小さなベイビー、大きな野望

春子

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ドワーフ

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錬金術科には、ドワーフの子供たちも多く、生成することを得意とする生徒が在籍している。
リーサの学年は、魔術科と錬金術科が、大変仲良く、お互いの科を行き来するほど。
のどかに廊下で、茶を広げるリーサたち。
ドワーフ特有の体型と真ん丸なお目目は、姉特製のお茶を振る舞う少年こそ、コハク。
「ヒイロちゃんが作ってくれたの。飲んでみて!」
「わあ!透き通ってる!!これ、花びら?」
「うん!アカミツって言うお花なの。お茶にぴったり。」
「リーサ、このお菓子も美味しいよ!」
アルミンも頬張る。
「おいしい。」
「モグモグ。」
フランとノアは、ハフとため息を溢す。美味しいと満面。
「あなたたち!!何をしてるんです!?」
ゴットリーとコハクの担任であるジュリーが登場。ジュリーはドワーフであり、錬金術科一年一組の担任。
「あ!ゴットリー先生だあ。」
「ジュリー先生。」
「廊下で何をしてるんです!!」
「なーに?」
ニコニコ。怒られると思ってない。シートを敷いて、お茶とお菓子を広げてる。
「あ!ジュリー先生飲む?ヒイロちゃんが作ってくれたの。」
「違うのよ。コハク。ここは学校でね?廊下でピクニックはダメなの。」
「あなたたち、並びなさい。」
「えー!はーい!」
こっちはこっちで、ゴットリーに並ばされ、お説教。慣れていて、四人、並ぶ。
「いいですか!廊下で、お茶会を開かない!!通行の邪魔です。それから学校は、遊び場じゃありません。お茶を飲むなら、食堂に行きなさい!」
「ごめんなさい!」
ゴットリーはこの四人に常識を与えるのが、役目であり、立派な大人になってほしいと、今日も教える。
ジュリーはジュリーで、コハクにしてはいけないことを言い合わせてる。


「ねえねえ。今度ね?コハクのお家にお呼ばれしたの。行ってもいい??」
「コハクの?」
夕食時にお呼ばれしたことを話した。
コハクのお宅は、家から30分かかる。
工房と自宅が一緒で、何度か、依頼したこともある。
「僕が付き添うよ。休みだし、マシューたちにも会いたい。」
サラトガが付き添う予定。
「手土産はなににしましょう。」
「ねえ。それより、あなた、行くのは、構わないけれど、羽目を外さないでよ?工房に入れてもらえてもあちこち、触らないのよ?ドワーフたちにとったら、命と同じものなのだから。」
「わかってるもん。」
「コハクのお爺様は、あの゙エルモ"よ?孫ラブ以外には、ドワーフの錬金術師の三大に数えられる程の人物よ。作ったものは、全てが、価値がつけられないほどの立派なもの。」
「コハクのおじいちゃんは、コハクラブだよ。コハクもコハクのおじいちゃん、大好きだよ!」
「ええ。そうね。誰もが知ってるわ。違うのよ。彼が作る工房は、神聖なもので、あなたたちの遊び場じゃないことをままは、言いたいの。わかる?」
「わかる!!わかる!!」
「サラトガ。任せたわ。」
「うん。」
羽目を外したら、手が負えない。
弁償しきれないものを壊したりしたら、大変まずい。


コハクの家は、工房と自宅が合体してる家で、住み込みのお弟子さんたちのお家も隣接してある。
豪快で、活気のある工房と違い、自宅は、静か。
コハク宅は、落ち着いた洋館で、女性陣が強いのか、おとぎ話に出てくるような世界観。可愛らしい家具などが、誂えている。
コハクには、四人のお姉さんがいて、コハクは唯一の男の子。溺愛されている。
「いらっしゃーい。」
ハグ。親愛の証。ニコニコ。
ぎゅうぎゅう。よしっ。
「お邪魔します。」
サラトガが手土産をコハクの母親に渡す。
コハクの母親は可愛らしい顔立ちをしていて、ありがとうと貰う。
「今日はね!工房はお休みなの!お弟子さんのお休みだから。お家で遊ぼ。」
「違う。コハク。工房はあなたの遊び場じゃありません。お義父様が許しても、この私が許さないわ。」
義父は何かとコハクを甘やかす。工房の行き来は自由に出入り出来る。
お弟子さんたちにも可愛がられ、構って貰えるのが、嬉しいのだ。
気持ちはわかるが、作業中、事故があっては、大変。それに、価値をわかってない息子が何かしら、やらかしたら、目も当てられない。
かつて、幼いコハクが工房で、出来たばかりの義父の品を玩具のように扱い、全身、血の気が失せるような思いをした。
義父はヤンチャだと笑っていたが、母としては、やめて!と叫び出した。
「コハクのまま、工房で遊んだの、まだ怒ってる?」
リーサは、ヒソヒソ。
「そのとき、謝ったもん。大丈夫だよ。」
「そうだよね!」
「うん!」
甘えん坊たち、ウンウン、うなずく。背後で保護者たちが、見つめていても。
甘えん坊たちとコハクが工房で遊び出した。いや、張り切って、見学させたコハクの祖父が元凶ではあるが。テンションマックスの幼児に、貴重な物をホイホイ、渡すなと、つい、口調を荒げたのは、ご愛嬌。
コハクの母は保護者たちに聞いてと目ですがる。皆、わかっていると、力強く、うなずく。

キャハハと遊び出す。エルモ特製の玩具。
小さな円盤のようなもので、真ん中に椅子があり、そこに乗れるようになっている。ハンドルのような物がついており、握ると、前進する。
「また変わった品物を作った。」
「全ては孫のためによ。材料聞きたい?」
「遠慮しておきたい気分だよ。」
コハクの母親の目は遠い。
何故なら、孫のために、作られたあの品の材料は、火の山の鉱山で取ってきた魔石を原型に、魔鉄を成形したものだ。外側には、美しい魔方陣が刻まれている。
コハクは大喜びで試運転をした。可愛い可愛いと写真を撮る様は、業鉄のエルモと呼ばれる男と見られない。
あれが、運転ミスによる激突するたびに、当たる度に、悲鳴をあげる彼女。
「コハクまま、大丈夫??泣いてない?」
「ままも乗りたいのかな?じいじに作って貰おうかな?」
順番で乗ってるリーサたちは、コハクの母親の表情に首をかしげる。
あれはわかってないな。とサラトガがなんとも言い様のない顔を浮かべた。

「コハクのおじいちゃんは今日はお留守?」
「うん!お友達ん家だよ。お土産をくれるって。」
おままごとに興じる。
見事な玩具。飾り細工が、見事で、おままごとの小物として良いの?ってレベル。
ちなみに姉たちも使用していた。大事に使われてる。
「じいじがね!」
祖父自慢大会勃発。
負けず劣らずの皆々様。各々、喋る喋る。
聞いては笑い、賑やか。


"業鉄のエルモ"の作る作品は、値段がつけられないほどの逸品を意図も簡単に作る才能。
だが、作品には、情熱が強く、より厳しい。弟子の育成にかなりの力を注ぎ、ドワーフ以外の弟子も積極的に受け入れている。
ドワーフの特性で大酒。水のように浴びる。
かなりの酒豪で、酔いつぶれるまで、かなり時間、かかる。
家族を大事にし、孫たちを溺愛。中でも、孫の末、コハクは、蜂蜜より甘い。
「帰ったぞ!!」
「じいじ。」
「あなた、お待ち。酒臭いわ。風呂に入りなさい!」
可愛い孫を受け止めるが、妻に風呂に入れと強制連行。我が家の秘訣は、妻に逆らわないこと。
「コハクも入る。」
「ダメよ。あなたはさっき、入りました。もう寝る時間。ほら。」
「やーん。じいじ。」
「お休み。よい眠りを。」
子供部屋に連れていかれる。子供部屋の夜の時間は、安眠に寝れるように、天井に細工されてる。
祖母に額にキスされ、ゆっくり、寝る。
明日もいい日になりますように。
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