小さなベイビー、大きな野望

春子

文字の大きさ
上 下
156 / 159

勇気ある撤退

しおりを挟む
妖精王とツェリによる凄まじい魔力が、ぶつかり合う。
これを当てられたヤツは、自業自得ではあるが、同情を禁じえない。
双子はピキッと固まり、硬直状態。
リーサは、母を呼ぼうとしたが、ハッと感じ、マッキーの腕を叩く。
「撤退ー!!」
アルミンがビクッとし、オルドーの腕を叩く。
「勇気ある撤退ー!!」
双子はハッとし、動かぬ足を無理に動かして、その場を駆ける。
「あら、何処に…!」
「ツェツリーエ!!!」
ツェリは、背後に感じる不穏な気配に気づき、目を見開く。
これはまずいわと慄く。何せ、フィルの頭から、角が思い切り、出ている。
「あなたって子は、どうして、いつも無謀なことをするの!!」
フィルを制止しようとして、無念にも敗れたリフ達は、長年の息子のカンからして、息を止め、気配を消す。
甥っ子達の裏切りに気づいたツェリは、最大の味方である兄と夫の姿を探す。
「保護魔法から抜けてまで!!いい!?」
「フィル、今はそんな場合ではなくてよ?」
ちなみに、リーサの撤退の発言を聞いていたフランたちは、コハクたちを船の中に、逃げるように誘導した。


「母さん、ブキ切れじゃないか。」
脱兎のごとく、逃げた双子とリーサ達は、背中に汗を掻く。仕方ない。保護魔法から、抜け出しては意味が無くなるからだ。ちなみに、コルルもそこにいる。
「これこそ、勇気ある撤退だよね。」
「そうだよ。勇気ある撤退だよ。」
コショコショ話すリーサとアルミン。



焼け野原と化したようなだった広い荒野に、降り立つ妖精王の船。
「子どもたちは外に出させるな。」
「御意。」
ゆっくりと、泰然と降り立つ。
「では、参るぞ。」
ゆっくり、歩き出す。




「あれは、フィルおば様のお説教が始まるんだよ!怖いっ!」
「怖い!!」
船の中に逃げてきたフランたちは、さっきの光景に、ブルブルしてる。
「お説教…?…兄様。何か、変な感じがするよ。あっちから。」
ギティアラの腕の中にいたエリアスが気づいた。居なかった人の魔力を感じる。
「何か、ぶつかってる!」
「…査問会だあ!!」
フランたちは気づいた。魔法省の特殊課査問会の気配である。


「査問会だ!!」
マッキーの腕の中から、毛並みを逆撫でにした猫のようなリーサは息巻く。
マッキーは、驚き、ギュッと強く握りしめる。
「…?ままー!!」
「リーサ、待て!」
暴れて拘束を解いたリーサを慌てて追い掛けるマッキーに、キョロキョロしながら、アルミンを抱いたままのオルドーは駆ける。



ツェリの顔が酷く歪み、掴まれている腕を勢いよく振り払った。
「二度と顔を見せるなと言ったはずだわ!」
顔がわからないように統一されてる査問会の所属メンバーの衣装は、目元が覆われ、認識できない様に、認識阻害の術が施されている。
「私に気安く触るなんて、侮辱だわ。」
すると、羽織っていたコート裏から、素早く何かを取り出してきたのは、一枚の紙。
「ー?!おに…。」
「ツェリ!!!」
マルクスとサラトガが手を伸ばすが、ツェリは、消えてしまった。
フィルが悲鳴をあげる。
「まま!?ままあ!!」
リーサは、混乱し、叫ぶ。
うわああんと泣き叫ぶリーサに、追いつきてきたマッキーは、真っ青。
「貴様!!私の妹になんて事を!!」
怒りでマルクスは、攻撃するが、スッと避け、マルクスに向かい、魔法が放たれた…と思われた。
寸前に、ダグラスがやって来た。
「ズカズカと私のテリトリーで好き勝手にやりおって。」
ゴォォォ…
「フィル様、マッキー様、私の後ろに…。」
いつの間にか、カールが佇み、二人を庇っている。
「不愉快極まりない。“ゴルトア殲滅しろ”」
キシャアアア…
聞いたことが無いドラゴンの鳴き声だ。高い機械音の様な音が鳴り響く。


「オルドー!止まって!ゴルトアがお怒りマンだ!!」
「はー!?」
「ゴルトアは一番、縄張り意識が強いんだよ!査問会が来ちゃったから、我慢が出来てない!!耳を塞いで!」
「え?」
言われたとおりに、止まり、アルミンを降ろす。
耳を塞ぐ二人。
すると、耳を劈くような激しい衝撃音が襲う。


「ゴルトア…。まずい、みんなを回収してくる。此処から出ないように。」
ギルベルトは、空間魔法を使用する。
甥っ子達を次々と、空間に入れていく。
「ゴルトアが起きるなんて…。」
コルルは、保護魔法が施されてる部屋にアイシャとメロといた。アイシャの目に魔力が浮かぶ。


「手荒くいれてるが、勘弁してくれ。」
甥たちを背後から腕を掴み、亜空間に引っ張り込む。
「びっくりした!!」
スペンサーは、鼓動を爆発させながらも、ちょっと浮ついている。
「他の皆は?」
他の兄弟達の姿が見えない。
「影や盾がいるから大丈夫だ。終わるまでしばらく待ちなさい。」
ギルベルトは、手元に持った手鏡を覗く。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

憧れの同級生がくすぐられていた話

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:397pt お気に入り:8

チートな親から生まれたのは「規格外」でした

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,506pt お気に入り:529

神さま…幸せになりたい…

恋愛 / 完結 24h.ポイント:198pt お気に入り:151

1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:177pt お気に入り:3,776

アルファポリスで規約違反しないために気を付けていることメモ

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:71pt お気に入り:6

40代(男)アバターで無双する少女

SF / 連載中 24h.ポイント:149pt お気に入り:759

【第2章開始】あなた達は誰ですか?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:589pt お気に入り:9,703

処理中です...