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信仰都市ギャンヴェル編
41 いざ、港にて
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ブォー。と鈍い音を鳴らし汽笛が港に鳴り響く。
「さて、オレが手伝えるのはここまでだ」
船の船長との話を終え、俺に向き合うベル。
「約束通り、ノアの保護は任せておけ。安全は保証するさ。次の問題はモーガン=ル=フェイの神格化だが、コレはノアが何とかすると言ってな、まぁ任せてもいいだろう。いい娘だし可愛いし」
ひっきりなしに頷くベルはとても楽しそうだった。
俺達はノアとの和解に成功し、ベルフェゴールにノアが安全に且つ幸せになれる方法はないかと聞いてみたところ、うちで預かる!と威勢良く乗り出してくれた。そしてフェイの神格化も何とかしてくれるというので、それならばと任せたのだった。更にベルは、嫉妬の魔王の国まで行く船を出してくれると言ってくれたのだ。
「ところで、君の顔をまだ見ていないのだけどね?」
「は?」
唐突にベルが言う。俺の顔を見ていない?何言ってんだ?
「今まで散々見てきたろ?」
「いやいや、どうも君の顔がぼけてしまって仕方ない。恐らくその首にかけてる麻袋。それが原因かな?」
麻袋?あぁ、確かルシファーから魔王からは感知できない不思議な実らしいが。あ、そっか。ベルも魔王か。寝ていてぐうたらしてるイメージだったからそんな感じしなかったのか、そうかそうか。
「今、君は酷いことを考えているな?」
ズバリ図星だが軽く誤魔化して首にぶら下がっている麻袋をはずす。
「ほう、結構かっこいいじゃないか。でも、どーっかで見たことのあるような顔なんだよなぁ。白衣とか似合いそうだな。研究者でも目指すのかい?」
「そんな予定ないよ」
すると後ろでさらに荒々しく汽笛が鳴り響く。早くしろということだろうか。俺は早急に話を切り上げる。
「んじゃまぁ、世話になりました。またノアにも伝えといてくれ」
「了解だ。ところでニャルラトホテプはどこにいる?」
「ニャル?ああ、もう船に乗ってますよ」
ぴょんぴょんと飛び跳ね船を満喫しているようだ。
「いや、オレが聞きたいのは本当にニャルラトホテプを連れていく気なのかと聞いている。奴は危険だ。だから今のうちに処分を…」
「問題ねぇよ。そんときゃ俺が全力であいつをもういっぺんぶん殴るだけだ。それに、あいつが悪いんじゃない。嫉妬の魔王が悪いんだ」
「ふん、一丁前に言って。だけど、君のそんなところも気に入ってるがね」
かんらかんらと笑うのだが、後ろからメイド長が来てベルの首根っこを掴み、
「随分と遅いと思ったら、まだ話してましたか。トリストさんに迷惑がかかるでしょう?こちらもやることが沢山残っているのです。帰りますよ」
ぐっと引っ張り容赦なく連れていくメイド長にベルが文句を垂れる。
「おい!オレは魔王だぞ!偉いんだぞ!強いんだぞ!そんなお方にお前はこんな事をするのか!」
メイド長も澄ましたもので、
「ええ。しますよ?それがなにか?」
「酷い!」
「そうですね。では、トリストさん。短い間でしたがお世話になりました」
ぺこりと一礼し、そのまま文句言い散らすベルを引きずってメイド長は城に帰っていった。それを見送るとそのまま俺も、船に乗る。
「何の話してたの?」
リヴィアンが俺の顔をのぞき見ながら聞いてくる。
「いや、他愛のないことだよ」
「おぉ!ようやく来たか大馬鹿者!遅いではないか!全く、吾を忘れるとはいい度胸だな?」
ニャルがふんすと、そこそこというかでかい胸を張って俺を見下す。
「いや、お前は俺に感謝するべきだぜ」
ふっとニャルを一瞥して笑う。怪訝な顔をするニャルに俺はご丁寧に説明をしてやる。
「お前はベルフェゴールに殺される予定だったんだ。それを俺が引き止めて旅に連れていくと言ってやったんだ。結果、お前は死なずにすんだ」
話を聞いていくうちにムムムっと難しい顔をして、次の瞬間にはぱっと明るい顔をする。
「へーんだ!吾は死なないんだよ!神様は不死身なんだ!例え木っ端微塵になったところで、死ぬわけ」
「でも数千年はひまするだろ?」
「うっ」
図星だと言わんばかりの苦い顔。
そう、確かにニャルの言う通り神は殺しても死なない不死身だ。だけど、神話を聞く限り神様は殺したり殺されたりと波乱万丈な日常を起こしている。日本神話でもギリシャ神話でも殺すという表現がたくさん出ている。そこから考えて、死ぬには死ぬが蘇れる。これが神様の不死の原点だろう。よって、死んでも軽く数千年は蘇ることは出来ない。生命というものはとても重いものだ。そりゃ、神様にもデメリットもあるだろう。
「さぁ、感謝の言葉は何処かなぁ?」
ニタニタと歯噛みをするニャルを笑いながら感謝の言葉を待つ。その間、ギリギリと歯ぎしりまで聞こえる。ぷくくく!最高に入ってやつだァ!もう不死身のスタンド使いのようになってしまう。ある種のジ○ジ○立ちも夢じゃあない。
「あ、」
重々しく口を開けるニャル。
「あり、がとう…ござい、まし、~~~~ッ!!もう我慢出来ん!貴様!吾を愚弄するなど数百万年早いわ!」
その怒鳴り声と同時に船が動き出す。出港するのだろう。夕暮れは綺麗に海の地平線に沈んでいった。
○ ○ ○
…あれ?フェイとの別れの挨拶のシーンは!?
作「カットしました(・ω<) テヘペロ」
「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「さて、オレが手伝えるのはここまでだ」
船の船長との話を終え、俺に向き合うベル。
「約束通り、ノアの保護は任せておけ。安全は保証するさ。次の問題はモーガン=ル=フェイの神格化だが、コレはノアが何とかすると言ってな、まぁ任せてもいいだろう。いい娘だし可愛いし」
ひっきりなしに頷くベルはとても楽しそうだった。
俺達はノアとの和解に成功し、ベルフェゴールにノアが安全に且つ幸せになれる方法はないかと聞いてみたところ、うちで預かる!と威勢良く乗り出してくれた。そしてフェイの神格化も何とかしてくれるというので、それならばと任せたのだった。更にベルは、嫉妬の魔王の国まで行く船を出してくれると言ってくれたのだ。
「ところで、君の顔をまだ見ていないのだけどね?」
「は?」
唐突にベルが言う。俺の顔を見ていない?何言ってんだ?
「今まで散々見てきたろ?」
「いやいや、どうも君の顔がぼけてしまって仕方ない。恐らくその首にかけてる麻袋。それが原因かな?」
麻袋?あぁ、確かルシファーから魔王からは感知できない不思議な実らしいが。あ、そっか。ベルも魔王か。寝ていてぐうたらしてるイメージだったからそんな感じしなかったのか、そうかそうか。
「今、君は酷いことを考えているな?」
ズバリ図星だが軽く誤魔化して首にぶら下がっている麻袋をはずす。
「ほう、結構かっこいいじゃないか。でも、どーっかで見たことのあるような顔なんだよなぁ。白衣とか似合いそうだな。研究者でも目指すのかい?」
「そんな予定ないよ」
すると後ろでさらに荒々しく汽笛が鳴り響く。早くしろということだろうか。俺は早急に話を切り上げる。
「んじゃまぁ、世話になりました。またノアにも伝えといてくれ」
「了解だ。ところでニャルラトホテプはどこにいる?」
「ニャル?ああ、もう船に乗ってますよ」
ぴょんぴょんと飛び跳ね船を満喫しているようだ。
「いや、オレが聞きたいのは本当にニャルラトホテプを連れていく気なのかと聞いている。奴は危険だ。だから今のうちに処分を…」
「問題ねぇよ。そんときゃ俺が全力であいつをもういっぺんぶん殴るだけだ。それに、あいつが悪いんじゃない。嫉妬の魔王が悪いんだ」
「ふん、一丁前に言って。だけど、君のそんなところも気に入ってるがね」
かんらかんらと笑うのだが、後ろからメイド長が来てベルの首根っこを掴み、
「随分と遅いと思ったら、まだ話してましたか。トリストさんに迷惑がかかるでしょう?こちらもやることが沢山残っているのです。帰りますよ」
ぐっと引っ張り容赦なく連れていくメイド長にベルが文句を垂れる。
「おい!オレは魔王だぞ!偉いんだぞ!強いんだぞ!そんなお方にお前はこんな事をするのか!」
メイド長も澄ましたもので、
「ええ。しますよ?それがなにか?」
「酷い!」
「そうですね。では、トリストさん。短い間でしたがお世話になりました」
ぺこりと一礼し、そのまま文句言い散らすベルを引きずってメイド長は城に帰っていった。それを見送るとそのまま俺も、船に乗る。
「何の話してたの?」
リヴィアンが俺の顔をのぞき見ながら聞いてくる。
「いや、他愛のないことだよ」
「おぉ!ようやく来たか大馬鹿者!遅いではないか!全く、吾を忘れるとはいい度胸だな?」
ニャルがふんすと、そこそこというかでかい胸を張って俺を見下す。
「いや、お前は俺に感謝するべきだぜ」
ふっとニャルを一瞥して笑う。怪訝な顔をするニャルに俺はご丁寧に説明をしてやる。
「お前はベルフェゴールに殺される予定だったんだ。それを俺が引き止めて旅に連れていくと言ってやったんだ。結果、お前は死なずにすんだ」
話を聞いていくうちにムムムっと難しい顔をして、次の瞬間にはぱっと明るい顔をする。
「へーんだ!吾は死なないんだよ!神様は不死身なんだ!例え木っ端微塵になったところで、死ぬわけ」
「でも数千年はひまするだろ?」
「うっ」
図星だと言わんばかりの苦い顔。
そう、確かにニャルの言う通り神は殺しても死なない不死身だ。だけど、神話を聞く限り神様は殺したり殺されたりと波乱万丈な日常を起こしている。日本神話でもギリシャ神話でも殺すという表現がたくさん出ている。そこから考えて、死ぬには死ぬが蘇れる。これが神様の不死の原点だろう。よって、死んでも軽く数千年は蘇ることは出来ない。生命というものはとても重いものだ。そりゃ、神様にもデメリットもあるだろう。
「さぁ、感謝の言葉は何処かなぁ?」
ニタニタと歯噛みをするニャルを笑いながら感謝の言葉を待つ。その間、ギリギリと歯ぎしりまで聞こえる。ぷくくく!最高に入ってやつだァ!もう不死身のスタンド使いのようになってしまう。ある種のジ○ジ○立ちも夢じゃあない。
「あ、」
重々しく口を開けるニャル。
「あり、がとう…ござい、まし、~~~~ッ!!もう我慢出来ん!貴様!吾を愚弄するなど数百万年早いわ!」
その怒鳴り声と同時に船が動き出す。出港するのだろう。夕暮れは綺麗に海の地平線に沈んでいった。
○ ○ ○
…あれ?フェイとの別れの挨拶のシーンは!?
作「カットしました(・ω<) テヘペロ」
「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
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