小さなベイビー、大きな野望

春子

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ロッシュヴォークの隠居先

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遂にやってきたロッシュヴォーク家の隠居先。
ダグラスが住む隠居先は、田舎にあるが、広大で、周りが森に囲まれている。
噂では、そこに住む動物たちは、ダグラスに服従していると言うが、定かではない。
ロッシュヴォークから、ドラコンモドキの馬車が送られてきた。
まず、ドラコンモドキを使役してる馬車を襲うようなバカはいない。
何故ならば、ドラコンモドキの馬車を使うのは、あのダグラス・ロッシュヴォーク。
喧嘩を売ってくるような輩は、地面に圧をかけ、重力を圧し潰す。
あのゴルドアを抑え込む程の魔力を持つ。
「見てみて。おばちゃん。見えてきたよ!」
「ベイビー。座って。危ないわ。」
空気からして、違うような気もする。
威厳のある建物がそびえ立ち、用が無ければ、周り右をしたくなる程の出で立ち。
「アルミンは、御者の席にいるのに。」
「駄々を捏ねるんだから。」
アルミンは、どうしても、ドラコンモドキと触れ合いたいらしく、コルルの制止を振り切った。
もちろん、安全第一。
御者が、アルミンの安全を図っている。
幾ら、アルミンが動物に好かれる体質であろうと、馬車を引くドラコンモドキに不用意に扱うと、危険なのだ。
「ねえねえ、さっきから人が避けてる。」
「しょうがないの。」
ロッシュヴォークの紋章の馬車を見たら、道を開けろと暗黙の了解がある。



「アルミン。行こうよ!」
着いたのにも関わらず、アルミンは、ドラコンモドキに夢中。
ドラコンモドキの体の色は深緑の色をしており、厳つい。 
可愛いとはしゃぐアルミンに声をかける。
「アルミン。コルルおばちゃんが見てるよ!」
ハッ!
我に返ったアルミンは、コルルに弁明。
「自分ちにアニマがいるじゃんか。」 
「なあ。」
ドラコンモドキは今大人しいが、普通は獰猛で、御者も選ぶ。
「かたーい。」
恐れ知らずのリーサが、ベシベシとドラコンモドキの体を叩いてる。よせ!と双子に引き離される。


「長旅御苦労で御座いました。」
カールが佇み、優雅にお出迎え。
ロッシュヴォークに仕えるエンブレムバッチをしっかりとつけており、柔和に微笑む。
「カールだあ。」
「お久しゅう御座います。お元気でいられて、このカール、嬉しく思います。」
纏わりつく、小さい子たち。
カールは、それとなく、リーサの目の状態を見る。
安定しており、忌々しいものは、何一つ、感じられない。
ササッと、メイド達がやって来て、荷物を預かる。
その中には、屋敷妖精、シルキーがいて、数百年前から、居着いて、屋敷内の管理仕事に携わっている。
「よく来た。」
腹に来るような重低音ボイス。
ダグラスがゆっくりと出てきた。傍らには、愛犬の黒狗、モリア。ダグラスの教育を直に受けたモリアは、とてもいい子である。番犬としても活躍していて、許されてない者が侵入した場合、このモリアが噛み付く。自慢の牙に俊敏さを兼ね備え、どんな硬いものでも噛み砕く顎の力は定評がある。ちなみに、リーサとアルミンは、ちょっと大きな大型の黒犬だと思ってるが、そうじゃない。狼に近い習性で、自分より強い力を持つ者にしか、従わない。気に入らない者は、全て、力で捻じ伏せる。
今の所、死人は出てないから大丈夫。
「きゃああ。モリア。」
恐れ知らずのアルミンがモリアに突撃。 
決して、モリアは、アルミンに危害を与えない。ふさふさの毛並みに夢中に触りまくる。
「ダグラスおじいちゃん。見て。」
自由に振る舞うその2が、動く。バサッと、マントを翻し、自慢の付け髭を携え、フフンポーズ。
どちらも、フィルは大反対したが、譲らなかった。
そのマントは、フランツが買ってあげた代物で、付け髭は、スペンサーが笑いながら、くれたものである。
「ダグラスおじいちゃんみたいにかっこいいでしょ?」
ちなみに、アルミンも他2名の甘えん坊も欲しがり、保護者に駄々をこねて、買ってもらった経緯がある。
「ベイビー、アルミン。戻ってらっしゃい。ご挨拶が先。」
フィルの注意が飛ぶ。



リビングに集まる一同。ダグラスは、上座。
ダグラスの為に誂えた椅子は玉座に見えてしまう位に、豪華。背凭れに凭れ、緩慢にこちらを見てくる。
「一人も欠けずに、来れたことを感謝。乾杯。」
大人たちには、葡萄酒。子供たちには、葡萄ジュースが振る舞われた。
「父さんも相変わらずで良かった。」
「ゆっくり暮らしてるからな。問題はあるまい。」
サラトガは、ゆっくり微笑む。
「ベイビー。付け髭を外して。」
「えー!」
「ねえ。まま、アルミン、おじいちゃんと寝てもいいでしょう?」
「リーサが真ん中!」
「ブーッ。アルミンが真ん中!」 
「やめなさい。すみません。ダグラスおじ様。」
「構わんよ。」
リーサとアルミンはいつもどおり。
ハルベルから来ている他の従兄弟たちは、実の祖父母宅と全く違う緊張感を持っている。
故に大人しい。
「ねえねえ。この葡萄ジュース。濃いね。」
リーサは葡萄ジュースは好きでも嫌いでもないが、飲める。
何故だが知らないが、ここに来ると、大人たちは、葡萄酒、子供は葡萄ジュースを飲む不思議な仕来りがある。
「いつもの葡萄ジュースだよ。」
アルミンが変わった味はしないよ!とゴクゴク飲む。
「えー、いつもより、濃いよ!」
「リーサ。それは苦いか?」
「んーとね?飲みにくい。」
ダグラスがカールに目配せ。
カールがリーサのグラスを持ち、ダグラスの元へと持っていく。
「他に苦いと感じたのは?」
周りを見渡す。
コルルがおずおずと、手をあげる。すかさず、グラスを持っていく。
「リーサは問題ない。コルル、後で来なさい。」
「リーサ様のは、もう少し、甘い葡萄ジュースに致します。」 
「コーラがいい。」
ギルベルトがコルルに大丈夫だと促すように、うなずいてる。
コルルは、無意識に指輪を撫でる。

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