2 / 19
第2話 これが私の運命?
しおりを挟む
「ごほっ ごほっ」
人の気配がなくなった部屋に一人横たわる私。
このまま…死ぬのかな…そうよね…
思い浮かぶのは先程の光景。
『セルゲイ様、愛しているわ』
『俺もだよ…』
レナータと口づけを交わす…セルゲイ様…
耳から離れない二人の言葉…
私にとっては、夫のセルゲイ様も侍女として仕えてくれたレナータも大切な人だった。
そんな二人に裏切られて、悲しいはずなのに……涙も出ない。
きっとどこかで諦めていたのかもしれないわ。
…セルゲイ様に愛されていない事は最初から分かっていた事だもの……
7か月前、シュバイツァー侯爵家当主であるセルゲイ様から結婚の打診があった時点で、この婚姻はお金目当てという事は察しが付いた。
結婚前からシュヴァイツァー家は、貧乏貴族と揶揄されていた。
浪費ばかりしていた先代夫妻が作った多額の負債を抱えていたからだ。
ご夫妻が2年前に馬車の事故で亡くなり、当主となったセルゲイ様。
そこで資金力だけはある下位貴族の我がウィルトム家に目を付けたのだろう。
お金で得た子爵位である我が家としては、高位貴族であるシュヴァイツァー家と縁戚関係が結べれば後ろ盾としてありがたい。
例え貧乏貴族と呼ばれていても、先祖代々続く侯爵家。
両家の利益だけがそこにある結婚。
それに私は庶子だ。
我が家の事情を承知の事とは言え、高位貴族の彼にとってはさぞ屈辱的だったろう。それでも侯爵家再興のためには必要な婚姻。
そんな状況の中で、愛情などが存在するはずもなかった。
けれど…そんな私にあなたは初めて会った時から微笑み、気遣い、優しさを見せてくれた。
庶子として生まれ、誰からも愛情を受ける事もなく使用人として扱われてきた私にとって、生まれて初めて受けたあたたかさだった。
そして、そんなあなたを私は愛した。
たとえあなたに愛されなくても、私は傍にいられるだけで幸せだったの。
私たちの結婚後、実家の資金援助によってまた昔の威光を取り戻してきたシュバイツァー家。
もう我が家の援助は必要ないと判断されたのだろう。
さらに好きな女性が出来れば、お飾りの妻など不要になって当たり前。
シュバイツァ―家に離縁を申し出られれば、ウィルトム家は否とは言えない。
けれど愛人が出来た事で離婚となれば、セルゲイ様の有責で慰謝料が発生する。
だけどセルゲイ様の有責にも関わらず、慰謝料を踏み倒すのは高位貴族としては憚られる。
我が家には、少しもお金を払いたくなくこのような行為に出たのかしら…?
そこにレナータの私への殺意も含まれて…
でも…セルゲイ様。
あなたが離婚を望めば、私は素直に応じていました。
慰謝料を払うのがお嫌でしたら、何かでっちあげて私の有責にされてもよかったのです。
だって、私はあなたからたくさんの幸せを頂いたのですから。
あなたのお陰で、生まれてきた事に感謝できたのですから。
だからあなたがレナータと一緒になりたいと言うのなら…それがあなたの幸せなら、私は潔く身を引きましたわ。
…ああ…けれど結婚した時はこんな風に人生が終わるなんて思いもしなかった。
それとも……
―――これが私の運命だったのかもしれない―――
息も絶えそうになった時、
誰かが私を抱き上げた。
「…あ…」
微かに開けた目に映ったのは、
きれいな青色の瞳…
「しっかりしろ!」
誰…?
きれいな…空の…色…
そう…セルゲイ様と初めて街に出かけた時も、さわやかな青空が広がっていた…
あの日と…同じ色…だわ…
はぐれ…と…いけ…な…から…と…セ…イ様…が手を………
「セル…イ…さ…」
楽しかった思い出のはずなのに、なぜか涙が零れた。
もう…戻らない…日々…
「ダメだ! 死ぬんじゃない!!」
力強い声。
次の瞬間、私の世界は漆黒の闇の中へ――…
人の気配がなくなった部屋に一人横たわる私。
このまま…死ぬのかな…そうよね…
思い浮かぶのは先程の光景。
『セルゲイ様、愛しているわ』
『俺もだよ…』
レナータと口づけを交わす…セルゲイ様…
耳から離れない二人の言葉…
私にとっては、夫のセルゲイ様も侍女として仕えてくれたレナータも大切な人だった。
そんな二人に裏切られて、悲しいはずなのに……涙も出ない。
きっとどこかで諦めていたのかもしれないわ。
…セルゲイ様に愛されていない事は最初から分かっていた事だもの……
7か月前、シュバイツァー侯爵家当主であるセルゲイ様から結婚の打診があった時点で、この婚姻はお金目当てという事は察しが付いた。
結婚前からシュヴァイツァー家は、貧乏貴族と揶揄されていた。
浪費ばかりしていた先代夫妻が作った多額の負債を抱えていたからだ。
ご夫妻が2年前に馬車の事故で亡くなり、当主となったセルゲイ様。
そこで資金力だけはある下位貴族の我がウィルトム家に目を付けたのだろう。
お金で得た子爵位である我が家としては、高位貴族であるシュヴァイツァー家と縁戚関係が結べれば後ろ盾としてありがたい。
例え貧乏貴族と呼ばれていても、先祖代々続く侯爵家。
両家の利益だけがそこにある結婚。
それに私は庶子だ。
我が家の事情を承知の事とは言え、高位貴族の彼にとってはさぞ屈辱的だったろう。それでも侯爵家再興のためには必要な婚姻。
そんな状況の中で、愛情などが存在するはずもなかった。
けれど…そんな私にあなたは初めて会った時から微笑み、気遣い、優しさを見せてくれた。
庶子として生まれ、誰からも愛情を受ける事もなく使用人として扱われてきた私にとって、生まれて初めて受けたあたたかさだった。
そして、そんなあなたを私は愛した。
たとえあなたに愛されなくても、私は傍にいられるだけで幸せだったの。
私たちの結婚後、実家の資金援助によってまた昔の威光を取り戻してきたシュバイツァー家。
もう我が家の援助は必要ないと判断されたのだろう。
さらに好きな女性が出来れば、お飾りの妻など不要になって当たり前。
シュバイツァ―家に離縁を申し出られれば、ウィルトム家は否とは言えない。
けれど愛人が出来た事で離婚となれば、セルゲイ様の有責で慰謝料が発生する。
だけどセルゲイ様の有責にも関わらず、慰謝料を踏み倒すのは高位貴族としては憚られる。
我が家には、少しもお金を払いたくなくこのような行為に出たのかしら…?
そこにレナータの私への殺意も含まれて…
でも…セルゲイ様。
あなたが離婚を望めば、私は素直に応じていました。
慰謝料を払うのがお嫌でしたら、何かでっちあげて私の有責にされてもよかったのです。
だって、私はあなたからたくさんの幸せを頂いたのですから。
あなたのお陰で、生まれてきた事に感謝できたのですから。
だからあなたがレナータと一緒になりたいと言うのなら…それがあなたの幸せなら、私は潔く身を引きましたわ。
…ああ…けれど結婚した時はこんな風に人生が終わるなんて思いもしなかった。
それとも……
―――これが私の運命だったのかもしれない―――
息も絶えそうになった時、
誰かが私を抱き上げた。
「…あ…」
微かに開けた目に映ったのは、
きれいな青色の瞳…
「しっかりしろ!」
誰…?
きれいな…空の…色…
そう…セルゲイ様と初めて街に出かけた時も、さわやかな青空が広がっていた…
あの日と…同じ色…だわ…
はぐれ…と…いけ…な…から…と…セ…イ様…が手を………
「セル…イ…さ…」
楽しかった思い出のはずなのに、なぜか涙が零れた。
もう…戻らない…日々…
「ダメだ! 死ぬんじゃない!!」
力強い声。
次の瞬間、私の世界は漆黒の闇の中へ――…
230
お気に入りに追加
316
あなたにおすすめの小説
二度目の恋
豆狸
恋愛
私の子がいなくなって半年と少し。
王都へ行っていた夫が、久しぶりに伯爵領へと戻ってきました。
満面の笑みを浮かべた彼の後ろには、ヴィエイラ侯爵令息の未亡人が赤毛の子どもを抱いて立っています。彼女は、彼がずっと想ってきた女性です。
※上記でわかる通り子どもに関するセンシティブな内容があります。
嘘つきな婚約者を愛する方法
キムラましゅろう
恋愛
わたしの婚約者は嘘つきです。
本当はわたしの事を愛していないのに愛していると囁きます。
でもわたしは平気。だってそんな彼を愛する方法を知っているから。
それはね、わたしが彼の分まで愛して愛して愛しまくる事!!
だって昔から大好きなんだもん!
諦めていた初恋をなんとか叶えようとするヒロインが奮闘する物語です。
いつもながらの完全ご都合主義。
ノーリアリティノークオリティなお話です。
誤字脱字も大変多く、ご自身の脳内で「多分こうだろう」と変換して頂きながら読む事になると神のお告げが出ている作品です。
菩薩の如く広いお心でお読みくださいませ。
作者はモトサヤハピエン至上主義者です。
何がなんでもモトサヤハピエンに持って行く作風となります。
あ、合わないなと思われた方は回れ右をお勧めいたします。
※性別に関わるセンシティブな内容があります。地雷の方は全力で回れ右をお願い申し上げます。
小説家になろうさんでも投稿します。
今日は私の結婚式
豆狸
恋愛
ベッドの上には、幼いころからの婚約者だったレーナと同じ色の髪をした女性の腐り爛れた死体があった。
彼女が着ているドレスも、二日前僕とレーナの父が結婚を拒むレーナを屋根裏部屋へ放り込んだときに着ていたものと同じである。
三度目の嘘つき
豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」
「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」
なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。
コミカライズ原作 わたしは知っている
キムラましゅろう
恋愛
わたしは知っている。
夫にわたしより大切に想っている人がいる事を。
だってわたしは見てしまったから。
夫が昔から想っているあの人と抱きしめ合っているところを。
だからわたしは
一日も早く、夫を解放してあげなければならない。
数話で完結予定の短い話です。
設定等、細かな事は考えていないゆる設定です。
性的描写はないですが、それを連想させる表現やワードは出てきます。
妊娠、出産に関わるワードと表現も出てきます。要注意です。
苦手な方はご遠慮くださいませ。
小説家になろうさんの方でも投稿しております。
拝啓 私のことが大嫌いな旦那様。あなたがほんとうに愛する私の双子の姉との仲を取り持ちますので、もう私とは離縁してください
ぽんた
恋愛
ミカは、夫を心から愛している。しかし、夫はミカを嫌っている。そして、彼のほんとうに愛する人はミカの双子の姉。彼女は、夫のしあわせを願っている。それゆえ、彼女は誓う。夫に離縁してもらい、夫がほんとうに愛している双子の姉と結婚してしあわせになってもらいたい、と。そして、ついにその機会がやってきた。
※ハッピーエンド確約。タイトル通りです。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
好きにしろ、とおっしゃられたので好きにしました。
豆狸
恋愛
「この恥晒しめ! 俺はお前との婚約を破棄する! 理由はわかるな?」
「第一王子殿下、私と殿下の婚約は破棄出来ませんわ」
「確かに俺達の婚約は政略的なものだ。しかし俺は国王になる男だ。ほかの男と睦み合っているような女を妃には出来ぬ! そちらの有責なのだから侯爵家にも責任を取ってもらうぞ!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる