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双新星編
ラストエピソード 本編0プロローグ 妹
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お兄ちゃんが出ていった扉をじっと見つめる。
お兄ちゃんが遠ざかる気配を感じてから、俯き胸を押さえ息を吐く。
額から脂汗が出て目が霞む。その時だった。
『無理すると死んじゃうんじゃない~?ナースコール押したら~?』
顔を辛うじて上げると足元にニコニコと笑いながら座る天秤を持った女の子。
「だ、誰なんです?」
『私~?神様よ~。ちょっとあなたと話したくて来たの。』
「神・・・様?私、死ぬんですか?」
『あ~・・・私はそういうの担当じゃないから。』
「じゃあ、いったい・・・」
『ねぇ、あなた。口では見舞いに来るな~とか、学校行ってるのか~とか言ってるけどさ・・・』
神様は『ニタァ』と口が避けそうなくらい口角を上げて笑いながら、
『本当は分かってるんでしょ?』
「な、なにを・・・」
『うわぁ~とぼけちゃって~』
嬉しそうに話す神様。この人と話していると、どんどん気分が悪くなってくる。
『本当はアイツが学校辞めてることとか、母親に何かあったことも気づいてる。でもあなたは知らないフリをしている。お見舞いに来てほしいから。』
「違う!!!!!!!!!!!」
『違わないわよ。だって私あなたの心読めるもの。』
「いい加減なこと言わないで!人を呼びます!」
そう言ってナースコールを押す。
『無駄無駄~。』
ケラケラ笑う神様。看護師さんはいつまで経ってもやって来なかった。
「どうして・・・」
『あなたやっぱりもう分かってないのね。今ね、世界から色が消えてるのよ。時間が止まっているの。』
そう言って神様は私の水の入ったコップを持ち、
逆さに向けた。
コップの水は一滴も落ちなかった。
『あなた・・・色がもう無いんでしょ。もしかしたら味覚もかな~?それでいてエクレア食べたいだなんて~。あっ!もしかして味がわからなくても昔、大好きなお兄ちゃんと一緒に食べた幸せな記憶に浸りたいからかしら~?』
「やめて!!!!!!!!!!!もう・・・・やめて・・・」
私は神様の責め立てに耐えられず泣き出した。
『負担になりたくないなら、とっとと死になさいよ。中途半端な事して、かまってちゃんしたいのかしら。』
私はまるで小さい子供のように泣きながら『イヤイヤ』と首を振る。
『はぁ~。やっぱ兄妹だわ。負担になりたくない。でも見捨ててほしくない。なんなの。気持ち悪い・・・こんな奴に人生を棒に振る必要あるのかしら?』
神様は冷たい目で私を見てそう言う。
『私が救ってあげるわ~。アンタも。アンタのお兄ちゃんも。つまらない人生を楽しくしてあげる。だから~・・・』
神様は涼しい顔で、
『アンタのお兄ちゃん頂戴ね♪』
「何を・・・言って・・・」
神様はそう言うと『すぅー』と浮いて、天井に消えていく。
「ま、待って・・・取らないで・・・私のお兄ちゃん!取らないでーーーーーー!!!!!」
私は泣きながら叫ぶ。
看護師さんが駆け付け、泣きながら錯乱する私を押さえつける。
その日を境にお兄ちゃんは行方不明になり、
私は嘘のように復調し、退院することが出来た。
そしてもう叶わないと思っていた学校に、もう一度通えるようになった。
だが、家族のいない人生は空虚で色が無かった。
今日は青空。全国的な日本晴れ。
同級生が制服に身を包み、元気に、晴れやかに、友達と通学路を歩いてゆく。
私もその通学路を行く一員だった。
だが私だけ、曇り空だった。すべてが灰色だった。きっと私の目は深く暗いだろう。
学校へ続く坂道。
日の光に照らされて白く光る。
その光り輝く道に向かって私は吐く。
「嘘つき・・・」
「嘘つきめ・・・」
「どこが楽しいだ・・・」
「嘘つきめ・・・」
「殺してやる・・・」
「探し出して・・・殺してやる・・・」
「天秤の神!!!!」
私の呪詛は晴れやかな日の光に溶けて消えていった・・・
to be continued?
お兄ちゃんが遠ざかる気配を感じてから、俯き胸を押さえ息を吐く。
額から脂汗が出て目が霞む。その時だった。
『無理すると死んじゃうんじゃない~?ナースコール押したら~?』
顔を辛うじて上げると足元にニコニコと笑いながら座る天秤を持った女の子。
「だ、誰なんです?」
『私~?神様よ~。ちょっとあなたと話したくて来たの。』
「神・・・様?私、死ぬんですか?」
『あ~・・・私はそういうの担当じゃないから。』
「じゃあ、いったい・・・」
『ねぇ、あなた。口では見舞いに来るな~とか、学校行ってるのか~とか言ってるけどさ・・・』
神様は『ニタァ』と口が避けそうなくらい口角を上げて笑いながら、
『本当は分かってるんでしょ?』
「な、なにを・・・」
『うわぁ~とぼけちゃって~』
嬉しそうに話す神様。この人と話していると、どんどん気分が悪くなってくる。
『本当はアイツが学校辞めてることとか、母親に何かあったことも気づいてる。でもあなたは知らないフリをしている。お見舞いに来てほしいから。』
「違う!!!!!!!!!!!」
『違わないわよ。だって私あなたの心読めるもの。』
「いい加減なこと言わないで!人を呼びます!」
そう言ってナースコールを押す。
『無駄無駄~。』
ケラケラ笑う神様。看護師さんはいつまで経ってもやって来なかった。
「どうして・・・」
『あなたやっぱりもう分かってないのね。今ね、世界から色が消えてるのよ。時間が止まっているの。』
そう言って神様は私の水の入ったコップを持ち、
逆さに向けた。
コップの水は一滴も落ちなかった。
『あなた・・・色がもう無いんでしょ。もしかしたら味覚もかな~?それでいてエクレア食べたいだなんて~。あっ!もしかして味がわからなくても昔、大好きなお兄ちゃんと一緒に食べた幸せな記憶に浸りたいからかしら~?』
「やめて!!!!!!!!!!!もう・・・・やめて・・・」
私は神様の責め立てに耐えられず泣き出した。
『負担になりたくないなら、とっとと死になさいよ。中途半端な事して、かまってちゃんしたいのかしら。』
私はまるで小さい子供のように泣きながら『イヤイヤ』と首を振る。
『はぁ~。やっぱ兄妹だわ。負担になりたくない。でも見捨ててほしくない。なんなの。気持ち悪い・・・こんな奴に人生を棒に振る必要あるのかしら?』
神様は冷たい目で私を見てそう言う。
『私が救ってあげるわ~。アンタも。アンタのお兄ちゃんも。つまらない人生を楽しくしてあげる。だから~・・・』
神様は涼しい顔で、
『アンタのお兄ちゃん頂戴ね♪』
「何を・・・言って・・・」
神様はそう言うと『すぅー』と浮いて、天井に消えていく。
「ま、待って・・・取らないで・・・私のお兄ちゃん!取らないでーーーーーー!!!!!」
私は泣きながら叫ぶ。
看護師さんが駆け付け、泣きながら錯乱する私を押さえつける。
その日を境にお兄ちゃんは行方不明になり、
私は嘘のように復調し、退院することが出来た。
そしてもう叶わないと思っていた学校に、もう一度通えるようになった。
だが、家族のいない人生は空虚で色が無かった。
今日は青空。全国的な日本晴れ。
同級生が制服に身を包み、元気に、晴れやかに、友達と通学路を歩いてゆく。
私もその通学路を行く一員だった。
だが私だけ、曇り空だった。すべてが灰色だった。きっと私の目は深く暗いだろう。
学校へ続く坂道。
日の光に照らされて白く光る。
その光り輝く道に向かって私は吐く。
「嘘つき・・・」
「嘘つきめ・・・」
「どこが楽しいだ・・・」
「嘘つきめ・・・」
「殺してやる・・・」
「探し出して・・・殺してやる・・・」
「天秤の神!!!!」
私の呪詛は晴れやかな日の光に溶けて消えていった・・・
to be continued?
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