ショタ王子が第一王子なんて聞いてませんけど!?

疾矢

文字の大きさ
上 下
49 / 90
3.隣国戦争

5.

しおりを挟む
「それじゃあ行って来ます」

朝起きると既に王城から来た迎えの馬車が待機していた。それに驚き取り敢えず中に入ってもらって待って貰う事にした。時間はまだある様で早く来過ぎた様だ。朝ご飯をバタバタと作り昨日準備していた荷物、まあこの前露店で貰った収納袋一つだけなのだがを持って玄関に行くと主教様、コーナンさん、ヨハンさんがお見送りに来てくれた。

「ちゃんと帰って来いよ」
「はい、必ずここに帰って来ます」

コーナンさんに俺とホワイト同時に頭を撫でられた。

「うわっ!ちょ、ヨハンさん!?」
「きゃう」

ヨハンさんがいきなり、俺とホワイトに抱きついて来た。

「本当に本当に無事で帰ってくるんだよ…?」

ヨハンさんの肩が震えている。顔の横にある紫の頭を撫で撫でしてあげる。

「はい。ヨハンさんはコーナンさんに迷惑かけ過ぎないで下さいね」
「ひどっ!」
「はははっ!半分嘘ですよ。ホワイトと一緒に帰ってきます。だから安心して仕事頑張って下さいね」
「うーん。程々に頑張る~」

何ともヨハンさんらしい答えだ。

「ふぉふぉふぉ最後は儂かな」
「はい。主教様短い間でしたがお世話になりました。訳ありの俺を置いて頂いて凄い感謝してます」
「そんなに畏まらないでいいわい。三葉殿は自分の責務を果たしてくれば良い。勿論ホワイトもな」
「はい!」
「きゃん!」

馬車に乗り込もうとしたがホワイトの体がデカくて入らない事に気づいた。俺だけ乗るのは忍びないな。ホワイトの背中に乗る?いや、そしたら馬車の意味がない…

「ホワイト、小さくなったりできないよね?」
「きゃう?」
首をこてんと傾げられた。
「やっぱむり…「きゃん!」」

ホワイトの体が光り、小型犬位の大きさになった。

「できるの!?」
思いつきで言ってみたが出来るらしい。ホワイトを抱っこして馬車に乗り込む。馬車の中は広かったがホワイトの触り心地が良すぎて膝の上に乗せたまま城に向かう事にした。最後の挨拶を教会の皆んなとし馬車は勢いよく発車した。窓から遠ざかる教会を見ると3人とも見えなくなるまでずっと見送りをしてくれた。その光景を目に焼き付け絶対に無事に帰ってくると胸に誓った。



馬車で揺られる事1時間。懐かしい王城が見えて来た。王族侮辱罪で追い出されてから早2ヶ月。毎日忙しくてあっという間に過ぎた感覚だった。
また戻ってきたんだな……
馬車に乗ったまま塀を潜ると馬車で行ける範囲まで送ってくれた。馬車の運転手が戸を開けてくれ地上に降りると懐かしい人物が目の前に立っていた。

「ジュリー…」
「三葉様っ」

お互いの名前を呼び暫く動けないでいた。

「お帰りなさいませ」
「うん。ただいま」

涙ぐんでいるジュリーの目元をハンカチで拭ってあげる。胸に抱えたホワイトが心配そうにジュリーを見上げている。

「感動の再会かな?」
「殿下っ」

アヒン殿下がジュリーの後ろから現れた。それに気づくとジュリーは、涙を手で拭いさっと身なりを整え頭を下げた。

「ごめんね。迎えに行けなくて」
「いえ、馬車を出して頂けただけで十分です」
「さ、中に入ろう」
小さい殿下が俺の手を取ると城の中へと誘導してくれた。


「出発迄少し時間がある。ここでゆっくりしよう」

殿下に連れてこられたのは殿下の部屋だった。出て行く前と変わらず殿下の部屋は簡素な家具の配置だった。懐かしく感じそっと微笑む。

「三葉、今回の事巻き込んでごめん」
「いえ、アヒン殿下が悪いわけではないですから」
「いや、出陣する事を決めたのも三葉を連れて行きたいと言ったのも私の我儘だから」

悲観的に話す殿下を見ていられなくて小さい手を握る。

「俺戦争とか初めてだしまだ聖女としての力は不十分だから不安がないっては言えないですけど殿下に指名されて嬉しかったです。それに俺の事守ってくれるんですよね?俺は殿下の事信じてます」
「きゃん!」
ホワイトが殿下の頭に手を乗せた。
「こら、ホワイト!殿下に何するんだ!」
「構わないよ。君は私を慰めてくれたんだね。ありがとう」

ホワイトの頭を撫で撫でし微笑む殿下はまさに天使だった。

「三葉私からお願いがあるんだ。聞いてくれるかい?」
「はい、なんなりと」

殿下のくりくりの綺麗な碧眼に見つめられると目が離せない。

「この戦いの間私を常に大人の姿にして欲しい」
「それってつまり…」
「そう。ちゅ」

背伸びをした殿下に唇を合わされた。眩い光に包まれると大人の殿下に変身した。色気たっぷりの殿下に腰に手を回され体を引き寄せられた。

「定期的に私に力を注いで欲しいんだ」
殿下の呪いに1番効果的なのは俺が触れる事。そして俺の体液を摂取する事。いずれかをしないと呪いの姿に戻ってしまう。

「お、俺は構いませんが…」
「ありがとう。そしてもう一つ。極力皆には触れる事なく治療して欲しい」
「え?」
「まだ力が安定してなくて難しいのはわかっている。でも出来れば他の者に触れている様子を見たくないんだ…」

これって独占欲ってやつだろうか?殿下が俺に妬いてくれてる?男同士なのに全く嫌な気持ちがしない…

「極力触れない様にしますね」
「っありがとう」
殿下は安心した様に微笑むとおでこにキスを落とした。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。  *表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*  ー(*)のマークはRシーンがあります。ー  少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。  ホットランキング 1位(2021.10.17)  ファンタジーランキング1位(2021.10.17)  小説ランキング 1位(2021.10.17)  ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています

水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。 森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。 公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。 ◇画像はGirly Drop様からお借りしました ◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

兄たちが弟を可愛がりすぎです

クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!? メイド、王子って、俺も王子!? おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?! 涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。 1日の話しが長い物語です。 誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜

車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

処理中です...