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2章:砂上の安寧
第55話 闇に紛れた陰謀
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後日、酋長と女王は執務室にて条約の締結のための調印を行った。ルーファンはただ酋長の傍らに座り、取り決めの内容に目を通しつつ何か不明瞭な点が無いか、もしくはあからさまに不利な条件をリゴト砂漠側が押し付けられていないかどうかを随一睨む。特には何も無かった。不気味なくらいに。
「これから互いの社会の安全と平和を共に守り、繫栄させていきましょう。我々も惜しむ事なく協力させてもらいます」
女王はそう言いながら手を差し出し、酋長は無言で握り返して握手を交わす。レイヴンズ・アイ社から派遣されたという記者の一人が、その様子をスケッチしていたが、不意に近くにいた秘書官に何か耳打ちをする。
「女王陛下、立ち合い人も一緒に三人で手を取り合っている絵を描かせてほしいと要望が」
厳格そうな佇まいと共に秘書官が言うと、女王は嫌な顔をする事なく頷いた。
「分かりました。さあディルクロ殿、こちらへ。遠慮なさらず」
不服そうにするルーファンだが、仕方なく立ち上がる。そして握手をしている二人の手の上に自身の手を置き、二人の仲を取り持っているかのようにして見せる。
「不満げですね」
スケッチが終わり、再び席に着いた女王はルーファンを見て言った。
「正直、あなたという人が分からない。正直に言うなら怪しいとさえ思っています」
「おや、いきなり失敬な」
ルーファンから大胆な発言が飛び出したことに対し、女王は冗談は止しておきなさいとでも言うかのように笑って彼に返す。
「かつて不平等な条件で貿易をしていたという点を今更追及する気はありません。だが、あなたが私に砂漠へ赴いて欲しいと依頼するより前から、既に集落ではリミグロンとの接触があったそうです。情報を伝えられる状況ではなかったというのが砂漠にいた駐屯兵の言い分ですが、不審だとは思わなかったのですか ?」
ルーファンはどうも胡散臭いと思っているのか、一切の誤魔化しをする事なく女王へと尋ねた。衛兵や側近、記者や酋長も含めて全員が強張る。そして空気が張り詰めていくが、少しだけ息を吐いてから女王はルーファンへ微笑んだ。
「もし、先住民たちがこちらに泣きついてくるのを待っていたのではと思っているのなら…買い被りすぎですよ。政治に暗部は付き物ですが、私にそこまで器用な真似ができるのなら、今頃はとっくにどんな問題も解決させる事が出来ます。リミグロンがいつ攻勢に出るのかさえ把握が難しいというのに、機会を窺うだなんて無茶な事が出来るわけないでしょう」
冗談交じりに女王は答えるが、やはり心の底からは信頼できずにいた。そうやって口八丁に方便を連ね、相手が隙を見せるのを待っている。そして最後には死角から足を掴んで引きずり落とし、徹底的に搾り取る。権力を欲しがり、人の上に立とうとする人間は九分九厘そういう性質を持っているのだ。背中を預けるような真似をしてはいけない。そうすればまた裏切られるだけである。
一方、女王もまた不思議な心持でルーファンと対峙していた。部屋の中でこの顔合わせを見守ってくれている秘書官や衛兵だけではない。外の見張りや、その気になれば鶴の一声で動いてくれる軍。更に今となってはリゴト砂漠の先住民たちとも同盟を結んでいる。自分に何かあればこれだけの連中が黙ってないぞと言ってやることも出来たが、そんな優越感より先に心を巣食ったのは孤独感であった。逃げ場のない闇の中で、こちらを得体の知れない捕食者が睨んでいる。今はまだ殺されないかもしれないが、敵になった時に勝ち目はあるだろうか。そんな不安を抱いていた。
――――その頃、ジョナサン達はルーファンの執事であった男、オースティンが働いているという酒場で盛り上がっていた。長旅の疲れをひとまず吹き飛ばしたいという彼らの考えを聞いたオースティンが店主に頼んでみた所、相応に払うものを払ってくれれば誰でも良しという事で貸し切りが決まったのである。酋長と共に来た一部の護衛達も交えて、平屋の酒場で全員が談笑や飲食に花を咲かせている。因みに代金は全部ジョナサンが経費で落とすとの事らしい。
「信じられねえ ! この女樽を空にしやがったぞ ! 三分もしないで !」
「よっしゃ ! 次行け次 ! 」
獣人達が興奮したように叫ぶ。いつも通りバカでかい口を開いたサラザールが服を濡らしながら樽を抱え、中に入っていた葡萄酒を飲み干していたのだ。その樽を片手で床に叩き置いてから次を催促するように指を動かす。間もなく取り巻き達が酒樽を転がしてきた。
「あーあー品が無くて嫌だねえ…しかし、お前いつまで手帳なんかと睨めっこしてんだ ?」
そんなサラザールとは対照的にグラスで酒を嗜んでいたガロステルは、食事に手を付けずに手帳に書き殴っていた文字を眺めているジョナサンへ話しかける。眉間に皺が寄っている上に首をかしげている辺り、何やら深刻そうだった。
「もしかして、お金のことで怒られるとか ? 食べすぎかな ?」
「いやまあそれも少しあるけど全然問題ない。後でどうとでも言える。別の方でちょっと色々不思議に思ってね。特にリミグロンについて幾つか…」
遠慮しがちな様子で骨付きのステーキを掴んで齧っていたフォルトも心配そうにするが、ジョナサンは金銭面で叱られる事以上に気がかりな点があった。
「彼らの装備や死体は溶けて無くなってしまうのは知ってるだろ ? 僕も知ってはいたし、何なら見た事は何度かあるんだが、どうも今回はいつもと少し違うんだ」
「どう違ったの ?」
「死んでないんだよ。今回に関してはまだ生きている奴らもいたってのに、いきなり溶解を始めたんだ。自決かと思ったんだが、ルーファンがぶん殴っていたあのリミグロン兵の最期を見たか ? 怖がっていた。これから死ぬと分かって絶望したみたいに」
神妙な面持ちでジョナサンは話す。確証や物的な根拠がない以上はただの憶測に過ぎないが、様々な可能性を視野に入れた上で動かなければならない以上は深読みせずにはいられない。
「もし強制的に彼らを殺す方法があったとして、その目的は何だろう。証拠隠滅か、裏切りを恐れてか。もしかしたら、別の誰かがあの場所にいて口封じのため何らかの形で…なんてね、ただの想像だけど」
「そんなデタラメな事があるもんかね ?」
「何言ってんだよ、君もアイツもデタラメの権化みたいな生まれ方してる癖に」
ジョナサンは途中でバカバカしくなったのか、最終的にとぼけて話を終わらせる。ガロステルから突っ込まれたが、逆にサラザールと彼の双方を指さしながら逆に突っ込み返した。
「幾つかって言ってたけど、他には ?」
フォルトは段々と興味を持ったのか、少しノリノリでジョナサンに尋ねる。
「後はそうだな…何で最初に狙ったのがパージット王国だったのかって点だ。大陸から距離もかなり離れてる島国だし、後回しにしてもおかしくないんだが最初に本格的な侵攻が行われたのはなぜかパージットだった。これもただの予想でしかないんだが、<バハムート>の方に用があったのかも…でも、だとしたらなぜだろう ? って思ってみただけ」
そんな話をジョナサンがしていると、背後から別の料理と酒を持ってオースティンが現れた。それを三人の前に置きながらジョナサンの方を見る。
「よろしいですかな ? 少し興味深い話をしていたもので」
そして老紳士はにこやかな態度で窺ってきた。場所を提供してくれた相手だ。断る道理がある筈もない。
「ええ、どうぞ…そういえば、ガーフィールド殿。パージット王国にはリゴト砂漠にあったような創世録の一部が、確か残っていたとかなんとか…資料で呼んだことがあるのですが。お目にかかられたことは ? 」
「話には聞いていました。しかし……壊されてしまったそうで」
「壊された…事故か何かで ?」
「……それが、何と言いますか…うむ…」
本業の調子でインタビューを敢行するジョナサンだが、オースティンは踏ん切りがつかずに唸ってしまう。これは何か面白そうな事が聞けそうだと、内心では喜びつつも同情しているかのような不安げな表情を作ってからジョナサンは様子を見た。
「ご安心を。こう見えて私は民間人の個人情報は大事にする主義でしてね。誰々はこう言ってただのと、わざわざ吊るしあげたりはしませんよ。それに、これは記事にしたいというよりは私自身の単純な好奇心というものです。なぜリミグロンが幻神を毛嫌いするか…そこを知るにはやはり遺産や歴史を知るのが手っ取り早い」
「成程……では、ここからの話はどうかご内密にお願いします。特に…ルーファン様には」
「え ?」
出来る限りはとか付け足しておくべきだったかもしれないと一瞬後悔はしたが、ジョナサンは安心するよう彼に言い聞かせた。しかし当のオースティンからの回答に少しだけ動揺してしまう。自分が仕えていた相手にすら黙っていて欲しいとは何事だろうか。
「パージット王国に残っていた創世録の一部は、表向きには危険物の取り扱いを誤ってしまい、その事故によって損傷してしまったという事に国内ではされていました。しかし…故意に行われたものです。他ならぬレンテウス・ディルクロ様からの指示で」
「レンテウスって…え、確か…」
「ええ。ルーファン様の父君に当たるお方です。深夜、人気が無くなった頃に書斎で私へ懺悔を零していました。”ルーファンのためなのだ”と。あの様子からして、創世録の存在そのものをルーファン様に知って欲しくなかったのかもしれません」
「創世録の内容については覚えてらっしゃいますか ?」
「元々は王家とその関係者のみにしか知らされていない物でしたから、私も存在を耳にしただけで内容までは…お役に立てず申し訳ありません」
オースティンから話を聞いたジョナサンは、混乱をする一方でどうにか自分の抱えている疑問に結び付けられない物かと必死に頭を働かせる。リミグロンという組織の全貌を明かしたいのは勿論だが、一連の行動における彼らの思惑は何なのだろうか。もしかすればリミグロンがパージット王国を最初に狙った事と、レンテウスがルーファンから何かを隠そうとした事に関連があるのか。
とんでもないスクープに迫れる可能性が見えた事にジョナサンは鳥肌を覚える一方で、果たして自分のこの行いはルーファンにとって幸せをもたらすのだろうかと、少しだけ不安を感じていた。
「これから互いの社会の安全と平和を共に守り、繫栄させていきましょう。我々も惜しむ事なく協力させてもらいます」
女王はそう言いながら手を差し出し、酋長は無言で握り返して握手を交わす。レイヴンズ・アイ社から派遣されたという記者の一人が、その様子をスケッチしていたが、不意に近くにいた秘書官に何か耳打ちをする。
「女王陛下、立ち合い人も一緒に三人で手を取り合っている絵を描かせてほしいと要望が」
厳格そうな佇まいと共に秘書官が言うと、女王は嫌な顔をする事なく頷いた。
「分かりました。さあディルクロ殿、こちらへ。遠慮なさらず」
不服そうにするルーファンだが、仕方なく立ち上がる。そして握手をしている二人の手の上に自身の手を置き、二人の仲を取り持っているかのようにして見せる。
「不満げですね」
スケッチが終わり、再び席に着いた女王はルーファンを見て言った。
「正直、あなたという人が分からない。正直に言うなら怪しいとさえ思っています」
「おや、いきなり失敬な」
ルーファンから大胆な発言が飛び出したことに対し、女王は冗談は止しておきなさいとでも言うかのように笑って彼に返す。
「かつて不平等な条件で貿易をしていたという点を今更追及する気はありません。だが、あなたが私に砂漠へ赴いて欲しいと依頼するより前から、既に集落ではリミグロンとの接触があったそうです。情報を伝えられる状況ではなかったというのが砂漠にいた駐屯兵の言い分ですが、不審だとは思わなかったのですか ?」
ルーファンはどうも胡散臭いと思っているのか、一切の誤魔化しをする事なく女王へと尋ねた。衛兵や側近、記者や酋長も含めて全員が強張る。そして空気が張り詰めていくが、少しだけ息を吐いてから女王はルーファンへ微笑んだ。
「もし、先住民たちがこちらに泣きついてくるのを待っていたのではと思っているのなら…買い被りすぎですよ。政治に暗部は付き物ですが、私にそこまで器用な真似ができるのなら、今頃はとっくにどんな問題も解決させる事が出来ます。リミグロンがいつ攻勢に出るのかさえ把握が難しいというのに、機会を窺うだなんて無茶な事が出来るわけないでしょう」
冗談交じりに女王は答えるが、やはり心の底からは信頼できずにいた。そうやって口八丁に方便を連ね、相手が隙を見せるのを待っている。そして最後には死角から足を掴んで引きずり落とし、徹底的に搾り取る。権力を欲しがり、人の上に立とうとする人間は九分九厘そういう性質を持っているのだ。背中を預けるような真似をしてはいけない。そうすればまた裏切られるだけである。
一方、女王もまた不思議な心持でルーファンと対峙していた。部屋の中でこの顔合わせを見守ってくれている秘書官や衛兵だけではない。外の見張りや、その気になれば鶴の一声で動いてくれる軍。更に今となってはリゴト砂漠の先住民たちとも同盟を結んでいる。自分に何かあればこれだけの連中が黙ってないぞと言ってやることも出来たが、そんな優越感より先に心を巣食ったのは孤独感であった。逃げ場のない闇の中で、こちらを得体の知れない捕食者が睨んでいる。今はまだ殺されないかもしれないが、敵になった時に勝ち目はあるだろうか。そんな不安を抱いていた。
――――その頃、ジョナサン達はルーファンの執事であった男、オースティンが働いているという酒場で盛り上がっていた。長旅の疲れをひとまず吹き飛ばしたいという彼らの考えを聞いたオースティンが店主に頼んでみた所、相応に払うものを払ってくれれば誰でも良しという事で貸し切りが決まったのである。酋長と共に来た一部の護衛達も交えて、平屋の酒場で全員が談笑や飲食に花を咲かせている。因みに代金は全部ジョナサンが経費で落とすとの事らしい。
「信じられねえ ! この女樽を空にしやがったぞ ! 三分もしないで !」
「よっしゃ ! 次行け次 ! 」
獣人達が興奮したように叫ぶ。いつも通りバカでかい口を開いたサラザールが服を濡らしながら樽を抱え、中に入っていた葡萄酒を飲み干していたのだ。その樽を片手で床に叩き置いてから次を催促するように指を動かす。間もなく取り巻き達が酒樽を転がしてきた。
「あーあー品が無くて嫌だねえ…しかし、お前いつまで手帳なんかと睨めっこしてんだ ?」
そんなサラザールとは対照的にグラスで酒を嗜んでいたガロステルは、食事に手を付けずに手帳に書き殴っていた文字を眺めているジョナサンへ話しかける。眉間に皺が寄っている上に首をかしげている辺り、何やら深刻そうだった。
「もしかして、お金のことで怒られるとか ? 食べすぎかな ?」
「いやまあそれも少しあるけど全然問題ない。後でどうとでも言える。別の方でちょっと色々不思議に思ってね。特にリミグロンについて幾つか…」
遠慮しがちな様子で骨付きのステーキを掴んで齧っていたフォルトも心配そうにするが、ジョナサンは金銭面で叱られる事以上に気がかりな点があった。
「彼らの装備や死体は溶けて無くなってしまうのは知ってるだろ ? 僕も知ってはいたし、何なら見た事は何度かあるんだが、どうも今回はいつもと少し違うんだ」
「どう違ったの ?」
「死んでないんだよ。今回に関してはまだ生きている奴らもいたってのに、いきなり溶解を始めたんだ。自決かと思ったんだが、ルーファンがぶん殴っていたあのリミグロン兵の最期を見たか ? 怖がっていた。これから死ぬと分かって絶望したみたいに」
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「もし強制的に彼らを殺す方法があったとして、その目的は何だろう。証拠隠滅か、裏切りを恐れてか。もしかしたら、別の誰かがあの場所にいて口封じのため何らかの形で…なんてね、ただの想像だけど」
「そんなデタラメな事があるもんかね ?」
「何言ってんだよ、君もアイツもデタラメの権化みたいな生まれ方してる癖に」
ジョナサンは途中でバカバカしくなったのか、最終的にとぼけて話を終わらせる。ガロステルから突っ込まれたが、逆にサラザールと彼の双方を指さしながら逆に突っ込み返した。
「幾つかって言ってたけど、他には ?」
フォルトは段々と興味を持ったのか、少しノリノリでジョナサンに尋ねる。
「後はそうだな…何で最初に狙ったのがパージット王国だったのかって点だ。大陸から距離もかなり離れてる島国だし、後回しにしてもおかしくないんだが最初に本格的な侵攻が行われたのはなぜかパージットだった。これもただの予想でしかないんだが、<バハムート>の方に用があったのかも…でも、だとしたらなぜだろう ? って思ってみただけ」
そんな話をジョナサンがしていると、背後から別の料理と酒を持ってオースティンが現れた。それを三人の前に置きながらジョナサンの方を見る。
「よろしいですかな ? 少し興味深い話をしていたもので」
そして老紳士はにこやかな態度で窺ってきた。場所を提供してくれた相手だ。断る道理がある筈もない。
「ええ、どうぞ…そういえば、ガーフィールド殿。パージット王国にはリゴト砂漠にあったような創世録の一部が、確か残っていたとかなんとか…資料で呼んだことがあるのですが。お目にかかられたことは ? 」
「話には聞いていました。しかし……壊されてしまったそうで」
「壊された…事故か何かで ?」
「……それが、何と言いますか…うむ…」
本業の調子でインタビューを敢行するジョナサンだが、オースティンは踏ん切りがつかずに唸ってしまう。これは何か面白そうな事が聞けそうだと、内心では喜びつつも同情しているかのような不安げな表情を作ってからジョナサンは様子を見た。
「ご安心を。こう見えて私は民間人の個人情報は大事にする主義でしてね。誰々はこう言ってただのと、わざわざ吊るしあげたりはしませんよ。それに、これは記事にしたいというよりは私自身の単純な好奇心というものです。なぜリミグロンが幻神を毛嫌いするか…そこを知るにはやはり遺産や歴史を知るのが手っ取り早い」
「成程……では、ここからの話はどうかご内密にお願いします。特に…ルーファン様には」
「え ?」
出来る限りはとか付け足しておくべきだったかもしれないと一瞬後悔はしたが、ジョナサンは安心するよう彼に言い聞かせた。しかし当のオースティンからの回答に少しだけ動揺してしまう。自分が仕えていた相手にすら黙っていて欲しいとは何事だろうか。
「パージット王国に残っていた創世録の一部は、表向きには危険物の取り扱いを誤ってしまい、その事故によって損傷してしまったという事に国内ではされていました。しかし…故意に行われたものです。他ならぬレンテウス・ディルクロ様からの指示で」
「レンテウスって…え、確か…」
「ええ。ルーファン様の父君に当たるお方です。深夜、人気が無くなった頃に書斎で私へ懺悔を零していました。”ルーファンのためなのだ”と。あの様子からして、創世録の存在そのものをルーファン様に知って欲しくなかったのかもしれません」
「創世録の内容については覚えてらっしゃいますか ?」
「元々は王家とその関係者のみにしか知らされていない物でしたから、私も存在を耳にしただけで内容までは…お役に立てず申し訳ありません」
オースティンから話を聞いたジョナサンは、混乱をする一方でどうにか自分の抱えている疑問に結び付けられない物かと必死に頭を働かせる。リミグロンという組織の全貌を明かしたいのは勿論だが、一連の行動における彼らの思惑は何なのだろうか。もしかすればリミグロンがパージット王国を最初に狙った事と、レンテウスがルーファンから何かを隠そうとした事に関連があるのか。
とんでもないスクープに迫れる可能性が見えた事にジョナサンは鳥肌を覚える一方で、果たして自分のこの行いはルーファンにとって幸せをもたらすのだろうかと、少しだけ不安を感じていた。
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