小さなベイビー、大きな野望

春子

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デヴァイス

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マルクスの部下で秘書のデヴァイスは、まだ若いが、頭がキレ、フットワークが軽い。
お洒落に余念がなく、見た目は、完全なるチャラ男。
ツェリやリーサからは、軽じられている。
「デヴァイスの癖に生意気だぞ!」
「残念でした!!当たりませんよ!」
「~おじちゃん!!おじちゃん!!デヴァイスがあ!!」
「ベイビー。」
返り討ちにあったリーサをだっこ。
「マルクス様。お急ぎを!」
「うるさいぞ!デヴァイス!!おじちゃんはリーサと遊んだ方が楽しいんだから!邪魔するな!!」
「ベイビー。ごめんね。早く帰れるように、するから。」
「マルクス様。違います!!違います!!ちょっ。投げないで。」
リーサはペンやらハサミをデヴァイスに投げつける。
「ダメダメ。めっ。」
きしゃああと逆撫でしたような猫のように威嚇するリーサに、マルクスはよしよしと宥める。
「ベイビー。デヴァイスにちょっとだけ、優しくすることは出来ない?」
マルクスに言われ、考える。

忘れもしないあの日。
その日は、人生初めてのマルクスに対して、バカと言ってしまった最悪な日である。
リーサと遊びにいく日だったのだ。にもかかわらず、デヴァイスが、急な用件で、マルクスを連れ出そうとした。抵抗したのは、リーサである。
「やああ。」
「可愛いベイビー。ごめんね。」
泣くリーサに必死に宥めるマルクス。
「…っ。おじちゃんのバカ!!」
はっ!!リーサは自分で何を発したのか、理解し、口を塞いだ。そんな言葉を言うつもりなんて、微塵もなかった。益々、目に涙が溢れていく。
その隙に、デヴァイスが、マルクスを連れ出した。
リーサはショックのあまり、へたりこみ、フィルが慌てて、リーサをだっこする。
「うわああん。」
「大丈夫よ。」
「おじちゃん…に…バカ!っていっちゃったあ!…うえっ。嫌われたらどうしよう!!」
「謝れば大丈夫よ。」
マルクスは気にしたりしない。むしろ、約束を反故にしてしまったのだ。
申し訳なさを感じてるはず。
リーサは、泣き止まなかった。

一日中、悄気ていたリーサに、マルクスは、帰宅後、フィルから聞いた様子に、慌ててリーサに近づく。
マルクスを見た瞬間、リーサは、盛大に泣き、しがみついた。
「うわああん。ごめんね!!バカっていった!!」
「いいんだよ。私こそ、ごめんね。」
「わーん。」
マルクスは申し訳なさで強く抱き締める。
が、水を差すのが、デヴァイスである。
「やあ、良かった!!良かった!」
ピクッ。
泣き顔のまま、デヴァイスに向く。
憎き、マルクスを奪った相手である。
「駄々の仕方がツェリ様。そっくり。流石、親子!!」
イラッ。
「デヴァイス。ありがとう。もう帰っていいよ。」
「マルクス様、では、また明後日、お願いしますね。うおっ。」
感情がクズクズのリーサは、デヴァイスに攻撃した。
「残念でしたあ!!当たりませんよ!」
パチコーンと音がするようなウィンク。
デヴァイスが避けたのだ。まあ、リーサの反応など、遅いのだが。
ブチブチ。
リーサは、足元をボコボコ叩く。
「はは。痛くありませーん!!」
「!!!」
悔しい。マルクスがデヴァイスをたしなめようと動くと、それより先に、派手な音が、デヴァイスに降りかかる。
「ウザいわ。」
デヴァイスに雷を落とすツェリ。
「顔がムカつくわ。声がうるさいわ。態度がなめ腐っていて、腹ただしいわ。鬱陶しいわ。」
デヴァイスが床に落ちている。
「お兄様が過労で倒れたらどうしてくれるわけ?あなたが過労で倒れても、微塵も何も感じはしないけれど、むしろ。お兄様のために、馬車馬のように働きなさないな?あと、リーサをおちょくるんじゃないわ。何様なの?生意気だわ。」
「ちょっ…加減なさって…。」
「うるさいわ。」
グリグリとピンヒールで、デヴァイスを攻撃。
「やめなさい。目を離した隙に!」
フィルが仲裁。
これから、リーサは、デヴァイスに対する態度は、ガルガルになった。

回想が終わり、リーサは答えた。
「やだ!!」
優しくしたくない!
「まあ。お嬢様ったら、いじわるう!!」
「うるさい!!」
「で・も・マルクス様は、いただきますよ!」
パチコーン。
イラッ!!!
一言が余計、態度が余計である。
クッションを投げるが、可憐に避けられる。おーほほとふざけた笑いだ。
「デヴァイス。やめなさい。ベイビー。ごめんね。終わったら、直ぐに帰るからね。」
「…早く帰ってきてね!デヴァイスはやっつけていいよ!」
「あれ?ひどい。」
ありったけの力で脛を蹴った。いてえ!!と叫ぶデヴァイスに盛大のバーカと叫ぶ。
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