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1.異世界召喚
9.
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「殿下最近また体調が悪そうですね?」
元気な殿下と庭の散歩をしてから数日経った。回復の兆しが見えたかと思っていたがぶり返してしまった様だ。目の下に大きな隈が出来ている。俺の膝枕ですうすう寝ている殿下の顔に触れ隈の部分が良くならないかモミモミしてみる。俺が気持ち良いだけで特に変わりはなかった。
「はい…夜寝苦しい様でして…」
スレーマンがアヒン殿下を悲壮に見つめながら答えてくれた。
「こんなに昼間は寝て下さるのに…」
俺の膝の上で眠る王子の寝顔はどこかあどけなさが残っているが綺麗だ。スレーマンの話によると夜は咳がひどくて寝てもすぐ目が覚めてしまうらしい。どこか達観しているとは言えまだ幼い王子には辛いだろう。
胸が締め付けられる想いを紛らわす様にアヒン殿下の頭を撫でた。
「んぅ…おはよう…三葉」
数時間後アヒン殿下の目が覚めた様だ。寝起きの殿下は今日も可愛い。少し寝癖のついた髪を手櫛で直してあげながらおはようございますと返す。
「よく眠れましたか?」
「うん。三葉のお陰でだいぶ良くなったよ」
「それは良かったです。殿下、夜俺と一緒に寝ませんか?」
ピシッとその場の空気が凍りついた。あ、ジュリーの笑顔がぎこちない。口元がピクピクしている。
「どうしてか聞いても良いかな?」
殿下の笑顔も少し硬い。
「夜よく眠れてないようですし、俺が抱き枕になれば夜も寝れるかなと…」
「そういう事か…うん。寝ようか」
「ちょ!殿下!」
珍しくスレーマンさんが動揺している。
「何?そこに光があるなら掴まない手はないだろう?」
「それはそうですが…」
「あ、いやちょっとした提案ですので、そんな間に受けなくても大丈夫ですよ?嫌なら断って頂いて大丈夫です!」
何やら揉めてる様子だったのでフォローを入れておく。
「嫌ではないよ三葉。今日から一緒に私と寝て欲しい」
アヒン殿下が小さい手で俺の手を握ってくれた。スレーマンさんが頭を押さえているのが横目に見えた。うん。スレーマンさんには、後でフォローを入れておこう。
一度アヒン殿下と別れ夕食を取り湯浴みをした。その後寝巻きの薄い生地の服に着替え王子の部屋へと向かった。王子の部屋に俺も入れるなんて本来なら恐れ多い事だろう。アヒン殿下は、小さいのに思慮深い。
ジュリーの案内でアヒン殿下の部屋の前に着くと戸をノックし殿下に呼びかける。
「どうぞお入り下さい」
中からスレーマンが開けてくれ部屋に通して貰った。2度目の殿下の部屋は変わらず殿下の見た目には似つかわしくない簡素な部屋であった。ソファでお茶を飲んでいた殿下に座る様勧められて俺もお茶を頂く。王子も湯浴みを終えている様でいつも着ている王族のきちっとした服ではなく高級そうな柔らかい素材の服に着替えている。どんな服を着ていても殿下は可愛い。
殿下とたわいも無い話をした後、そろそろ寝ようかと言う殿下の一言で俺達は寝る事となった。勿論一緒のベッドで。ベッドは大きい為2人で寝ても余裕がある。
「では私どもはここで失礼しますが、殿下、分かっておりますよね?くれぐれもですからね?」
何の事だろう?スレーマンさんが何かを懸念している様だ。王子は分かった様で分かっているよと答えていた。
「あ!スレーマンさん!」
ジュリーと2人部屋を出ようとしたスレーマンを呼び止め駆け寄った。
「どうされましたか?」
スレーマンが笑顔で振り向いてくれた。
「あの!俺、殿下に変な事しようとしてないですから、気にしないで下さいね!」
「っ」
スレーマンの目が点になった。あれ?またおかしな事を言っただろうか?
「はい。三葉様は決してその様な事はしないと信じております。隣の部屋におりますので何かありましたらお呼び下さい」
「はい!ありがとうございます」
良かった、スレーマンさんに誤解されていなかった様だ。おやすみなさいと部屋から出て行ったスレーマンを見送りくるっと振り向くと殿下がベッドで待っていた。
「お待たせしました!さあ、寝ましょう」
殿下の隣に寝そべり手を広げる。
「三葉、その仮面外さないの?」
「あ!忘れてました!殿下と寝られるのが嬉しすぎて」
殿下に笑われてしまった。だけどその笑顔に癒される。俺は眼鏡を外しベッドの脇にある棚に置いた。
「っ!」
「どうかした?」
「いえ!今度こそ寝ましょう」
また腕を広げ殿下を招く。殿下は一瞬迷った様子だったがおずおずと俺の胸の中に収まった。丁度良いサイズだ。これでは殿下が抱き枕状態だが、アヒン殿下は何も言わなかった。
「殿下、おやすみなさい。良い夢を見て下さいね」
「うん。おやすみ」
こんなに近くで殿下を感じれるなんて幸せすぎて寝れないかもしれないと思ったが一瞬で意識を手放した。
元気な殿下と庭の散歩をしてから数日経った。回復の兆しが見えたかと思っていたがぶり返してしまった様だ。目の下に大きな隈が出来ている。俺の膝枕ですうすう寝ている殿下の顔に触れ隈の部分が良くならないかモミモミしてみる。俺が気持ち良いだけで特に変わりはなかった。
「はい…夜寝苦しい様でして…」
スレーマンがアヒン殿下を悲壮に見つめながら答えてくれた。
「こんなに昼間は寝て下さるのに…」
俺の膝の上で眠る王子の寝顔はどこかあどけなさが残っているが綺麗だ。スレーマンの話によると夜は咳がひどくて寝てもすぐ目が覚めてしまうらしい。どこか達観しているとは言えまだ幼い王子には辛いだろう。
胸が締め付けられる想いを紛らわす様にアヒン殿下の頭を撫でた。
「んぅ…おはよう…三葉」
数時間後アヒン殿下の目が覚めた様だ。寝起きの殿下は今日も可愛い。少し寝癖のついた髪を手櫛で直してあげながらおはようございますと返す。
「よく眠れましたか?」
「うん。三葉のお陰でだいぶ良くなったよ」
「それは良かったです。殿下、夜俺と一緒に寝ませんか?」
ピシッとその場の空気が凍りついた。あ、ジュリーの笑顔がぎこちない。口元がピクピクしている。
「どうしてか聞いても良いかな?」
殿下の笑顔も少し硬い。
「夜よく眠れてないようですし、俺が抱き枕になれば夜も寝れるかなと…」
「そういう事か…うん。寝ようか」
「ちょ!殿下!」
珍しくスレーマンさんが動揺している。
「何?そこに光があるなら掴まない手はないだろう?」
「それはそうですが…」
「あ、いやちょっとした提案ですので、そんな間に受けなくても大丈夫ですよ?嫌なら断って頂いて大丈夫です!」
何やら揉めてる様子だったのでフォローを入れておく。
「嫌ではないよ三葉。今日から一緒に私と寝て欲しい」
アヒン殿下が小さい手で俺の手を握ってくれた。スレーマンさんが頭を押さえているのが横目に見えた。うん。スレーマンさんには、後でフォローを入れておこう。
一度アヒン殿下と別れ夕食を取り湯浴みをした。その後寝巻きの薄い生地の服に着替え王子の部屋へと向かった。王子の部屋に俺も入れるなんて本来なら恐れ多い事だろう。アヒン殿下は、小さいのに思慮深い。
ジュリーの案内でアヒン殿下の部屋の前に着くと戸をノックし殿下に呼びかける。
「どうぞお入り下さい」
中からスレーマンが開けてくれ部屋に通して貰った。2度目の殿下の部屋は変わらず殿下の見た目には似つかわしくない簡素な部屋であった。ソファでお茶を飲んでいた殿下に座る様勧められて俺もお茶を頂く。王子も湯浴みを終えている様でいつも着ている王族のきちっとした服ではなく高級そうな柔らかい素材の服に着替えている。どんな服を着ていても殿下は可愛い。
殿下とたわいも無い話をした後、そろそろ寝ようかと言う殿下の一言で俺達は寝る事となった。勿論一緒のベッドで。ベッドは大きい為2人で寝ても余裕がある。
「では私どもはここで失礼しますが、殿下、分かっておりますよね?くれぐれもですからね?」
何の事だろう?スレーマンさんが何かを懸念している様だ。王子は分かった様で分かっているよと答えていた。
「あ!スレーマンさん!」
ジュリーと2人部屋を出ようとしたスレーマンを呼び止め駆け寄った。
「どうされましたか?」
スレーマンが笑顔で振り向いてくれた。
「あの!俺、殿下に変な事しようとしてないですから、気にしないで下さいね!」
「っ」
スレーマンの目が点になった。あれ?またおかしな事を言っただろうか?
「はい。三葉様は決してその様な事はしないと信じております。隣の部屋におりますので何かありましたらお呼び下さい」
「はい!ありがとうございます」
良かった、スレーマンさんに誤解されていなかった様だ。おやすみなさいと部屋から出て行ったスレーマンを見送りくるっと振り向くと殿下がベッドで待っていた。
「お待たせしました!さあ、寝ましょう」
殿下の隣に寝そべり手を広げる。
「三葉、その仮面外さないの?」
「あ!忘れてました!殿下と寝られるのが嬉しすぎて」
殿下に笑われてしまった。だけどその笑顔に癒される。俺は眼鏡を外しベッドの脇にある棚に置いた。
「っ!」
「どうかした?」
「いえ!今度こそ寝ましょう」
また腕を広げ殿下を招く。殿下は一瞬迷った様子だったがおずおずと俺の胸の中に収まった。丁度良いサイズだ。これでは殿下が抱き枕状態だが、アヒン殿下は何も言わなかった。
「殿下、おやすみなさい。良い夢を見て下さいね」
「うん。おやすみ」
こんなに近くで殿下を感じれるなんて幸せすぎて寝れないかもしれないと思ったが一瞬で意識を手放した。
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