小さなベイビー、大きな野望

いつもの朝

大家族の家は、どこも、朝は、賑やかしい。
この家の朝は特に。
キッチンから、良い匂いがする料理を次々に、作っては、息子たちに配膳を促す、この家の家事を担ってる、フィル。朝からいつも大忙し。チョコレートのような髪をお団子で纏め、落ち着いた綺麗な翠色の瞳をしており、今は、長年、愛用してるエプロンを身につけ、お玉を片手に、スープをよそう。彼女は子沢山であり、息子を十人。
一番上の子は、今年、魔術学校の大学に入学。今も、率先して、手伝っている。
ガヤガヤし始めたリビングに入ってきたのは、双子のマッキーとオルドーだ。この双子、瓜二つだが、金髪で目の色は、両親それぞれの瞳を受け継いだ。マッキーは、父親の蒼い瞳、オルドーは、母の翠色の瞳を受け継いだ。
そんな双子に連れられてやって来たのは、我が家の最年少であり、実際は姪にあたるリーサ。
双子に支度を手伝ってもらい、部屋から出てきたのだ。
｢おはよう！」
リーサは当たり前のように、叔父の膝に座る。ちょうど、淹れたてのコーヒーを運んで、座り込んだ頃に。穏やかに微笑む叔父は、兎に角、姪に甘い。
｢おはよう。ベイビー。｣
リーサをベイビーと呼ぶのは、叔父夫婦のみ。
金髪碧眼のマルクスは、慈愛に満ちた眼差しで、可愛い姪の頭を撫でる。
｢ベイビー。自分のお席に座りなさい。｣
フィルに注意されたが、退こうとしない。毎朝、これである。見かねた、長男であるリフェール、通称、リフがリーサと勝手に、席に座らせる。文句いうリーサにお前の嫌いなものを増やそうか？と言われて、渋々、従う。今日の朝のメニューは、小麦のいい香りがするパンに、上に乗せるチーズとハム。お豆がたくさん入ったグリーンサラダにオニオンスープ。焼きたてのウィンナーに目玉焼き。続々と起きてきた。
｢スペンサーはまだなの？」
双子のすぐ上の兄にあたり、これまた、趣味が開発であるが、三割強、失敗作をこさえ、家族から叱られる問題児。朝に弱い。兄弟一、好き嫌いが激しいのも、フィルの頭の痛い悩み。
｢ロクサス。｣
｢わかった。｣
次男のロクサスがスペンサーの部屋に向かった。
すると、そこに、リーサの両親が入ってきた。穏やかな顔立ちの父親で、銀髪に茶褐色の瞳をしており、妻のツェツリーエを起こしに寝室に向かっていた。彼の後ろから、また眠たそうなツェツリーエは、昔から寝坊助。兄譲りの金髪碧眼で豊満な体をしており、顔も綺麗なため、異性にもてるが、本人は、プライドが高く、極度のブラコン。実兄二人に溺愛された妹は誰よりも自信家。
｢ツェリ。あなた、いつになったら、寝坊がなおるの？」
｢あら嫌だわ。朝からお説教は。今日は早いわよ。ね。サラトガ?｣
｢そうだね。五分、早かったよ。｣
｢ぷークスクス。まま、お寝坊マン。｣
娘がケタケタ笑う。毎朝、これだ。ツェリは娘の頬をつねる。
モチモチとしたほっぺで、もっと幼い頃から定評のある柔らかさ。父方の祖母に生き写しで、真っ黒な髪の毛に瞳をしており、餅のように白い肌。
｢ままは、寝坊じゃないわ。｣
つねられたリーサは、頬を擦る。
ロクサスに乱暴に起こされたスペンサーが入ってきた。寝癖がついたままで、かろうじて、めがねをかけている。
｢スペンサー。夜更かしをしたの？」
｢定時で寝たよ。朝は苦手なんだよ。あ！豆ばっか。｣
｢栄養満点なの。豆は。座る前に、身だしなみをせめて、整えなさい！｣
｢あとでいいよ。｣
｢スペンサー？」
フィルの圧力に渋々、顔を洗いに洗面台に向かう。
スペンサーが戻ってから、朝食。

慌ただしい食事を終えたら、それぞれ、動く。最年少のリーサは、いつものように、フィルから言い聞かされた。
｢お約束は?｣
｢ゴットリー先生のいうことをきちんと聞くこと!!オフィーリアちゃんとジオルクの側から離れない！｣
｢次は？」
｢アルミンに動物、勧めない！フランたちとはしゃぎすぎない！｣
｢あとは？」
｢わがまま、言わない！｣
｢そうね。行ってらっしゃい。｣
毎朝の言い付け。
魔法学校初等部に在学してるリーサの学校生活において、心配が残るため、フィルは、常に気にしてる。回りに甘やかされ、友達とはしゃいで、騒ぎを起こさないように。双子に連れられて、学校に向かう背中を見送る。これがいつもの朝。




七人兄弟→十人兄弟に変更しました( ・∇・)