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パート7:罪
第139話 父の因果
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「待て。そうだとしても年齢がおかしい。ベクターが百年以上前に生まれたのなら、どう見積もってもジジイの筈だろ。それに自分の子供だって言うなら、なぜあんたがジードとやらを殺す羽目になった ? 魔具だってそうだ。なぜアンタが使える ?」
やはり腑に落ちない点が多数あるのか、イフリートはすかさず反論を始めた。結論だけを話してしまってはそうなるのも無理はないと、ファウストは頷きながら聞いていた。
「老化が進まなかったのは恐らく肉体を冷凍したからだろう。私がそうしたのだから間違いない。それに、デーモンは人間に比べて遥かに老化の進行が遅い。それも理由かもしれん」
割って入る様にザガンが理由を説明する。
「思ったんだけど、あんたがファウストさんに協力してくれてる理由って何 ? そもそもオルディウス側でしょ」
「過去形に過ぎん。もうあいつのために動いてやる義理も無い。それならせめて奴が吠え面をかく姿が見たかった。何か問題があるか ?」
そんな彼女の事がリリスはどうも疑わしいのか、食って掛かる様に質問をするがザガンも隠し事などしてないかのように開き直った態度を見せる。
「魔具については…オルディウスの指示を聞いた上で作ったからだ。あの子と血縁関係にある者は使用が許可されるようになっている。だが、想像以上に強い力だ…この体では暴走を抑えるので手一杯でな」
疲労を紛らわせるために一度だけ深呼吸をファウストはすると、魔具を使える理由やそれによって体に起きている異常について語る。やはり想像以上に負担がかかっているらしい。
「…ジードさんを殺したのは何で ? 」
「オルディウスの配下にあの子の存在がバレた。本当は匿うなりして穏便に済ませるつもりだったが、奴が放った刺客に先を越されてしまった事で焦った私は、オルディウスの手に渡るくらいならいっその事と…そう思ったんだ。そして失敗した上に、私の体も想像以上にボロボロになってしまった」
「でもベクターさんは生きてる」
「ああ、結果としては良かったのかもしれない。あの襲撃の後、私が刺客達を始末し、目撃者がい無くなったせいかベクターは死亡したとされ、オルディウスに知られずに済んでいた…最近まではな。どうやらオルディウスが現世に潜り込ませている配下のデーモンがベクターの正体に勘付いたらしい」
ムラセの質問に対し、ファウストはジードが死んだ日に何が起きたのかをかいつまんで説明する。結果として今日までのベクターの生存に繋がったとは言うが、やはり複雑な心境を抱いているのかファウストは暗い表情のまま窓の外を見る。その時、激しい音を立てながら兵士が部屋に駆け込んできた。
「侵入者が現れました ! 赤髪の男だそうです。力づくで壁を破壊して、現在はシェルターの中で暴れてます。ああそうだ、あなた方の名前を呼んでました」
報告を聞くや否や、ムラセ達は再び全員で顔を見合わせる。
「三時間も経ってないのに…リリスさん、さっき薬盛ったって…」
「睡眠薬を百二十錠。あいつの分のカレーにぶち込んで溶かしたよ…ホント何なのアイツ」
どう考えてもしばらくは起き上がらない。さらに言うなら死ぬ事も想定した上での方法だったのにもかかわらず、ベクターが平気で動き始めている事を知った一同は身震いをした。彼が人間では無い事を理解するには、あまりにも十分な判断材料であった。
――――その少し前、シェルターの前ではベクターが見張りの兵士達にごね続けていた。
「ムラセって奴を出してくれ。ここに来ただろ ? 何なら力づくで入って確かめても良いんだぞ」
兵士達は銃を構えるが、ベクターにとってそんなものは何の脅しにもならない。尊大な態度で圧力をかける。
「とにかく、知らねえもんは知らねえ ! さっさと立ち去れ。さもないと…」
そんな彼に対し、命知らずな見張り達は銃床でベクターの胸をどつく。流石にカチンと来たのか、その銃を持ってる腕をベクターはすぐさまレクイエムで掴んで睨みつけた。
「こっちが下手に出りゃいい気になりやがって…」
そのまま頭突きをかまして見張りの顔面を陥没させると、倒れた見張りを足蹴にしてからシェルターの壁に近づく。そして”爆噴壊突”の形態へとレクエイムを変形させた。そのまま躊躇いなく外壁を破壊し、ポケットから煙草を取り出して火を付けながら侵入する。やはり時間の問題だと思っていた兵士達が銃火器を構えており、いつでも殺せるように照準で狙いを付けている。
「何度も言ってるだろ。ウチの連れを出してくれりゃいいんだって…いや、この場合は俺が連れって扱いになるのか ?」
至極どうでも良い部分で悩み始めるベクターだったが、やがて廃病院の方から走って来るムラセ達を見て、大きく手を振った。やはり事情を何一つ知らないせいか、さほど怒っているような素振りは無いベクターを前に、どうすれば良いのかと考えながらムラセ達は近づく。一方、ファウストとザガンは部屋に残されていたが、やがてファウストが先に部屋を出ようと動き始めた。
「本気か ?」
険しい表情でザガンが尋ねる。
「ああ。彼には…知る権利がある」
それに対してファウストは覚悟を決めた様に重い口調で返答した。
やはり腑に落ちない点が多数あるのか、イフリートはすかさず反論を始めた。結論だけを話してしまってはそうなるのも無理はないと、ファウストは頷きながら聞いていた。
「老化が進まなかったのは恐らく肉体を冷凍したからだろう。私がそうしたのだから間違いない。それに、デーモンは人間に比べて遥かに老化の進行が遅い。それも理由かもしれん」
割って入る様にザガンが理由を説明する。
「思ったんだけど、あんたがファウストさんに協力してくれてる理由って何 ? そもそもオルディウス側でしょ」
「過去形に過ぎん。もうあいつのために動いてやる義理も無い。それならせめて奴が吠え面をかく姿が見たかった。何か問題があるか ?」
そんな彼女の事がリリスはどうも疑わしいのか、食って掛かる様に質問をするがザガンも隠し事などしてないかのように開き直った態度を見せる。
「魔具については…オルディウスの指示を聞いた上で作ったからだ。あの子と血縁関係にある者は使用が許可されるようになっている。だが、想像以上に強い力だ…この体では暴走を抑えるので手一杯でな」
疲労を紛らわせるために一度だけ深呼吸をファウストはすると、魔具を使える理由やそれによって体に起きている異常について語る。やはり想像以上に負担がかかっているらしい。
「…ジードさんを殺したのは何で ? 」
「オルディウスの配下にあの子の存在がバレた。本当は匿うなりして穏便に済ませるつもりだったが、奴が放った刺客に先を越されてしまった事で焦った私は、オルディウスの手に渡るくらいならいっその事と…そう思ったんだ。そして失敗した上に、私の体も想像以上にボロボロになってしまった」
「でもベクターさんは生きてる」
「ああ、結果としては良かったのかもしれない。あの襲撃の後、私が刺客達を始末し、目撃者がい無くなったせいかベクターは死亡したとされ、オルディウスに知られずに済んでいた…最近まではな。どうやらオルディウスが現世に潜り込ませている配下のデーモンがベクターの正体に勘付いたらしい」
ムラセの質問に対し、ファウストはジードが死んだ日に何が起きたのかをかいつまんで説明する。結果として今日までのベクターの生存に繋がったとは言うが、やはり複雑な心境を抱いているのかファウストは暗い表情のまま窓の外を見る。その時、激しい音を立てながら兵士が部屋に駆け込んできた。
「侵入者が現れました ! 赤髪の男だそうです。力づくで壁を破壊して、現在はシェルターの中で暴れてます。ああそうだ、あなた方の名前を呼んでました」
報告を聞くや否や、ムラセ達は再び全員で顔を見合わせる。
「三時間も経ってないのに…リリスさん、さっき薬盛ったって…」
「睡眠薬を百二十錠。あいつの分のカレーにぶち込んで溶かしたよ…ホント何なのアイツ」
どう考えてもしばらくは起き上がらない。さらに言うなら死ぬ事も想定した上での方法だったのにもかかわらず、ベクターが平気で動き始めている事を知った一同は身震いをした。彼が人間では無い事を理解するには、あまりにも十分な判断材料であった。
――――その少し前、シェルターの前ではベクターが見張りの兵士達にごね続けていた。
「ムラセって奴を出してくれ。ここに来ただろ ? 何なら力づくで入って確かめても良いんだぞ」
兵士達は銃を構えるが、ベクターにとってそんなものは何の脅しにもならない。尊大な態度で圧力をかける。
「とにかく、知らねえもんは知らねえ ! さっさと立ち去れ。さもないと…」
そんな彼に対し、命知らずな見張り達は銃床でベクターの胸をどつく。流石にカチンと来たのか、その銃を持ってる腕をベクターはすぐさまレクイエムで掴んで睨みつけた。
「こっちが下手に出りゃいい気になりやがって…」
そのまま頭突きをかまして見張りの顔面を陥没させると、倒れた見張りを足蹴にしてからシェルターの壁に近づく。そして”爆噴壊突”の形態へとレクエイムを変形させた。そのまま躊躇いなく外壁を破壊し、ポケットから煙草を取り出して火を付けながら侵入する。やはり時間の問題だと思っていた兵士達が銃火器を構えており、いつでも殺せるように照準で狙いを付けている。
「何度も言ってるだろ。ウチの連れを出してくれりゃいいんだって…いや、この場合は俺が連れって扱いになるのか ?」
至極どうでも良い部分で悩み始めるベクターだったが、やがて廃病院の方から走って来るムラセ達を見て、大きく手を振った。やはり事情を何一つ知らないせいか、さほど怒っているような素振りは無いベクターを前に、どうすれば良いのかと考えながらムラセ達は近づく。一方、ファウストとザガンは部屋に残されていたが、やがてファウストが先に部屋を出ようと動き始めた。
「本気か ?」
険しい表情でザガンが尋ねる。
「ああ。彼には…知る権利がある」
それに対してファウストは覚悟を決めた様に重い口調で返答した。
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