小さなベイビー、大きな野望

プラネット家

フィルの生家は、プラネット。
そんなに遠くない距離にお家があり、長い夏休みには、必ず、帰省する。
フィルの父親の自慢の菜園などが、広くとられていて、現在、夏野菜の収穫期。
自慢の菜園で取れた野菜たちを料理で振る舞うフィルの祖母は、流石の料理上手。
勢揃いの孫たちが来ても余裕。
フィルを年を重ねた感じになった祖母と強面で無口な祖父と、リーサは血の繋がりが全くないが、我が祖父母同然。
「あーん。ヘレンおばちゃんがリーサを叱るー！｣
「あらあら。何があったの？」
花柄のワンピースを着たフィルの母親は、リーサを抱き止める。
「リーサ、 待ちなさい！｣
「やだあ。｣
「ヘレン。何があったの？」
「お母さん。リーサを渡して。この子ったら、着いて早々、嫌いなものを排除して！｣
「嫌いなもの…？」
リーサを見ると、リーサが嫌いなあの野菜を握っている。緑の悪魔だと毛嫌い、フィルが丹精を込めて作った料理でも、ピーマンがあれば、口にしない。
嫌いな食べ物を意地でも食べないのだ。
「リーサ、それはオモチャじゃあないから、ダメよ。｣
「ピーマン、要らないもん。｣
「子供は大抵、嫌うのよね。｣
苦味を嫌がる子供は大勢いる。
「スペンサー、わかってるのよ！小賢しい！｣
いきなり、ヘレンが叫ぶ。
リーサを囮にして、嫌いなものを抜くような真似をするスペンサーに魔法で止める。
「ぎゃっ。｣
「あんたたち。いい加減なさい！｣
ヘレンの雷が落ちる。


フィルとヘレンには一番下の弟がおり、父親にそっくりな容姿。
寡黙で、がっしりした体躯だが、現在、叱られたリーサによる強制慰めに巻き込まれている。
「ホラス。嫌なら、リーサを降ろして構わないわよ？」
ツェリは、淹れて貰ったお茶を嗜む。
「まま。リーサは、しょげてるの！慰めたらいいよ！｣
「気分じゃないのよー。｣
「ホラスおじちゃん。ままを叱って！娘に優しくしないとダメだよ！って！｣
「あなた、思い通りにならないとすぐにそうするの、やめなさいな。｣
「ままは、もっとリーサを慰めるべき！｣
「嫌よ！あなた、図に乗るじゃないの。｣
ホラスはしきりに、リーサを宥めるように、頭を撫でている。
「どーした？」
「ヘレンおばちゃんに叱られて、しょげてたろ？」
ホラスの息子たち。アルクとメルバ。
焦げ茶色の瞳と髪をしている少年たちで、ヘアバンドをつけてるのがアルクで、前髪をヘアピンで留めてるのが、メルバ。左右に豪快にアイスバーを所持。
「アルク、メルバ。｣
「お前もスペンサーも懲りないよな。｣
「らしいけどな。うちの兄貴が聞いたら、大人の方が辛いってほざくぜ。｣
ほらと、ミカンのアイスバーを口に入れられた。これで、機嫌を直せと言う意味らしい。
「ツェリおば様もいる？」
「平気よ。このアイス、どうしたの？」
「冷蔵庫から拝借してきた。｣
「許可は取ってる。アイスバーだから、溶けないうちに食えよ。｣
「うん。｣
アルクはちゃっかり、アイスの許可を取ってきたといい、メルバは、リーサに垂れていいように、小皿をくれた。
「見てみて。ツェリおば様。面白グッズ。｣
「なに？生々しい。魚？」
「生魚サンダル。｣
「なにそれ？見せてー！！｣
「意外と通気性と履き心地は最高だよ。見た目は、生々しい生魚だけど。｣
リーサが興味津々。
「よく、買ってもらえたわね。｣
「母さんは渋りまくりだったけどね。｣
家限定ならと許可だされたらしい。
「ねえ？リーサが興味津々だわ。どうしてくれるの？」
「いやあ。ツェリおば様。仕方ないんだよ。｣
「リーサだもん。｣
欲しいとおねだりするリーサに無理だわとフィルが許さないわとのらりくらり。
ちょーだいと叫ぶリーサの声が響いた。