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双新星編
サブストーリー11 徐々に色褪せていく・・・
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目が醒める。
部屋には暖かい木漏れ日が差し込み、うららかな陽気を感じさせる。
ここは私の部屋。
十数年寝起きした良く見知った部屋だ。
「おはようございます、姫様~。今日はいい天気ですよ~。」
のんびりとした声で寝ぼけた私に声を掛けるのは、幼少からずっと私に仕えてくれたメイドだ。
「お~い、姫様~。寝ぼけてるんですか~。眠気覚ましにあつ~いお茶でも入れましょうか?」
私の顔を覗き込み、目の前で手を振ると、そう言ってお茶の準備をしに行くメイド。
ここは私の部屋。
私がここに居て何も不思議ではない。不思議ではないのに・・・
「違う・・・」
ボソッと独り言が漏れる。
夢を見ていた・・・気がする。
いや・・・夢だったのかどうか・・・。ここではないどこかの・・・。
ただ、私は夢の中が本当の居場所で、今いる自分の部屋が”ニセモノ”なんだという、そんな感覚に囚われていた。
夢の内容を思い出そうにも、上手く思い出せない。
まるで両手で掬った水が、指の間からどんどん零れる様に、無くなっていくのだ。
「姫様ー。今、あつ~いお茶を淹れますので。」
そう言って茶器を扱い、お茶を淹れるメイド。
「さ、入りましたy・・・熱っ!!」
メイドは熱く入れすぎたのかカップを持ち上げた手を咄嗟に放してしまい、割ってしまった。
「ご、ごめんなさい・・・」
「いいのよ。」
この子とは長い付き合い。昔からこの子はドジなのだ。
「すぐ片づけますので・・・痛っ!」
予想通りというか、割れたカップを片づけようとして指を切るメイド。
「見せてください。」
そう言ってメイドの子の手を取る。
私は怪我をした指に手をかざし・・・かざし?
「???」
メイドの子が不思議な顔で私を見る。
私は何をしようとしたのだろう?
どうして怪我の部分を見せろだなんて言ったのかしら・・・
どうして怪我の部分に手をかざしたのかしら・・・
「えーと・・・痛いの痛いの飛んでけー♪」
笑いながら誤魔化すようにそう言ったが、
「えー、姫様。なんですそれ?初めて聞きましたよ~。何だか可愛いですね!」
メイドに言われておかしいことに気づいた。
(何・・・今の?・・・私、なんで・・・どうしてあんなことを・・・)
私は呆然としてしまった。
頭の中がぐちゃぐちゃだ。
様々な感情が私の中で渦巻いていた。焦り、後悔、悲しみ・・・
動悸がして、得も言われぬ胸の苦しみが襲ってくる。
私は胸に手を当て何とか落ち着こうとした。
「姫様!大丈夫ですか!?お顔が真っ青です!・・・あれ?姫様?そんなの持ってましたっけ?」
メイドに言われて視線を胸に手を当ててる手に移す。
そこにはピンク色のイミテーション石が使われたネックレス。
私は目を見開く。
何か・・・何か・・・とても大事な・・・
思い出そうと、探ろうとすると頭が割れそうに痛い。
でもやめられない!
何を!何を!忘れているの!私は!!!
「姫様!ああ・・・大変!!すぐお医者様を呼んできます!!」
気が付けば私は泣いていた。静かに涙していた。
私は何を失ってしまったの?分からない、分からない・・・
誰か・・・誰か教えてください!
いったい誰に対してなのか・・・
誰かも分からない、
そもそも居るのかも分からない相手に私は縋る。
私はネックレスを両手で包むように握り、祈る。
助けてください・・・
教えてください・・・
返してください・・・と。
だって・・・
もう、私にはきっと祈ることしか出来ないのだから・・・
これから先ずっと・・・ずっと私は祈り続けるだろう・・・
失ったものに焦がれて・・・
徐々に色褪せていく・・・
でも、燃え尽きることだけは許されない。
それだけは絶対にしてはならないと私の心がそう言うのだ。
部屋には暖かい木漏れ日が差し込み、うららかな陽気を感じさせる。
ここは私の部屋。
十数年寝起きした良く見知った部屋だ。
「おはようございます、姫様~。今日はいい天気ですよ~。」
のんびりとした声で寝ぼけた私に声を掛けるのは、幼少からずっと私に仕えてくれたメイドだ。
「お~い、姫様~。寝ぼけてるんですか~。眠気覚ましにあつ~いお茶でも入れましょうか?」
私の顔を覗き込み、目の前で手を振ると、そう言ってお茶の準備をしに行くメイド。
ここは私の部屋。
私がここに居て何も不思議ではない。不思議ではないのに・・・
「違う・・・」
ボソッと独り言が漏れる。
夢を見ていた・・・気がする。
いや・・・夢だったのかどうか・・・。ここではないどこかの・・・。
ただ、私は夢の中が本当の居場所で、今いる自分の部屋が”ニセモノ”なんだという、そんな感覚に囚われていた。
夢の内容を思い出そうにも、上手く思い出せない。
まるで両手で掬った水が、指の間からどんどん零れる様に、無くなっていくのだ。
「姫様ー。今、あつ~いお茶を淹れますので。」
そう言って茶器を扱い、お茶を淹れるメイド。
「さ、入りましたy・・・熱っ!!」
メイドは熱く入れすぎたのかカップを持ち上げた手を咄嗟に放してしまい、割ってしまった。
「ご、ごめんなさい・・・」
「いいのよ。」
この子とは長い付き合い。昔からこの子はドジなのだ。
「すぐ片づけますので・・・痛っ!」
予想通りというか、割れたカップを片づけようとして指を切るメイド。
「見せてください。」
そう言ってメイドの子の手を取る。
私は怪我をした指に手をかざし・・・かざし?
「???」
メイドの子が不思議な顔で私を見る。
私は何をしようとしたのだろう?
どうして怪我の部分を見せろだなんて言ったのかしら・・・
どうして怪我の部分に手をかざしたのかしら・・・
「えーと・・・痛いの痛いの飛んでけー♪」
笑いながら誤魔化すようにそう言ったが、
「えー、姫様。なんですそれ?初めて聞きましたよ~。何だか可愛いですね!」
メイドに言われておかしいことに気づいた。
(何・・・今の?・・・私、なんで・・・どうしてあんなことを・・・)
私は呆然としてしまった。
頭の中がぐちゃぐちゃだ。
様々な感情が私の中で渦巻いていた。焦り、後悔、悲しみ・・・
動悸がして、得も言われぬ胸の苦しみが襲ってくる。
私は胸に手を当て何とか落ち着こうとした。
「姫様!大丈夫ですか!?お顔が真っ青です!・・・あれ?姫様?そんなの持ってましたっけ?」
メイドに言われて視線を胸に手を当ててる手に移す。
そこにはピンク色のイミテーション石が使われたネックレス。
私は目を見開く。
何か・・・何か・・・とても大事な・・・
思い出そうと、探ろうとすると頭が割れそうに痛い。
でもやめられない!
何を!何を!忘れているの!私は!!!
「姫様!ああ・・・大変!!すぐお医者様を呼んできます!!」
気が付けば私は泣いていた。静かに涙していた。
私は何を失ってしまったの?分からない、分からない・・・
誰か・・・誰か教えてください!
いったい誰に対してなのか・・・
誰かも分からない、
そもそも居るのかも分からない相手に私は縋る。
私はネックレスを両手で包むように握り、祈る。
助けてください・・・
教えてください・・・
返してください・・・と。
だって・・・
もう、私にはきっと祈ることしか出来ないのだから・・・
これから先ずっと・・・ずっと私は祈り続けるだろう・・・
失ったものに焦がれて・・・
徐々に色褪せていく・・・
でも、燃え尽きることだけは許されない。
それだけは絶対にしてはならないと私の心がそう言うのだ。
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