上 下
47 / 118
信仰都市ギャンヴェル編

45 謎の生還

しおりを挟む
「大丈夫ですよ。あなたは助かります」

 とある深海。気絶する俺の耳にへと入ってくる声は、この世のものか疑うほどの声。そしてまた意識が途絶え、声は聞こえなくなった。



   ○   ○   ○



「…ト!トリスト!」

 閉じていた目に光と情報が飛び込んでくる。まず見えたのは俺の名前を必死に呼ぶリヴィアン。次にぷにぷにの腕を組んで、偉そうに俺を見下すマグ。そして申し訳なさそうにしょぼくれているルドとニャル。 

「う、げほっげほっ!はぁ、ここは、えーと…船?」

 肺にまだ水が残っていて、それにむせかえってしまう。海水なので肺がかなり痛い。ヒリヒリするっていうかなんというか、こう、変な感じだ。それに記憶が曖昧になっている。

「やっと起きましたか。ほぼほぼ不死身の癖してなぁに気絶してるんだか、ほんとわからない人ですね」

 起きて突然罵詈雑言を吐かれ、つい謝ってしまった。

「す、すみません…」

  あれぇ?なんで俺謝ってんの?え?俺悪くないよね?悪くないよね!?そんな心のツッコミを無視するようにニャルが俺の学ランの裾を控え気味に引っ張る。

「あ?ああ、ニャルか。どした」

「ご、ごめんなさい…。吾が離したせいで…」

 ニャルに続きルドも頭を下げる、というか土下座していた。

「す、すみませんでしたぁ!僕のせいで隊長を危険な目に遭わせてしまい…。なので、腹括って海に飛び込みます!」

 言うやすぐさま立ち上がり、船首からダイブを決め込もうとするルド。

「おおい!待て待て!なんでそうなる!?いや怒ってねぇから!大丈夫だから!」

「いえ!隊長が許してもお天道様が許しません!なので僕がーーーーーー!」

 なんだよお天道様って!お前いつの時代の人間だよ!てかなんでそんなネタ知ってんの?君まさか転生者?そんな理由ないとしても、なんとか止めなければ。

 そう思った瞬間、ベキっ。不穏な音が甲板に響く。フラフラとルドが船首から下がり、そしてバタンキュー。ノックダウンだ!

「え、今誰が」

 幽かな魔力を追ってその人物を見る。マグだ。ルドを蔑んだ目で見ていた。まるで目で気持ち悪いと言っているようだ。

「マグ、さん?」

「全くぴーきゃーぴーきゃーうるせぇ奴ですね。少し黙らしたので大丈夫ですよ。さて、もうまもなく上陸しますよ?嫉妬の魔王の治める国。鉱山都市ロイハイゲンに」

 マグが見ている方向をルド以外全員が見る。荒々しい山々に霧がかかっていて、見るからに鬼ヶ島。え、あそこ?ちょ、暗すぎでしょう!?何あれ!こわっ!

「さて、今回はどうなることやら。分かりませんね」

 ニコリと笑うマグは、この先何か不吉なことが起きても当たり前だと言わんばかりの声音だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

欠損奴隷を治して高値で売りつけよう!破滅フラグしかない悪役奴隷商人は、死にたくないので回復魔法を修行します

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
主人公が転生したのは、ゲームに出てくる噛ませ犬の悪役奴隷商人だった!このままだと破滅フラグしかないから、奴隷に反乱されて八つ裂きにされてしまう! そうだ!子供の今から回復魔法を練習して極めておけば、自分がやられたとき自分で治せるのでは?しかも奴隷にも媚びを売れるから一石二鳥だね! なんか自分が助かるために奴隷治してるだけで感謝されるんだけどなんで!? 欠損奴隷を安く買って高値で売りつけてたらむしろ感謝されるんだけどどういうことなんだろうか!? え!?主人公は光の勇者!?あ、俺が先に治癒魔法で回復しておきました!いや、スマン。 ※この作品は現実の奴隷制を肯定する意図はありません なろう日間週間月間1位 カクヨムブクマ14000 カクヨム週間3位 他サイトにも掲載

転生したらチートでした

ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!

あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活

mio
ファンタジー
 なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。  こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。  なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。  自分の中に眠る力とは何なのか。  その答えを知った時少女は、ある決断をする。 長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!

転生幼女の異世界冒険記〜自重?なにそれおいしいの?〜

MINAMI
ファンタジー
神の喧嘩に巻き込まれて死んでしまった お詫びということで沢山の チートをつけてもらってチートの塊になってしまう。 自重を知らない幼女は持ち前のハイスペックさで二度目の人生を謳歌する。

処理中です...