小さなベイビー、大きな野望

春子

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花火

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今夜は花火をするために、昼間に持ってきた宿題を文句言わずに、こなしていく。
夏の風物詩に欠かせないアイテムを欠かすわけにはいかない。


家庭でやる花火は、制限があるものの、火力を抑えている割には、ド派手に、爆発するものもあるし、キラキラと綺麗に火花を散らかす花火もある。
リーサは、サラトガが火をつけてくれた花火をしっかり持つ。幼い子でも安心安全な花火で、金魚花火と言う。火花がバチバチと静かに散りつき、金魚の尾びれみたいに、ゆらゆらと、揺れていく様が見れる。
「あー!消えた!」
「まだあるから。」
火が消えた花火は、打ち消し水に放り込む。
既にいくつもの花火の残骸がある。
こう言ったのは、性格に表れるもので、兎に角、派手好きのスペンサーは、両手に花火を持ち、乱射用の通称、ハリネズミボンバーを放っている。ハリネズミボンバーとは、ハリネズミの針のように尖った鋭利な花火が、容赦ないスピードで、放たれ、バチバチと、物凄い音がする。
「スペンサー、こっち向けんな!」
「ぎゃっ!」
情緒の欠片すらない花火の仕方である。

「いやいや、大人は、花火よりも酒ですな。」
「飲みすぎはダメよ!」
セルギーが酒に手を伸ばすが、そう問屋は卸さない。女性陣からの攻防にあい、こちらも別の花火が打ち上がっている。


「どうして、あいつらは大人しく、花火が出来ないんだ。」
「セルギーが調子こいて、予定にないものを買ってくるから。」
「まあいいじゃないの。綺麗は綺麗だよ。」
金魚花火よりは、威力が強めであるが、鉄板の一つで定番の艶やかな花弁のクインシーと言う花火が美しく舞っている。


「ベイビー、おいで。」
マルクスに言われ、近寄る。
地面に置かれた花火の筒。
「あれ、なーに?」
「見ててごらん。」
フィルの父が遠隔で、火をつけると、ボンッと勢いよく放たれた。ビクッとマルクスにしがみつくが、目は、そちらに向いてる。
打ち上がった花火は、馬や妖精、馬車のような乗り物等が綺麗に浮かび上がり、まるで、メリーゴーランドのようにくるくると舞っている。
「これはね、メリーゴーランドだよ。」
特に女の子に人気な打ち上げ花火だ。ピンクの閃光と可愛らしいポップな花火の形は、確かに可愛い!
わあと感激するリーサ。
「極たまにね、わかるかな?あの上にいる天使が、舞い落ちる時に、キラキラした金色の光を放つとね、お願いが叶うらしいって話があるんだよ。」
「ほんと?」
「ああ、あったね。そんな話。」
サラトガが、肯定するように笑う。
2、3分で全てが落下し、形を無くしてしまうが、いつまでも見ていたい気持ちにさせる。

スプラッシュマウンテンと言う如何程な花火を調子こいて、放ったスペンサーは、光の速度のように速い閃光の餌食になってしまったバーベキューの台に、見事にぶつけた。
お約束のように、フィルとヘレンからの花火より、すさまじい、閃光を浴びた。
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