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14 黒い陰謀
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翌朝、当直上がりの瞳が唯を迎えに来た。
唯は昨夜、楽しい時間を過ごせたようでチーリンと布団を並べてぐっすり眠った。
諒太にとってもチーリンにとっても唯と過ごせた一夜は忘れられないものとなった。
唯が諒太の家に泊まった日から2日後、竜男は那覇から戻った。
しかし、期待は大きく裏切られる結果となった。 まず、収賄などの汚職事件というものは警察がしっかりとした証拠固めをした上で地検に送られる。
竜男はかつての県警の後輩と地検を訪れたが、反応は芳しいものではなかった。地検特捜部という組織は自らの信用を落としかねない事柄を嫌う。
つまり、空振りに終わりそうな案件は最初から扱わないという体質なのだ。竜男が示した写真には興味を持ったものの、ユンという人物が台北東海公司の人間であるという確証がない。よしんばそうだとしても日本の捜査権が台湾に及ぶことはなく、国際刑事警察機構(インターポール)に捜査依頼するにしても写真一枚では証拠が薄すぎた。
宜保の通帳に記載された500万という大金であるが、宜保に人から借用したのだとシラを切られればそれ以上追求することは困難であり、確たる証拠がない限りは特捜部が動くことは難しいという判断であった。
もう一つは写真の入手経路についても指摘された。竜男はまさか宜保の家に忍びこんだとは口が裂けても言えず口を濁した。
尚且つ宜保は波平が消息を絶った日、美波間村役場に出庁しており、宜保自身が那覇で波平の失踪に関与することは不可能であり、また間接的に関与をしていたとしても、これだけの内容で立件するには程遠いことであった。
結果、竜男の告発は検察預かりという曖昧な処断が下された。
竜男に一縷の望みを託していた開発計画反対派の島民はがっくりと肩を落とした。
その後、村議会ではリゾートホテル開発に関して決議がとられ、多数決の結果、僅かに賛成派が過半数を上回り議案は正式に可決された。
宜保の水面下での根回しが効果をあげた結果になった形となった訳だ。
そして、その日のうちに村長代理の宜保副村長によって認可のサインがされた。もはや島は後戻りが出来ない状況となったのである。
ー台北東海公司社長室ー
尹(ユン)リゾート開発担当部長は
社長の大きなデスクを挟んで直立不動で呂威と向き合っている。
「どうだね?尹部長、私の指示した通りにしてみたら簡単に事が運んだだろう?」
呂威は本革張りの高級チェアーに踏ん反りニヤリと笑った。
「ハッ!社長の御炯眼には畏れいるばかりです」
ようやく美波間島のリゾートホテル開発の工事認可がおりたことでユン部長は首の皮一枚繋がった形だ。
「宜保とかいう男、これからも使えそうなのかね?」
「はい。宜保は現在妻との離婚調停中ということもあり、多額の金が必要だという情報を掴んでおります。
今後も金次第でいかなる条件ものむものかと…」
「よろしい。来年の夏までには何としても美波間島に我が社のホテルを完成させるのだ。 金はいくらかかっても構わん。
考えても見たまえ…傘下の子会社に高速フェリーを建造させて新たに航路を設ければ島までここから2時間もかかるまい。
そうすれば美しいリゾート地に台湾の金持ちどもがどっと押し寄せるようになる。 それが全て我が社の利益になるのだ。 同時に島の土地を買い占め別荘地を造成して販売すれば莫大な利益をもたらすことになるぞ。
フハハハハ!」
呂威は狐のような釣り上がった目を更に細くし高らかに笑った。
社長室を退室したユン部長は呂威社長の方法を選ばない強引なやり方と底の知れない強欲さに背筋を凍らせた。 ユンは元々呂威の子飼いの部下ではない。台北市で中堅の不動産デベロッパー会社の社長をしていたのだが、数年前に呂威の台北東海公司に会社を買収され現在の部長職に留まっているのだ。
ユンは呂威の前に出ると体が固まってしまう。あの狐のようなギラギラした目で見られると時に恐怖すら感じることがある。 呂威に命じられたプロジェクトに瑕疵が生じることなどあってはならないことで、失敗すれば身の上にどんな事が起こるかわかったものではないのである。
ユンは大きなため息をつくと背中を丸めて廊下を歩き出した。
「上海を呼び出してくれ」
社長室の呂威は電話の内線ボタンを押すと隣室にいる秘書に命じた。
呂威が上海と呼ぶのは台北東海公司に大口の融資を行なっている上海に本社がある中国でも屈指の大企業のことである。
暫くして電話が繋がった。
「どうも社長、呂です。先般よりお話ししている日本の美波間島リゾートホテル開発計画の件、申請が通りました。これによって建設に向けて工事に移れます。つきましては兼ねてからお願いしている追加融資の件お願いしますよ社長。
何しろ僕とあなたは一蓮托生なんですからねぇ…
ーー
ーー
はい。それではよろしく」
呂威は通話が切れると勢いよく受話器を置いた。
「ケッ!…苦労知らずのボンボンの若造が!」
呂威は誰も居ない社長室で悪態をついた。
多くの台湾製のスクーターや日本製のカブが行き交う雑踏の中にそのビルはあった。通りには道にはみ出すように様々な看板が突出している。路上ではランニングシャツの親父が鼻歌を歌いながら屋台で焼き鳥を売っている。 すえた臭いが鼻をつくこの場所であるが、誰でも一週間もいればこの臭いに慣れてしまうだろう。
ここは台北市の中心地から少し郊外にある築20年を超える雑居ビルである。3階には玉山通信 (ギョクザンツウシン)という社員数10名の小さなローカル通信社が入っている。
江江は社内でキャップと呼ばれる局の責任者である徐重林と顔を突き合わせて議論を交わしていた。
江江はかつて台湾随一のキー局に所属していたやり手のキャリアウーマンであった。見た目は気が強そうで近寄り難い雰囲気だが、付き合ってみると面倒見の良い女性である。
キー局に居た頃は夕方のニュースを担当する人気キャスターで、ズバリとものを語る歯に絹着せぬ言動はお茶の間から圧倒的な支持を得ていた。
今年50歳でまだ働き盛りの江江が今何故こんな小さなローカル局にいるのか…
それには理由があった。
正義感が強く妥協というものを知らない猪突猛進型の性格の江江はかつてキー局にいたとき、ある事件のニュースの一件で社内で上層部と激しく対立したことがあった。
それは数年前のこと、一人の女性が23歳という若さで急死した。
死因は急性心不全。
これだけなら何もニュースにはならない。
しかし、女性の遺族は死因に納得出来なかった。
女性には持病もなく、学生の頃はバスケットボールの大会で優勝するほどの体力があり、健康に関しては全く問題がなかったからだ。
遺族はしかるべき公共機関に不服を申し立てた。
だが、医師が作成した死亡診断書には間違いはないとして相手にもされなかった。 その後、遺族はマスコミを頼った。女性の死には問題が隠れているということを訴え出たのだ。
女性が働いていた会社は
「台湾通電」という台湾でも大手の広告代理店であった。
女性が死亡する一年前に台北東海公司に買収され傘下に入った企業である。会社は買収されてからというもの、徹底的なリストラが敢行され、少なくなった人員でいままでと同じ仕事量をこなさなければならない状況が発生し、結果、残った社員にしわよせがきた。若い彼女は不満を口にすることもなく上司の命令には従順に従った。しかし、仕事の過酷さは尋常ではなく朝の5時から深夜2時までの常軌を逸した長時間の労働時間に加え、休暇などニヶ月に一日あればいいほうで、会社に泊まりこむ事もざらであった。家にいるときも何かあれば上司から電話が入るという生活で女性は心身ともに衰弱し、ついには帰らぬ人となってしまったのだ。 田舎で暮らしていた女性の両親は娘を救えなかったことを酷く悔やんだ。
マスコミ各社は女性の両親の訴えを取材した。しかし、新聞、テレビ、週刊誌に至るまでその訴えを公にとりあげることはなかった。
そこにはマスコミ業界の闇が広がっていたのだ。 女性の働いていた台湾通電は大手テレビ局に入り、番組制作を取り仕切っている重要なピースだったからだ。 そしてもう一つの大きな問題は台湾通電の親会社は台北東海公司であったからだ。
台北東海公司は全てのテレビ局と新聞社にパイプを持ち、各社の最大のスポンサー企業であった。
遺族の悲痛な訴えはそうしたマスコミ側のエゴに黙殺されてしまった。
江江はこのような腐ったマスコミの体質が許せなかった。
女性の死の真相を自分の番組内で報道するよう上層部に直訴した。
しかし、彼女の意見具申は通ることはなかった。 江江のテレビ局も台北東海公司が大口のスポンサーであったからだ。 結局テレビ局サイドはスポンサーに頭が上がらないことでいわゆる「忖度」が生じた。
江江は報道に携わる者とは真実を伝えることが使命であるという強い信念を持っていた。
江江はキャスターを務める自分の夕方のニュースがあと1分で終了するというときプログラムになかったことをカメラに向かって独自の判断で語り出した。 企業名だけは伏せたが、厳しい労働環境に置かれ、痛ましい死を遂げた女性のことを視聴者に向け問題提起した。生放送中でしかも番組終了時間直前であったため、江江の突然の行動に面食らったプロデューサーはCMを挟むことすら出来なかった。
このことは局内で大問題となった。
早速、台湾通電からクレームが入り、重役室に呼び出された番組プロデューサーと江江は居並ぶ重役たちから激しく叱責された。
しかし、江江は自分の持論を曲げることはしなかった。そればかりか局の姿勢を批判した。
結果、江江を監督出来なかった番組プロデューサーは地方局に左遷、江江は番組を降ろされ事務職に異動させられた。江江はそれを潔しとせず局を退社した。視聴者の間では江江の突然の退社に様々な憶測が飛んだが、局は江江の体調不良が退社原因だと発表し、時間が経つにつれこの話題は徐々に忘れさられていった。
江江はその後、真実の報道を目指すことを社是とした今の会社「 玉山通信」に移ったのである。玉山通信は創設間もない小さなローカル通信社である。
元々大手新聞社でジャーナリストとして働いていた徐重林が自らの出版本の収益を元手に創設した会社で現在、社の責任者としてキャップを務める彼も社の都合で偏向報道や捏造記事がまかり通る新聞業界に嫌気がさして野に下ったのであった。
それから徐は志を同じくする同志を集め、会社を立ち上げたのだった。しかし、資金が乏しいため紙媒体での発刊は出来ず、主にネット上にニュースを掲載するという方法で情報を伝えた。ここ最近マスコミの報道に疑問を持ち始める人も増え始め、本当のことを知りたいと思う購買層から支持を受けていた。スポンサーはなく、こういう購買層からの有料配信の収益が柱のため、使える資金は限られていた。
しかし、逆にスポンサーにおもねることもないため自由な報道が可能なのだ。
これを面白く思わない輩から社に怪文書や脅迫状が送られることもしばしばあった。
キャップの徐は中年肥りした大きな腹にサスペンダーがトレードマークの男で、フリーになっていた江江に声をかけ、チーフ職として玉山通信に迎え入れたのも彼であった。
今、江江と徐は事務所で議論を交わしている。
再びあの忌まわしいマスコミ業界の闇が覆いかけていた…
最近、台湾のみならず各地でスマートフォンが爆発炎上する事故が相次いでいた。 数週間前にはその事が原因で高雄市に住んでいる男性の家が全焼するという火事が発生した。
幸い男性は逃げ出し人的被害はなかったが、一歩間違えれば大変な事故になっていたはずだ。爆発炎上したスマホのメーカーはチャオミーという中国企業のメーカーで、米国、韓国のメーカーに次いで世界3位のシェアを誇るスマホメーカーであり、安価な販売価格をウリにしてここ数年急成長している電子機器メーカーである。
そのチャオミーに発火の原因とされるスマホの電池を供給しているのが台北東海公司の子会社の
「陸進」という電子機器メーカーだったのである。
さらには台北東海公司はチャオミーの大口の株主であった。
このことを重く見た徐は江江に調査を命じていた。
「キャップ、だめです…また取材拒否です…」
江江は徐に報告した。
「そうか…またか…」
徐は腕を組んでため息混じりに答えた。
江江は発火が起きたスマホ利用者の取材をしていた。当初は事故に憤り江江の取材に協力的であった彼らであったが、ここ数日の間に江江に会うことを拒絶し、一切口を閉ざしてしまったのだ。 何らかの力が働いたことは疑いようがなかった。
「おそらく被害者にはこれ以上騒ぎを大きくしない事を条件に多額の示談金が支払われたのだろうよ…」
徐は窓に架かるブラインドを指で広げ外の景色を見ながら独り言のように呟いた。
「はい…私もそう思います」
江江は悔しさのあまり拳を握った。
「この案件は被害者側から追うルートは絶たれてしまったが、必ず突破口はあるはずだ。私は諦めない…
…
台北東海公司…我々にとって高い壁だな」
徐は振り返り江江の顔を見ながら言った。
「はい」
顔を合わせた二人の目は怒りに燃えていた。
電池製造メーカー陸進の公式発表によると発火は「使用者が適切な方法での充電を怠ったため」と決して自社の過失を認めようとはしなかった。第三者による調査機関による調査においても政府検査機関に提出されている電池の性能データは十分水準に達していてメーカーサイドの問題はないとされた。
マスコミ各社は電池に問題なしの報道のみを連日流した。
「行くわよ!」
江江はほとんど来客が来ることなどない会社の応接ソファーで寝そべりながら愛用のカメラをいじる
陽 代沫に声をかけた。
「どこ行くんすかチーフ?」
陽は目だけ江江に向けて尋ねた。
「腹ごしらえよ」
「俺、昨日スッちゃってスッカラカンなんすよ」
陽の傍らにはいくつも赤ペンが引かれた競馬新聞が置いてあった。
「全くあなたはしょうがないわね…
奢ってあげるからついてきなさい!」
「やりぃー!」
陽は喜んで立ち上がった。
陽代沫は玉山通信専属の報道カメラマンで、ムービー、一眼レフ問わずカメラの扱いについてはこの業界で彼の右に出るものはいないほどの腕の持主であった。 彼もまた、勤務していた新聞社と大喧嘩をしてドロップアウトした後、フラフラしていたのを徐に拾われた人間である。
35歳の独身で競馬が命。宵越しの金は持たないというのが彼の信条だった。
江江は陽を連れ出し、行きつけのイタリアンレストランに向かった。
このレストランは江江が大手キー局にいた時からランチに使っていた小洒落た店で、二階の窓際が江江のお気に入りの席であった。
「いらっしゃいませ 江江様」
顔馴染みの若いウェイトレスに二人は案内された。
「私はいつもので。
さあ、好きなもの食べていいわよ」
渡されたメニューに目を輝かせている陽に江江は声をかけた。
「本当にいいんすか⁈ チーフ?」
「いいわよ。あなた競馬ばっかりやって食べてないんでしょう?」
「じゃあ…俺ボンゴレビアンコ…
…の、大盛りの大盛りで!」
陽はウェイトレスの顔を見てニッと笑いかけた。
「は…はぁ…」
ウェイトレスは困ったように注目を受けた。
「あなた本当に痩せの大食いね?」
江江は呆れたように微笑んだ。
「俺はそれだけが取り柄っすから」
そうは言うものの、少ない社員の中で陽はカメラマンの仕事だけではなく、編集やスケジューリングまで行なう今や会社になくてはならない存在であり、江江も少々クセのある陽を高く買っていた。
席から窓の外を見ると、向かいのビルの壁には蔡志玲(サイ チーリン)の大きな広告看板があった。
真っ赤なドレスを着て微笑むチーリンの化粧品広告の看板だった。
「そういえば蔡志玲…最近テレビで見かけないわね…」
江江は肩ひじをテーブルにつきながらボソッと呟いた。
「なんでも次の映画出演のために充電中だって事務所は発表してるみたいすよ」
「へぇ…あなた芸能担当でもないのに詳しいのね?」
「だって俺、蔡志玲の大ファンですもん。志玲は綺麗だけじゃなく少女のように純真無垢なところと、艶のある大人の女性が共存するところが男心をくすぐるんすよね~」
「なるほどね…
確かに私も蔡志玲の持っている知性と教養とその美しさは世界レベルだと思う…
彼女は台湾の誇りよね」
「志玲と結婚が噂されているジュリーチェン、ほんと羨ましいっすよ。
俺も出来ることなら志玲と付き合いたいっす」
「あら?ずいぶん高望みをするのね?蔡志玲と釣り合う男性になりたいのなら、まずそのボサボサの頭とシワくちゃのシャツを何とかしないとね」
「そうっすよね~」
陽は頭を掻いた。
江江は陽と別れた後、台北の街を一人歩いた。
そしてある場所で足を止めた。
そこは台湾のランドマークタワー
台北101が間近に見える台北のビジネス街にある
地上30階建ての高層ビルの前である。
天空にそびえる巨大な楼閣のように台北東海公司の本社はそこにあった。
さながら風車と対峙するドンキホーテのように江江はそれを見上げた…
唯は昨夜、楽しい時間を過ごせたようでチーリンと布団を並べてぐっすり眠った。
諒太にとってもチーリンにとっても唯と過ごせた一夜は忘れられないものとなった。
唯が諒太の家に泊まった日から2日後、竜男は那覇から戻った。
しかし、期待は大きく裏切られる結果となった。 まず、収賄などの汚職事件というものは警察がしっかりとした証拠固めをした上で地検に送られる。
竜男はかつての県警の後輩と地検を訪れたが、反応は芳しいものではなかった。地検特捜部という組織は自らの信用を落としかねない事柄を嫌う。
つまり、空振りに終わりそうな案件は最初から扱わないという体質なのだ。竜男が示した写真には興味を持ったものの、ユンという人物が台北東海公司の人間であるという確証がない。よしんばそうだとしても日本の捜査権が台湾に及ぶことはなく、国際刑事警察機構(インターポール)に捜査依頼するにしても写真一枚では証拠が薄すぎた。
宜保の通帳に記載された500万という大金であるが、宜保に人から借用したのだとシラを切られればそれ以上追求することは困難であり、確たる証拠がない限りは特捜部が動くことは難しいという判断であった。
もう一つは写真の入手経路についても指摘された。竜男はまさか宜保の家に忍びこんだとは口が裂けても言えず口を濁した。
尚且つ宜保は波平が消息を絶った日、美波間村役場に出庁しており、宜保自身が那覇で波平の失踪に関与することは不可能であり、また間接的に関与をしていたとしても、これだけの内容で立件するには程遠いことであった。
結果、竜男の告発は検察預かりという曖昧な処断が下された。
竜男に一縷の望みを託していた開発計画反対派の島民はがっくりと肩を落とした。
その後、村議会ではリゾートホテル開発に関して決議がとられ、多数決の結果、僅かに賛成派が過半数を上回り議案は正式に可決された。
宜保の水面下での根回しが効果をあげた結果になった形となった訳だ。
そして、その日のうちに村長代理の宜保副村長によって認可のサインがされた。もはや島は後戻りが出来ない状況となったのである。
ー台北東海公司社長室ー
尹(ユン)リゾート開発担当部長は
社長の大きなデスクを挟んで直立不動で呂威と向き合っている。
「どうだね?尹部長、私の指示した通りにしてみたら簡単に事が運んだだろう?」
呂威は本革張りの高級チェアーに踏ん反りニヤリと笑った。
「ハッ!社長の御炯眼には畏れいるばかりです」
ようやく美波間島のリゾートホテル開発の工事認可がおりたことでユン部長は首の皮一枚繋がった形だ。
「宜保とかいう男、これからも使えそうなのかね?」
「はい。宜保は現在妻との離婚調停中ということもあり、多額の金が必要だという情報を掴んでおります。
今後も金次第でいかなる条件ものむものかと…」
「よろしい。来年の夏までには何としても美波間島に我が社のホテルを完成させるのだ。 金はいくらかかっても構わん。
考えても見たまえ…傘下の子会社に高速フェリーを建造させて新たに航路を設ければ島までここから2時間もかかるまい。
そうすれば美しいリゾート地に台湾の金持ちどもがどっと押し寄せるようになる。 それが全て我が社の利益になるのだ。 同時に島の土地を買い占め別荘地を造成して販売すれば莫大な利益をもたらすことになるぞ。
フハハハハ!」
呂威は狐のような釣り上がった目を更に細くし高らかに笑った。
社長室を退室したユン部長は呂威社長の方法を選ばない強引なやり方と底の知れない強欲さに背筋を凍らせた。 ユンは元々呂威の子飼いの部下ではない。台北市で中堅の不動産デベロッパー会社の社長をしていたのだが、数年前に呂威の台北東海公司に会社を買収され現在の部長職に留まっているのだ。
ユンは呂威の前に出ると体が固まってしまう。あの狐のようなギラギラした目で見られると時に恐怖すら感じることがある。 呂威に命じられたプロジェクトに瑕疵が生じることなどあってはならないことで、失敗すれば身の上にどんな事が起こるかわかったものではないのである。
ユンは大きなため息をつくと背中を丸めて廊下を歩き出した。
「上海を呼び出してくれ」
社長室の呂威は電話の内線ボタンを押すと隣室にいる秘書に命じた。
呂威が上海と呼ぶのは台北東海公司に大口の融資を行なっている上海に本社がある中国でも屈指の大企業のことである。
暫くして電話が繋がった。
「どうも社長、呂です。先般よりお話ししている日本の美波間島リゾートホテル開発計画の件、申請が通りました。これによって建設に向けて工事に移れます。つきましては兼ねてからお願いしている追加融資の件お願いしますよ社長。
何しろ僕とあなたは一蓮托生なんですからねぇ…
ーー
ーー
はい。それではよろしく」
呂威は通話が切れると勢いよく受話器を置いた。
「ケッ!…苦労知らずのボンボンの若造が!」
呂威は誰も居ない社長室で悪態をついた。
多くの台湾製のスクーターや日本製のカブが行き交う雑踏の中にそのビルはあった。通りには道にはみ出すように様々な看板が突出している。路上ではランニングシャツの親父が鼻歌を歌いながら屋台で焼き鳥を売っている。 すえた臭いが鼻をつくこの場所であるが、誰でも一週間もいればこの臭いに慣れてしまうだろう。
ここは台北市の中心地から少し郊外にある築20年を超える雑居ビルである。3階には玉山通信 (ギョクザンツウシン)という社員数10名の小さなローカル通信社が入っている。
江江は社内でキャップと呼ばれる局の責任者である徐重林と顔を突き合わせて議論を交わしていた。
江江はかつて台湾随一のキー局に所属していたやり手のキャリアウーマンであった。見た目は気が強そうで近寄り難い雰囲気だが、付き合ってみると面倒見の良い女性である。
キー局に居た頃は夕方のニュースを担当する人気キャスターで、ズバリとものを語る歯に絹着せぬ言動はお茶の間から圧倒的な支持を得ていた。
今年50歳でまだ働き盛りの江江が今何故こんな小さなローカル局にいるのか…
それには理由があった。
正義感が強く妥協というものを知らない猪突猛進型の性格の江江はかつてキー局にいたとき、ある事件のニュースの一件で社内で上層部と激しく対立したことがあった。
それは数年前のこと、一人の女性が23歳という若さで急死した。
死因は急性心不全。
これだけなら何もニュースにはならない。
しかし、女性の遺族は死因に納得出来なかった。
女性には持病もなく、学生の頃はバスケットボールの大会で優勝するほどの体力があり、健康に関しては全く問題がなかったからだ。
遺族はしかるべき公共機関に不服を申し立てた。
だが、医師が作成した死亡診断書には間違いはないとして相手にもされなかった。 その後、遺族はマスコミを頼った。女性の死には問題が隠れているということを訴え出たのだ。
女性が働いていた会社は
「台湾通電」という台湾でも大手の広告代理店であった。
女性が死亡する一年前に台北東海公司に買収され傘下に入った企業である。会社は買収されてからというもの、徹底的なリストラが敢行され、少なくなった人員でいままでと同じ仕事量をこなさなければならない状況が発生し、結果、残った社員にしわよせがきた。若い彼女は不満を口にすることもなく上司の命令には従順に従った。しかし、仕事の過酷さは尋常ではなく朝の5時から深夜2時までの常軌を逸した長時間の労働時間に加え、休暇などニヶ月に一日あればいいほうで、会社に泊まりこむ事もざらであった。家にいるときも何かあれば上司から電話が入るという生活で女性は心身ともに衰弱し、ついには帰らぬ人となってしまったのだ。 田舎で暮らしていた女性の両親は娘を救えなかったことを酷く悔やんだ。
マスコミ各社は女性の両親の訴えを取材した。しかし、新聞、テレビ、週刊誌に至るまでその訴えを公にとりあげることはなかった。
そこにはマスコミ業界の闇が広がっていたのだ。 女性の働いていた台湾通電は大手テレビ局に入り、番組制作を取り仕切っている重要なピースだったからだ。 そしてもう一つの大きな問題は台湾通電の親会社は台北東海公司であったからだ。
台北東海公司は全てのテレビ局と新聞社にパイプを持ち、各社の最大のスポンサー企業であった。
遺族の悲痛な訴えはそうしたマスコミ側のエゴに黙殺されてしまった。
江江はこのような腐ったマスコミの体質が許せなかった。
女性の死の真相を自分の番組内で報道するよう上層部に直訴した。
しかし、彼女の意見具申は通ることはなかった。 江江のテレビ局も台北東海公司が大口のスポンサーであったからだ。 結局テレビ局サイドはスポンサーに頭が上がらないことでいわゆる「忖度」が生じた。
江江は報道に携わる者とは真実を伝えることが使命であるという強い信念を持っていた。
江江はキャスターを務める自分の夕方のニュースがあと1分で終了するというときプログラムになかったことをカメラに向かって独自の判断で語り出した。 企業名だけは伏せたが、厳しい労働環境に置かれ、痛ましい死を遂げた女性のことを視聴者に向け問題提起した。生放送中でしかも番組終了時間直前であったため、江江の突然の行動に面食らったプロデューサーはCMを挟むことすら出来なかった。
このことは局内で大問題となった。
早速、台湾通電からクレームが入り、重役室に呼び出された番組プロデューサーと江江は居並ぶ重役たちから激しく叱責された。
しかし、江江は自分の持論を曲げることはしなかった。そればかりか局の姿勢を批判した。
結果、江江を監督出来なかった番組プロデューサーは地方局に左遷、江江は番組を降ろされ事務職に異動させられた。江江はそれを潔しとせず局を退社した。視聴者の間では江江の突然の退社に様々な憶測が飛んだが、局は江江の体調不良が退社原因だと発表し、時間が経つにつれこの話題は徐々に忘れさられていった。
江江はその後、真実の報道を目指すことを社是とした今の会社「 玉山通信」に移ったのである。玉山通信は創設間もない小さなローカル通信社である。
元々大手新聞社でジャーナリストとして働いていた徐重林が自らの出版本の収益を元手に創設した会社で現在、社の責任者としてキャップを務める彼も社の都合で偏向報道や捏造記事がまかり通る新聞業界に嫌気がさして野に下ったのであった。
それから徐は志を同じくする同志を集め、会社を立ち上げたのだった。しかし、資金が乏しいため紙媒体での発刊は出来ず、主にネット上にニュースを掲載するという方法で情報を伝えた。ここ最近マスコミの報道に疑問を持ち始める人も増え始め、本当のことを知りたいと思う購買層から支持を受けていた。スポンサーはなく、こういう購買層からの有料配信の収益が柱のため、使える資金は限られていた。
しかし、逆にスポンサーにおもねることもないため自由な報道が可能なのだ。
これを面白く思わない輩から社に怪文書や脅迫状が送られることもしばしばあった。
キャップの徐は中年肥りした大きな腹にサスペンダーがトレードマークの男で、フリーになっていた江江に声をかけ、チーフ職として玉山通信に迎え入れたのも彼であった。
今、江江と徐は事務所で議論を交わしている。
再びあの忌まわしいマスコミ業界の闇が覆いかけていた…
最近、台湾のみならず各地でスマートフォンが爆発炎上する事故が相次いでいた。 数週間前にはその事が原因で高雄市に住んでいる男性の家が全焼するという火事が発生した。
幸い男性は逃げ出し人的被害はなかったが、一歩間違えれば大変な事故になっていたはずだ。爆発炎上したスマホのメーカーはチャオミーという中国企業のメーカーで、米国、韓国のメーカーに次いで世界3位のシェアを誇るスマホメーカーであり、安価な販売価格をウリにしてここ数年急成長している電子機器メーカーである。
そのチャオミーに発火の原因とされるスマホの電池を供給しているのが台北東海公司の子会社の
「陸進」という電子機器メーカーだったのである。
さらには台北東海公司はチャオミーの大口の株主であった。
このことを重く見た徐は江江に調査を命じていた。
「キャップ、だめです…また取材拒否です…」
江江は徐に報告した。
「そうか…またか…」
徐は腕を組んでため息混じりに答えた。
江江は発火が起きたスマホ利用者の取材をしていた。当初は事故に憤り江江の取材に協力的であった彼らであったが、ここ数日の間に江江に会うことを拒絶し、一切口を閉ざしてしまったのだ。 何らかの力が働いたことは疑いようがなかった。
「おそらく被害者にはこれ以上騒ぎを大きくしない事を条件に多額の示談金が支払われたのだろうよ…」
徐は窓に架かるブラインドを指で広げ外の景色を見ながら独り言のように呟いた。
「はい…私もそう思います」
江江は悔しさのあまり拳を握った。
「この案件は被害者側から追うルートは絶たれてしまったが、必ず突破口はあるはずだ。私は諦めない…
…
台北東海公司…我々にとって高い壁だな」
徐は振り返り江江の顔を見ながら言った。
「はい」
顔を合わせた二人の目は怒りに燃えていた。
電池製造メーカー陸進の公式発表によると発火は「使用者が適切な方法での充電を怠ったため」と決して自社の過失を認めようとはしなかった。第三者による調査機関による調査においても政府検査機関に提出されている電池の性能データは十分水準に達していてメーカーサイドの問題はないとされた。
マスコミ各社は電池に問題なしの報道のみを連日流した。
「行くわよ!」
江江はほとんど来客が来ることなどない会社の応接ソファーで寝そべりながら愛用のカメラをいじる
陽 代沫に声をかけた。
「どこ行くんすかチーフ?」
陽は目だけ江江に向けて尋ねた。
「腹ごしらえよ」
「俺、昨日スッちゃってスッカラカンなんすよ」
陽の傍らにはいくつも赤ペンが引かれた競馬新聞が置いてあった。
「全くあなたはしょうがないわね…
奢ってあげるからついてきなさい!」
「やりぃー!」
陽は喜んで立ち上がった。
陽代沫は玉山通信専属の報道カメラマンで、ムービー、一眼レフ問わずカメラの扱いについてはこの業界で彼の右に出るものはいないほどの腕の持主であった。 彼もまた、勤務していた新聞社と大喧嘩をしてドロップアウトした後、フラフラしていたのを徐に拾われた人間である。
35歳の独身で競馬が命。宵越しの金は持たないというのが彼の信条だった。
江江は陽を連れ出し、行きつけのイタリアンレストランに向かった。
このレストランは江江が大手キー局にいた時からランチに使っていた小洒落た店で、二階の窓際が江江のお気に入りの席であった。
「いらっしゃいませ 江江様」
顔馴染みの若いウェイトレスに二人は案内された。
「私はいつもので。
さあ、好きなもの食べていいわよ」
渡されたメニューに目を輝かせている陽に江江は声をかけた。
「本当にいいんすか⁈ チーフ?」
「いいわよ。あなた競馬ばっかりやって食べてないんでしょう?」
「じゃあ…俺ボンゴレビアンコ…
…の、大盛りの大盛りで!」
陽はウェイトレスの顔を見てニッと笑いかけた。
「は…はぁ…」
ウェイトレスは困ったように注目を受けた。
「あなた本当に痩せの大食いね?」
江江は呆れたように微笑んだ。
「俺はそれだけが取り柄っすから」
そうは言うものの、少ない社員の中で陽はカメラマンの仕事だけではなく、編集やスケジューリングまで行なう今や会社になくてはならない存在であり、江江も少々クセのある陽を高く買っていた。
席から窓の外を見ると、向かいのビルの壁には蔡志玲(サイ チーリン)の大きな広告看板があった。
真っ赤なドレスを着て微笑むチーリンの化粧品広告の看板だった。
「そういえば蔡志玲…最近テレビで見かけないわね…」
江江は肩ひじをテーブルにつきながらボソッと呟いた。
「なんでも次の映画出演のために充電中だって事務所は発表してるみたいすよ」
「へぇ…あなた芸能担当でもないのに詳しいのね?」
「だって俺、蔡志玲の大ファンですもん。志玲は綺麗だけじゃなく少女のように純真無垢なところと、艶のある大人の女性が共存するところが男心をくすぐるんすよね~」
「なるほどね…
確かに私も蔡志玲の持っている知性と教養とその美しさは世界レベルだと思う…
彼女は台湾の誇りよね」
「志玲と結婚が噂されているジュリーチェン、ほんと羨ましいっすよ。
俺も出来ることなら志玲と付き合いたいっす」
「あら?ずいぶん高望みをするのね?蔡志玲と釣り合う男性になりたいのなら、まずそのボサボサの頭とシワくちゃのシャツを何とかしないとね」
「そうっすよね~」
陽は頭を掻いた。
江江は陽と別れた後、台北の街を一人歩いた。
そしてある場所で足を止めた。
そこは台湾のランドマークタワー
台北101が間近に見える台北のビジネス街にある
地上30階建ての高層ビルの前である。
天空にそびえる巨大な楼閣のように台北東海公司の本社はそこにあった。
さながら風車と対峙するドンキホーテのように江江はそれを見上げた…
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