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閑話(5)
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ロッシュヴォークの地下深くに、悪戯小僧が入れないように、封印されている宝物も保管されている。主に、泥棒から守る為の術が施されているが、何分、好奇心の塊である悪戯小僧二人がいるため、厳重に施している。
あのアニマのいる部屋を勝手に侵入して
、アニマを勝手に出す行為を繰り返しては、叱られていて、約1名は、アニマで、古狸をやっつけるんだと宣い、約1名は、自慢するだと豪語し、頭を傷ませている元凶。
その地下深くにある宝物庫は、現在、自由に出入り出来るのは、ギルベルトと家を出たサラトガに隠居しているダグラスのみ。
言わば、簡単に言ってしまえば、ロッシュヴォークの血が流れている事が前提の術式展開になっている。
あまり、開くことの無い部屋であるが、たまに、開かれる瞬間がある。
邪魔が入らない…アルミンがリーサ宅に泊まってるこの日に済ませておく。
銀の扉に、重厚に彫られたドラゴンの姿が彫られており、鱗の筋道に、蒼の線が通っている。
魔力を流し、呪文を放つ。
『開け。』
ギイっと、扉がゆっくり開かれる。
暗い中を入っていく。灯りを灯す。
ここにある物たちは、曰く付きの物ばかりで、断じて、あの好奇心の塊である二人に触らせられない物ばかり。
知識が無いと触れてはいけないし、何よりも、曰く付きとつく名前がついてしまってる時点で、わかるだろう。
《これは、これは、ギルベルト坊っちゃん。》
掠れたような嗄れたような声音がする。
この部屋の番人でもあり、悠久の時間をここで過ごす者。
生命を持ってるようで持たない者。
床からググッと顔が浮かび上がる。不気味に見えるが、そういう仕組みなのだ。
丸々とした球体の顔に、下は、オバケのようにニョロニョロ。
「ギヴン。“天秤の秤”を。」
《はいはい。》
ギヴンは床に吸い込まれ、道具を探している。
暫くすると、ギブンが戻ってくる。
漆喰の漆が塗られた天秤の秤。
魔力の道筋が通るような美しい曲線が彫られている。
《どうぞ。》
「ありがとう。お前が手入れをしてくれるから、綺麗なままで保たれている。」
《役目ですから。天秤の秤など、珍しいものをご所望ですね。》
「困ったやつと言うのは、世の中、多いものだ。」
《ほほ。ロッシュヴォークの宝物を使うとは、なんと、お目が高い。》
笑ってるが、瞳が笑ってない。
ここにある曰く付きの道具は、代々、ロッシュヴォークが守っているが、ある理由で、出される場合がある。
使用者は、限りなく、限定されるもので、ロッシュヴォークの家業の内容に繋がる。
「コルル、今夜は遅くなるから、先に休んでいて。」
「わかったわ。気をつけて。行ってらっしゃい。」
仕事に向かう。今夜の案件は、気が進まない。
馬車に乗り込む。コルルを守るように寄り添う賢いペットたち。
「いけ。」
御者が、馬車を動かす。
ギルベルトの目の色が変わった。
ちなみに、泊まりに来ているアルミンは、リーサと占いをしている。占いと言ってもお遊び。
「じゃあ、今度は、明日の天気を占おう!」
「いいね!」
キャッキャしながら、紙に、線を書いて、木の棒を立てる。
エイッと、転がす。
晴れと雨と曇りに、雪と書かれた的。
誰でも知ってる子供の占い。
転がった先が占いの結果となる。
「あれ。雪だって。」
「夏なのに。」
「夏なのに。」
キャッキャ。文字通り、棒を転がすだけで笑う年頃である。
アイシャもニコニコ。
そんな三人の側に、ツェリがテレビを見ていた。
「…あらやだ。」
「まま、なんか言った?」
「何でもないわ。あなた達、使った道具、片付けなさいよ。」
「わかってる。」
立ち上がり、庭に出るツェリ。
自分のテリトリーに異物が入ってきた。
眉をひそめ、子供たちに、気付かれないように、それを燃やす。
「勝てるはずも無い癖に、よくもやるわね。」
ブスブスと燃えたそれは、触るにも、躊躇う真っ黒な物体。
跡形もなく、消してしまう。
「ままあ!パパがご飯作ってくれるって!何がいい?」
「あら!私はタコ料理が食べたいわ。」
ツェリはそれとなく、それを返した。
「アルミンは。」
「パパにおねだりに向かってる。」
サラトガの元に向かう。
天秤の秤が戻された。
使用したばかりで、かなりの魔力が籠った。
ギブンの手に渡され、厳重に保管される。
暗闇に沈む空間。また開かれる瞬間まで、眠りにつく。
開かれる事が無い様に、願いを込めて。
「ツェリのとこに、またちょっかいを出したみたいだ。」
「そうなの。マルクスがまた荒れるわね。」
「魔王の娘って言う自負が、未だに根強い奴だったから。力を削ぎ落とされてる癖に。」
重いため息をつく。
あの部屋から、もう一つ出された道具。兄の依頼だ。
報復である。サラトガが、ツェリを狙われて、報復に、あの部屋で保管されていた花瓶を持って行った。
普段温厚な人を怒らせるのは、良くないとわかる筈だが、まあ無理だろう。
どれぐらいになるかは、サラトガ次第であるが、まあ、夢見は、暫く、悪くなるだろう。因果応報である。
あのアニマのいる部屋を勝手に侵入して
、アニマを勝手に出す行為を繰り返しては、叱られていて、約1名は、アニマで、古狸をやっつけるんだと宣い、約1名は、自慢するだと豪語し、頭を傷ませている元凶。
その地下深くにある宝物庫は、現在、自由に出入り出来るのは、ギルベルトと家を出たサラトガに隠居しているダグラスのみ。
言わば、簡単に言ってしまえば、ロッシュヴォークの血が流れている事が前提の術式展開になっている。
あまり、開くことの無い部屋であるが、たまに、開かれる瞬間がある。
邪魔が入らない…アルミンがリーサ宅に泊まってるこの日に済ませておく。
銀の扉に、重厚に彫られたドラゴンの姿が彫られており、鱗の筋道に、蒼の線が通っている。
魔力を流し、呪文を放つ。
『開け。』
ギイっと、扉がゆっくり開かれる。
暗い中を入っていく。灯りを灯す。
ここにある物たちは、曰く付きの物ばかりで、断じて、あの好奇心の塊である二人に触らせられない物ばかり。
知識が無いと触れてはいけないし、何よりも、曰く付きとつく名前がついてしまってる時点で、わかるだろう。
《これは、これは、ギルベルト坊っちゃん。》
掠れたような嗄れたような声音がする。
この部屋の番人でもあり、悠久の時間をここで過ごす者。
生命を持ってるようで持たない者。
床からググッと顔が浮かび上がる。不気味に見えるが、そういう仕組みなのだ。
丸々とした球体の顔に、下は、オバケのようにニョロニョロ。
「ギヴン。“天秤の秤”を。」
《はいはい。》
ギヴンは床に吸い込まれ、道具を探している。
暫くすると、ギブンが戻ってくる。
漆喰の漆が塗られた天秤の秤。
魔力の道筋が通るような美しい曲線が彫られている。
《どうぞ。》
「ありがとう。お前が手入れをしてくれるから、綺麗なままで保たれている。」
《役目ですから。天秤の秤など、珍しいものをご所望ですね。》
「困ったやつと言うのは、世の中、多いものだ。」
《ほほ。ロッシュヴォークの宝物を使うとは、なんと、お目が高い。》
笑ってるが、瞳が笑ってない。
ここにある曰く付きの道具は、代々、ロッシュヴォークが守っているが、ある理由で、出される場合がある。
使用者は、限りなく、限定されるもので、ロッシュヴォークの家業の内容に繋がる。
「コルル、今夜は遅くなるから、先に休んでいて。」
「わかったわ。気をつけて。行ってらっしゃい。」
仕事に向かう。今夜の案件は、気が進まない。
馬車に乗り込む。コルルを守るように寄り添う賢いペットたち。
「いけ。」
御者が、馬車を動かす。
ギルベルトの目の色が変わった。
ちなみに、泊まりに来ているアルミンは、リーサと占いをしている。占いと言ってもお遊び。
「じゃあ、今度は、明日の天気を占おう!」
「いいね!」
キャッキャしながら、紙に、線を書いて、木の棒を立てる。
エイッと、転がす。
晴れと雨と曇りに、雪と書かれた的。
誰でも知ってる子供の占い。
転がった先が占いの結果となる。
「あれ。雪だって。」
「夏なのに。」
「夏なのに。」
キャッキャ。文字通り、棒を転がすだけで笑う年頃である。
アイシャもニコニコ。
そんな三人の側に、ツェリがテレビを見ていた。
「…あらやだ。」
「まま、なんか言った?」
「何でもないわ。あなた達、使った道具、片付けなさいよ。」
「わかってる。」
立ち上がり、庭に出るツェリ。
自分のテリトリーに異物が入ってきた。
眉をひそめ、子供たちに、気付かれないように、それを燃やす。
「勝てるはずも無い癖に、よくもやるわね。」
ブスブスと燃えたそれは、触るにも、躊躇う真っ黒な物体。
跡形もなく、消してしまう。
「ままあ!パパがご飯作ってくれるって!何がいい?」
「あら!私はタコ料理が食べたいわ。」
ツェリはそれとなく、それを返した。
「アルミンは。」
「パパにおねだりに向かってる。」
サラトガの元に向かう。
天秤の秤が戻された。
使用したばかりで、かなりの魔力が籠った。
ギブンの手に渡され、厳重に保管される。
暗闇に沈む空間。また開かれる瞬間まで、眠りにつく。
開かれる事が無い様に、願いを込めて。
「ツェリのとこに、またちょっかいを出したみたいだ。」
「そうなの。マルクスがまた荒れるわね。」
「魔王の娘って言う自負が、未だに根強い奴だったから。力を削ぎ落とされてる癖に。」
重いため息をつく。
あの部屋から、もう一つ出された道具。兄の依頼だ。
報復である。サラトガが、ツェリを狙われて、報復に、あの部屋で保管されていた花瓶を持って行った。
普段温厚な人を怒らせるのは、良くないとわかる筈だが、まあ無理だろう。
どれぐらいになるかは、サラトガ次第であるが、まあ、夢見は、暫く、悪くなるだろう。因果応報である。
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