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日常の変化

20.

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「うそ…」
「嘘?お前こそ、俺の事嫌いになったんじゃないのか?」
肩を掴まれ少し睨まれる。

「…………せん」
「ん?」
聞き取れなかったのか、顔が近くなる。恥ずかしくて少し体がそれる。

「逃げるな」
「え?」
「俺から逃げるな」
至近距離で目を見られながら告げられ顔が赤くなる。がばっと背中に手を回され体が密着した。

「俺にこうされるのは嫌いか?」
耳元で囁かれ体がぞわぞわした。嫌いではないので首を横に振る。

「そうか。良かった」
俺、夢でも見てるのか?何で部長に抱きしめられてるんだろ。不思議と気分が落ち着きえずきが治まってくる。

「飲み会が終わったらお前の事を捕まえようと思っていた。なのにお前が珍しく2次会に行かないで帰ったと聞いて、家に来たんだ」
「そう…だったんですか…」
あんだけ逃げてたのにまだ追って来てくれるんだ。

「どうして俺から逃げる?俺何かしたか?」
「っ。部長は悪くありません。俺が悪いんです」
「どういう事だ?浮気したのか?」
部長の手に力が入る。

「浮気なんて!俺はしてません!」
?」
「あ、いえ…」
「言っとくが浮気してないぞ?」
「うそ…」
「嘘?」
部長の声が低くなる。

「じゃあ、あの時、ホテルで羽柴部長と仲良さそうにしてたのは何だったんですか?」
遂に聞いてしまった。もうこうなっては逃れられない。バクバクとうるさい心臓を抑えながら言葉を待つ。

「仲良さそう?」
「夜遅くに部屋に上げて、部長の事、護って呼ばせて…俺より羽柴部長の事優先したじゃないですか…」
何かの続きをしに部屋に戻ったのだ。後で連絡すると言って次の日迄連絡来なかったし。

「ああ、あの時のか」
はぁーと重い溜息を吐く部長に体が跳ねる。
「羽柴部長…香奈は、俺の従兄弟だ」
「え?」
「あいつと付き合った事もないし、寝た事も一度もない。ガサツで酒豪なあんな女俺は選ばん」
「え?」
長谷川部長が珍しく嫌なものを思い出す顔で苦々しく言葉を紡ぐ。あの時は部屋に酒を持った羽柴部長が押しかけて来て、一通り飲んだ後、目を盗んでベランダで俺と電話していた所を邪魔されたらしい。

「俺ら見た目は全く似てないからな。仲が良すぎる俺らを見て付き合ってるって勝手に勘違いしたみたいだ」
「そんな事あるんですか…?」
従兄弟で同じ会社に入社するか?

「俺の親戚がこの会社の経営者なんだよ」
「えっ!?」
そんな事初耳だ。
「コネ入社だと思われたくなくて今迄黙ってたからな。知らないのも無理はない」
「そんな…部長は凄い仕事ができますから、誰もコネなんて思わないと思いますよ…」
「ふっ、ありがとう。お前はそうでも世の中そう思わない奴もいるんだよ。でもこんな事になるんだったら早く言っていれば良かったな。不安にさせてすまなかった」
「いえ、俺も勝手に勘違いして連絡無視してすいませんでした」
今迄ずっと謝りたかった。

「本当に心配したんだぞ。さっきも連絡したのに電波が入ってないって流れるし、着拒されたのかと思って走って来たんだ」
「あ、すいません。電源切ってたんです」
だから、来た時呼吸が荒れていたのか。どうしよう。俺、部長に迷惑しか掛けてない。

「てめぇ…」
「すいません!」
ギロっと睨まれ急いで頭を下げる。

「分かってるよな?」
「何がですか?」
背中を冷や汗が流れる。

「お仕置きだ」
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