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第09報『コプター』
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遠江さんが中学生の頃の、林間学校での出来事。
班ごとに分かれて晩ご飯のカレーを作っていた時、彼の班の一員である末木という少年がいきなり、「俺 さっきあっちで宙に浮いてる人間を見たぞ」と変なことを言い出した。
「ドラ〇もんのタ〇コプターみたいだった。何人か、地面の30センチ上くらいを、手足だらーんって感じで飛んでった。スーッと」
もとより頭のネジが2、3本取れているような子だったので、誰も相手にしなかったものの。末木はそれを不服に思ったのか、何と近くに居たキャンプ場の管理人のおじさんを捕まえて「ねぇ、いま俺、人が飛んでるのを見たんだけど」と同じ事を曰い始めたのである。
やばい。あんまり変なことを言うと叱られるかも・・・
遠江さんと班の少年達は、ハラハラしながら二人のやり取りを見守った。
「ナニ、人が宙に浮いて?」
「うん。何人かで」
「4人連れだったろう」
「あー、たぶん」
「その中の一人は、首がキリンみたく長かったか」
「そうそう。でも、残りの奴らはみんなデブ」
「そりゃそうだ。3人は向こうの池の中から見つかったからなぁ」
「裸だったかも」
「溺れた奴らはな。何せブクブクに膨れて、服がはち切れてたもの。そんなんでも、死んだらフワフワ浮くのかな。流石は幽霊だな」
どっちみち、まだこの辺りをウロウロしてるって事だ。ナンマンダブナンマンダブ・・・
おじさんはぶつぶつと呟きながら、一同の前から去って行った。
この異様なやりとりのおかげで、遠江さんの班のメンバーは、夜のテントの中で一睡も出来なくなってしまった。
グッスリ眠れていたのは、末木だけだったという。
班ごとに分かれて晩ご飯のカレーを作っていた時、彼の班の一員である末木という少年がいきなり、「俺 さっきあっちで宙に浮いてる人間を見たぞ」と変なことを言い出した。
「ドラ〇もんのタ〇コプターみたいだった。何人か、地面の30センチ上くらいを、手足だらーんって感じで飛んでった。スーッと」
もとより頭のネジが2、3本取れているような子だったので、誰も相手にしなかったものの。末木はそれを不服に思ったのか、何と近くに居たキャンプ場の管理人のおじさんを捕まえて「ねぇ、いま俺、人が飛んでるのを見たんだけど」と同じ事を曰い始めたのである。
やばい。あんまり変なことを言うと叱られるかも・・・
遠江さんと班の少年達は、ハラハラしながら二人のやり取りを見守った。
「ナニ、人が宙に浮いて?」
「うん。何人かで」
「4人連れだったろう」
「あー、たぶん」
「その中の一人は、首がキリンみたく長かったか」
「そうそう。でも、残りの奴らはみんなデブ」
「そりゃそうだ。3人は向こうの池の中から見つかったからなぁ」
「裸だったかも」
「溺れた奴らはな。何せブクブクに膨れて、服がはち切れてたもの。そんなんでも、死んだらフワフワ浮くのかな。流石は幽霊だな」
どっちみち、まだこの辺りをウロウロしてるって事だ。ナンマンダブナンマンダブ・・・
おじさんはぶつぶつと呟きながら、一同の前から去って行った。
この異様なやりとりのおかげで、遠江さんの班のメンバーは、夜のテントの中で一睡も出来なくなってしまった。
グッスリ眠れていたのは、末木だけだったという。
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