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魔功都市ジンフォルド
108 集落
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カムランの丘から数千キロメートル離れた荒野に、遊撃部隊は馬で闊歩していた。
「ほんとにこの方角であってるの?」
リヴィアンは手綱をうまく操りながら後ろに乗っているマグに聞く。かれこれ2,3時間上手に乗りっぱなしなのだ。
「ええ。もう着きます」
「それさっきも言ってなかった?」
アルブリヒトは溜息をつき、皮袋に入った水を飲む。そんな彼女を横目にマグはマンモンに言われたことを思い出す。
○ ○ ○
「アーサー王の故郷に行ってもらいたいのです」
「それはどういう事ですか?」
食事を終えたあと、マグはマンモンに呼び出され書斎にいた。
「アーサー王のあの異様な強さは恐らく、彼の故郷に関与していると思われます。まぁ、故郷を人質に取られていると考えてもらっても構いません」
「ヴォーディガンは意外と外道なんですね」
失笑混じりにマグは溜息をつく。マンモンもニヤリと笑う。
「ま、悪魔より悪魔してますしね」
そして暫しの沈黙。
「で、アーサー王の故郷に言ってどうするんですか?」
「軽く、ブリタニアの偵察兵士たちを倒してくれればいいのです。そうすれば人質は開放されたも同然。もちろん、偵察兵士を倒せばそれに勘づいて追加の兵士が来ますが。恐らく心配はありません。あそこには理解ある騎士がいますからね」
「理解ある騎士?」
取り敢えずは味方がいるから安心しろということなのか、それとも敵だが話で決着がつくのか。どちらにせよ、トリストの助力になるのであれば断る道理がない。
「分かりました」
「君なら引き受けてくれると思っていましたよ。リヴィアンとアルブリヒトも同行させます。地図は明日の早朝渡します」
そう言ってマンモンは書斎を出ていった。
マグはマンモンにあまり親しみが湧かない。むしろ嫌悪感が少し勝る。
「引き受けてくれると思っていました?ふん。トリストの助力になるような計画を促した時点で私が引き受けることを知っていたはずです。全く、悪魔ってものは性根が腐っていますね」
○ ○ ○
「あっ!あれじゃない!?」
はっとマグは顔を上げる。目の前に見えたのは小さな集落だった。
「おおー。あれがアーサー王の生まれ故郷」
「あなたが言うとアーサー王をからかっているようにしか思えないですね」
たははとアルブリヒトは笑う。
「さて、この当たりで理解ある騎士と合流するはずなのですが」
そう言った瞬間、マグは明確な殺意を感じた。
「…っ!!止まりなさい!!」
マグは急ぎ馬の静止を叫ぶ。アルブリヒトとリヴィアンは訳が分からぬままに止まる。
「いきなり何よ」
「止まるにはまだ早いぞ?」
マグは睨みをきかせ前を見据える。そこには2人の騎士が立っていた。一人は槍を、もう一人は巨大な縦を片手に持っていた。
「やはり、理解ある騎士など存在するはずなどありませんね」
「いつの間にっ!?」
「おーおー。揃いも揃って殺気立ってるねー」
二人の騎士は今なお凄然と立っている。マグはその二人が誰かを知っていた。その知識はトリストから共有されている。
「早いご登場ですね聖杯探索組」
槍を持っている騎士はパーシヴァル。巨大な盾を持っている騎士はガラハッド。この二人は聖杯探索において多大な貢献をした。故に、伝説に近づいたとされる。
「騎士ガラハッド」
「騎士パーシヴァル」
「「尋常に勝負!!」」
女性の声が集落の前に響いた。
「ほんとにこの方角であってるの?」
リヴィアンは手綱をうまく操りながら後ろに乗っているマグに聞く。かれこれ2,3時間上手に乗りっぱなしなのだ。
「ええ。もう着きます」
「それさっきも言ってなかった?」
アルブリヒトは溜息をつき、皮袋に入った水を飲む。そんな彼女を横目にマグはマンモンに言われたことを思い出す。
○ ○ ○
「アーサー王の故郷に行ってもらいたいのです」
「それはどういう事ですか?」
食事を終えたあと、マグはマンモンに呼び出され書斎にいた。
「アーサー王のあの異様な強さは恐らく、彼の故郷に関与していると思われます。まぁ、故郷を人質に取られていると考えてもらっても構いません」
「ヴォーディガンは意外と外道なんですね」
失笑混じりにマグは溜息をつく。マンモンもニヤリと笑う。
「ま、悪魔より悪魔してますしね」
そして暫しの沈黙。
「で、アーサー王の故郷に言ってどうするんですか?」
「軽く、ブリタニアの偵察兵士たちを倒してくれればいいのです。そうすれば人質は開放されたも同然。もちろん、偵察兵士を倒せばそれに勘づいて追加の兵士が来ますが。恐らく心配はありません。あそこには理解ある騎士がいますからね」
「理解ある騎士?」
取り敢えずは味方がいるから安心しろということなのか、それとも敵だが話で決着がつくのか。どちらにせよ、トリストの助力になるのであれば断る道理がない。
「分かりました」
「君なら引き受けてくれると思っていましたよ。リヴィアンとアルブリヒトも同行させます。地図は明日の早朝渡します」
そう言ってマンモンは書斎を出ていった。
マグはマンモンにあまり親しみが湧かない。むしろ嫌悪感が少し勝る。
「引き受けてくれると思っていました?ふん。トリストの助力になるような計画を促した時点で私が引き受けることを知っていたはずです。全く、悪魔ってものは性根が腐っていますね」
○ ○ ○
「あっ!あれじゃない!?」
はっとマグは顔を上げる。目の前に見えたのは小さな集落だった。
「おおー。あれがアーサー王の生まれ故郷」
「あなたが言うとアーサー王をからかっているようにしか思えないですね」
たははとアルブリヒトは笑う。
「さて、この当たりで理解ある騎士と合流するはずなのですが」
そう言った瞬間、マグは明確な殺意を感じた。
「…っ!!止まりなさい!!」
マグは急ぎ馬の静止を叫ぶ。アルブリヒトとリヴィアンは訳が分からぬままに止まる。
「いきなり何よ」
「止まるにはまだ早いぞ?」
マグは睨みをきかせ前を見据える。そこには2人の騎士が立っていた。一人は槍を、もう一人は巨大な縦を片手に持っていた。
「やはり、理解ある騎士など存在するはずなどありませんね」
「いつの間にっ!?」
「おーおー。揃いも揃って殺気立ってるねー」
二人の騎士は今なお凄然と立っている。マグはその二人が誰かを知っていた。その知識はトリストから共有されている。
「早いご登場ですね聖杯探索組」
槍を持っている騎士はパーシヴァル。巨大な盾を持っている騎士はガラハッド。この二人は聖杯探索において多大な貢献をした。故に、伝説に近づいたとされる。
「騎士ガラハッド」
「騎士パーシヴァル」
「「尋常に勝負!!」」
女性の声が集落の前に響いた。
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