小さなベイビー、大きな野望

春子

文字の大きさ
上 下
62 / 159

閑話(1)

しおりを挟む
リーサは、リビングのソファーで猫のように、だらりとしていた。
暇でつまらないのだ。
ジオルクもオフィーリアも今日は予定があるため、遊べないらしい。
ならばと、次々に連絡したが、皆、予定があると断られ、若干、拗ねている。
「つまんなーい。」
家から一人で外に出ることは、許されてない。
フィルは家事で忙しく、ツェリは、何やら、用事があると出掛けた。どこに行くのか、聞いたが、お土産を買ってくるからと言われ、渋々、納得。
「ままの部屋で遊ぼ。」
思い立ったが吉日。ツェリ専用の部屋へ向かう。
従兄弟たちは、極力、ツェリの部屋へ近づかない。


夫婦の寝室とは別に用意されてる部屋は、充分な広さがあり、特にツェリ専用の部屋では、ツェリの趣味の塊。
美に余念が無いツェリの拘り抜いたドレッサーに、職人に作らせた、姿鏡は、細工も細やかで、金色の縁取り。所々に輝かしい宝石が散らばってる。
ツェリはこの部屋以外に、衣装部屋があり、たくさんの洋服や宝石類が保管されてる。ちなみにそこは、サラトガが管理してる。
ツェリの部屋の絨毯は、手触りが良く、裸足のままでも、気持ちよい。
猫足のソファーの生地も拘り、作らせたと聞いた。リーサにとってみれば、どれだけ、高級だろうが、価値が高いだろうが、気にしない。
ソファーは、寝転がるものである!
ドレッサーの引き出しから、ツェリがいないので、漁る。
ツェリが片っ端からお試しで使ってる化粧品や香水が保管されており、ツェリ自慢の肌の健康を維持する美容水のボトルを無意味にシャカシャカ。
日焼け留めクリームやツェリの好みではなかった香水の残りを発見。
ゴソゴソ、探す。
飽きたら、片付けて、部屋を出る。

次に向かったのは、衣装部屋だ。
劇場の衣装部屋に負けず劣らずの洋服の種類に、サラトガによる管理が行き届いてる為に、綺麗に保管されてる洋服たち。
ツェリはハッキリとした色合いがよく似合うので、衣装部屋にある服は、色鮮やか。
特にツェリは赤を好む。
服とは違う棚に保管されてる靴は、ほとんど、ピンヒールの靴で、オーダーメイド。
高いピンヒールの靴は、リーサからしたら、大人の履き物で、昔、履いたら、大きさもブカブカで転けた。
でも、たまに履きたくなるのだ。これも女子力だろうか?
目に入ったピンヒールを履いて、小鹿のようにプルプルしながら、行ったり来たり。
「ふう。」
いい汗を掻いた。運動はあまり好きじゃないリーサにとったら、誉められる程の運動の量ではなかろうか?
自画自賛である!
手触りがいいお気に入りの母のコートをハンガーからずり下ろし、羽織る。うん!!大人だあ!!
そのまま、ずりずりと、地面につけたまま、部屋を出る。


「起きなさい。リーサ。」
うるさいぞ!リーサは、今、忙しいのだ。眠たいのに起こすなんてひどいぞ!
「…なーに?」
ブスッ。起こされ、機嫌が悪い。
「ままの部屋で何をしてたの?」
「部屋??」
「私はあなたがお洒落に興味を示すなら、勝手に入って、口紅を塗ろうが、ままの洋服を着ようが、靴を履こうが、気にしないわ。」
リーサは、キョトン。まだ頭が現実に起きてない。微睡んでいる。アクビを掻いてしまう。
「でもね?あなた、それが嵐にあったように、部屋が滅茶苦茶だわ。それは容認ができなくてよ?」
「滅茶苦茶?」
「あなた、片付けたつもりでしょうけど、全然ダメだわ。遊んだ香水の蓋は開けっ放し、遊んだ靴は、真っ直ぐに置かない。極めつけは、ままのコートを下敷きにしてる。」
リーサは気づいた。あのコートを下敷きにしてる。肌触りが良いので、寝たときに下敷きにしてしまった。
「悪戯もほどほどにしないと、ままも怒るわよ?」
「いひゃい。」
頬をつねられた。

「あれで許されるのは、リーサだからだ。」
従兄弟たちは、遠くから従姉妹を見る。
あれが自分達ならば、絶対に雷が落ちる。
悪戯ピンキーなら、今度こそ、殺られてる筈だ。


「もう。あの子ったら。お洒落に興味を示さないで、おもちゃとして扱うんだから!」
「まあまあ。リーサはまだ幼いから。」
ツェリの憤慨にサラトガは宥める。
だが、我が子ながら、ツェリの高級な化粧品をおもちゃのように、振るい、遊ばなければ、一生困らないような金額がするコートを下敷きにするなんて、大物だ。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

隠された第四皇女

山田ランチ
ファンタジー
 ギルベアト帝国。  帝国では忌み嫌われる魔女達が集う娼館で働くウィノラは、魔女の中でも稀有な癒やしの力を持っていた。ある時、皇宮から内密に呼び出しがかかり、赴いた先に居たのは三度目の出産で今にも命尽きそうな第二側妃のリナだった。しかし癒やしの力を使って助けたリナからは何故か拒絶されてしまう。逃げるように皇宮を出る途中、ライナーという貴族男性に助けてもらう。それから3年後、とある命令を受けてウィノラは再び皇宮に赴く事になる。  皇帝の命令で魔女を捕らえる動きが活発になっていく中、エミル王国との戦争が勃発。そしてウィノラが娼館に隠された秘密が明らかとなっていく。 ヒュー娼館の人々 ウィノラ(娼館で育った第四皇女) アデリータ(女将、ウィノラの育ての親) マイノ(アデリータの弟で護衛長) ディアンヌ、ロラ(娼婦) デルマ、イリーゼ(高級娼婦) 皇宮の人々 ライナー・フックス(公爵家嫡男) バラード・クラウゼ(伯爵、ライナーの友人、デルマの恋人) ルシャード・ツーファール(ギルベアト皇帝) ガリオン・ツーファール(第一皇子、アイテル軍団の第一師団団長) リーヴィス・ツーファール(第三皇子、騎士団所属) オーティス・ツーファール(第四皇子、幻の皇女の弟) エデル・ツーファール(第五皇子、幻の皇女の弟) セリア・エミル(第二皇女、現エミル王国王妃) ローデリカ・ツーファール(第三皇女、ガリオンの妹、死亡) 幻の皇女(第四皇女、死産?) アナイス・ツーファール(第五皇女、ライナーの婚約者候補) ロタリオ(ライナーの従者) ウィリアム(伯爵家三男、アイテル軍団の第一師団副団長) レナード・ハーン(子爵令息) リナ(第二側妃、幻の皇女の母。魔女) ローザ(リナの侍女、魔女) ※フェッチ   力ある魔女の力が具現化したもの。その形は様々で魔女の性格や能力によって変化する。生き物のように視えていても力が形を成したもの。魔女が死亡、もしくは能力を失った時点で消滅する。  ある程度の力がある者達にしかフェッチは視えず、それ以外では気配や感覚でのみ感じる者もいる。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

処理中です...