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4.ツワニヤ国
3.
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「おはようございます」
「おはよう、ミツバ」
次の日起こしに来た侍女にせっせと世話をされこの国の衣装に着替えさせられると豪勢な美味しい朝ごはんを頂き、ジョル様の元へ連れて来られた。
今日のジョル様も格好いいが昨日より軽装だ。聞くと昨日は初見だった為、おめかししてくれたのだとか。王族はそういう風習があって大変そうだ。
「飯は美味かったか?」
「はい、凄い美味しかったです!」
「なら良かった。ミツバも料理をすると聞いた。今度俺にも食わせてくれ」
「良いですよ」
どこから聞いたんだろ?俺そんな話ししたかな?
「楽しみにしている」
「うわっ」
「どうした?」
「な、何でもないです!」
いきなり手と腰を持たれ思わず叫んでしまった。あまりにも自然な流れにジョルさまの慣れを感じる。
「今から移動する。昨日言っていたお願いをミツバに叶えて欲しいんだ」
「俺に出来る事でしょうか?」
「ミツバなら出来ると期待している」
「どうして昨日会ったばかりの俺を信じられるのですか?」
あまりにも真剣に断言するものだから遂聞いてしまった。
見上げた先のジョル様はにこっと笑った。
「それはお前がアヒンのお気に入りだからだ」
「アヒン殿下のお気に入り…」
遠く離れた国にまでそんな根も葉もない噂が広まっているのか。
「さ、ここからこの竜に乗って移動する」
「うわっ」
昨日、モルダミさんに俵抱きされたのにも驚いたがジョル様は俺を姫だきして龍に飛び乗った。そして俺の背中にぴたっと腹をつけ両腕でしっかりとホールドされてしまった。
「出発だ」
殿下の一声で竜は大きな羽を羽ばたかせ上空へ浮いた。一瞬目を瞑っただけなのにもう地上が遠い。
「あれ?ジョル様?俺達2人だけなのですか?」
「ん?ああ、今から行く場所は限られた者しか入れないからな」
「そんな所に俺が行っても良いのでしょうか?」
「ミツバなら大丈夫だ」
まただ。どうしてこの方は俺にこんなに、信頼を置いているのだろうか?嫌、アヒン殿下を信頼していると言う事なのかもしれない。
「それに俺もそこそこ強い。お前の事は守ってやるから安心しろ」
そんな事は心配していなかったが、あまりにもかっこ良すぎる台詞に胸がドキッとした。
最近俺、乙女化してきてないか?アヒン殿下に続いてジョル殿下にもドキッとするなんて…。
アヒン殿下と離れて2日、呪いは大丈夫だろうか?苦しんでないかな…
数日前迄アヒン殿下に触れていたのが懐かしい。何だがアヒン殿下が恋しくなってしまった。
「アヒンが心配か?」
「え?」
「心配するな。オモール国から迎えが来る。それまでここでゆっくりしていろ」
迎え、来るんだ…俺聖女候補なのに。
「まあ、帰りたくなかったら帰らなくても良い」
「いえ、帰りたい場所がありますので…」
「そうか……」
そこから暫く2人とも無言になった。気まずいと言う事はなくて周りの景色を見ているだけで十分楽しかった。暫く空の旅をしていたら深い森に来た。
「見えてきたぞ」
「凄い…」
目の前に巨大な岩山とその上にどっしりと聳え立つ大樹が見えた。神聖な力を感じて息を呑む。
どうやらあそこが今回の目的地みたいだ。
大樹の近くに竜が降り立つ。また姫だきされ地上に降ろされると大樹の後ろにある巨大な岩穴に促された。
ここに何がいるのだろうか。ジョル様は俺に何をさせたいんだろうか。未だに真意が分からず鼓動が早まる。ジョル様の光の魔法を頼りに奥に進むと巨大な竜がいた。ここまで来る際に乗った竜よりも遥かにでかい。
「誰だ」
腹の底に響く声に心臓が跳ねる。目の前の竜が喋ったみたいだ。
「俺だ。竜神ベルガモンテ」
「ジョルビナか。其奴は?」
「俺の客人のミツバだ」
「宜しくお願いします」
何に対しての宜しくか分からないが取り敢えず愛想良く挨拶はしておく。
「不思議な力を感じる。お主聖女か」
「ああ、お前を治療する為連れて来た」
治療!?聞いてないよ!?ってか、竜神って竜の神様って事だよね!?俺今から神様治療するの!?
俺の心の中は大パニックだ。
「怪我をされているのですか?」
「怪我ではなく呪いだ」
「呪い…」
確かに竜神の体を這うように黒いモヤが視える。それが竜神の肉体を蝕んでいる様だ。
「長い間蓄積された負の念だ。主に人間の負の感情が集まり悪い物を呼び寄せ呪いとなってしまう。人間達がその呪いに惑わされない様に我ら龍神は代々呪いを解呪してきた。だが歳と共に解呪しきれなかった呪いが蓄積されてわれの肉体を蝕む様になったのだ。お陰でここから一歩も動く事が出来ん」
ベルガモンテは時々苦しそうに説明してくれた。喋るのもやっとなのだろう。
「手荒な真似だと分かってはいたが、どうしてもベルガモンテの事を救ってやりたくてな。お前を無理やり連れてきたんだ。すまなかった」
頭を下げたジョル様に慌ててしまう。王さまが頭を下げるなんて!
「頭を上げてください、ジョル様。そういう事情なら仕方ありません。出来るかどうか分かりませんが精一杯頑張らせて頂きます」
「頼む」
「おはよう、ミツバ」
次の日起こしに来た侍女にせっせと世話をされこの国の衣装に着替えさせられると豪勢な美味しい朝ごはんを頂き、ジョル様の元へ連れて来られた。
今日のジョル様も格好いいが昨日より軽装だ。聞くと昨日は初見だった為、おめかししてくれたのだとか。王族はそういう風習があって大変そうだ。
「飯は美味かったか?」
「はい、凄い美味しかったです!」
「なら良かった。ミツバも料理をすると聞いた。今度俺にも食わせてくれ」
「良いですよ」
どこから聞いたんだろ?俺そんな話ししたかな?
「楽しみにしている」
「うわっ」
「どうした?」
「な、何でもないです!」
いきなり手と腰を持たれ思わず叫んでしまった。あまりにも自然な流れにジョルさまの慣れを感じる。
「今から移動する。昨日言っていたお願いをミツバに叶えて欲しいんだ」
「俺に出来る事でしょうか?」
「ミツバなら出来ると期待している」
「どうして昨日会ったばかりの俺を信じられるのですか?」
あまりにも真剣に断言するものだから遂聞いてしまった。
見上げた先のジョル様はにこっと笑った。
「それはお前がアヒンのお気に入りだからだ」
「アヒン殿下のお気に入り…」
遠く離れた国にまでそんな根も葉もない噂が広まっているのか。
「さ、ここからこの竜に乗って移動する」
「うわっ」
昨日、モルダミさんに俵抱きされたのにも驚いたがジョル様は俺を姫だきして龍に飛び乗った。そして俺の背中にぴたっと腹をつけ両腕でしっかりとホールドされてしまった。
「出発だ」
殿下の一声で竜は大きな羽を羽ばたかせ上空へ浮いた。一瞬目を瞑っただけなのにもう地上が遠い。
「あれ?ジョル様?俺達2人だけなのですか?」
「ん?ああ、今から行く場所は限られた者しか入れないからな」
「そんな所に俺が行っても良いのでしょうか?」
「ミツバなら大丈夫だ」
まただ。どうしてこの方は俺にこんなに、信頼を置いているのだろうか?嫌、アヒン殿下を信頼していると言う事なのかもしれない。
「それに俺もそこそこ強い。お前の事は守ってやるから安心しろ」
そんな事は心配していなかったが、あまりにもかっこ良すぎる台詞に胸がドキッとした。
最近俺、乙女化してきてないか?アヒン殿下に続いてジョル殿下にもドキッとするなんて…。
アヒン殿下と離れて2日、呪いは大丈夫だろうか?苦しんでないかな…
数日前迄アヒン殿下に触れていたのが懐かしい。何だがアヒン殿下が恋しくなってしまった。
「アヒンが心配か?」
「え?」
「心配するな。オモール国から迎えが来る。それまでここでゆっくりしていろ」
迎え、来るんだ…俺聖女候補なのに。
「まあ、帰りたくなかったら帰らなくても良い」
「いえ、帰りたい場所がありますので…」
「そうか……」
そこから暫く2人とも無言になった。気まずいと言う事はなくて周りの景色を見ているだけで十分楽しかった。暫く空の旅をしていたら深い森に来た。
「見えてきたぞ」
「凄い…」
目の前に巨大な岩山とその上にどっしりと聳え立つ大樹が見えた。神聖な力を感じて息を呑む。
どうやらあそこが今回の目的地みたいだ。
大樹の近くに竜が降り立つ。また姫だきされ地上に降ろされると大樹の後ろにある巨大な岩穴に促された。
ここに何がいるのだろうか。ジョル様は俺に何をさせたいんだろうか。未だに真意が分からず鼓動が早まる。ジョル様の光の魔法を頼りに奥に進むと巨大な竜がいた。ここまで来る際に乗った竜よりも遥かにでかい。
「誰だ」
腹の底に響く声に心臓が跳ねる。目の前の竜が喋ったみたいだ。
「俺だ。竜神ベルガモンテ」
「ジョルビナか。其奴は?」
「俺の客人のミツバだ」
「宜しくお願いします」
何に対しての宜しくか分からないが取り敢えず愛想良く挨拶はしておく。
「不思議な力を感じる。お主聖女か」
「ああ、お前を治療する為連れて来た」
治療!?聞いてないよ!?ってか、竜神って竜の神様って事だよね!?俺今から神様治療するの!?
俺の心の中は大パニックだ。
「怪我をされているのですか?」
「怪我ではなく呪いだ」
「呪い…」
確かに竜神の体を這うように黒いモヤが視える。それが竜神の肉体を蝕んでいる様だ。
「長い間蓄積された負の念だ。主に人間の負の感情が集まり悪い物を呼び寄せ呪いとなってしまう。人間達がその呪いに惑わされない様に我ら龍神は代々呪いを解呪してきた。だが歳と共に解呪しきれなかった呪いが蓄積されてわれの肉体を蝕む様になったのだ。お陰でここから一歩も動く事が出来ん」
ベルガモンテは時々苦しそうに説明してくれた。喋るのもやっとなのだろう。
「手荒な真似だと分かってはいたが、どうしてもベルガモンテの事を救ってやりたくてな。お前を無理やり連れてきたんだ。すまなかった」
頭を下げたジョル様に慌ててしまう。王さまが頭を下げるなんて!
「頭を上げてください、ジョル様。そういう事情なら仕方ありません。出来るかどうか分かりませんが精一杯頑張らせて頂きます」
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