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本編2 不穏な新生活
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「おいおい。全滅かと思ったら、とんでもねえ奴が混じってたな。」
がっちりとした鎧を着こんだ男があたし達付近の壁上から降りてきて、掘り出し物を見つけたように驚きを見せていた。
「スタンピード。今回は君に任せたが、止めるのが遅いんじゃないのかい?」
逆側の壁上からチャラチャラとしたなりのサングラスをかけた男がもう一人降りて、あたしたちの元に寄ってきて、先の男を諫める。
「なんだよヴォイス。あんな雑魚でも欲しいくらいお前さんの所は困ってるのか?言っちゃ悪いが、あんな奴ら拾っても穀潰しだぜ?違うか?」
ヴォイスと呼ばれた男は言われたことに反論の余地がないのか、サングラスを『クイ』っと直して、それ以上何も言わなかった。
「ふぅ・・・こいつらしか残らなかったし、もうここで聞いてもいいだろ?」
スタンピードと呼ばれた男がヴォイスさんにそう提案する。
ヴォイスさんも、
「問題ない。」
と、提案を了承した。
「んじゃま。そういうことで、お前さんたちどっちにつく?」
あたしが言い淀んでいると、白髪の少女が、
「人が多い方。」
と答えた。
「君はどっちにするんだい?」
チャラチャラしたヴォイスと言う男があたしに聞いてきた。あたしは・・・
「彼女と同じが良いです。」
そう答えた。
「うっし!わりいな!ヴォイス。」
「こればかりは仕方ないさ。次回に期待するよ。」
そう言って去っていくヴォイスさんに
「そうね・・・待って!」
白髪の少女が呼びかける。
「なにかな~、気が変わった~?」
お茶らけてそういうヴォイスさん。
白髪の少女はそのノリを一切無視し、憎悪を孕んだ鋭い目で相手を見据え、
「あなた・・・天秤を持った神様を知らない?」
そう聞いた。その質問をした時の彼女は殺気をむき出しにして隠す気も無かった。
ヴォイスさんはその殺気に当てられても平然としながら、
「悪いけど知らないっちゃ~。」
と、飄々と答えて去っていった。
「あなた達も知らないかしら?天秤の神。」
ヴォイスさんに向けていた殺気と憎悪を今度はあたしとスタンピードさんに向けてそう聞いてくる。
「俺は知らないぜ。」
スタンピードさんは肩をすくめて全く臆さずにそう答え、目線をあたしに向けてくる。
「あ、あたしも知りません・・・ごめんなさい。」
あたしは余りに怖くて何故か謝りながら答えていた。
「そう・・・」
彼女は答えを聞くと、さっきの殺戮ショーを眺めていた時の様なつまらなそうな表情に戻り、目を伏せた。いつの間にか赤い目も黒い瞳に戻っていた。
「じゃ、拠点に案内するぜ。ついてきてくれ。」
スタンピードさんが先導する。それにあたしはついて行こうとするが、白髪の彼女がその場から動かない。あたしは不思議そうに彼女を見ると、彼女は自分のハルバードを見つめて立ち尽くしていた。
「ねぇ、雑魚。これ持って。」
あたしに向かってそう言って地面に転がっている自分のハルバードを指した。
え?あたしが運ぶの?これを?
あたしが面食らって迷っていると、
「はやくして、雑魚。」
心の底から『早くして、役目でしょ?』という、何一つ疑いのない曇りなき眼で見られる。
あたしは彼女のハルバードを抱えて拠点まで運んだ。
だって・・・なんか断れる空気じゃ無かったんだもん!
拠点につくとあたしたちは同室、同部隊であることが告げられ、ここでの決まりを聞かされた。
敵対勢力と戦争していること、相手を全滅させて勝利しなければこの狭間の世界から出られないこと、貢献しなければお金が手に入らないこと。
ただ、スタンピードさんは最後に、
「あんまデカい声で言えないけどさ。テキトーに流しとけよ。ガチで勝とうだなんて思わなくていい。相手さんも異世界でよろしくやってた転生者や転移者だ。命の削り合いになる。それにどうせあの神様連中はここから出す気なんてさらさら無いよ。俺もここに数十年居てたらそれくらい分かったよ。だからお前らも生活できるくらいに頑張りな。」
そう言って去っていった。白髪の彼女は終始つまらなそうにして聞いてるのか聞いていないのか、いまいち分からなかった。
拠点内部は戦時下の基地のように入り組んでおりまるで迷路のようだった。
彷徨いながら割り当てられた部屋に着くとそこは四人部屋で、ベッドが一つだけ使われている状態だった。
「あなた達、ここのお部屋になったの?」
先住の眼鏡に三つ編みの優しそうな少女が話しかけてくる。
「は、はい。そうです。よろしくお願いします。」
「私はリコ。よろしくね~。」
笑顔を向けて自己紹介してくれる。
「あたしはカルディア!よろしく~。」
二人で和気あいあいとしていると、白髪の彼女はマイペースにベッドに潜り込み横になった。
「ね、ねぇ~あなたも自己紹介・・・」
あたしが恐る恐る話しかけると、
「なに?」
鋭い目つきが邪魔すんな!と言っていた。
怖い、ちびっちゃいそう。
「えっと・・・自己紹介を・・・」
「知らない・・・。ねえ、雑魚。無駄なことしてるくらいならパンでも果物でも貰ってきて。」
呟いてからあたしに命令してくる。
「あ、あの・・・あたし『雑魚』じゃなくて、カルディア・・・」
「は?仕事しろ雑魚。」
滅茶苦茶怖い!めっちゃキレてる!
「ね、ねぇ・・・ここで生活するための物も買い揃えないといけないし、服もあの生き物の血で血まみれで・・・」
「じゃあ、それもよろしく。服はこれ以外着ないから要らない。」
「あ、あの~・・・」
リコちゃんが諫めようとしたのだろうか?話しかけると、
「うるさいな!!!いいでしょ!!!ほっといてよ!!!」
喚くようにそう言って布団をすっぽり被る彼女。
それ以上何か言える雰囲気ではなかった
がっちりとした鎧を着こんだ男があたし達付近の壁上から降りてきて、掘り出し物を見つけたように驚きを見せていた。
「スタンピード。今回は君に任せたが、止めるのが遅いんじゃないのかい?」
逆側の壁上からチャラチャラとしたなりのサングラスをかけた男がもう一人降りて、あたしたちの元に寄ってきて、先の男を諫める。
「なんだよヴォイス。あんな雑魚でも欲しいくらいお前さんの所は困ってるのか?言っちゃ悪いが、あんな奴ら拾っても穀潰しだぜ?違うか?」
ヴォイスと呼ばれた男は言われたことに反論の余地がないのか、サングラスを『クイ』っと直して、それ以上何も言わなかった。
「ふぅ・・・こいつらしか残らなかったし、もうここで聞いてもいいだろ?」
スタンピードと呼ばれた男がヴォイスさんにそう提案する。
ヴォイスさんも、
「問題ない。」
と、提案を了承した。
「んじゃま。そういうことで、お前さんたちどっちにつく?」
あたしが言い淀んでいると、白髪の少女が、
「人が多い方。」
と答えた。
「君はどっちにするんだい?」
チャラチャラしたヴォイスと言う男があたしに聞いてきた。あたしは・・・
「彼女と同じが良いです。」
そう答えた。
「うっし!わりいな!ヴォイス。」
「こればかりは仕方ないさ。次回に期待するよ。」
そう言って去っていくヴォイスさんに
「そうね・・・待って!」
白髪の少女が呼びかける。
「なにかな~、気が変わった~?」
お茶らけてそういうヴォイスさん。
白髪の少女はそのノリを一切無視し、憎悪を孕んだ鋭い目で相手を見据え、
「あなた・・・天秤を持った神様を知らない?」
そう聞いた。その質問をした時の彼女は殺気をむき出しにして隠す気も無かった。
ヴォイスさんはその殺気に当てられても平然としながら、
「悪いけど知らないっちゃ~。」
と、飄々と答えて去っていった。
「あなた達も知らないかしら?天秤の神。」
ヴォイスさんに向けていた殺気と憎悪を今度はあたしとスタンピードさんに向けてそう聞いてくる。
「俺は知らないぜ。」
スタンピードさんは肩をすくめて全く臆さずにそう答え、目線をあたしに向けてくる。
「あ、あたしも知りません・・・ごめんなさい。」
あたしは余りに怖くて何故か謝りながら答えていた。
「そう・・・」
彼女は答えを聞くと、さっきの殺戮ショーを眺めていた時の様なつまらなそうな表情に戻り、目を伏せた。いつの間にか赤い目も黒い瞳に戻っていた。
「じゃ、拠点に案内するぜ。ついてきてくれ。」
スタンピードさんが先導する。それにあたしはついて行こうとするが、白髪の彼女がその場から動かない。あたしは不思議そうに彼女を見ると、彼女は自分のハルバードを見つめて立ち尽くしていた。
「ねぇ、雑魚。これ持って。」
あたしに向かってそう言って地面に転がっている自分のハルバードを指した。
え?あたしが運ぶの?これを?
あたしが面食らって迷っていると、
「はやくして、雑魚。」
心の底から『早くして、役目でしょ?』という、何一つ疑いのない曇りなき眼で見られる。
あたしは彼女のハルバードを抱えて拠点まで運んだ。
だって・・・なんか断れる空気じゃ無かったんだもん!
拠点につくとあたしたちは同室、同部隊であることが告げられ、ここでの決まりを聞かされた。
敵対勢力と戦争していること、相手を全滅させて勝利しなければこの狭間の世界から出られないこと、貢献しなければお金が手に入らないこと。
ただ、スタンピードさんは最後に、
「あんまデカい声で言えないけどさ。テキトーに流しとけよ。ガチで勝とうだなんて思わなくていい。相手さんも異世界でよろしくやってた転生者や転移者だ。命の削り合いになる。それにどうせあの神様連中はここから出す気なんてさらさら無いよ。俺もここに数十年居てたらそれくらい分かったよ。だからお前らも生活できるくらいに頑張りな。」
そう言って去っていった。白髪の彼女は終始つまらなそうにして聞いてるのか聞いていないのか、いまいち分からなかった。
拠点内部は戦時下の基地のように入り組んでおりまるで迷路のようだった。
彷徨いながら割り当てられた部屋に着くとそこは四人部屋で、ベッドが一つだけ使われている状態だった。
「あなた達、ここのお部屋になったの?」
先住の眼鏡に三つ編みの優しそうな少女が話しかけてくる。
「は、はい。そうです。よろしくお願いします。」
「私はリコ。よろしくね~。」
笑顔を向けて自己紹介してくれる。
「あたしはカルディア!よろしく~。」
二人で和気あいあいとしていると、白髪の彼女はマイペースにベッドに潜り込み横になった。
「ね、ねぇ~あなたも自己紹介・・・」
あたしが恐る恐る話しかけると、
「なに?」
鋭い目つきが邪魔すんな!と言っていた。
怖い、ちびっちゃいそう。
「えっと・・・自己紹介を・・・」
「知らない・・・。ねえ、雑魚。無駄なことしてるくらいならパンでも果物でも貰ってきて。」
呟いてからあたしに命令してくる。
「あ、あの・・・あたし『雑魚』じゃなくて、カルディア・・・」
「は?仕事しろ雑魚。」
滅茶苦茶怖い!めっちゃキレてる!
「ね、ねぇ・・・ここで生活するための物も買い揃えないといけないし、服もあの生き物の血で血まみれで・・・」
「じゃあ、それもよろしく。服はこれ以外着ないから要らない。」
「あ、あの~・・・」
リコちゃんが諫めようとしたのだろうか?話しかけると、
「うるさいな!!!いいでしょ!!!ほっといてよ!!!」
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