小さなベイビー、大きな野望

春子

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マリーウェザー・ミレアム

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ミレアム家は、ハルベルの遠縁に辺り、両家は仲良し。生業に、魔物などの肉を解体する解体屋とたくさんの家畜を飼って、生計をたててる。
緑の多い土地にミレアム家があり、その周辺は、ミレアム家の縄張り。
かなり、手強い家畜を何頭を飼ってる。
「きゃあ!」
歓喜するアルミン。鉄柵の向こう側に、オオツノ・バイソンの群れがいる。黒い艶々とした体躯に、どしっとした大きな脚。
かなりの強めの角で、武器にもなる強度さと、突き上げたら、確実に、致命傷を与えられる程の威力を持つ。この鉄柵も、特別製で、バイソンが柵に当たっても、倒れない、壊れない仕様。
オオツノ・バイソンの一体がアルミンに気づいたら、群れで、押し寄せる。
ドドドド…
リーサは地面が揺れたので、わあとマリーに抱きつく。大丈夫だとマリーが支える。
「アルミンを覚えてるの?」
「モオオオ。」
「バイソン、デカイ。」
「そうなの。あの角は生え代わりのときは、良いのよ。武器になるし、金になるし。拾うのに少し、手間取るけど。大人しくさせなきゃいけないから。体力勝負だわ。」
オオツノ・バイソンの角は、丈夫で、武器の材料として、高価になる。周期は二年に一回、角の生え変わりがある。落ちた角を拾う。
が、バイソンはこう見えて、獰猛。縄張り意識が強くて、縄張りに入った侵入者には容赦なく、角で、突き上げる。
「うちは解体屋も兼ねてるけど、肉の採取だけは、冒険者が取るような魔物の肉だけだからね。うちの家畜たちは、肉の採取じゃなくて、角とか、毛とか、玉子とかメインに取るからね。一介の冒険者は、うちをミニ・ダンジョンと言うわ!」
「ねえ。マリー、アルミンがバイソンから離れないよ。」
「アルミン。バイソンはあとにするわよ!」
「わかった!」
「アンジェリカおばちゃんのスコッチマフィン、楽しみ。」
マリーの家に向かう。

「よく来たね!」
恰幅のいいマリーウェザーの顔の元になるそっくりなマリーウェザーの母親、アンジェリカ。
逞しく、豪快。癖っ毛の金髪に落ち着いた青の瞳。
布地のエプロンを着て、出迎え。
「アンジェリカおばちゃん。」
「ハイハイ。よく来たね。ほら。手紙をお寄越し。」
リーサとアルミンは手紙を渡す。フィルとコルルが認めた手紙だ。
「あんたたちがいいこに出来たかは、今日のお手伝い次第だからね!気張っていくんだよ!」
「はーい!!!」
そう。二人はお手伝いしに来たのだ。

「あんたたち、約束は!」
「アンジェリカおばちゃんの言うことを聞く!!」
「動物に夢中にならない!」
「刃物に触ったらダメ!!」
「気をそらさない!」
キリッ!
「あんたたちに頼みたいことはね!うちのヤギの餌やりと馬の餌やりとブラッシングだよ。この二頭は比較的、大人しいからね。マリーの真似をしな。ゴルザ。このこらを頼んだよ!あたしは、せっつかれてる魔物の解体をするからね!」
「はい!」
農家に相応しくないガタイの良い青年で、元冒険者。事情で冒険者は辞めたが、縁があって、ミレアム家に雇われている。

「目付き、凛々しいね!」
ミレアム家、自慢のヤギは普通のヤギとは違う。
ミレアムに来たから、こうなったのか、わからないが、筋肉質で、気高い。
「これが餌よ。ほら。」
ドサッ。麻袋に入れられた山盛りの餌。
マリーは軽々、持つ。
ちなみに、リーサやアルミンは持てない。
ミレアム家の特有の餌ブレンドを各ヤギの待つ、お皿に持っていく。スコップで。二人は楽しそうにキャっキャしながら、盛っていく。
「ゴルザ。デイジーねえ様はまだ帰ってこないの?」
「デイジー様は、今日は、獣医の先生の講義に出掛けてますよ。貴重な時間が取れたみたいで。」
「なるほどね!デイジーねえ様は、獣医になりたいんだものね!」
デイジーはマリーウェザーの二番目の姉で、昔から獣医になりたいと、言ってる。立派な夢だと家族からも応援され、今回は、有名な獣医の先生の講義が聞けると、嬉々として、向かった。
「あー!服を噛んじゃダメだよ!」
リーサの服を引っ張る子やぎ。
マリーが子やぎを離す。
子やぎ程度なら軽々。
「子やぎ、重たくない?」
「慣れよ。慣れ。」
マリーは、子やぎを親の元に放す。
「次は馬ですよ。」
ゴルザが馬小屋に案内していく。

これまた、ミレアム家に来たからなのか。
プライドの高い馬ばかり。ブラッシングに命を掛ける。
大人の馬は蹴られる可能性があるため、子馬のブラッシング。ブラシですいていく。
「うちの馬たちは、プライドが高すぎて、乗る人を選ぶのよ。馬にも好みがあるの。」
「そうなの?マリーは乗せてもらえるの?」
「そうね。でもまだ一人では乗れないわ。ねえ様か母様とじゃないと。あと一、二年で乗りこなしたいわ。いまは、まだ、大人しい馬で、練習中よ。」
「馬って一人で乗れるの?」
「そりゃあ、練習がいるけど、乗れるわ。御者とか、そうじゃない。」
「確かに。」
颯爽と乗りこなす姿に憧れる。

「よく手伝ってくれたね。ほらおやつだよ!」
「わーい。」
こんもり盛られたスコッチマフィンを手にとる。素朴な味わいで好みでジャムをつけるが、リーサはそのままのプレーン味が好き。
アルミンは、コケモモのジャムを塗り、美味しそうに頬張る。マリーは、王道のイチゴを満遍なく、塗り、パクリ。
「そうだ。おじちゃんは。」
「宿にいるよ。」
マリーの父親は冒険者たちのための宿を経営している。見た目は、ひ弱で優しげだから、カモにしてやろうとするバカがたまにいるが、背後に誰がいるのか、理解してないバカは、たちまち、消えていく。
マリーの父は羊のように穏やかで、アンジェリカや娘たちをかわいいお姫様だと言う。例え、怪力で、口より、手が先に出ても。
評判がよく、誠実で、冒険者たちには好評なマリーの父親。
「そうそう!リーサ。あたしね。今度から、リリーエおばあ様の行儀見習いを受けるの!」
「行儀見習い?おばあちゃんの?」
リリーエは、ツェツリーエの母でリーサの祖母。
いまは隠居していて、元は、行儀見習いの先生。かつては、フィルも生徒で、フィルは、リリーエの愛弟子。
「そうよ!ニコルのお嫁さんになる前に、勉強したいからね!リリーエおばあ様に直談判したのよ!そしたら、リリーエおばあ様が、是非って!」
「おばあちゃんとのおいかけっこは好き。」
「それは、あんたに説教したいのに、逃げるから。」
「アルミンも好きだよ!お膝に乗るの、好き。」
リリーエは、厳しくて、ツェツリーエにとっては、彼女の説教は勘弁願いたいと言っていた。
「おばあちゃんは、リーサに針は持ったら、めって。」
「そりゃあ、あんた、こめかみ、すれすれに、刺さりそうになったら、焦るわ。」
「ままも触ったらダメだって!」
ツェツリーエに刃物を持たせてはならない。ハルベルでの約束事。
「リリーエおばあ様の行儀見習いは定評があるし、淑女教育だから、いいお嫁さんになれるひと多いし!今から楽しみだわ!刺繍作りが始まったら、あんたたちにも、作るわね!楽しみにしてて。」
「うん!」
マリーは二人のお姉さんみたいな存在だ。
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