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2章:砂上の安寧
第43話 古の遺言
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その頃、地下を進んでいたルーファン達はようやく目的地に辿り着いた。頭上に穴を開けて案内役の獣人が飛び出すと、そのまま全員が彼によって引き上げられる。体に付いた砂を払いながら周囲を見回すと、神殿の柱が列を成して並び立っているのが見えた。どうやら神殿の地下らしい。
「姉さん !」
フォルトが叫んだ。柱に掛けられた松明を頼りに奥へ進んでいった先には、砂の壁に埋め込まれるようにして置かれている巨大な壁画と酋長の姿があった。物思いに壁画の表面を手で撫でていた彼女は、妹の声や複数の足跡に反応して振り返る。そしてルーファンと目が合うと、来てくれたことに感謝するかのように小さく頷いた。
「おいおいおいおい ! ”創世録”じゃないか !」
「何だそれは ?」
「知らないのかい ? 実は、この世界における魔法の仕組み……特に起源については不明な点が多い。一体いつから人類はこのシステムを構築したのか、そもそも魔力という存在をどうやって見つけ出したのか…”創世録”は、大昔の人々が壁画として残した歴史に関する記録で、ここに<幻神>と魔法に関する謎を解くカギがあるって言われてる…ちょっと失礼」
壁画についてルーファンが尋ねると、ジョナサンは”創世録”という名称を告げながら解説をして、酋長の横を通り過ぎてから壁画へと近づく。どこから取り出したのかは知らないが、手袋まではめていた。
「かなり褪せているが塗料を使ってる。乾燥してるから、ひび割れは少しあるが藻類やカビの発生は今のところ無さそうだ。近くに水脈はありますか ? 人の出入りは ?」
「いや、水脈は無い。それに普段は立ち入れないようになっている」
「成程、だから抑制されてるのか。うん……この状態のままどうにか保存したいもんだな~…」
そのまま酋長に少し尋ねつつ、ジョナサンは手帳に記録をしていく。途中でスケッチまでしたくなったのか、手帳を横向きにして壁画を見ながら必死に書き込んでいた。壁画の上部には星を表しているのだと思われる無数の点が彫り込まれており、そのすぐ下に人型のシルエットが刻まれていた。
シルエットの両隣には二匹の竜らしき翼を生やした生物が描かれ、褪せた白色と黒色で差別化されている。そして更にその下には四体の生物が描かれていた。第一印象としては犬、巨人、人魚、そして鳥である。そのどれもが、傍らに小さな人型のシルエットを立たせていた。そしてその一連の図を取り囲むように人間の手らしき物が描かれており、救いを求めるように四方八方から伸びている。
「この壁画は何を意味している ?」
ジョナサンを余所にルーファンが質問をした。
「あくまで言い伝えだが……かつて、この世界には<幻神>を従える支配者がいた。<幻神>達は化身達を生み出し、王たる支配者に仕えさせていた。民はそんな彼らを救世主として崇めていたそうだ。この壁画については、大昔から少なくともそう語り継がれていた」
酋長は昔話を伝えてからルーファンを見る。一方でルーファンは、<幻神>が化身を生み出して仕えさせるという点に自身との共通点を見出し、なぜ同じ芸当を自分が出来ているのかを考えだす。そして偶然の一致で片づけるには違和感があると思っていた時、どこからか視線を感じた。
「ど、どうしたの ?」
何か考え込んでいたと思いきや、急に辺りをキョロキョロとし出したルーファンの豹変に困惑したフォルトが尋ねる。
「サラザール…いるんだろ ?」
ルーファンがそう言った直後、松明の灯りによって出来た足元の影からサラザールが現れた。ガルフや彼女の部下もサラザールの体に触れつつ共に出て来ると、そのまま酋長の元へ向かっていった。サラザールが何人か抱えている者達の中にキタマがいる事に気づき、ジョナサンはやっぱりとでも言いたげな顔をしていた。
「何があった ?」
「内通者です。この者達がリミグロンと通じ、挙句の果てに兵を送り込むよう懇願をしていました… !」
酋長は冷静を装っていたが、ガルフが怒りを滲ませながら経緯を話したとたんに目を丸くしていた。
「それと、もう一つ。こいつらと話していたリミグロンの一人を逃がしてしまった…すぐに兵を寄越してくる。ごめんなさい、完全に私のせい」
サラザールも申し訳なさそうに報せると、酋長は頷いてから背を向けた。フォルトは不安そうにルーファンを見つめ、彼女に対してルーファンも真剣な表情で視線を返す。
「サラザールと言ったな。恐らくだが、お前は<幻神>と関りがあるんだろう ? 少し話を聞かせてほしい」
酋長の問いかけに対し、サラザールは一度ルーファンの方を見る。そして「大丈夫だ。正直に答えてくれ」と言われてから、再び酋長の方を向いた。
「私は<バハムート>の化身。ルーファンの肉体に<バハムート>が宿っているから、こうして顕現することが出来ている」
「闇を司る<幻神>。それが体内にいるのか…分かった」
サラザールの答えに納得がいったのか、酋長はそれ以上追及をしようとはしなかった。
「まさか戦う気ではあるまいな。下手に抵抗すれば、この集落に住む者達全員が危険に晒されるぞ。それとも、そこの化け物と敗戦国のくたばり損ないに託す気か ?」
突然、倒れていたキタマが声を上げた。
「危険って、誰のせいで……」
その言葉に苛立ったのか、フォルトは彼の元に近寄って胸ぐらを掴み上げる。
「自分が何したか分かってんの⁉」
「黙れ ! 貴様ら姉妹にはウンザリしていた ! まさか自分達からスアリウス人の靴を舐めたがるとはな。貴様らこそ、忌々しい腑抜けの裏切り者だろうが !」
揺さぶりながら怒鳴るフォルトだったが、キタマは手を振りほどいてからフォルトと酋長を罵った。
「リミグロンの下に降れば、より良い待遇で土地と生活を保証し、独立の手助けもしてくれると言っていただろう ! なのにスアリウスと手を切ってリミグロンに付けという忠告を聞き入れなかった ! だからこうするしか無かったんだ !」
「奴らの事は信用できない。話が上手すぎる。だから――」
「受け入れられないと ? 貴様の様な軟弱者を酋長に選んだのが、先代が犯した最大の失敗だったな ! リミグロンに命乞いをする準備でもしておけ ! 役立たずめ」
汚らしく自らの正当性を叫ぶキタマに対し、酋長はリミグロンの胡散臭さを指摘する。しかし、もはや彼は聞く耳を持ち合わせていなかった。真っ先に媚を売って交渉を行い、リミグロンによる土地の支配に貢献した自分たちはきっと彼らに生かしてもらえる。そんな根拠のない自信によって勝ち誇っているのか、尚も酋長たちを侮辱し続けた。
「この―― !」
「よせ」
フォルトが我慢できずにキタマの方へ行こうとした時、ルーファンが肩を掴んで止めた。非常に落ち着いた態度をしており、冷静な様子でキタマの前に立つ。だが次の瞬間、何の躊躇いもなくキタマを殴り飛ばした。勢い余って石柱に背中を打つキタマへ早足で近づき、素早くナイフを抜き出したルーファンはキタマの肩へと突き立ててから彼の胸倉を掴んだ。
「うぐぅああああっ…‼」
「急所を狙っても良かったが情けを掛けた。答えろ、リミグロンにはどこまで話した ?」
片手でナイフの柄を握り、更に力を加えていく。そして苦痛で呻くキタマに淡々と質問を始めた。
「<聖地>の場所は教えたのか ?」
「こ、口頭でだが…」
「そうか」
ルーファンの質問にキタマがあっさり答えると、一言だけ呟いてからルーファンはナイフを抜く。そしてキタマに対して膝蹴りを入れて膝を突かせてから酋長の方へ戻った。
「どうする ? あなたが決めてくれ」
ルーファンの問いかけに対して酋長は暫く黙っていたが、やがて彼の方を見た。
「リミグロンの目的は何だと思う ?」
「俺の国に襲撃をした際は、<幻神>を抹殺する事が目的だった。だが、そのためならどんな手段も使ってくる」
「つまり、<聖地>の場所が分かっている以上はそちらを優先的に攻撃するかもしれない…か」
「まさか<バハムート>と同じように、<ガイア>も俺の体内に取り込めさせれば…なんて考えてないか ? 試すべきじゃない」
「”創世録”に記されてる支配者と同じ素質をお前は持ってるんだ。可能性はある。お前の体内に<幻神>が移ってくれれば、仮に<聖地>に何があっても問題はない。それにお前は強いと聞いた…自分の身を守る事ならできるだろう ?」
リミグロンが何を目的にしてくるかを知った酋長は、一か八かに掛けようとしていた。確率も分からない無謀な策であり、ルーファンも思わず止めようとする。
「酋長の言い分も一理あるな。この地を制圧するだけならまだしも、きっとリミグロンは君の事も知ってる筈だ。念には念を入れて大規模な戦力を投入し、<聖地>の破壊と集落の制圧とで二手に分かれる可能性は高い。それに、<幻神>を体内に取り込めばサラザールと同じように別の化身を呼び寄せられるんだろう ? 力になってくれるかも」
ジョナサンも酋長の言い分に同意する。周囲の者達も覚悟を決めているかのように待っており、もはや反対する理由も猶予も無さそうであった。
「…<聖地>はどこにある ?」
「この神殿の裏手にある山の頂だよ。だけど、修練に使う場所だから凄く険しい。全力で急げば、往復で三時間くらい」
決意をしたルーファンが聞くと、フォルトが場所を伝えた。
「フォルト、彼らを<聖地>まで案内しろ。ガルフ、集落にいる戦士達に知らせて迎撃の準備を行え。それと、こいつらは営倉へ連れていけ。事が終わった後に処分を決める」
酋長が伝えると、ガルフはすぐにキタマ達を立ち上がらせる。そして案内役の獣人に彼らを預けてから走り去っていった。その様子を確認した酋長は、ルーファンの肩へと手を置く。
「頼んだぞ」
「すぐに戻ってくる。持ち堪えてくれ」
酋長の手が強く肩を掴んでおり、そこから彼女も必死なのだと感じ取ったルーファンは、頷いてから彼女の手を触って約束をした。そして、サラザールとフォルトを連れて走り出していく。ジョナサンは一瞬迷ったが、ルーファン達についていた方が安全だと踏んですぐにあとを追いかけた。
「姉さん !」
フォルトが叫んだ。柱に掛けられた松明を頼りに奥へ進んでいった先には、砂の壁に埋め込まれるようにして置かれている巨大な壁画と酋長の姿があった。物思いに壁画の表面を手で撫でていた彼女は、妹の声や複数の足跡に反応して振り返る。そしてルーファンと目が合うと、来てくれたことに感謝するかのように小さく頷いた。
「おいおいおいおい ! ”創世録”じゃないか !」
「何だそれは ?」
「知らないのかい ? 実は、この世界における魔法の仕組み……特に起源については不明な点が多い。一体いつから人類はこのシステムを構築したのか、そもそも魔力という存在をどうやって見つけ出したのか…”創世録”は、大昔の人々が壁画として残した歴史に関する記録で、ここに<幻神>と魔法に関する謎を解くカギがあるって言われてる…ちょっと失礼」
壁画についてルーファンが尋ねると、ジョナサンは”創世録”という名称を告げながら解説をして、酋長の横を通り過ぎてから壁画へと近づく。どこから取り出したのかは知らないが、手袋まではめていた。
「かなり褪せているが塗料を使ってる。乾燥してるから、ひび割れは少しあるが藻類やカビの発生は今のところ無さそうだ。近くに水脈はありますか ? 人の出入りは ?」
「いや、水脈は無い。それに普段は立ち入れないようになっている」
「成程、だから抑制されてるのか。うん……この状態のままどうにか保存したいもんだな~…」
そのまま酋長に少し尋ねつつ、ジョナサンは手帳に記録をしていく。途中でスケッチまでしたくなったのか、手帳を横向きにして壁画を見ながら必死に書き込んでいた。壁画の上部には星を表しているのだと思われる無数の点が彫り込まれており、そのすぐ下に人型のシルエットが刻まれていた。
シルエットの両隣には二匹の竜らしき翼を生やした生物が描かれ、褪せた白色と黒色で差別化されている。そして更にその下には四体の生物が描かれていた。第一印象としては犬、巨人、人魚、そして鳥である。そのどれもが、傍らに小さな人型のシルエットを立たせていた。そしてその一連の図を取り囲むように人間の手らしき物が描かれており、救いを求めるように四方八方から伸びている。
「この壁画は何を意味している ?」
ジョナサンを余所にルーファンが質問をした。
「あくまで言い伝えだが……かつて、この世界には<幻神>を従える支配者がいた。<幻神>達は化身達を生み出し、王たる支配者に仕えさせていた。民はそんな彼らを救世主として崇めていたそうだ。この壁画については、大昔から少なくともそう語り継がれていた」
酋長は昔話を伝えてからルーファンを見る。一方でルーファンは、<幻神>が化身を生み出して仕えさせるという点に自身との共通点を見出し、なぜ同じ芸当を自分が出来ているのかを考えだす。そして偶然の一致で片づけるには違和感があると思っていた時、どこからか視線を感じた。
「ど、どうしたの ?」
何か考え込んでいたと思いきや、急に辺りをキョロキョロとし出したルーファンの豹変に困惑したフォルトが尋ねる。
「サラザール…いるんだろ ?」
ルーファンがそう言った直後、松明の灯りによって出来た足元の影からサラザールが現れた。ガルフや彼女の部下もサラザールの体に触れつつ共に出て来ると、そのまま酋長の元へ向かっていった。サラザールが何人か抱えている者達の中にキタマがいる事に気づき、ジョナサンはやっぱりとでも言いたげな顔をしていた。
「何があった ?」
「内通者です。この者達がリミグロンと通じ、挙句の果てに兵を送り込むよう懇願をしていました… !」
酋長は冷静を装っていたが、ガルフが怒りを滲ませながら経緯を話したとたんに目を丸くしていた。
「それと、もう一つ。こいつらと話していたリミグロンの一人を逃がしてしまった…すぐに兵を寄越してくる。ごめんなさい、完全に私のせい」
サラザールも申し訳なさそうに報せると、酋長は頷いてから背を向けた。フォルトは不安そうにルーファンを見つめ、彼女に対してルーファンも真剣な表情で視線を返す。
「サラザールと言ったな。恐らくだが、お前は<幻神>と関りがあるんだろう ? 少し話を聞かせてほしい」
酋長の問いかけに対し、サラザールは一度ルーファンの方を見る。そして「大丈夫だ。正直に答えてくれ」と言われてから、再び酋長の方を向いた。
「私は<バハムート>の化身。ルーファンの肉体に<バハムート>が宿っているから、こうして顕現することが出来ている」
「闇を司る<幻神>。それが体内にいるのか…分かった」
サラザールの答えに納得がいったのか、酋長はそれ以上追及をしようとはしなかった。
「まさか戦う気ではあるまいな。下手に抵抗すれば、この集落に住む者達全員が危険に晒されるぞ。それとも、そこの化け物と敗戦国のくたばり損ないに託す気か ?」
突然、倒れていたキタマが声を上げた。
「危険って、誰のせいで……」
その言葉に苛立ったのか、フォルトは彼の元に近寄って胸ぐらを掴み上げる。
「自分が何したか分かってんの⁉」
「黙れ ! 貴様ら姉妹にはウンザリしていた ! まさか自分達からスアリウス人の靴を舐めたがるとはな。貴様らこそ、忌々しい腑抜けの裏切り者だろうが !」
揺さぶりながら怒鳴るフォルトだったが、キタマは手を振りほどいてからフォルトと酋長を罵った。
「リミグロンの下に降れば、より良い待遇で土地と生活を保証し、独立の手助けもしてくれると言っていただろう ! なのにスアリウスと手を切ってリミグロンに付けという忠告を聞き入れなかった ! だからこうするしか無かったんだ !」
「奴らの事は信用できない。話が上手すぎる。だから――」
「受け入れられないと ? 貴様の様な軟弱者を酋長に選んだのが、先代が犯した最大の失敗だったな ! リミグロンに命乞いをする準備でもしておけ ! 役立たずめ」
汚らしく自らの正当性を叫ぶキタマに対し、酋長はリミグロンの胡散臭さを指摘する。しかし、もはや彼は聞く耳を持ち合わせていなかった。真っ先に媚を売って交渉を行い、リミグロンによる土地の支配に貢献した自分たちはきっと彼らに生かしてもらえる。そんな根拠のない自信によって勝ち誇っているのか、尚も酋長たちを侮辱し続けた。
「この―― !」
「よせ」
フォルトが我慢できずにキタマの方へ行こうとした時、ルーファンが肩を掴んで止めた。非常に落ち着いた態度をしており、冷静な様子でキタマの前に立つ。だが次の瞬間、何の躊躇いもなくキタマを殴り飛ばした。勢い余って石柱に背中を打つキタマへ早足で近づき、素早くナイフを抜き出したルーファンはキタマの肩へと突き立ててから彼の胸倉を掴んだ。
「うぐぅああああっ…‼」
「急所を狙っても良かったが情けを掛けた。答えろ、リミグロンにはどこまで話した ?」
片手でナイフの柄を握り、更に力を加えていく。そして苦痛で呻くキタマに淡々と質問を始めた。
「<聖地>の場所は教えたのか ?」
「こ、口頭でだが…」
「そうか」
ルーファンの質問にキタマがあっさり答えると、一言だけ呟いてからルーファンはナイフを抜く。そしてキタマに対して膝蹴りを入れて膝を突かせてから酋長の方へ戻った。
「どうする ? あなたが決めてくれ」
ルーファンの問いかけに対して酋長は暫く黙っていたが、やがて彼の方を見た。
「リミグロンの目的は何だと思う ?」
「俺の国に襲撃をした際は、<幻神>を抹殺する事が目的だった。だが、そのためならどんな手段も使ってくる」
「つまり、<聖地>の場所が分かっている以上はそちらを優先的に攻撃するかもしれない…か」
「まさか<バハムート>と同じように、<ガイア>も俺の体内に取り込めさせれば…なんて考えてないか ? 試すべきじゃない」
「”創世録”に記されてる支配者と同じ素質をお前は持ってるんだ。可能性はある。お前の体内に<幻神>が移ってくれれば、仮に<聖地>に何があっても問題はない。それにお前は強いと聞いた…自分の身を守る事ならできるだろう ?」
リミグロンが何を目的にしてくるかを知った酋長は、一か八かに掛けようとしていた。確率も分からない無謀な策であり、ルーファンも思わず止めようとする。
「酋長の言い分も一理あるな。この地を制圧するだけならまだしも、きっとリミグロンは君の事も知ってる筈だ。念には念を入れて大規模な戦力を投入し、<聖地>の破壊と集落の制圧とで二手に分かれる可能性は高い。それに、<幻神>を体内に取り込めばサラザールと同じように別の化身を呼び寄せられるんだろう ? 力になってくれるかも」
ジョナサンも酋長の言い分に同意する。周囲の者達も覚悟を決めているかのように待っており、もはや反対する理由も猶予も無さそうであった。
「…<聖地>はどこにある ?」
「この神殿の裏手にある山の頂だよ。だけど、修練に使う場所だから凄く険しい。全力で急げば、往復で三時間くらい」
決意をしたルーファンが聞くと、フォルトが場所を伝えた。
「フォルト、彼らを<聖地>まで案内しろ。ガルフ、集落にいる戦士達に知らせて迎撃の準備を行え。それと、こいつらは営倉へ連れていけ。事が終わった後に処分を決める」
酋長が伝えると、ガルフはすぐにキタマ達を立ち上がらせる。そして案内役の獣人に彼らを預けてから走り去っていった。その様子を確認した酋長は、ルーファンの肩へと手を置く。
「頼んだぞ」
「すぐに戻ってくる。持ち堪えてくれ」
酋長の手が強く肩を掴んでおり、そこから彼女も必死なのだと感じ取ったルーファンは、頷いてから彼女の手を触って約束をした。そして、サラザールとフォルトを連れて走り出していく。ジョナサンは一瞬迷ったが、ルーファン達についていた方が安全だと踏んですぐにあとを追いかけた。
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