小さなベイビー、大きな野望

春子

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オークション

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「ねえねえ。ままあ。オークションってなーに?リーサも行きたい!」
昼食のサンドイッチを優雅に食べていたツェリは、娘の質問に答える。
「オークションって言うのは、端的に言えば、物の売買よ。例えば、ダンジョンで取れた宝石や武器とか…まあ、そう言ったものを、狙って、一番お金を出した人が手にするの。」
「カイヤ行くって行ったでしょ?リーサも行きたい!」
「残念だわ。リーサ。オークション参加には、年齢制限があるの。満18才からよ。」
満18才以下は、立ち入り禁止。
「えー!」
「しょうがないの。決まってるのよ!」
「…ぶう。」
オークション会場は、何処にでも開催されるが、大体は、都市部で行われる。
一大産業の一つで、ギルド関係者はもちろん、商人、個人からも、注目を浴びて、売買が始まる。
オークション会場には、鉄壁のガードマンが配属され、宝を、守っている。
カイヤが行くのは、ベリズムのダンジョン付近にあるオークション゙貪り喰うもの"
物騒で変な名前だが、伝統あるオークションの一つで、カイヤは常連客。
「カイヤは何がほしいの?」
「聞いた話だと、トピアの真珠が欲しいらしいわ。私も見たことはないのだけど、とても美しいんですって。でもかなりの値打ちなのよ。ダンジョンのドロップ品なのだけれど、あのおぞましいベリズムダンジョンの地下深く…エンペラーリッチの宝箱に稀に出る宝石なのよ。トピアの真珠ってこんなに小さくともそうね…家が買えるわ。」
ツェリが細く、このぐらいだと示す。
「えー!そんなの、失くしちゃう!」
「おばかね。失くさないわよ。念入りに保管するの。魔方陣だって、きちんとやるし、念入りに…。」
「誰が取ってきたの?」
「噂ではSランク冒険者らしいわよ。腕がいいのね。ギルドから漏れでた噂では、ギルドでは買い取りが難しくて、泣く泣く…って話らしいわ。」
その前にギルドでは、大規模な買い取りがあり、泣く泣くだった。
「カイヤ、買えるの?」
「充分な資金は持っていく筈だわ。前にトピアの真珠がオークションに出たのは、四十年前が最後だと聞いてるし、ジンが、張り切ってるようだから…横やりさえなければ、可能性は高いわね。」
「護衛は?」
「もちろん、つけるわよ。オークション後の狙い目にならず者が、狙うなんて、あることなの。忌々しいけどね。」
「ままは行かないの?」
「私が欲しいのは、今回はなかったから、パスね。それにお兄様があまり許してくださらないの。オークションは夜にやることが、多いから。危険だと言ってね。そのSランク冒険者が私の狙いであるブルーワイズを取ってきてくれたら、参加したいわ。」
ブルーワイズとは、その名の通り、輝かしい碧の原石で、暗いところでも輝きは失われず、何よりも、圧倒なまでの存在感。
これもまた中々、取れない。

「小さな粒程度の宝石にいくら、掛けるんだよ。」
「やめとけよ、この手の話題は、あの二人の領域。」
双子は、大枚を払ってまで、宝石を欲しがる女性の気持ちがわからない。


「なあなあ。父さん。ドラコンの血を買ってくれよー。」
リーサではなく、スペンサーが、マルクスにわがまま発令中。
「ダメ。高いんだから。何に使うの?薬なんて、まだポーションしか、作ってないでしょ?ダメ。」
ドラコンの血は、万病の薬の一部。
「今回出るのは、ドライブドラゴンの血なんだよう。比較的、他のドラゴンよりは安いってー。」
ドライブドラゴンとは、飛行に特化したドラゴンの一種。
素早さと風魔法を得意としていて、遭遇したら、一巻の終わり。
「ドライブドラゴンってアニマ位?」
「個体さによるよ。ドラコンの中では、弱い方に入るかな。ワイバーンよりは強いけどね。」
のんきな父娘。
スペンサーは、此度、゙貪り喰うもの"ではない゙深淵の時"というオークションで、目玉になる商品を耳さとく、聞いていたらしい。
フィルがわがままを言わない!とスペンサーを叱る。
「ドライブドラゴンの血はいくらなの?」
「そうだね。いくらだろうね。」
終いには、容赦がないロクサスが、お前の腕で、ドラゴンの血は、勿体ないから、諦めろと、力付くで離された。


ちなみにカイヤは、お目当てのトピアの真珠は手に入らなかったそうだ。
ジンが粘りに粘ったが、無理だったらしい。
後日、カイヤが愚痴を溢しにきた。
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