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本編6 肝胆相照の殺戮者 その1
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「部下から聞いたよ。スタリオンに追いついて斬り飛ばしたんだってな、その娘。」
野営でそう話しかけてきたのはスタンピードさんだった。
話の中心人物であるキリちゃんはてっちゃんを布団にスヤスヤと穏やかに眠っている。
「お前らがこの世界に来た時、俺はこいつの戦闘を間近で見たが、スピードタイプの能力じゃなかった、どう見たってパワータイプだったぜ?そんなこいつがスタリオンに追いつくなんてあり得るのか?とてもじゃないが不可能だ。嬢ちゃん、こいつは異常だ・・・前に俺が以前出会った鹿や禿げ程じゃない、そう言ったが訂正する。こいつは間違いなく、そいつらと肩を並べる異常者だ。正直、こうして穏やかに眠っている間に首を刎ねたいくらいだよ。」
そう言ってスタンピードさんはキリちゃんを見つめる。
あたしはスタンピードさんとキリちゃんの間に入って大きく手を広げ睨みつける。
「しねぇよ。ただ、それぐらい怖いんだ。俺はこいつに恐怖している。早くこいつの元から逃げ出したいくらいだ。悪いがこの作戦が終わったら部隊から出て行ってくれ・・・。約束通り服の支払いはちゃんとする。情けねえが本当に怖いんだ。嬢ちゃん・・・俺はあんたにも恐怖してるんだぜ?だってこいつと付き合っていけるなんて、到底俺じゃ考えられないからな。」
「キリちゃんは・・・悪い子じゃない・・・」
呟くようにあたしは小さく漏らす。その呟きは自分に言い聞かせているようにも思えた。
スタンピードさんは小さくため息をつき、
「服屋の兄ちゃんに『こいつが暴れたら俺が止めてやる』なんて言ったけどよ。そう言った過去の自分をぶん殴ってやりたいぜ。こいつがプッツンしたら俺なんか一合もやりあえねぇだろうよ。嬢ちゃんだけが頼みの綱だぜ?そいつの手綱、ちゃんと握っててくれよ。」
そう言ってスタンピードさんは自分のテントに帰って行った。
(あたしだって・・・分かんないよ。キリちゃんをどうこうなんてできないよ・・・)
幸せそうに眠るキリちゃんを見る。涎を垂らしながら安心しきって眠るキリちゃんの口元を拭いてあげて、あたしも床に就いた。
問題はは次の日に起きた。
今日の相手はかなり手ごわい。敵の有名なランカー、サディスティッククイーンの部隊だった。
しかし、この部隊の主力になりつつあるキリちゃんの動きがおかしい。
いつもは止めても前に出たがるのに、今日は後方に下がって前に出ない。その姿は戦闘を避けているように見えた。
「キリちゃんどうしたの?身体の調子悪いの?」
「う~・・・今日は駄目。」
「キリちゃん、頑張れない?」
そう言ってもフルフルと首を振るだけだった。
「おい!どうした!?戦ってくれ!」
スタンピードさんがあたしたちに発破をかけに来る。
「それが・・・様子がおかしくて・・・」
「なんだって!?こんな重要な場面で!?勘弁してくれ・・・。クソ!退却だーーー!!お前ら!!!退却しろーーー!!!」
スタンピードさんの号令で部隊が戦線を崩さないように退却を始める。
しかし、僅かな綻びをサディスティッククイーンの部隊は見逃さず突いてくる。
「ちくしょう!崩れ始めた!お前らも早く下がれ!じきにここにも敵が来るぞ!」
「スタンピードさんは!?」
「俺は崩された仲間の所に加勢に行く。アイツらに捕まったら何されるか分かんねぇからな!」
そう言い残しスタンピードさんは甲殻竜を駆って、激戦区に去っていった。
「キリちゃん・・・」
「うー・・・」
駄目そうだ。
「キリちゃん。下がろう。あとは皆に任せよう。」
「エクレアさん・・・。おじさん危ないかな?」
「うん・・・そうだね・・・」
「じゃあ・・・行く。・・・行こう、てっちゃん。」
そう言ってゆっくりと移動し始める。
「キリちゃん、いけるの!?」
「わからない・・・危ないかも・・・。エクレアさん、ハルバード用意しててね。」
スタンピードさんの向かった場所は乱戦状態になっていた。
スタンピードさんも血まみれで、それでも指揮を取りながら戦っている。
「お前ら、戦えないんじゃないのか!?」
「それが・・・あたしにも分かんないんです!」
「もう何でもいい。戦えるならやってくれ。」
「エクレアさん。ハルバードかして。おじさん、2回までだと・・・思う。一番厄介なのどいつ?」
キリちゃんにハルバードを渡す。スタンピードさんが戦場、敵兵がずらりと並ぶ奥、巨大な大蛇型の魔獣に乗ってふんぞり返る長身長髪の幽霊みたいな女性を指さし、
「あいつだ。サディスティッククイーンだ。」
「分かった。」
キリちゃんは短く返事をすると目が紅くなってゆく。
ハルバードを右手で強く握りしめる。握った手に相当な力が籠っているのか血管が浮き上がっていた。
そして唯一の武器を横に回転させるように、
サディスティッククイーンに向かって投擲した。
ハルバードはとんでもないスピードで射出され、多くの敵兵が避ける間もなく分断され命を散らしてゆく。しかし、飛んで行くハルバードの勢いは弱まることが無い。すぐさま投げたハルバードを追いかけて、てっちゃんを走らせるキリちゃん。ハルバードはサディスティッククイーンの巨大な大蛇の魔獣にぶっ刺さり、命を奪って止まった。キリちゃんは投げたハルバードに追いつき、左手で・・・左手?
見ればキリちゃんの右手は伸びきって『だらん』と垂れ下がり、至る所から血が流れ出ていた。
左手を使い、大蛇からハルバードを引きに抜き、サディスティッククイーンに向ける。その紅い目と共に・・・
「チッ・・・。スタンピードがこんな狂人を飼ってたなんて知らなかったわぁ~。」
長髪の奥から冷たい目が見え隠れする。
「でもぉ・・・」
サディスティッククイーンが『ニチャア』と口裂け女のように笑う。
「ふふふ・・・その腕ぇ。かかかか身体の負担が凄まじいようねぇ・・・その左手もいつまで持つのかしらぁ。」
「おばさんをやるだけなら持つよ。」
「どうかしらぁ~?」
そう言ってサディスティッククイーンはおもむろに隣に立っている部下を掴み、
「た、隊長、何を!」
こちらに向かって放り投げた。
「死にたくなかったら、あの女を殺しなさい~。」
ぶん投げた部下にそう言い放つサディスティッククイーン。
投げられた部下は泣きながら武器を構えて空中を飛んでくるが、刹那の一瞬、キリちゃんの足が動いたかと思ったらサディスティッククイーンの部下が上空に吹っ飛び、『ドシャッ』と地面に落ちた。
その部下の顎はボロボロに砕け、首はあらぬ方角に向いていた。
しかし、敵を蹴り飛ばしたキリちゃんの足も負荷に耐えられなかったのかズタズタになっていた。
「まだまだ、”弾”はあるわよぉ~。」
嬉しそうにそう言うサディスティッククイーン。しかし・・・
「どうかしら?」
キリちゃんがニヤリと笑いながら言い返す。
そう、今の一連の出来事でサディスティッククイーンの部下は隊長を置いて遮二無二逃げ出していた。
「弾が逃げちゃったみたいね。おばさん。」
ハルバードを突き立て、勝ち誇った顔でそう言うキリちゃん。
「チッ・・・アイツら!!ややややや野営地で私のペットの餌にしてやる!!!!!」
長髪から覗く目には憎悪の怒りが灯っていた。
「ジャリガキ。名は。」
「あたしはね~、きりh」
「ああああああああああああ!!!!えーと!・・・この子がキリマンジャロであたしはカルパッチョです。」
あたしはキリちゃんの言葉を遮り、伝える。
(今この子、本名を言おうとした!?こんな危ない奴に?)
「そのふざけた名前・・・言う気は無いってことね。まぁいいわ、顔は覚えたからぁ。私が嬲り殺してあげるから、それまで死んじゃ駄目よ~。」
サディスティッククイーンはそう言うと口笛を吹き、空から出現した大きな鳥につかまって去っていった。
キリちゃんはその姿を眺め、
「落とせそう。殺そうかな?」
ハルバードをやり投げの様な投擲の体勢に持ち直しそう言う。
「キキキキキリちゃん!もう十分だって!帰ろう!そうしよう。」
すでに、いつの間にかサディスティッククイーンの残りの部隊も撤退していた。
「うーん・・・エクレアさんがそう言うならそうする~。」
『ニヘラ~』と笑って、紅い目が引いていき、黒目に戻った。
「それと・・・」
しかし・・・その後、ムッとした顔でキリちゃんの口から驚愕の言葉が出てくる。
「私の名前!みんなキリングドーターとか、さっきもエクレアさん、キリマンジャロとか呼んだけど、違うよ!私、キリハ。今年で11歳になります!」
元気よく自己紹介をした。が・・・
いや・・・どうみても11歳には見えない。それ以上だ。どれだけ低く見積もっても15、16くらいだ。
何を言っているのだろうか?この子は。あたしは嫌な予感がしていた。初めて会った時の冷たい眼差しのキリちゃん。そして今の無邪気に『ニヘラ~』と笑うキリちゃん。
(もしかして・・・二人い・・・る?いつから!?あの食堂での事件の後だ。このキリちゃんを見るようになったのは!あの食堂での一件・・・そう・・・キリちゃんはあの時・・・)
(蹴ら・・・れた!?頭から血を流すくらい、後頭部を!)
考え事をしていたら、戦闘が落ち着いたのか、満身創痍のスタンピードさんが寄ってきて、
「助かったぜ、キリングドータ!・・・っておい!?なんじゃそりゃ!?その腕、その足、どうしたんだ!?」
戦闘に使用した腕と足がぐちゃぐちゃだった。すでにキリちゃんは限界に来ていたのか、あたしにハルバードを渡し、電池が切れたように、てっちゃんに身体を預けて突っ伏している。
「じ、実は・・・」
野営でそう話しかけてきたのはスタンピードさんだった。
話の中心人物であるキリちゃんはてっちゃんを布団にスヤスヤと穏やかに眠っている。
「お前らがこの世界に来た時、俺はこいつの戦闘を間近で見たが、スピードタイプの能力じゃなかった、どう見たってパワータイプだったぜ?そんなこいつがスタリオンに追いつくなんてあり得るのか?とてもじゃないが不可能だ。嬢ちゃん、こいつは異常だ・・・前に俺が以前出会った鹿や禿げ程じゃない、そう言ったが訂正する。こいつは間違いなく、そいつらと肩を並べる異常者だ。正直、こうして穏やかに眠っている間に首を刎ねたいくらいだよ。」
そう言ってスタンピードさんはキリちゃんを見つめる。
あたしはスタンピードさんとキリちゃんの間に入って大きく手を広げ睨みつける。
「しねぇよ。ただ、それぐらい怖いんだ。俺はこいつに恐怖している。早くこいつの元から逃げ出したいくらいだ。悪いがこの作戦が終わったら部隊から出て行ってくれ・・・。約束通り服の支払いはちゃんとする。情けねえが本当に怖いんだ。嬢ちゃん・・・俺はあんたにも恐怖してるんだぜ?だってこいつと付き合っていけるなんて、到底俺じゃ考えられないからな。」
「キリちゃんは・・・悪い子じゃない・・・」
呟くようにあたしは小さく漏らす。その呟きは自分に言い聞かせているようにも思えた。
スタンピードさんは小さくため息をつき、
「服屋の兄ちゃんに『こいつが暴れたら俺が止めてやる』なんて言ったけどよ。そう言った過去の自分をぶん殴ってやりたいぜ。こいつがプッツンしたら俺なんか一合もやりあえねぇだろうよ。嬢ちゃんだけが頼みの綱だぜ?そいつの手綱、ちゃんと握っててくれよ。」
そう言ってスタンピードさんは自分のテントに帰って行った。
(あたしだって・・・分かんないよ。キリちゃんをどうこうなんてできないよ・・・)
幸せそうに眠るキリちゃんを見る。涎を垂らしながら安心しきって眠るキリちゃんの口元を拭いてあげて、あたしも床に就いた。
問題はは次の日に起きた。
今日の相手はかなり手ごわい。敵の有名なランカー、サディスティッククイーンの部隊だった。
しかし、この部隊の主力になりつつあるキリちゃんの動きがおかしい。
いつもは止めても前に出たがるのに、今日は後方に下がって前に出ない。その姿は戦闘を避けているように見えた。
「キリちゃんどうしたの?身体の調子悪いの?」
「う~・・・今日は駄目。」
「キリちゃん、頑張れない?」
そう言ってもフルフルと首を振るだけだった。
「おい!どうした!?戦ってくれ!」
スタンピードさんがあたしたちに発破をかけに来る。
「それが・・・様子がおかしくて・・・」
「なんだって!?こんな重要な場面で!?勘弁してくれ・・・。クソ!退却だーーー!!お前ら!!!退却しろーーー!!!」
スタンピードさんの号令で部隊が戦線を崩さないように退却を始める。
しかし、僅かな綻びをサディスティッククイーンの部隊は見逃さず突いてくる。
「ちくしょう!崩れ始めた!お前らも早く下がれ!じきにここにも敵が来るぞ!」
「スタンピードさんは!?」
「俺は崩された仲間の所に加勢に行く。アイツらに捕まったら何されるか分かんねぇからな!」
そう言い残しスタンピードさんは甲殻竜を駆って、激戦区に去っていった。
「キリちゃん・・・」
「うー・・・」
駄目そうだ。
「キリちゃん。下がろう。あとは皆に任せよう。」
「エクレアさん・・・。おじさん危ないかな?」
「うん・・・そうだね・・・」
「じゃあ・・・行く。・・・行こう、てっちゃん。」
そう言ってゆっくりと移動し始める。
「キリちゃん、いけるの!?」
「わからない・・・危ないかも・・・。エクレアさん、ハルバード用意しててね。」
スタンピードさんの向かった場所は乱戦状態になっていた。
スタンピードさんも血まみれで、それでも指揮を取りながら戦っている。
「お前ら、戦えないんじゃないのか!?」
「それが・・・あたしにも分かんないんです!」
「もう何でもいい。戦えるならやってくれ。」
「エクレアさん。ハルバードかして。おじさん、2回までだと・・・思う。一番厄介なのどいつ?」
キリちゃんにハルバードを渡す。スタンピードさんが戦場、敵兵がずらりと並ぶ奥、巨大な大蛇型の魔獣に乗ってふんぞり返る長身長髪の幽霊みたいな女性を指さし、
「あいつだ。サディスティッククイーンだ。」
「分かった。」
キリちゃんは短く返事をすると目が紅くなってゆく。
ハルバードを右手で強く握りしめる。握った手に相当な力が籠っているのか血管が浮き上がっていた。
そして唯一の武器を横に回転させるように、
サディスティッククイーンに向かって投擲した。
ハルバードはとんでもないスピードで射出され、多くの敵兵が避ける間もなく分断され命を散らしてゆく。しかし、飛んで行くハルバードの勢いは弱まることが無い。すぐさま投げたハルバードを追いかけて、てっちゃんを走らせるキリちゃん。ハルバードはサディスティッククイーンの巨大な大蛇の魔獣にぶっ刺さり、命を奪って止まった。キリちゃんは投げたハルバードに追いつき、左手で・・・左手?
見ればキリちゃんの右手は伸びきって『だらん』と垂れ下がり、至る所から血が流れ出ていた。
左手を使い、大蛇からハルバードを引きに抜き、サディスティッククイーンに向ける。その紅い目と共に・・・
「チッ・・・。スタンピードがこんな狂人を飼ってたなんて知らなかったわぁ~。」
長髪の奥から冷たい目が見え隠れする。
「でもぉ・・・」
サディスティッククイーンが『ニチャア』と口裂け女のように笑う。
「ふふふ・・・その腕ぇ。かかかか身体の負担が凄まじいようねぇ・・・その左手もいつまで持つのかしらぁ。」
「おばさんをやるだけなら持つよ。」
「どうかしらぁ~?」
そう言ってサディスティッククイーンはおもむろに隣に立っている部下を掴み、
「た、隊長、何を!」
こちらに向かって放り投げた。
「死にたくなかったら、あの女を殺しなさい~。」
ぶん投げた部下にそう言い放つサディスティッククイーン。
投げられた部下は泣きながら武器を構えて空中を飛んでくるが、刹那の一瞬、キリちゃんの足が動いたかと思ったらサディスティッククイーンの部下が上空に吹っ飛び、『ドシャッ』と地面に落ちた。
その部下の顎はボロボロに砕け、首はあらぬ方角に向いていた。
しかし、敵を蹴り飛ばしたキリちゃんの足も負荷に耐えられなかったのかズタズタになっていた。
「まだまだ、”弾”はあるわよぉ~。」
嬉しそうにそう言うサディスティッククイーン。しかし・・・
「どうかしら?」
キリちゃんがニヤリと笑いながら言い返す。
そう、今の一連の出来事でサディスティッククイーンの部下は隊長を置いて遮二無二逃げ出していた。
「弾が逃げちゃったみたいね。おばさん。」
ハルバードを突き立て、勝ち誇った顔でそう言うキリちゃん。
「チッ・・・アイツら!!ややややや野営地で私のペットの餌にしてやる!!!!!」
長髪から覗く目には憎悪の怒りが灯っていた。
「ジャリガキ。名は。」
「あたしはね~、きりh」
「ああああああああああああ!!!!えーと!・・・この子がキリマンジャロであたしはカルパッチョです。」
あたしはキリちゃんの言葉を遮り、伝える。
(今この子、本名を言おうとした!?こんな危ない奴に?)
「そのふざけた名前・・・言う気は無いってことね。まぁいいわ、顔は覚えたからぁ。私が嬲り殺してあげるから、それまで死んじゃ駄目よ~。」
サディスティッククイーンはそう言うと口笛を吹き、空から出現した大きな鳥につかまって去っていった。
キリちゃんはその姿を眺め、
「落とせそう。殺そうかな?」
ハルバードをやり投げの様な投擲の体勢に持ち直しそう言う。
「キキキキキリちゃん!もう十分だって!帰ろう!そうしよう。」
すでに、いつの間にかサディスティッククイーンの残りの部隊も撤退していた。
「うーん・・・エクレアさんがそう言うならそうする~。」
『ニヘラ~』と笑って、紅い目が引いていき、黒目に戻った。
「それと・・・」
しかし・・・その後、ムッとした顔でキリちゃんの口から驚愕の言葉が出てくる。
「私の名前!みんなキリングドーターとか、さっきもエクレアさん、キリマンジャロとか呼んだけど、違うよ!私、キリハ。今年で11歳になります!」
元気よく自己紹介をした。が・・・
いや・・・どうみても11歳には見えない。それ以上だ。どれだけ低く見積もっても15、16くらいだ。
何を言っているのだろうか?この子は。あたしは嫌な予感がしていた。初めて会った時の冷たい眼差しのキリちゃん。そして今の無邪気に『ニヘラ~』と笑うキリちゃん。
(もしかして・・・二人い・・・る?いつから!?あの食堂での事件の後だ。このキリちゃんを見るようになったのは!あの食堂での一件・・・そう・・・キリちゃんはあの時・・・)
(蹴ら・・・れた!?頭から血を流すくらい、後頭部を!)
考え事をしていたら、戦闘が落ち着いたのか、満身創痍のスタンピードさんが寄ってきて、
「助かったぜ、キリングドータ!・・・っておい!?なんじゃそりゃ!?その腕、その足、どうしたんだ!?」
戦闘に使用した腕と足がぐちゃぐちゃだった。すでにキリちゃんは限界に来ていたのか、あたしにハルバードを渡し、電池が切れたように、てっちゃんに身体を預けて突っ伏している。
「じ、実は・・・」
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