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エピローグ1 肝臓を失った胆嚢は何を見る?
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あたし・・・どうしてこんな所に居るんだろう。
気が付くとあたしはだだっ広い石造りの空間に座り込んでいる。
周りを見渡すと激しく損壊している部分もあった。近くにはハルバードがポツンと落ちている。あたしのではない。でも・・・
何を思ったのか・・・あたしはよろよろと立ち上がり、吸い寄せられるようにハルバードを拾い上げようと・・・触れた。
「あ・・・あれ・・・何だこれ・・・なんで・・・」
ポロポロ、ポロポロと涙が零れる。どんどんあふれ出て石床を濡らしてゆく。
「はは・・・おかしいな・・・おかしいや・・・なんでこんなに胸が苦しいの・・・」
ハルバードを拾い上げ抱きしめる。何かの温もりを求めるかのように・・・あたしはそうしたんだ。でも・・・ただただ冷たい鋼鉄があたしの温もりを奪ってゆくだけだった。
塔から出るとアーカイブさんとてっちゃんが待っていた。
あたしが塔から出ると同時に塔は薄くなっていき、忽然と姿を消してしまった。
てっちゃんはあたしの姿を見ると駆け寄り身体をすり寄せてくる。あたしはてっちゃんの首を優しく撫でてそれに答えた。
アーカイブさんがてっちゃんに少し遅れてやってくる。
「カルディアさん。これから私に協力してくれませんか?この塔の攻略の為に仲間を集め、物資を揃えて準備をするのです。いつかこの塔が再び開かれた時のために・・・。成功すれば皆でこの狭間世界から帰れるのですから。」
アーカイブさんは興奮気味にあたしに助力を求めたが、あたしは・・・
「・・・すみません。アーカイブさん。今は・・・少し休ませてください。あたし・・・疲れちゃったみたいで・・・」
心に大きな穴が開いていた。そこから活力がどんどん流れ出てしまっているみたいだった・・・。今は本当に何も出来る気がしなかった。
「そう・・・ですか・・・。でも、あなたのおかげで希望が見えてきました。本当にありがとう。これを・・・」
そう言ってアーカイブさんは小袋を握らせてくる。中には硬貨がぎっしり入っていた。
「この町で発行され、使われている。通貨です。これだけあればしばらく生活できます。これでゆっくりしてください。」
「ありがとうございます・・・アーカイブさん・・・」
あたしは小袋を受け取り、お礼を言って、てっちゃんとフラフラ歩いてゆく。
「また、会いに行きます!」
後ろでアーカイブさんがそう言っていた。
あたしはいったいどこへ行けばいいのだろう・・・何をすればいいのだろう・・・
「てっちゃん・・・どうしたらいいかな?」
隣を歩く連れ添った相棒にそう尋ねても、てっちゃんはただただ眉間に皺をよせて、困り顔をするだけだった。
誰か・・・誰か教えて・・・これからどうしたらいいの・・・
「あれ・・・なんだろ?なんだか・・・暗いね、てっちゃん。おかしいな・・・世界ってこんなに灰色だったっけ?」
一人と一匹がフラフラと歩いてゆく。
歩く屍のように・・・
あたしが失ったのは”導”なのだ。
ずっとあたしの手を引いて、前を歩いてくれた、そんな人なのだ。
あたしにとってかけがえのない先導者で、心の拠り所を・・・
あたしは失ってしまったのだ・・・
たとえ記憶が覚えていなくとも
あたしの心がそう告げていた。
to be continued?
気が付くとあたしはだだっ広い石造りの空間に座り込んでいる。
周りを見渡すと激しく損壊している部分もあった。近くにはハルバードがポツンと落ちている。あたしのではない。でも・・・
何を思ったのか・・・あたしはよろよろと立ち上がり、吸い寄せられるようにハルバードを拾い上げようと・・・触れた。
「あ・・・あれ・・・何だこれ・・・なんで・・・」
ポロポロ、ポロポロと涙が零れる。どんどんあふれ出て石床を濡らしてゆく。
「はは・・・おかしいな・・・おかしいや・・・なんでこんなに胸が苦しいの・・・」
ハルバードを拾い上げ抱きしめる。何かの温もりを求めるかのように・・・あたしはそうしたんだ。でも・・・ただただ冷たい鋼鉄があたしの温もりを奪ってゆくだけだった。
塔から出るとアーカイブさんとてっちゃんが待っていた。
あたしが塔から出ると同時に塔は薄くなっていき、忽然と姿を消してしまった。
てっちゃんはあたしの姿を見ると駆け寄り身体をすり寄せてくる。あたしはてっちゃんの首を優しく撫でてそれに答えた。
アーカイブさんがてっちゃんに少し遅れてやってくる。
「カルディアさん。これから私に協力してくれませんか?この塔の攻略の為に仲間を集め、物資を揃えて準備をするのです。いつかこの塔が再び開かれた時のために・・・。成功すれば皆でこの狭間世界から帰れるのですから。」
アーカイブさんは興奮気味にあたしに助力を求めたが、あたしは・・・
「・・・すみません。アーカイブさん。今は・・・少し休ませてください。あたし・・・疲れちゃったみたいで・・・」
心に大きな穴が開いていた。そこから活力がどんどん流れ出てしまっているみたいだった・・・。今は本当に何も出来る気がしなかった。
「そう・・・ですか・・・。でも、あなたのおかげで希望が見えてきました。本当にありがとう。これを・・・」
そう言ってアーカイブさんは小袋を握らせてくる。中には硬貨がぎっしり入っていた。
「この町で発行され、使われている。通貨です。これだけあればしばらく生活できます。これでゆっくりしてください。」
「ありがとうございます・・・アーカイブさん・・・」
あたしは小袋を受け取り、お礼を言って、てっちゃんとフラフラ歩いてゆく。
「また、会いに行きます!」
後ろでアーカイブさんがそう言っていた。
あたしはいったいどこへ行けばいいのだろう・・・何をすればいいのだろう・・・
「てっちゃん・・・どうしたらいいかな?」
隣を歩く連れ添った相棒にそう尋ねても、てっちゃんはただただ眉間に皺をよせて、困り顔をするだけだった。
誰か・・・誰か教えて・・・これからどうしたらいいの・・・
「あれ・・・なんだろ?なんだか・・・暗いね、てっちゃん。おかしいな・・・世界ってこんなに灰色だったっけ?」
一人と一匹がフラフラと歩いてゆく。
歩く屍のように・・・
あたしが失ったのは”導”なのだ。
ずっとあたしの手を引いて、前を歩いてくれた、そんな人なのだ。
あたしにとってかけがえのない先導者で、心の拠り所を・・・
あたしは失ってしまったのだ・・・
たとえ記憶が覚えていなくとも
あたしの心がそう告げていた。
to be continued?
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