小さなベイビー、大きな野望

春子

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色町サイダー

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お昼御飯に出されたオオシロ・サーモン丼をモグモグ、食べる。サーモンの中でもかなり、見た目がインパクトがあり、丼に焼かれたオオシロ・サーモンがご飯の上に鎮座してる。かじりついて、身を食べると、脂で唇、テカテカ。見た目で嫌悪しがちになるが、味は絶品。目さえ、見なきゃ、良いのだ。皮は剥ぎ取られてるので、オレンジ色の綺麗な身と頭と尻尾はついてる。
我が家でもその見た目から、食べるのは、もっぱら、スペンサーとリーサのみ。
二人の唇はテカテカである。
「ベイビーたちが好きだから、作ったけれど、美味しそうに見えないのが、残念だわ。」
「美味しいよ!」
他のみんなは、ムニエルにした普通のサーモンを食べている。
オオシロ・サーモンを好むのは、チャレンジャー。
「目さえ、なんとかすれば、いけそうだけど。このままがいいんでしょう?あなたたち。」
「うん!」
オオシロ・サーモンはこれが完成形だ。
「まあ、栄養もあるし、好きならいいんじゃない?」
「そうね。」
昼御飯を食べていたら、クロッグが鳴る。
ハイハイとフィルが応対。
「ベイビー。カルマからよ。」
「カルマ?」
モギュモギュしながら、ゴクンと飲み込んで、変わる。
「もしもし!どうしたの!」
「昼時にごめんな。あのさ、お前、昼ご飯、食ったら、暇??」
「暇だよ。」
「なら、家に来ないか?今、みんなに声をかけててさ、実はー。」
ウンウンとリーサはうなずく。
「おばちゃん。カルマん家に行きたい!」
「え?何?カルマのお宅?」
「色町サイダーをもらえるって!消費期限ギリギリなんだって。みんなを誘うって。」
「付き添いは必要だわ。ベイビー。」
「マッキー。オルドー、いこうよ!」
「マッキーとオルドーだけじゃ、不安だわ。スペンサー。ジャッキー。ついていって。」
「いいけど。」
「あのね!」
色好い返事をする。


カルマが住む場所は、色町で働いてる家族たちが住むエリアにあり、色町に入るには、東西南北、ぐるりと大きな門で囲まれている。
カルマが住む住居地は東の門のエリア。四天王の一人、マダムが仕切る店で働く人々の住居がズラリと並んでる。
「奥には入れないけど、ゆっくりしていけよ。」
カルマが出迎える。カルマの家は、四階たての住居の二階の端にある部屋がカルマ宅。母親と二人暮らし。
「この前の祭りの残りなんだ。ここらにいる奴等は、サイダーなんて、いつでも手に入るから。遠慮せず、もらえよ。」
祭りで出されたサイダーの残りらしく、処分品にも捌けず、無駄になるよりはと、もらってもらおうと考えた。
「全員は呼べねえから、チマチマとな。うちは手狭だからさ。」
二人暮らしには適度のある部屋ではあるが、確かに、かなりの人数がここの部屋に集まったら、狭い。
「フランのやつも、ここに来ると、興味津々だから。好奇心旺盛、お前と一緒。」
「フランは誰と来たの?」
「アンネとノア。」
日に分かれて呼んだようだ。
「あの門の中にはいくなよ。中に入れんのは、成人過ぎた大人だけだぜ。」
「リーサはいいこだもん。」
「お前、四天王に顔を覚えられてるんだから。あの時だって、四天王は頭を抱えてたってもっぱらの噂だった。」
「あれは、オスカーが悪いの!リーサに嘘ついたあ!」
リーサを連れた要注意人物が色町のある賭場に現れた。頭を抱えたのは、四天王だ。原則、未成年は立ち入り禁止区域。
特に賭場を仕切る四天王のうちの一人、ボス・ウォーレンか新興勢力の賭場でハルベルの小さなお姫様に賭場をやらせたとなれば、ハルベルからの追及だけでなく、いくら、新興勢力のせいだとはいえ、黙っていられない事案。
その新興勢力も元は外から来たばかりの奴等は、四天王の領地を奪おうとしてる。が、その件で、早々に潰すことに決めた、ウォーレンの凄まじい攻撃は、新興勢力の形も痕もなかったそうだ。
「ほんとかよ。」
ほいとサイダーを渡す。色町のサイダーは、炭酸が他のサイダーと比べてきつめ。
だが、それが割りと好き。喉を刺激するその強さが、なかなか良いのだ。中にあるビーたまも綺麗で、いつも小袋にいれて、保管してる。
手慣れた様子で、カルマが瓶の蓋をあけてくれた。シュワシュワした泡が流れ、落ち着くと、それを飲む。
「んー!!!」
ピリピリ…。喉を刺激する。
甘くてシュワシュワして、美味しい。
「はは。うまいよな。」
「色町に来ないと買えないから、なかなか、手に入らない。」
「まあしょうがねーよ。このサイダーだって、元はおれらみたいな奴等に買えるように、出来たやつだから。」
大抵は、夜に活動する保護者が、出掛けられない分、テリトリー内で買えるように、発明されたものだ。
「カルマのままは?」
「今日は、非番。奥で寝てんよ。」
カルマの母はマダムが仕切る店のウエートレス。
カルマに似た性格で溌剌としている。
「フィルさんによろしくな。ありがとうな。この前、母さん、喜んでた。」
「伝える!」
「暮れる前に帰れ。マッキーたちもまたな。」
「サイダー。ありがとう。じゃあな。」
カルマは手を振る。リーサも手を振った。


「あ。マッキー。マダムだよ!」
「ばか。指指すな。いくぞ。」
「外で呼ぶなって言われたろ。」
オルドーが口を塞ぐ。ジャッキーが最年長として、頭を下げる。
流石のスペンサーも黙る。


通りの向こう側で、赤紫のドレスに帽子を被った女性が馬車の中から外を見ていた。
「あれはリーサか。」
「おそらく、カルマのところに行っていたのでは?」
秘書が答える。
マダムは、はあとため息。
「あれはなにもわかっていない子だよ。」
四天王の一人で肝も据わっており、抱えてる組員、ひいては、従業員は、我が子同然。
「マダム。ご報告が…。"フェイク"が現れました。」
「あの小娘はよっぽど、死にたいのかね。」
マダムは、部下に命じた。
色町サイダーの瓶を割り、中からコロッと綺麗なビー玉が床に落ちた。

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