異世界転移して最強のおっさん……の隣に住んでいる。

モデル.S

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第2章

別人

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コーヒーの香りが仄かに漂う静かな店内。
 ユートは、黒縁の伊達メガネをかけ、スーツ姿で奥の席に座っていた。

 本名ではない。
 名乗っているのは――「榊(さかき)」という偽名。
 用意した偽造身分証、クレジットカード、連絡専用端末……全て、裏ルートから用意したもの。


---

 その偽装のために協力を依頼したのが、“地球側の裏家業”の人物だった。


風間(かざま)

・裏社会のコーディネーター
・表の顔は「何でも屋」、実態はブローカー
・情報、身分、身の隠し場所、潜伏手段の斡旋までやる
・ユートに対しても、最初は警戒していたが、とんでもない強さと、“上級ポーションの効果”に衝撃を受ける


---

「……あんた、マジで“切断された腕が再生する薬”なんて持ってたのか?」

「……持ってた、じゃなくて“持ってる”。ただし、数は少ない。そもそも作るのが死ぬほど大変なんだ」

 風間は目を細め、指で机をトントンと叩いた。

「それ、裏じゃ命より重い価値があるぜ。……てことは、あんたもう、“地上”じゃ動けねぇな」

「わかってる。だから協力を頼みたい」


---

 こうしてユートは、風間の協力を得て――

偽名での銀行口座

表向きの“個人医療研究コンサル”としての事務所

転送用アジト(異世界との出入り場所)

偽造された医療研究員身分と医療関連企業の名刺

購買ルートと顧客との仲介制限(風間による調整)


――など、裏社会のルールに則った活動体制を整えていった。


 すでに風間を通じて、特殊な問い合わせが入り始めていた。

「とある組織の幹部、隻眼隻腕」

「薬物被害で手足が壊死した若い女」

「事故死寸前の金持ち老人を助けてほしい」


 全て、高額を提示され、詳細な条件付きの依頼だった。
 中には“ユートを囲い込もうとする意図”が見え隠れする案件もある。


 風間が最後に告げた。

「……このまま“奇跡の薬”を出し続けると、そのうち――“消される”ぞ、マジで。
 製薬業界、医療利権、そして政治。金が絡んでる。
 だが俺が道を作る。出し方次第で、誰にもバレずに、必要な奴だけ救える」


ユートは静かに頷いた。

「……やるさ。俺がやる意味があるなら、な」


---
風間に連れられて訪れたのは、地上60階のペントハウス。
 出迎えたのは、50代半ばの男――嶋木(しまき)一誠。
 名門財閥の会長であり、政界とも深く繋がる“表と裏を自在に行き来する男”。


---

「これは……珍しいお客人だな。君が“再生の薬師”か」

「そう呼ばれてるだけで、俺自身はただの医療研究家ってことにしてくれ」

 ユートは表情を崩さず、持参した上級ポーション2本を机に置いた。

 嶋木の隣にいたのは、車椅子に乗った青年――息子の嶋木 蓮(れん)。
 下半身不随。事故で脊髄を完全に損傷したと診断されている。


---

「……医師は完全麻痺だと言うが……君の薬なら、動けるようになるのか?」

「保証はしない。ただし、回復例はある。試してみるかどうかは、あなたの判断だ」


---

 迷いは一切なかった。
 嶋木が頷くと、ユートは1本目を投与。
 しばらくして、青年の足がピクリと動いた。
 そして2本目を――

 全身を駆け巡る魔力の流れが、神経と筋肉を呼び起こし――

「……っ! あ……立てる……!」

 蓮が自ら立ち上がった瞬間、父・嶋木の目に光が差す。

「……本物か……これは、本物だ……!」


---

 報酬は現金ではなかった。
 代わりに“強力な隠れ家と偽装ルート、完全なバックアップ”を約束される。
 ユートはそれを受け入れた――その時だった。





人気のない夜の倉庫街。
 静寂を破るように、無数の足音が四方から響いた。

 ユートは、足を止め、周囲を見回す。
 スーツ姿の男たち――刃物、鉄パイプ、スタンガン、拳銃すら手にした者もいる。
 その数、ざっと100人。

 ユートは、ポケットから黒い手袋をはめる。
 腰に差した小太刀を静かに抜いた。


「……」



 一人が突撃してきた。

 ――だが次の瞬間、彼の顔面に肘が叩き込まれ、後方へ吹っ飛ぶ。
 後続も構わず突っ込んでくるが――ユートの身体が見えない。


 一歩で三人分の間合いを詰め、拳一発で二人を叩き伏せる。
 パイプを振るわれても、視線一つで見切り、逆に素手でへし折る。

 小太刀を抜けば、刃を“峰打ち”にして骨だけを砕く精密さ。

 彼が動くたび、敵の体が宙に舞い、転がり、呻き声を上げて沈む。


 やがて敵は隊列を組み、バールや盾を使って押し潰そうとするが――

 ユートは壁を蹴って跳び上がり、宙返りからの落下蹴りで隊長格を地面にめり込ませる。
 着地と同時に十人を横なぎに薙ぎ払い、関節だけを正確に破壊。



「……まるで、“人”じゃねぇ……」

 敵の誰かが呟いたその時――
 ユートが“あえて”その声の方を見た。

 次の瞬間、10人まとめて壁に叩きつけられる。


---

 5分後。

 倉庫街には、立っている者はただ一人。
 ユートは小太刀を鞘に収め、少し息をつくだけだった。


 足元には、呻き声を上げる者、動けず倒れ込んだ者が多数。
 誰一人、命を奪われてはいない――だが戦意も再起も奪われていた。


「これで100人か……少しは運動になった」

 ユートはスマートフォンを取り出し、風間に一言だけ送った。

> 「処理は任せた」




---
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