在を知ったら、婚約者の方が驚かれるもの…」
「…きっと、マリトニーなら理解してくれると思うんだ」
「無理しないで。私はこのままで十分幸せなのだから」
「ソフィア…」
その瞬間、世界が色を失い、眩暈がするほどの衝撃を受けた。
『ソフィア』という女性と一緒にいる男性は……私の婚約者であるノックス様だった!
ノックス様は慰めるように女性の頭にそっと触れ、そして彼女の部屋であろうアパートメントに二人は入って行った…
◇◇◇◇
私はラクリモサ侯爵の娘マリトニー。二つ上の兄がいる。
この日は来週、婚約者であるウィーター伯爵家の嫡男ノックス様の誕生日プレゼントを探しに街までやって来ていた。
ふと路地裏に目を向けると、婚約者であるノックス様に似た方が目に入った。
気になって追いかけてきたら…この状況。
うそっ うそっ うそ――――――!!!
「……っっ」
どっっと涙が溢れ出した。
そこからどうやって待たせていた馬車までたどり着いたのか、記憶にない。
私の様子を見て、馭者が驚いた声を上げた事だけは覚えていた。
“どうなさったんですか“ “何かあったのですか?”
心配する馭者の声は右から左と流れていき、私は黙ったまま馬車に乗り込んだ。
馬車がゆっくりと走り出す。
…確かにノックス様だった。
あの場で部屋を訪ねるべきだった?
扉を叩けば良かった?
問い詰めれば良かったの!?
『その女性は誰なのですか? どういう関係なのですか?』と…
ううん、そんな行動に移せる勇気はなかったっ
できる訳がない…!!
「…ふっ…うぅ…」
止めようにも止まらない涙。
先程の光景が頭に焼き付いて、何度も何度も繰り返し蘇る。
女性の方はこちらを背にしていたから顔は見えなかった。
長い黒髪で、長身のスラリとしたスタイル。
くせっ毛でちびの私とは大違い。
それに…彼女が髪につけていた、金色の葉に真珠で作られた薔薇の髪飾りに見覚えがある。
あれは、前にノックス様がポケットから落とされたものだわ。
私が拾おうとしたら、強い口調で止められて…
「彼女へのプレゼントだったのね…」
そもそもこの婚約に愛情はなかった。
ううん、それが貴族同士の結婚…わかっている。
…あるのは私の一方的な気持ちだけ…
けど婚約して数週間。
浮気ならいくら何でも早すぎるし、婚約前からの関係ならばなぜこの話の受けたの?
彼女…平民のようだった。
だから貴族としてのメリットを優先したの?
でも婚約者が出来ても別れられない女性《ひと》……それほど愛している方なの…?
私は屋敷に着くなり、部屋へ直行。
ベッドに潜り、ひたすら泣き明かした。
私達の出会いは、3年前。
お互い同い年で、15歳になったばかりだった。
出会いと言っても、彼は私の事を知らない。
だって私の片想いから始まったのだから―――…
「いいのよ、ノックス。私の存在を知ったら、婚約者の方が驚かれるもの…」
「…きっと、マリトニーなら理解してくれると思うんだ」
「無理しないで。私はこのままで十分幸せなのだから」
「ソフィア…」
その瞬間、世界が色を失い、眩暈がするほどの衝撃を受けた。
『ソフィア』という女性と一緒にいる男性は……私の婚約者であるノックス様だった!
ノックス様は慰めるように女性の頭にそっと触れ、そして彼女の部屋であろうアパートメントに二人は入って行った…
◇◇◇◇
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この日は来週、婚約者であるウィーター伯爵家の嫡男ノックス様の誕生日プレゼントを探しに街までやって来ていた。
ふと路地裏に目を向けると、婚約者であるノックス様に似た方が目に入った。
気になって追いかけてきたら…この状況。
うそっ うそっ うそ――――――!!!
「……っっ」
どっっと涙が溢れ出した。
そこからどうやって待たせていた馬車までたどり着いたのか、記憶にない。
私の様子を見て、馭者が驚いた声を上げた事だけは覚えていた。
“どうなさったんですか“ “何かあったのですか?”
心配する馭者の声は右から左と流れていき、私は黙ったまま馬車に乗り込んだ。
馬車がゆっくりと走り出す。
…確かにノックス様だった。
あの場で部屋を訪ねるべきだった?
扉を叩けば良かった?
問い詰めれば良かったの!?
『その女性は誰なのですか? どういう関係なのですか?』と…
ううん、そんな行動に移せる勇気はなかったっ
できる訳がない…!!
「…ふっ…うぅ…」
止めようにも止まらない涙。
先程の光景が頭に焼き付いて、何度も何度も繰り返し蘇る。
女性の方はこちらを背にしていたから顔は見えなかった。
長い黒髪で、長身のスラリとしたスタイル。
くせっ毛でちびの私とは大違い。
それに…彼女が髪につけていた、金色の葉に真珠で作られた薔薇の髪飾りに見覚えがある。
あれは、前にノックス様がポケットから落とされたものだわ。
私が拾おうとしたら、強い口調で止められて…
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ううん、それが貴族同士の結婚…わかっている。
…あるのは私の一方的な気持ちだけ…
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彼女…平民のようだった。
だから貴族としてのメリットを優先したの?
でも婚約者が出来ても別れられない女性《ひと》……それほど愛している方なの…?
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ベッドに潜り、ひたすら泣き明かした。
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