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パート8:ホープ
第161話 vsベリアル 終
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戦意を露にするイフリート達を前に、ベリアルは気分を昂らせながらどう料理してやろうかとイメージを膨らませる。体中から熱気を発し、見る見るうちに筋肉が隆起していった。
「良い事思いついたぜ、俺がリリスを犯し、その後ろからイフリートが俺を掘るってのはどうだ ?」
「相変わらず良い趣味してるぜ…見境無しかよ」
悪趣味さを隠そうともしない提案をベリアルはするが、これが初めてじゃなかったイフリートは呆れがちに言った。ベリアルの魔界での評判と言えば相手が誰であろうが平等に他者を抱き、子供に至っては四桁以上の数がいるともされてる性豪ぶりである。そして困った事にマゾ気質まで併せ持っていると来ていた。とにかく救いが無いのである。
そんな提案を無視したリリスは衝撃波を纏いながら高速で近づき、開幕から殴り倒そうとする。拳の感触からして確かに手応えはあり、ベリアルも思わず仰け反ってしまった。
「ふむ…筋が良いぞ。スピード、パワー…オルディウス程ではないが、ここまで練り上げたのか。あんなボンクラだったお前が」
増々悦びながらベリアルは分析をする。続けざまに顎に目掛けてリリスはパンチを放つが、食らいながらも余裕そうに彼女を見下ろす。お返しと言わんばかりに彼女を殴り返すが、想像以上の力でリリスは吹き飛ばされた。それでも果敢に間合いに入り、ベリアルと至近距離で殴り合い続ける。そんな最中、イフリートが後方から熱線を放った。リリスなら避けられると踏んでの行動であり、慌ててではあるがリリスは回避をする。それとは対照的にベリアルは嬉々とした態度を取り続けていた。
「ほう !」
そのまま感嘆とした声を上げ、胸にある大きな眼が光る。そしてイフリートと同様に熱線を放った。そのまま熱線同士が衝突し、激しい爆発が起きる。爆風に耐えたイフリートはすぐにベリアルの方へと突撃していく。この程度で怯んだり、ましてや死んでしまう様な奴では無い。
その時、周囲に立ち込める砂埃の中からベリアルが襲い掛かって来る。そのまま取っ組み合う形となり、頭突きを貰ったイフリートは思わず怯んだ。そして続けざまに筋肉が増大している腕によって、みぞおちへ抉り込むようなパンチを入れられてしまう。
「ぐぉあっ…‼」
イフリートが苦しんだ瞬間を見計らい、ベリアルは口を大きく開いて炎を履き出そうとする。だが、直後にリリスが顔面に蹴りを入れて彼を吹き飛ばした。
「立てる ?」
「ああ」
リリスとイフリートがやり取りをしつつ体勢を立て直す一方で、吹き飛ばされて地面に倒れていたベリアルもゆっくりと起き上る。
「成程ねえ。老いぼれだったとはいえ、親父とお袋が殺されたのも今なら納得だ…礼代わりに、俺も本気で相手してやる」
そう言うとベリアルは体に稲妻を纏い、辺りに衝撃波を放ちながら肉体を更に変化させる。膨れ上がって行く体のあちこちから溶岩が吹き出し、それらが皮膚に纏わりついて赤く輝いていた。背丈も大幅に伸び、大まかに見積もっても二人の倍以上はあった。
「怖気づいたか ?」
「いや、ワクワクしてきた」
イフリートは尋ねるが、ニヤリと笑ってからリリスは返事をする。当然、そんな二人の出方を待つつもりは無く、ベリアルは背中から溶岩で形成された大蛇たちを生やした。数百はいるかもしれないその大蛇たちはうねうねと動き、イフリート達の方を見据えている。
「やれ」
そしてベリアルの合図と共に一斉に伸び、彼らへと牙を剝いた。どうせそんな事だろうと思っていたリリスは全身に力を入れ、大きな衝撃と共に駆け出す。そして目にも止まらない速度で大蛇たちを切断していった。ほぼ同時かと見まがう程の速さで大蛇たちが粉砕された後、両腕や顔に火傷や出血をした状態のリリスが現れる。
「なんだと…⁉」
ベリアルがそんな彼女に気を取られていた時、足元から爆発する様に噴き出した炎の柱によってベリアルは空中へ吹き飛ばされた。そして宙に打ち上げられた彼にイフリートは狙いを定め、炎で形成された腕を無数に作り出す。それを伸ばしてベリアルの体を掴んでから、勢いを付けて地面に叩きつけた。さらに、無理矢理立ち上がらせてから動けないように拘束をする。
「かましてやれ !」
イフリートが指示を出すとリリスも笑ってから拳を握る。右腕の筋肉が大きく膨れ、稲妻が走り出した。その拳と共にリリスは駆け出し、振りかぶりながらベリアルへ叩きつけようとする。
「クソが !」
一方で彼女が殴りかかって来る直前にベリアルは叫び、イフリートによる拘束を力づくで解いてから拳を握ってリリスを迎え撃つ。互いの拳がぶつかり合った瞬間、身を焦がす様な熱さにリリスは怯みかける。だけど引き下がるという事はせず、そのまま黒焦げになった腕でベリアルの拳を砕いた。
「ぐああっ‼」
ベリアルは怯み、これを好機と見たリリスは畳みかける。どれだけ肉体が損傷しても構うものか。そう覚悟を決めて拳による連撃を浴びせ続けていき、最後に貫手をベリアルの腹に突き刺した。そして血が溢れている裂け目に手を突っ込み、ベリアルによって溶岩や噛みつきで抵抗されながらも無理やり傷口を引き裂いてコアを露出させる。
「こ~んな所に隠しちゃってさあ !」
そう言いながら無理矢理引き千切り、手にしたベリアルのコアをイフリートの方にぶん投げる。
「へへ…流石に二人掛かりはマズかった…か」
そう呟きながらも、どこか満足げなベリアルを余所にイフリートはコアを砕いて消滅させる。間もなくベリアルも倒れ、静かに肉体が消えていった。
「…やった~ ! 勝った~ !」
人間態に戻ってから飛び跳ねて喜ぶリリスだが、最早消し炭になっているのではないかという程にボロボロな腕や、焼け爛れいる顔が見てて痛々しかった。
「姉貴とは相性悪かったってのに、突っ込んで行くからボロボロじゃねえかよ…」
「アンタの方が火力高いんだから、なるべく体力は温存しといた方が良いっしょ。まだまだ後が控えてるし、自分でケリ着けたくてやったんだから後悔ないよ。それに、これぐらいならちょっと何か食えば…おっと」
体をいたわるイフリートにリリスが自分なりの考えあっての事だと釈明していた最中、鳴き声を発しながらデーモン達がシェルターの方からこちらへ向かって来る。
「ほら、餌が来た」
「だな」
絶好のタイミングだと思った二人は顔を見合わせ、少しだけ笑みを浮かべてから再び雑魚たちの方をへ向かっていく。ひとまず腹が減って仕方が無かった。
――――そんな一連の経緯を、合流したムラセ達にリリスは説明した。
「って事で、腹ごしらえしながらこっちまで来たってわけ…やっぱインプはだめだ。筋っぽい」
まだ足りないらしく、どこからか取り出したデーモンの四肢に齧りついてからリリスは言った。そして自分の手を眺めたり、顔を触って具合を確かめだす。
「う~ん、こりゃ暫く傷が残るね。せっかくの綺麗なお肌と美貌が…あーあ、ったく」
「性格で全部台無しだろうけどな」
ショックを受けているかのようにわざとらしく落ち込むリリスに、イフリートは余計な一言を添える。彼もまた、どのデーモンから調達したのか分からない腸やら臓物を貪っていた。
「まあ、とりあえず無事なら良かったです」
何だかんだで元気そうな二人を見たムラセは胸を撫で下ろす。ファウストもまた、イフリートへ裸絞を行うリリスと目を合わせ、満足そうにしている彼女を微笑ましそうに見ていた。
「お前らもな。ところでベクターはどこだ ?」
「さあな。もしかすれば先に―――」
首を絞められながらイフリートが尋ねると、ザガンは彼の居所について憶測を伝えようとした。その時、地面に震動が伝わると同時に強烈な殺気が一同を襲う。
「今のって…」
冷や汗をかきながらムラセが呟いた。
「間違いない。オルディウスだ… ! まさかあの男、一人で戦ってるのか…⁉」
ザガンはすぐさま誰の仕業なのかを言い当て、同時にベクターが置かれている状況を悟って血相を変える。そして殺気がどこから放たれたのを感覚で理解したのか、セフィロトを静かに見上げた。
「良い事思いついたぜ、俺がリリスを犯し、その後ろからイフリートが俺を掘るってのはどうだ ?」
「相変わらず良い趣味してるぜ…見境無しかよ」
悪趣味さを隠そうともしない提案をベリアルはするが、これが初めてじゃなかったイフリートは呆れがちに言った。ベリアルの魔界での評判と言えば相手が誰であろうが平等に他者を抱き、子供に至っては四桁以上の数がいるともされてる性豪ぶりである。そして困った事にマゾ気質まで併せ持っていると来ていた。とにかく救いが無いのである。
そんな提案を無視したリリスは衝撃波を纏いながら高速で近づき、開幕から殴り倒そうとする。拳の感触からして確かに手応えはあり、ベリアルも思わず仰け反ってしまった。
「ふむ…筋が良いぞ。スピード、パワー…オルディウス程ではないが、ここまで練り上げたのか。あんなボンクラだったお前が」
増々悦びながらベリアルは分析をする。続けざまに顎に目掛けてリリスはパンチを放つが、食らいながらも余裕そうに彼女を見下ろす。お返しと言わんばかりに彼女を殴り返すが、想像以上の力でリリスは吹き飛ばされた。それでも果敢に間合いに入り、ベリアルと至近距離で殴り合い続ける。そんな最中、イフリートが後方から熱線を放った。リリスなら避けられると踏んでの行動であり、慌ててではあるがリリスは回避をする。それとは対照的にベリアルは嬉々とした態度を取り続けていた。
「ほう !」
そのまま感嘆とした声を上げ、胸にある大きな眼が光る。そしてイフリートと同様に熱線を放った。そのまま熱線同士が衝突し、激しい爆発が起きる。爆風に耐えたイフリートはすぐにベリアルの方へと突撃していく。この程度で怯んだり、ましてや死んでしまう様な奴では無い。
その時、周囲に立ち込める砂埃の中からベリアルが襲い掛かって来る。そのまま取っ組み合う形となり、頭突きを貰ったイフリートは思わず怯んだ。そして続けざまに筋肉が増大している腕によって、みぞおちへ抉り込むようなパンチを入れられてしまう。
「ぐぉあっ…‼」
イフリートが苦しんだ瞬間を見計らい、ベリアルは口を大きく開いて炎を履き出そうとする。だが、直後にリリスが顔面に蹴りを入れて彼を吹き飛ばした。
「立てる ?」
「ああ」
リリスとイフリートがやり取りをしつつ体勢を立て直す一方で、吹き飛ばされて地面に倒れていたベリアルもゆっくりと起き上る。
「成程ねえ。老いぼれだったとはいえ、親父とお袋が殺されたのも今なら納得だ…礼代わりに、俺も本気で相手してやる」
そう言うとベリアルは体に稲妻を纏い、辺りに衝撃波を放ちながら肉体を更に変化させる。膨れ上がって行く体のあちこちから溶岩が吹き出し、それらが皮膚に纏わりついて赤く輝いていた。背丈も大幅に伸び、大まかに見積もっても二人の倍以上はあった。
「怖気づいたか ?」
「いや、ワクワクしてきた」
イフリートは尋ねるが、ニヤリと笑ってからリリスは返事をする。当然、そんな二人の出方を待つつもりは無く、ベリアルは背中から溶岩で形成された大蛇たちを生やした。数百はいるかもしれないその大蛇たちはうねうねと動き、イフリート達の方を見据えている。
「やれ」
そしてベリアルの合図と共に一斉に伸び、彼らへと牙を剝いた。どうせそんな事だろうと思っていたリリスは全身に力を入れ、大きな衝撃と共に駆け出す。そして目にも止まらない速度で大蛇たちを切断していった。ほぼ同時かと見まがう程の速さで大蛇たちが粉砕された後、両腕や顔に火傷や出血をした状態のリリスが現れる。
「なんだと…⁉」
ベリアルがそんな彼女に気を取られていた時、足元から爆発する様に噴き出した炎の柱によってベリアルは空中へ吹き飛ばされた。そして宙に打ち上げられた彼にイフリートは狙いを定め、炎で形成された腕を無数に作り出す。それを伸ばしてベリアルの体を掴んでから、勢いを付けて地面に叩きつけた。さらに、無理矢理立ち上がらせてから動けないように拘束をする。
「かましてやれ !」
イフリートが指示を出すとリリスも笑ってから拳を握る。右腕の筋肉が大きく膨れ、稲妻が走り出した。その拳と共にリリスは駆け出し、振りかぶりながらベリアルへ叩きつけようとする。
「クソが !」
一方で彼女が殴りかかって来る直前にベリアルは叫び、イフリートによる拘束を力づくで解いてから拳を握ってリリスを迎え撃つ。互いの拳がぶつかり合った瞬間、身を焦がす様な熱さにリリスは怯みかける。だけど引き下がるという事はせず、そのまま黒焦げになった腕でベリアルの拳を砕いた。
「ぐああっ‼」
ベリアルは怯み、これを好機と見たリリスは畳みかける。どれだけ肉体が損傷しても構うものか。そう覚悟を決めて拳による連撃を浴びせ続けていき、最後に貫手をベリアルの腹に突き刺した。そして血が溢れている裂け目に手を突っ込み、ベリアルによって溶岩や噛みつきで抵抗されながらも無理やり傷口を引き裂いてコアを露出させる。
「こ~んな所に隠しちゃってさあ !」
そう言いながら無理矢理引き千切り、手にしたベリアルのコアをイフリートの方にぶん投げる。
「へへ…流石に二人掛かりはマズかった…か」
そう呟きながらも、どこか満足げなベリアルを余所にイフリートはコアを砕いて消滅させる。間もなくベリアルも倒れ、静かに肉体が消えていった。
「…やった~ ! 勝った~ !」
人間態に戻ってから飛び跳ねて喜ぶリリスだが、最早消し炭になっているのではないかという程にボロボロな腕や、焼け爛れいる顔が見てて痛々しかった。
「姉貴とは相性悪かったってのに、突っ込んで行くからボロボロじゃねえかよ…」
「アンタの方が火力高いんだから、なるべく体力は温存しといた方が良いっしょ。まだまだ後が控えてるし、自分でケリ着けたくてやったんだから後悔ないよ。それに、これぐらいならちょっと何か食えば…おっと」
体をいたわるイフリートにリリスが自分なりの考えあっての事だと釈明していた最中、鳴き声を発しながらデーモン達がシェルターの方からこちらへ向かって来る。
「ほら、餌が来た」
「だな」
絶好のタイミングだと思った二人は顔を見合わせ、少しだけ笑みを浮かべてから再び雑魚たちの方をへ向かっていく。ひとまず腹が減って仕方が無かった。
――――そんな一連の経緯を、合流したムラセ達にリリスは説明した。
「って事で、腹ごしらえしながらこっちまで来たってわけ…やっぱインプはだめだ。筋っぽい」
まだ足りないらしく、どこからか取り出したデーモンの四肢に齧りついてからリリスは言った。そして自分の手を眺めたり、顔を触って具合を確かめだす。
「う~ん、こりゃ暫く傷が残るね。せっかくの綺麗なお肌と美貌が…あーあ、ったく」
「性格で全部台無しだろうけどな」
ショックを受けているかのようにわざとらしく落ち込むリリスに、イフリートは余計な一言を添える。彼もまた、どのデーモンから調達したのか分からない腸やら臓物を貪っていた。
「まあ、とりあえず無事なら良かったです」
何だかんだで元気そうな二人を見たムラセは胸を撫で下ろす。ファウストもまた、イフリートへ裸絞を行うリリスと目を合わせ、満足そうにしている彼女を微笑ましそうに見ていた。
「お前らもな。ところでベクターはどこだ ?」
「さあな。もしかすれば先に―――」
首を絞められながらイフリートが尋ねると、ザガンは彼の居所について憶測を伝えようとした。その時、地面に震動が伝わると同時に強烈な殺気が一同を襲う。
「今のって…」
冷や汗をかきながらムラセが呟いた。
「間違いない。オルディウスだ… ! まさかあの男、一人で戦ってるのか…⁉」
ザガンはすぐさま誰の仕業なのかを言い当て、同時にベクターが置かれている状況を悟って血相を変える。そして殺気がどこから放たれたのを感覚で理解したのか、セフィロトを静かに見上げた。
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