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ひとりかくれんぼの下準備
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その頃、浩一は帰り道の100円ショップで裁縫道具とぬいぐるみを買おうとしていた。
カッターナイフは家にあったのだが、それ以外にも足りないものがあったからだ。
レジに向かうところで浩一はスマートフォンを片手に他に足りないものがないか調べていた。
「これで大丈夫か......」
この歳でぬいぐるみを買うのは億劫であったが、好奇心を満たすためには仕方がない。
会計を終えた浩一は家に帰ろうと足を踏み出す。
その時、アプリ『GHOST LINE』の通知が鳴った。
オカルト研究会からの通知だ。
画面を開くと、部長が部員全員に「夏休みの注意点 夏休みに個人で廃墟や心霊スポットに行くことを止めたりはしません。しかし、くれぐれも身に危険が及ぶことはしないようにお願いします。やはり部員の皆が安全で楽しくいることが一番なので。」といった文章を送っていた。
部長もオカルト研究会で普通に心霊スポットに行けばいいのに.......。
そう思いながらトーク画面をスライドさせると、珍しく同じ学年の幽也がコメントしていた。
「〇〇トンネルいこうかな笑」
こんな一面もあるんだな。
そう思いながらスマホの画面を閉じようとしたその時だった。
「そうだ! 今日のひとりかくれんぼのことを幽也に話してみないか!?」
浩一の心のなかでそのような言葉がひらめいた。
それと同時に胸の中で高まるような高揚感も覚える。
浩一は「危険な遊び」を同じ趣向を持つ仲間と共有し合いたいという思いが心の中にあった。
それもそうだ。
一人で完結させては面白くない。
他の仲間と共有させてこその「遊び」。
早速送ってみるか。
浩一は幽也のトーク画面を開き、そこに今日の夜に「ひとりかくれんぼ」を実行することを書いた。
すると、すぐさま返事が来た。
「本当にやるのか!? 動画撮ってくれよ!」
上機嫌な感じを全開に出すような返信が来た。
ここまで感情をあらわにする幽也は初めてだ。
もしかすると、現実ではあまり話さないけどSNSだと性格が変わるかもしれない。
そう思った。
けれど、今はそんなことよりもひとりかくれんぼを行うことを誰かと共有できたことに大きな喜びを感じていた。
今まで数多くの危険な遊びをしたことがあったが、友人にも誰にも話さずに一人で秘密裏に行っていた。
でも、今は違う。
浩一は今まで行った「危険な儀式や遊び」に関する文章を幽也に送る。
すると、幽也の方もそれに食い入るようにその話に興味を示した。
かれこれ1時間ぐらいは没頭していただろうか。
気がつくと空は夕焼け模様になっていた。
「もうそろそろ帰らないとな......」
そうつぶやきながら会話を終了させようとしその時、唐突に、ある文面が幽也から送信された。
「せっかくだし『ひとりかくれんぼ』の様子を動画に撮ってみてくれないか?」
なるほど、動画か。
浩一はその文言に興味を示す。
浩一はすぐさま返事を送る。
「撮れそうだったら撮ってみるよ」
「おおっ! 楽しみにしてる!」
幽也のご機嫌な返事で会話は終了した。
◆
その夜。
時刻は深夜の2時を回ろうとしていた。
浩一は、期待に胸を膨らませながら、予定の時刻が来るのを待っていた。
「そうだ。下準備があるんだった。」
好奇心に胸がいっぱいで肝心の下準備を忘れるところだった。
時計を見るとまだ1時間近くある。
まだ余裕だ。
浩一はまず、買ってきた熊のぬいぐるみに名前を付けた。
名前は「いちぽん」。
浩一の「いち」から適当につけた名前だ。
名前をつけた後は、ぬいぐるみを刃物などで裂き、中にある綿をすべて取りだす必要がある。
ぬいぐるみをカッターナイフで裂こうとしたが意外と頑丈な作りになっているのかびくともしない。
浩一は、料理バサミとカッターナイフで少しずつ切れ目を入れながら慎重に綿を取り出した。
次に、ぬいぐるみに米を詰めようとしたが、手元が狂い、米粒をいくつかこぼしてしまった。
「うそだろ......」
だが、まだ時間はある。
几帳面な性格をしていた浩一は計量カップにある米と拾った米粒を丁寧にぬいぐるみの中に入れた。
「あとは爪と髪の毛だな」
浩一はあらかじめ用意した。
自身の爪と髪の毛をぬいぐるみの中に入れると、縫い針と糸を使って少しずつ縫い目を塞いでいった。
「ふう......」
ため息をつきながら、残った糸はぬいぐるみの周りに巻きつけていく。
「あとは浴室の洗面器に水を張らないとな......」
浴室に行き、洗面器に水を張る。
まだ始めてもいないのに心臓の鼓動が少し大きく波打っている。
「最後に塩水だ」
浩一は食塩を入れたコップの水をアパートのクローゼットの中に置いた。
これで準備は完了だ。
時計を見ると、時刻は既に午前2時50分を指していた。
幽谷に言われたとおり、スマートフォンをカメラモードにして動画を撮る準備も万全にしておいた。
明日から夏休みだ、丁度バイトも入れていない。
以前から抑えきれないぐらいまで大きくなっていた好奇心を満たす「遊び」が今始まる。
カッターナイフは家にあったのだが、それ以外にも足りないものがあったからだ。
レジに向かうところで浩一はスマートフォンを片手に他に足りないものがないか調べていた。
「これで大丈夫か......」
この歳でぬいぐるみを買うのは億劫であったが、好奇心を満たすためには仕方がない。
会計を終えた浩一は家に帰ろうと足を踏み出す。
その時、アプリ『GHOST LINE』の通知が鳴った。
オカルト研究会からの通知だ。
画面を開くと、部長が部員全員に「夏休みの注意点 夏休みに個人で廃墟や心霊スポットに行くことを止めたりはしません。しかし、くれぐれも身に危険が及ぶことはしないようにお願いします。やはり部員の皆が安全で楽しくいることが一番なので。」といった文章を送っていた。
部長もオカルト研究会で普通に心霊スポットに行けばいいのに.......。
そう思いながらトーク画面をスライドさせると、珍しく同じ学年の幽也がコメントしていた。
「〇〇トンネルいこうかな笑」
こんな一面もあるんだな。
そう思いながらスマホの画面を閉じようとしたその時だった。
「そうだ! 今日のひとりかくれんぼのことを幽也に話してみないか!?」
浩一の心のなかでそのような言葉がひらめいた。
それと同時に胸の中で高まるような高揚感も覚える。
浩一は「危険な遊び」を同じ趣向を持つ仲間と共有し合いたいという思いが心の中にあった。
それもそうだ。
一人で完結させては面白くない。
他の仲間と共有させてこその「遊び」。
早速送ってみるか。
浩一は幽也のトーク画面を開き、そこに今日の夜に「ひとりかくれんぼ」を実行することを書いた。
すると、すぐさま返事が来た。
「本当にやるのか!? 動画撮ってくれよ!」
上機嫌な感じを全開に出すような返信が来た。
ここまで感情をあらわにする幽也は初めてだ。
もしかすると、現実ではあまり話さないけどSNSだと性格が変わるかもしれない。
そう思った。
けれど、今はそんなことよりもひとりかくれんぼを行うことを誰かと共有できたことに大きな喜びを感じていた。
今まで数多くの危険な遊びをしたことがあったが、友人にも誰にも話さずに一人で秘密裏に行っていた。
でも、今は違う。
浩一は今まで行った「危険な儀式や遊び」に関する文章を幽也に送る。
すると、幽也の方もそれに食い入るようにその話に興味を示した。
かれこれ1時間ぐらいは没頭していただろうか。
気がつくと空は夕焼け模様になっていた。
「もうそろそろ帰らないとな......」
そうつぶやきながら会話を終了させようとしその時、唐突に、ある文面が幽也から送信された。
「せっかくだし『ひとりかくれんぼ』の様子を動画に撮ってみてくれないか?」
なるほど、動画か。
浩一はその文言に興味を示す。
浩一はすぐさま返事を送る。
「撮れそうだったら撮ってみるよ」
「おおっ! 楽しみにしてる!」
幽也のご機嫌な返事で会話は終了した。
◆
その夜。
時刻は深夜の2時を回ろうとしていた。
浩一は、期待に胸を膨らませながら、予定の時刻が来るのを待っていた。
「そうだ。下準備があるんだった。」
好奇心に胸がいっぱいで肝心の下準備を忘れるところだった。
時計を見るとまだ1時間近くある。
まだ余裕だ。
浩一はまず、買ってきた熊のぬいぐるみに名前を付けた。
名前は「いちぽん」。
浩一の「いち」から適当につけた名前だ。
名前をつけた後は、ぬいぐるみを刃物などで裂き、中にある綿をすべて取りだす必要がある。
ぬいぐるみをカッターナイフで裂こうとしたが意外と頑丈な作りになっているのかびくともしない。
浩一は、料理バサミとカッターナイフで少しずつ切れ目を入れながら慎重に綿を取り出した。
次に、ぬいぐるみに米を詰めようとしたが、手元が狂い、米粒をいくつかこぼしてしまった。
「うそだろ......」
だが、まだ時間はある。
几帳面な性格をしていた浩一は計量カップにある米と拾った米粒を丁寧にぬいぐるみの中に入れた。
「あとは爪と髪の毛だな」
浩一はあらかじめ用意した。
自身の爪と髪の毛をぬいぐるみの中に入れると、縫い針と糸を使って少しずつ縫い目を塞いでいった。
「ふう......」
ため息をつきながら、残った糸はぬいぐるみの周りに巻きつけていく。
「あとは浴室の洗面器に水を張らないとな......」
浴室に行き、洗面器に水を張る。
まだ始めてもいないのに心臓の鼓動が少し大きく波打っている。
「最後に塩水だ」
浩一は食塩を入れたコップの水をアパートのクローゼットの中に置いた。
これで準備は完了だ。
時計を見ると、時刻は既に午前2時50分を指していた。
幽谷に言われたとおり、スマートフォンをカメラモードにして動画を撮る準備も万全にしておいた。
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