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黄金都市編
黄金都市編その14
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「なんだと!?」
女騎士さんは驚愕の表情を浮かべていた。アイスエイジはというと僕らからすでにかなりの距離を稼いでいた。
「地面が・・・凍っている!?」
いつの間にか地面は凍り、スケートリンクのようになっており、アイスエイジは足裏に自身の能力で作ったエッジをつけて、その上をスケーターのように優雅に高速で移動していた。
「あははははは!!!甘い甘い!もう本気で行くからね~。アイスエイジの名、その体に刻んで死んでゆきなさい!!!」
移動しながらつららを発射してくる。僕は前に出て女騎士さんを庇いながら能力で壁を作り、つららを防いだ。しかし、壁をそのままにしていると迂回してくるつららの対処が遅れるので逐一壁は崩してしまわなくてはいけなかった。しかも会場には冷気が漂い気温はどんどん下がっていっていて筋肉がこわばってくる。長引かせるとまずい状態だった。
「くそっ!近づきさえすれば・・・。」
「近づきさえすれば、勝てるとか思ってるの~?甘い甘い!」
僕の呟きに答えるかのように、手が白く輝くと氷のレイピアを作りアイスエイジはこちらに向かって突っ込んでくる。
「ストラクチャー・グレイブ!」
鋭く突起するように槍の様に地面を隆起させる。しかし・・・
「おわ!びっくりした~。」
アイスエイジは冷静に躱しつつ時には隆起した突起を凍らせて自身の足場に利用してして迫ってくる。
(くそっ!器用な奴め!)
すでにアイスエイジは眼前に迫っており、近距離のレンジになっていた。
「いくわよ~!せえええええい!」
スピードの乗った鋭い突進の刺突を繰り出してくるが、辛うじてそれを躱す。
「女騎士さん!行ったぞ!」
僕を通り越したアイスエイジは次の狙いを女騎士さんに定めていた。
「願ってもない!さあこい!」
女騎士さんがアイスエイジを待ち構える。そこへ猛スピードで滑ってゆくアイスエイジ。
「動きが直線的すぎる!貰った!!!」
突っ込んでくるタイミング合わせた完璧な横薙ぎの一閃。しかし・・・
「・・・な!?」
その一撃は空を斬る。ジャンプしていたのだ。フィギュアスケート選手の様に回転しながら・・・
女騎士さんは攻撃を読み、すぐさま剣で防御の体勢を取るが・・・
「ははっ!貰ったわ!」
手にしていたレイピアに氷が追加されるように凍っていき、見る見るうちに巨大化し氷のハンマーになる。そのまま回転の運動を乗せ、構えている剣ごと女騎士さんを叩き吹っ飛ばした。
「そんな!」
吹っ飛ばされた女騎士さんは闘技場の壁に激突し、衝撃で壁が崩れる。
「あははっ!とどめぇ!!!」
そのまま僕を無視して女騎士さんに追い打ちをかけに行くアイスエイジ。
「まずい!!!」
急いでその背を追うが、寒さでかじかんだ足は遅く、相手はスピードスケーターの様な速さで差は歴然だった。
「大人しくしてなさい。あいつを葬ったら次はアンタの番よ!」
振り向きながら余裕を見せるアイスエイジ。そんな彼女にすら全く追いつく気配がない。
(まずい・・・やられる!くそっ!やっぱり降参すべきだったのか・・・今から降参して彼女は止まるのか・・・僕はなんでこんなに遅いんだ。もっと・・・もっと動けたんだ!ちくしょう!能力が使えたら・・・能力が使えたらこんな距離一瞬で詰めてやるのに・・・なんで使えないんだ!レバレッジよ、発動してくれ!!!)
僕は女騎士さんを失いたくないが為に必死に心の底から願う。同時に放浪者さんの話を思い出していた。
(使えないわけがない!絶対使えるはずなんだ!レバレッジ・・・レバレッジ・・・発動しろ・・・発動しろ・・・発動してくれ!!)
「レバレッジ・・・レバレッジレバレッジレバレッジレバレッジレバレッジ!!!!!」
「なに~?ついにおかしくなった?笑える~。」
いつの間にか声に出していたらしい。アイスエイジからしたら急に訳のわからない単語を連呼しだした。頭のおかしい奴に見えているだろう。
「俺の能力だろ!!!!言うこと聞きやがれ!!!!レバレッジ!!!!!!!!!」
ドクンッ!
血が煮えたぎるような、からだの奥底から力が湧く感覚。
久しぶりに感じた。懐かしい高揚感。
「き・・・・きたああああああああああ!!!!」
「な、何!?」
「よし!いける!身体強化!速度10倍だ!!!!」
ぐんぐんスピードを上げて追いついていく。驚愕するアイスエイジがまるでスローモーションのように感じる。
「な!?・・・速い!?アイシクルソーン!!
氷の茨が地面から生え、足を絡め捕るが力技で引きちぎる。足首の肉が抉れ血が噴き出すがお構いなしに。
「う、噓でしょ!?」
「よお・・・初めて見る表情だな!アイスエイジ!」
追いつき横にピッタリ付くと恐怖の表情を見せる。
「ひっ・・・!」
斬撃を繰り出すとアイスエイジは急ブレーキをかけ、辛うじて身を躱した。掠ったのか水色のツインテールの髪の毛がハラハラと落ちる。すでに恐怖で涙目になっていたが、こっちもこれだけいいようにやられてこれで終わるわけがない。
(くそ!久しぶりの能力に振り回されて攻撃のタイミングが合わねえ!)
「あ、アイスタワー!!」
アイスエイジは自身の足元から地面から大きな氷の柱を出現させ、高所に逃げる。
(登れるだろうか・・・。いや・・・時間はかかるがこちらもタワーのカードで構造物を作って高所に行けば・・・。・・・ん?あれは・・・)
「よし!ここまでくれば・・・。ざ、残念だったわね~。もう、近づいてあげないわ。サービスタイムは終わりよ!遠距離から削って削って・・・削りきってやるわ!って、あ、あれ?何か足に・・・?」
氷の塔に伸びる細い鋼糸、光に反射して僅かに煌めいていた。それは崩れた壁に伸びていて・・・そこにはボロボロの様子の女騎士さんが辛うじて立っている。鋼糸はその女騎士さんの義手から伸びていた。
「まぁ・・・そう連れないこと言うな。折角知り合えたんだ。もっと近くで話し合おう。」
不敵に笑う女騎士さん。おそらくさっきの一瞬、アイスエイジの足が止まったのを見逃さず、足にワイヤーを巻きつけたのだろう。
自分の状況を把握したアイスエイジの顔が、その髪色と同色になってゆく。
「ま、まって!お、落ち着いて!ゆっくりこのまま・・・は、はな、はな、はなしあいま・・・・しょおおおおおおおおお!!!!!」
言葉の途中で女騎士さんは鋼糸を巻き取り、引っ張られ引きずり降ろされるアイスエイジ。そのまま地面に激突した。
「・・・いったぁ!!!・・・はっ!!」
「やあ!お嬢さん。魔法少女・・・だったか?君の物語にはここから逆転のストーリー展開はあるのかい?」
「いやいや、女騎士さん。僕達の世界だと薄い本展開っていうんですよ、これ。」
「あ、あ、あ、あ・・・。・・・・きゅう・・・」
二人してボロボロになりながらも座り込むアイスエイジを取り囲み、指と首を鳴らし不敵な笑みを浮かべ上から見下ろすと、涙目になりながら声にならない声をあげ、失禁して気絶した。
「アイスエイジ!気絶!気絶ぅ!!戦闘不能です!よって勝者は~~~~~・・・・」
「ストラクチャー&バニラだ~~~~!!!!!」
え?何だって?
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!
なんか勝手に名前変えられて呼ばれたな、という疑問も会場の熱気と歓声でかき消える。大量の紙(外れ券だろう)が投げ込まれ、僕らの勝利を祝う紙吹雪のように舞う。
(あのオッズだもんなぁ・・・)
「剣士さーん!女騎士さーん!」
出入り口からカルディアさんが目じりに涙を溜めながら走ってきて抱きつく。
「もう!もう!お二人とも!心配しましたよ!死んじゃうんじゃないかと思って!!!でも良かったです。おめでとうございます!」
「ありがとう。カルディアさん。心配かけたね。」
女騎士さんが優しく頭を撫でている。だからその役目僕に譲ってよね!もう!
「あ・・・そうだ!・・・じゃーん!!私、お二人に賭けたんです!勝つって信じてましたから!これプレゼントします。」
そう言って当たり券を僕らに差し出す。
「うっひょおお!ありがとう、カルディアさん。」
「馬鹿!受け取るな!カルディアさん、その当選金は君のだ。受け取れないよ。」
当たり券を受け取ろうとした手を女騎士さんにはたかれた。
「そうですか・・・じゃあまたうちに食べに来てくださいね!ご馳走します!」
女騎士さんは断ったが、金が要るのは事実。もうすぐ能力が切れて身体に反動が来るだろうし、女騎士さんも満身創痍だ。僕らには治療費が要る・・・ファイトマネーだけで足りるだろうか?むむむ・・・どうしたものか・・・。・・・いやまてよ?
「カルディアさん、カルディアさん!」
「はい?なんでしょう?」
「これ・・・僕が拠点で使ってたカメラなんだけど現像出来るところってある?」
カルディアさんは僕のカメラを受け取り、簡単に調べると
「あー。いけると思いますよ。今度紹介しますね!」
「やったぁ!ありがとう!・・・そうだ!女騎士さん。怪我の具合どうですか?闘技場に治療室があるっていうし診てもらった方がいいですよ。」
「そうだな・・・そうしよう。」
「カルディアさん。女騎士さんに手を貸して貰えますか?」
「わ、わかりました!さ!こっちへ。」
「あ、ああ・・・。」
よし!体よく女騎士さんとカルディアさんを追い払えたぞ。女騎士さんは訝しんでいたが・・・
さーて目の前には魔法少女アイドルちゃんが目をまわして失禁しているという、あられもない姿を晒しているわけだが、ふふふ・・・こんなこと女騎士さんにバレたらめっちゃ怒られるもんな。
邪魔者を排除した僕は速やかに所要を済ませるのだった。
「ふう・・・・こんなもんか。」
「先程の戦いはお見事でした。」
ギクッ!
「な、何もしてませんよ!」
後ろから急に声をかけられ、慌てて言い訳するが、
「クスクス・・・別に何も咎めようとも思ってませんわ。」
後ろを振り向くと立っていたのはフード付きのローブを来たピンク髪の少女。深くフードを被っているのではっきりとは見えないが、その姿は何故か不思議と懐かしさと不安を覚えた。
(この人・・・なんだ?見てると・・・何か・・・クソっ!あ、頭が・・・)
「おや?顔色が悪いですね。怪我もされていますし、ゆっくり休んでください。いずれまた・・・」
そう言って立ち去ってゆく。
後に残るは言い知れぬ不快感だけがその場に残った・・・。
女騎士さんは驚愕の表情を浮かべていた。アイスエイジはというと僕らからすでにかなりの距離を稼いでいた。
「地面が・・・凍っている!?」
いつの間にか地面は凍り、スケートリンクのようになっており、アイスエイジは足裏に自身の能力で作ったエッジをつけて、その上をスケーターのように優雅に高速で移動していた。
「あははははは!!!甘い甘い!もう本気で行くからね~。アイスエイジの名、その体に刻んで死んでゆきなさい!!!」
移動しながらつららを発射してくる。僕は前に出て女騎士さんを庇いながら能力で壁を作り、つららを防いだ。しかし、壁をそのままにしていると迂回してくるつららの対処が遅れるので逐一壁は崩してしまわなくてはいけなかった。しかも会場には冷気が漂い気温はどんどん下がっていっていて筋肉がこわばってくる。長引かせるとまずい状態だった。
「くそっ!近づきさえすれば・・・。」
「近づきさえすれば、勝てるとか思ってるの~?甘い甘い!」
僕の呟きに答えるかのように、手が白く輝くと氷のレイピアを作りアイスエイジはこちらに向かって突っ込んでくる。
「ストラクチャー・グレイブ!」
鋭く突起するように槍の様に地面を隆起させる。しかし・・・
「おわ!びっくりした~。」
アイスエイジは冷静に躱しつつ時には隆起した突起を凍らせて自身の足場に利用してして迫ってくる。
(くそっ!器用な奴め!)
すでにアイスエイジは眼前に迫っており、近距離のレンジになっていた。
「いくわよ~!せえええええい!」
スピードの乗った鋭い突進の刺突を繰り出してくるが、辛うじてそれを躱す。
「女騎士さん!行ったぞ!」
僕を通り越したアイスエイジは次の狙いを女騎士さんに定めていた。
「願ってもない!さあこい!」
女騎士さんがアイスエイジを待ち構える。そこへ猛スピードで滑ってゆくアイスエイジ。
「動きが直線的すぎる!貰った!!!」
突っ込んでくるタイミング合わせた完璧な横薙ぎの一閃。しかし・・・
「・・・な!?」
その一撃は空を斬る。ジャンプしていたのだ。フィギュアスケート選手の様に回転しながら・・・
女騎士さんは攻撃を読み、すぐさま剣で防御の体勢を取るが・・・
「ははっ!貰ったわ!」
手にしていたレイピアに氷が追加されるように凍っていき、見る見るうちに巨大化し氷のハンマーになる。そのまま回転の運動を乗せ、構えている剣ごと女騎士さんを叩き吹っ飛ばした。
「そんな!」
吹っ飛ばされた女騎士さんは闘技場の壁に激突し、衝撃で壁が崩れる。
「あははっ!とどめぇ!!!」
そのまま僕を無視して女騎士さんに追い打ちをかけに行くアイスエイジ。
「まずい!!!」
急いでその背を追うが、寒さでかじかんだ足は遅く、相手はスピードスケーターの様な速さで差は歴然だった。
「大人しくしてなさい。あいつを葬ったら次はアンタの番よ!」
振り向きながら余裕を見せるアイスエイジ。そんな彼女にすら全く追いつく気配がない。
(まずい・・・やられる!くそっ!やっぱり降参すべきだったのか・・・今から降参して彼女は止まるのか・・・僕はなんでこんなに遅いんだ。もっと・・・もっと動けたんだ!ちくしょう!能力が使えたら・・・能力が使えたらこんな距離一瞬で詰めてやるのに・・・なんで使えないんだ!レバレッジよ、発動してくれ!!!)
僕は女騎士さんを失いたくないが為に必死に心の底から願う。同時に放浪者さんの話を思い出していた。
(使えないわけがない!絶対使えるはずなんだ!レバレッジ・・・レバレッジ・・・発動しろ・・・発動しろ・・・発動してくれ!!)
「レバレッジ・・・レバレッジレバレッジレバレッジレバレッジレバレッジ!!!!!」
「なに~?ついにおかしくなった?笑える~。」
いつの間にか声に出していたらしい。アイスエイジからしたら急に訳のわからない単語を連呼しだした。頭のおかしい奴に見えているだろう。
「俺の能力だろ!!!!言うこと聞きやがれ!!!!レバレッジ!!!!!!!!!」
ドクンッ!
血が煮えたぎるような、からだの奥底から力が湧く感覚。
久しぶりに感じた。懐かしい高揚感。
「き・・・・きたああああああああああ!!!!」
「な、何!?」
「よし!いける!身体強化!速度10倍だ!!!!」
ぐんぐんスピードを上げて追いついていく。驚愕するアイスエイジがまるでスローモーションのように感じる。
「な!?・・・速い!?アイシクルソーン!!
氷の茨が地面から生え、足を絡め捕るが力技で引きちぎる。足首の肉が抉れ血が噴き出すがお構いなしに。
「う、噓でしょ!?」
「よお・・・初めて見る表情だな!アイスエイジ!」
追いつき横にピッタリ付くと恐怖の表情を見せる。
「ひっ・・・!」
斬撃を繰り出すとアイスエイジは急ブレーキをかけ、辛うじて身を躱した。掠ったのか水色のツインテールの髪の毛がハラハラと落ちる。すでに恐怖で涙目になっていたが、こっちもこれだけいいようにやられてこれで終わるわけがない。
(くそ!久しぶりの能力に振り回されて攻撃のタイミングが合わねえ!)
「あ、アイスタワー!!」
アイスエイジは自身の足元から地面から大きな氷の柱を出現させ、高所に逃げる。
(登れるだろうか・・・。いや・・・時間はかかるがこちらもタワーのカードで構造物を作って高所に行けば・・・。・・・ん?あれは・・・)
「よし!ここまでくれば・・・。ざ、残念だったわね~。もう、近づいてあげないわ。サービスタイムは終わりよ!遠距離から削って削って・・・削りきってやるわ!って、あ、あれ?何か足に・・・?」
氷の塔に伸びる細い鋼糸、光に反射して僅かに煌めいていた。それは崩れた壁に伸びていて・・・そこにはボロボロの様子の女騎士さんが辛うじて立っている。鋼糸はその女騎士さんの義手から伸びていた。
「まぁ・・・そう連れないこと言うな。折角知り合えたんだ。もっと近くで話し合おう。」
不敵に笑う女騎士さん。おそらくさっきの一瞬、アイスエイジの足が止まったのを見逃さず、足にワイヤーを巻きつけたのだろう。
自分の状況を把握したアイスエイジの顔が、その髪色と同色になってゆく。
「ま、まって!お、落ち着いて!ゆっくりこのまま・・・は、はな、はな、はなしあいま・・・・しょおおおおおおおおお!!!!!」
言葉の途中で女騎士さんは鋼糸を巻き取り、引っ張られ引きずり降ろされるアイスエイジ。そのまま地面に激突した。
「・・・いったぁ!!!・・・はっ!!」
「やあ!お嬢さん。魔法少女・・・だったか?君の物語にはここから逆転のストーリー展開はあるのかい?」
「いやいや、女騎士さん。僕達の世界だと薄い本展開っていうんですよ、これ。」
「あ、あ、あ、あ・・・。・・・・きゅう・・・」
二人してボロボロになりながらも座り込むアイスエイジを取り囲み、指と首を鳴らし不敵な笑みを浮かべ上から見下ろすと、涙目になりながら声にならない声をあげ、失禁して気絶した。
「アイスエイジ!気絶!気絶ぅ!!戦闘不能です!よって勝者は~~~~~・・・・」
「ストラクチャー&バニラだ~~~~!!!!!」
え?何だって?
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!
なんか勝手に名前変えられて呼ばれたな、という疑問も会場の熱気と歓声でかき消える。大量の紙(外れ券だろう)が投げ込まれ、僕らの勝利を祝う紙吹雪のように舞う。
(あのオッズだもんなぁ・・・)
「剣士さーん!女騎士さーん!」
出入り口からカルディアさんが目じりに涙を溜めながら走ってきて抱きつく。
「もう!もう!お二人とも!心配しましたよ!死んじゃうんじゃないかと思って!!!でも良かったです。おめでとうございます!」
「ありがとう。カルディアさん。心配かけたね。」
女騎士さんが優しく頭を撫でている。だからその役目僕に譲ってよね!もう!
「あ・・・そうだ!・・・じゃーん!!私、お二人に賭けたんです!勝つって信じてましたから!これプレゼントします。」
そう言って当たり券を僕らに差し出す。
「うっひょおお!ありがとう、カルディアさん。」
「馬鹿!受け取るな!カルディアさん、その当選金は君のだ。受け取れないよ。」
当たり券を受け取ろうとした手を女騎士さんにはたかれた。
「そうですか・・・じゃあまたうちに食べに来てくださいね!ご馳走します!」
女騎士さんは断ったが、金が要るのは事実。もうすぐ能力が切れて身体に反動が来るだろうし、女騎士さんも満身創痍だ。僕らには治療費が要る・・・ファイトマネーだけで足りるだろうか?むむむ・・・どうしたものか・・・。・・・いやまてよ?
「カルディアさん、カルディアさん!」
「はい?なんでしょう?」
「これ・・・僕が拠点で使ってたカメラなんだけど現像出来るところってある?」
カルディアさんは僕のカメラを受け取り、簡単に調べると
「あー。いけると思いますよ。今度紹介しますね!」
「やったぁ!ありがとう!・・・そうだ!女騎士さん。怪我の具合どうですか?闘技場に治療室があるっていうし診てもらった方がいいですよ。」
「そうだな・・・そうしよう。」
「カルディアさん。女騎士さんに手を貸して貰えますか?」
「わ、わかりました!さ!こっちへ。」
「あ、ああ・・・。」
よし!体よく女騎士さんとカルディアさんを追い払えたぞ。女騎士さんは訝しんでいたが・・・
さーて目の前には魔法少女アイドルちゃんが目をまわして失禁しているという、あられもない姿を晒しているわけだが、ふふふ・・・こんなこと女騎士さんにバレたらめっちゃ怒られるもんな。
邪魔者を排除した僕は速やかに所要を済ませるのだった。
「ふう・・・・こんなもんか。」
「先程の戦いはお見事でした。」
ギクッ!
「な、何もしてませんよ!」
後ろから急に声をかけられ、慌てて言い訳するが、
「クスクス・・・別に何も咎めようとも思ってませんわ。」
後ろを振り向くと立っていたのはフード付きのローブを来たピンク髪の少女。深くフードを被っているのではっきりとは見えないが、その姿は何故か不思議と懐かしさと不安を覚えた。
(この人・・・なんだ?見てると・・・何か・・・クソっ!あ、頭が・・・)
「おや?顔色が悪いですね。怪我もされていますし、ゆっくり休んでください。いずれまた・・・」
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