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3.隣国戦争
5.
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「それじゃあ行って来ます」
朝起きると既に王城から来た迎えの馬車が待機していた。それに驚き取り敢えず中に入ってもらって待って貰う事にした。時間はまだある様で早く来過ぎた様だ。朝ご飯をバタバタと作り昨日準備していた荷物、まあこの前露店で貰った収納袋一つだけなのだがを持って玄関に行くと主教様、コーナンさん、ヨハンさんがお見送りに来てくれた。
「ちゃんと帰って来いよ」
「はい、必ずここに帰って来ます」
コーナンさんに俺とホワイト同時に頭を撫でられた。
「うわっ!ちょ、ヨハンさん!?」
「きゃう」
ヨハンさんがいきなり、俺とホワイトに抱きついて来た。
「本当に本当に無事で帰ってくるんだよ…?」
ヨハンさんの肩が震えている。顔の横にある紫の頭を撫で撫でしてあげる。
「はい。ヨハンさんはコーナンさんに迷惑かけ過ぎないで下さいね」
「ひどっ!」
「はははっ!半分嘘ですよ。ホワイトと一緒に帰ってきます。だから安心して仕事頑張って下さいね」
「うーん。程々に頑張る~」
何ともヨハンさんらしい答えだ。
「ふぉふぉふぉ最後は儂かな」
「はい。主教様短い間でしたがお世話になりました。訳ありの俺を置いて頂いて凄い感謝してます」
「そんなに畏まらないでいいわい。三葉殿は自分の責務を果たしてくれば良い。勿論ホワイトもな」
「はい!」
「きゃん!」
馬車に乗り込もうとしたがホワイトの体がデカくて入らない事に気づいた。俺だけ乗るのは忍びないな。ホワイトの背中に乗る?いや、そしたら馬車の意味がない…
「ホワイト、小さくなったりできないよね?」
「きゃう?」
首をこてんと傾げられた。
「やっぱむり…「きゃん!」」
ホワイトの体が光り、小型犬位の大きさになった。
「できるの!?」
思いつきで言ってみたが出来るらしい。ホワイトを抱っこして馬車に乗り込む。馬車の中は広かったがホワイトの触り心地が良すぎて膝の上に乗せたまま城に向かう事にした。最後の挨拶を教会の皆んなとし馬車は勢いよく発車した。窓から遠ざかる教会を見ると3人とも見えなくなるまでずっと見送りをしてくれた。その光景を目に焼き付け絶対に無事に帰ってくると胸に誓った。
馬車で揺られる事1時間。懐かしい王城が見えて来た。王族侮辱罪で追い出されてから早2ヶ月。毎日忙しくてあっという間に過ぎた感覚だった。
また戻ってきたんだな……
馬車に乗ったまま塀を潜ると馬車で行ける範囲まで送ってくれた。馬車の運転手が戸を開けてくれ地上に降りると懐かしい人物が目の前に立っていた。
「ジュリー…」
「三葉様っ」
お互いの名前を呼び暫く動けないでいた。
「お帰りなさいませ」
「うん。ただいま」
涙ぐんでいるジュリーの目元をハンカチで拭ってあげる。胸に抱えたホワイトが心配そうにジュリーを見上げている。
「感動の再会かな?」
「殿下っ」
アヒン殿下がジュリーの後ろから現れた。それに気づくとジュリーは、涙を手で拭いさっと身なりを整え頭を下げた。
「ごめんね。迎えに行けなくて」
「いえ、馬車を出して頂けただけで十分です」
「さ、中に入ろう」
小さい殿下が俺の手を取ると城の中へと誘導してくれた。
「出発迄少し時間がある。ここでゆっくりしよう」
殿下に連れてこられたのは殿下の部屋だった。出て行く前と変わらず殿下の部屋は簡素な家具の配置だった。懐かしく感じそっと微笑む。
「三葉、今回の事巻き込んでごめん」
「いえ、アヒン殿下が悪いわけではないですから」
「いや、出陣する事を決めたのも三葉を連れて行きたいと言ったのも私の我儘だから」
悲観的に話す殿下を見ていられなくて小さい手を握る。
「俺戦争とか初めてだしまだ聖女としての力は不十分だから不安がないっては言えないですけど殿下に指名されて嬉しかったです。それに俺の事守ってくれるんですよね?俺は殿下の事信じてます」
「きゃん!」
ホワイトが殿下の頭に手を乗せた。
「こら、ホワイト!殿下に何するんだ!」
「構わないよ。君は私を慰めてくれたんだね。ありがとう」
ホワイトの頭を撫で撫でし微笑む殿下はまさに天使だった。
「三葉私からお願いがあるんだ。聞いてくれるかい?」
「はい、なんなりと」
殿下のくりくりの綺麗な碧眼に見つめられると目が離せない。
「この戦いの間私を常に大人の姿にして欲しい」
「それってつまり…」
「そう。ちゅ」
背伸びをした殿下に唇を合わされた。眩い光に包まれると大人の殿下に変身した。色気たっぷりの殿下に腰に手を回され体を引き寄せられた。
「定期的に私に力を注いで欲しいんだ」
殿下の呪いに1番効果的なのは俺が触れる事。そして俺の体液を摂取する事。いずれかをしないと呪いの姿に戻ってしまう。
「お、俺は構いませんが…」
「ありがとう。そしてもう一つ。極力皆には触れる事なく治療して欲しい」
「え?」
「まだ力が安定してなくて難しいのはわかっている。でも出来れば他の者に触れている様子を見たくないんだ…」
これって独占欲ってやつだろうか?殿下が俺に妬いてくれてる?男同士なのに全く嫌な気持ちがしない…
「極力触れない様にしますね」
「っありがとう」
殿下は安心した様に微笑むとおでこにキスを落とした。
朝起きると既に王城から来た迎えの馬車が待機していた。それに驚き取り敢えず中に入ってもらって待って貰う事にした。時間はまだある様で早く来過ぎた様だ。朝ご飯をバタバタと作り昨日準備していた荷物、まあこの前露店で貰った収納袋一つだけなのだがを持って玄関に行くと主教様、コーナンさん、ヨハンさんがお見送りに来てくれた。
「ちゃんと帰って来いよ」
「はい、必ずここに帰って来ます」
コーナンさんに俺とホワイト同時に頭を撫でられた。
「うわっ!ちょ、ヨハンさん!?」
「きゃう」
ヨハンさんがいきなり、俺とホワイトに抱きついて来た。
「本当に本当に無事で帰ってくるんだよ…?」
ヨハンさんの肩が震えている。顔の横にある紫の頭を撫で撫でしてあげる。
「はい。ヨハンさんはコーナンさんに迷惑かけ過ぎないで下さいね」
「ひどっ!」
「はははっ!半分嘘ですよ。ホワイトと一緒に帰ってきます。だから安心して仕事頑張って下さいね」
「うーん。程々に頑張る~」
何ともヨハンさんらしい答えだ。
「ふぉふぉふぉ最後は儂かな」
「はい。主教様短い間でしたがお世話になりました。訳ありの俺を置いて頂いて凄い感謝してます」
「そんなに畏まらないでいいわい。三葉殿は自分の責務を果たしてくれば良い。勿論ホワイトもな」
「はい!」
「きゃん!」
馬車に乗り込もうとしたがホワイトの体がデカくて入らない事に気づいた。俺だけ乗るのは忍びないな。ホワイトの背中に乗る?いや、そしたら馬車の意味がない…
「ホワイト、小さくなったりできないよね?」
「きゃう?」
首をこてんと傾げられた。
「やっぱむり…「きゃん!」」
ホワイトの体が光り、小型犬位の大きさになった。
「できるの!?」
思いつきで言ってみたが出来るらしい。ホワイトを抱っこして馬車に乗り込む。馬車の中は広かったがホワイトの触り心地が良すぎて膝の上に乗せたまま城に向かう事にした。最後の挨拶を教会の皆んなとし馬車は勢いよく発車した。窓から遠ざかる教会を見ると3人とも見えなくなるまでずっと見送りをしてくれた。その光景を目に焼き付け絶対に無事に帰ってくると胸に誓った。
馬車で揺られる事1時間。懐かしい王城が見えて来た。王族侮辱罪で追い出されてから早2ヶ月。毎日忙しくてあっという間に過ぎた感覚だった。
また戻ってきたんだな……
馬車に乗ったまま塀を潜ると馬車で行ける範囲まで送ってくれた。馬車の運転手が戸を開けてくれ地上に降りると懐かしい人物が目の前に立っていた。
「ジュリー…」
「三葉様っ」
お互いの名前を呼び暫く動けないでいた。
「お帰りなさいませ」
「うん。ただいま」
涙ぐんでいるジュリーの目元をハンカチで拭ってあげる。胸に抱えたホワイトが心配そうにジュリーを見上げている。
「感動の再会かな?」
「殿下っ」
アヒン殿下がジュリーの後ろから現れた。それに気づくとジュリーは、涙を手で拭いさっと身なりを整え頭を下げた。
「ごめんね。迎えに行けなくて」
「いえ、馬車を出して頂けただけで十分です」
「さ、中に入ろう」
小さい殿下が俺の手を取ると城の中へと誘導してくれた。
「出発迄少し時間がある。ここでゆっくりしよう」
殿下に連れてこられたのは殿下の部屋だった。出て行く前と変わらず殿下の部屋は簡素な家具の配置だった。懐かしく感じそっと微笑む。
「三葉、今回の事巻き込んでごめん」
「いえ、アヒン殿下が悪いわけではないですから」
「いや、出陣する事を決めたのも三葉を連れて行きたいと言ったのも私の我儘だから」
悲観的に話す殿下を見ていられなくて小さい手を握る。
「俺戦争とか初めてだしまだ聖女としての力は不十分だから不安がないっては言えないですけど殿下に指名されて嬉しかったです。それに俺の事守ってくれるんですよね?俺は殿下の事信じてます」
「きゃん!」
ホワイトが殿下の頭に手を乗せた。
「こら、ホワイト!殿下に何するんだ!」
「構わないよ。君は私を慰めてくれたんだね。ありがとう」
ホワイトの頭を撫で撫でし微笑む殿下はまさに天使だった。
「三葉私からお願いがあるんだ。聞いてくれるかい?」
「はい、なんなりと」
殿下のくりくりの綺麗な碧眼に見つめられると目が離せない。
「この戦いの間私を常に大人の姿にして欲しい」
「それってつまり…」
「そう。ちゅ」
背伸びをした殿下に唇を合わされた。眩い光に包まれると大人の殿下に変身した。色気たっぷりの殿下に腰に手を回され体を引き寄せられた。
「定期的に私に力を注いで欲しいんだ」
殿下の呪いに1番効果的なのは俺が触れる事。そして俺の体液を摂取する事。いずれかをしないと呪いの姿に戻ってしまう。
「お、俺は構いませんが…」
「ありがとう。そしてもう一つ。極力皆には触れる事なく治療して欲しい」
「え?」
「まだ力が安定してなくて難しいのはわかっている。でも出来れば他の者に触れている様子を見たくないんだ…」
これって独占欲ってやつだろうか?殿下が俺に妬いてくれてる?男同士なのに全く嫌な気持ちがしない…
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