21 / 26
第21報『看板と漆』
しおりを挟む房田さんは仕事柄、帰りがどうしても深夜遅い時刻になってしまう。しかも時間帯すらまちまちで、最大2時間くらいラグがあるのはザラだ。
しかしそれにも関わらず、彼が車で帰路を走る際 自宅近所の橋の近くに、いつも立っている奇妙な親子連れの姿があった。
一年中、雨の日も風の日も目に留まる。小学生くらいの女の子を連れた男親。しかも何だか、燕尾服のような不自然な正装をしているように見える。
――どういう人達なんだろう。
――いや、いくら何でもこりゃ有り得ん。
――もしか、この世の者ではないのでは・・・
いつもそんな事を考え、同時に少し怖気のようなものを感じていた。
ある日、遂に恐怖より好奇心の方が勝った。
帰宅中、橋から少し離れたところに車を止め、いつもの親子連れの近くまで歩いて行ったのである。
すると、
「えっ。 なぁんだ・・・」
そこには、「ここから〇〇m先 焼き芋あります」と書かれた古い看板と、それに寄り添うように伸びた一本の漆の木があった。
この二つの物体を、親と子に錯覚していたんだな、と房田さんは直感した。
よくある見間違いってヤツか・・・ホッと一息し、そのまま車に乗って帰宅した。
翌日の帰り道、いつもの親子連れが立っている場所を凝視してみたが、そこには看板と漆の姿しか見受けられなかった。
――というか。何で今まで、看板と漆なんぞが似ても似つかない親子連れに見えていたのだろう?ということに初めて気づいた。
そして何で昨日の自分は、この二つを目にした瞬間に「ああ。よくある見間違いね」と安易に合点したのだろうか――?
今以てまったくわけがわからず、深く考えようとすれば混乱してくるという。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
真事の怪談~寸志小品七連~
松岡真事
ホラー
どうも、松岡真事が失礼致します。
皆様のおかげで完結しました百物語『妖魅砂時計』―― その背景には、SNSで知り合いました多くのフォロワーの方々のご支援も強い基盤となっておりました。
そんなSNS上において、『おまけ怪談』と称して画像ファイルのかたちで一般公開した〝超短編の〟怪談群がございます。決して数も多くはありませんが、このたび一つにまとめ、アルファポリス様にて公開させて頂くことを決意しました。
多少細部に手を入れておりますが、話の骨子は変わりません。 ・・・アルファポリスという媒体のみで私の作品に触れられた方には初見となることでしょう。百物語終了以降、嬉しいご意見を頂いたり、熱心に何度も閲覧されている読者様の存在を知ったりして、どうにか早いご恩返しをしたいと考えた次第です。
また、SNS上で既にお話をご覧になった方々の為にも、新しい話を4話、書き下ろさせて頂きました。第1話、第3話、第5話、第7話がそれに当たります。他の話と釣り合いを取らせる為、800文字以下の超短編の形式をとっています。これを放出してしまうと貯金がほとんどスッカラカン(2018年11月初頭現在)になってしまいますが、また頑張って怖いお話を蒐集してカムバック致しますので、お楽しみにを。
それではサクッとお読み下さい。ゾクッときますので――
『笑う』怪談 ~真事の怪談シリーズ・番外編~
松岡真事
ホラー
「笑」をテーマに据えた怪談というのは 果たして成立するのであろうか?!
今を去ること十余年前――この難解な問いに答えるべく、松岡真事は奮闘した。メディアファクトリー刊『幽』誌の怪談文学賞に、『笑う』怪談を投稿したのである!
結果は撃沈!!松岡は意気消沈し精根尽き果て、以後、長く実話怪談の筆を折ることになってしまう・・・
そして、今・・・松岡は苦い過去を乗り越える為、笑いを携えた怪談のリライト&新作執筆に乗り出す!
名付けて『笑う』怪談!!
腹を抱えるような「笑い」、プッと吹き出すような「笑い」、ほんわか滲み出るような「笑い」、下衆すぎて思わず漏れるような「笑い」、 そして何より、「笑う」しかない 恐怖――
さまざまな『笑』が満ちた実話怪談の新世界!
煽り文句も高らかに、恐怖の世界への出囃子が鳴る――!!
実話怪談集『境界』
烏目浩輔
ホラー
ショートショートor短編の実話怪談集です。アルファポリスとエブリスタで公開しています。
基本的に一話完結で、各話に繋がりもありません。一話目から順番に読んでもらっても構いませんし、気になった話だけ読んでもらっても構いません。
お好きな読み方でご自由にお読みくださいませ。
遅筆なので毎日の更新は無理だと思います。二、三日に一話を目指してがんばります。
というか、最近は一週間〜十日ほどあいたりすることもあります。すみません……。
茨城の首切場(くびきりば)
転生新語
ホラー
へー、ご当地の怪談を取材してるの? なら、この家の近くで、そういう話があったよ。
ファミレスとかの飲食店が、必ず潰れる場所があってね。そこは首切場(くびきりば)があったんだ……
カクヨム、小説家になろうに投稿しています。
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330662331165883
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5202ij/
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる