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明るい日々

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 次の日、浩一はオカルト研究会の部室に顔を出した。

 部室にいたのは、部長の長岡雄二と副部長の秋山逢だった。

「お疲れ」

 雄二が最初に浩一に声をかける。

「お疲れ様です」

 浩一は弱弱しい声で雄二に返事をする。

 その様子をみて逢は何やら心配をしている様子だった。

「お疲れ、浩一くん。なんか元気なさそうだけど大丈夫?」

「実は......」

  浩一は昨晩の出来事を話そうとしたが、途中で言葉が上手く出ずにつっかえてしまった。
 他の先輩からも念を押されていたのにもかかわらず、やってはいけない行為をやってしまったことを周りから咎められると考えたからだ。

 それでもやはり、話さなければならない。
 まごまごしている内に他の部員が来てしまっては余計話しにくくなるだろう。
 それに、この二人であれば比較的フレンドリーであるし、別に自分の事を咎めたりはしない気がする。

 浩一はそう思いながら、昨晩起こった事を順を追って話し始めた。

「昨日、寝る前に他の先輩が言っていた『五芒星の儀式』を実行してみたんです......」

 浩一はその出来事を思い出したくはないと感じながらも、話すことで何か気が楽になるのではないかという思いも心の中にある状況だった。
 
 それにもう話し始めたのだ。
 ここからは、止まることはなく最後まで話し続けよう。

 浩一は心の中でそう決め込むと一気に最後まで話し続ける。
 
 雄二と逢は、始めは何となく耳を傾けていたが、話が進むにつれ、まるで浩一が実際に体験したかのように話す浩一の話に強く引き込まれていった。
  
「それで僕は......あのまま死んでしまいそうだったんです。それぐらい......怖くて、恐ろしくて......」

「なるほどなぁ」

 雄二は浩一の話に深く引き込まれながら相槌を打つ。
 
「怖いね......」

 逢も不安げな顔をしながら、浩一の話にしっかりと耳を傾けていた。

「まあ、あまり危険な事はやらない方がいいと思うね。死んじゃったら俺たち悲しむし」

「そうだよ。私達の部員なんだから」
 
 雄二と逢は浩一を気遣う様子で言った。

 その様子を見た浩一は暖かいような気持ちを感じた。
 自分のことを気にかけてくれる先輩がいるのだな、という気持ちになった。

 それに、先輩に不安な出来事を話したお陰か、少しだけ心の中が楽になったような気がした。

「ありがとうございます。話したお陰で少し気持ちが楽になった気がしました」

 その後、浩一は、他の部員に昨晩の出来事を話した。  
 『五芒星の儀式』を最初に話した佐藤に少しばかりたしなめられたりもしたが、特に悪い雰囲気になることもなく、他の部員とも明るく過ごしていけるような時間が続いた。

 ある時は、心霊スポットに行かないかという提案が部の中でされたこともあった。
 しかし、浩一が経験した出来事もあるので避けておいた方が良いという結論になった。

 そして、月日は流れ――。
 オカルト研究会では、何事もなく和気藹々と過ごしていく日々が続いていった。





 


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