M.A.T 対魔法筋肉特殊奇襲部隊

海王星型惑星

文字の大きさ
上 下
13 / 16
1章 特殊筋肉奇襲部隊

幻想(ファンタジー)と現実(リアル)

しおりを挟む
 ふっ、っと意識が戻った。天井を見ている。無機質なコンクリート的材質だ。

 どこ?


 あ、そっか。

 なんか変な所……来たんだっけか。


 「はぁ…」っと思わずため息が出る。夢じゃなかったんかい……

 これが現実であることの証明のように、先ほど鳥(バサバサいってたからどうせ鳥だろ、とにかくでっかかったが)のかぎ爪にガッチリつかまれた感触が残っている。

あーー、怖かったぁぁぁ……。

テーマパークの恐怖の塔を思い出してしまった。一度乗ったことがあるが、なんというか、落下系アトラクション特有の「ふわっ」とする感覚__言ってしまえば”玉ヒュン”の感覚がやっぱり無理なんだよなああ……
「本当の死」を前にすると一層恐怖が増すな…これは夢に出てきそうだ。

「お、起きたね」

もうこの声も聞き覚えのあるものになってきた。グルカさんだ。

「さっきのと疲れで気絶しちゃってたみたいだよ、生きててよかったねー」

本当に死ぬところだったのだからシャレにならないのだけど…俺は苦笑いを浮かべた。多分相当ひきつっている。

「本当にありがとうございました……ホンキで死ぬところでした」

急に変な所に連れてきたり急に腹パンしてきたりと、よくわからんし正直いい印象のない人だったけど、俺を助けてくれたのは事実だ。……多分でっかいヤツの首折って殺したんだろうけど。


「危なかったねえ、最近魔物なんて来てなかった上に今までないタイプの攻め方だったから、私がたまたま窓際に居なかったら死んでたねー」

……。

結構けろっというもんだから俺は肝が冷えた。ここでは死、あるいは危険は身近なものなのだろうか?

俺の表情から何か察したのか、
「あー、大丈夫だよ!私の意識の及ぶ範囲なら、私以外の理由で負傷することはないからねっ!」
と励ましてきた。自身がふつうじゃない自覚はあるのかもしれない。が、自分がおかしいことを言っている自覚は大してないのかも……

マジでこの人は何者なんだろう…完全に女性ではある。髪は肩につかないくらいの濃いバターブロンド(黄色みの強い金髪)、瞳はまんまるで大きい瞳には多くの光を受けて輝いている。わりと日本人よりの顔立ちで、その雰囲気を含めてあどけない印象をもたせる。クラスにいたら「かわいい」と隠れファンができそうな感じだ。

でも腹パンを、しかも男性ビルダーをダウンさせるほどしっかり重いのを躊躇なくぶち込んでくるし、肩幅がデカい…頸が太い…ここまでアンバランス(というと失礼だが)でユニークな人、なかなかいないだろうなぁ…

「あの、どうしてあんな高いところにいたんですか」

やっぱり気になる。どんな人間にも物理法則は適用される…はず。わかんねぇけど!ここ異世界っぽいし!!

「跳んだんだよね」

「跳んだんですか…

             …10数メートルも?」


…四階のその上でっせ?

「いや、私三階から跳んだから…そんなにだよ。えーっと…4~5めーとるくらい?」

あ、そっか、ここだとそもそもの単位が違う……けど「こっちから来た人」がいるから文意が伝わっているのか。

「……いや4,5mも垂直に跳ぶのがおかしいんですよ」

「いやあ、まあそれは……訓練に慣れてくればいけるよぉ」

ないっすよぉそんなのぉ~~なんて言いたくなったが流石にやめた。なんせ証拠はもう出ている。それに命を救われたのだから。

「なんか大丈夫そうだね、一回立ってみて」

ベッドからでてみた。というか俺はベッドの上だったのか。硬いなこれ。

問題なかったので俺らはサカキさんらと合流することにした。


 合流してから、今までのことについて多少の説明を受けた。
「おお、タケだいじょぶかよおめぇ」
「今回君に襲いかかったのは『魔物』だな。この世界には地球と同じ『一般生物』と、魔法を主体に生きる『魔法生物』がいて、人間に害をなすものもいれば無関心なもの、さらには相利(互いにメリットを与える)をするものもいる。そしてこれらをその個体や群れのスケールから『魔物』と『魔獣』に分けている。危険な魔獣は大災害レベルの被害をもたらす」

まじでファンタジーの世界じゃないか…。問題はプレイヤーが俺たちってことだ。やだよ化け物と戦うの。俺なんて猛禽類に肩掴まれてそのままあの世行きになるところだったんだぞ…ん?ここで死んだらどうなるんだ??

なんて考えている俺をよそに、
「俺たちってなんかビームとか出せるんすか?」
隣の内田がこれまた能天気な質問をした。しかしこれは結構大事な質問だ。この世界に来たことで俺たちにも何かが「発現」しているかもしれない。モノによっては生き残るどころか化け物退治だって…

「いや、来訪者達にそういったものは発現しない」
ガンッ、と重いもので小突かれた気分だ。ないの?!ないかぁ…

「あの男、尾倉理太郎が言うには、『この世界は基本的に地球と酷似しているが、一点根本的な違い_程度を問わずほぼすべての物質に”魔法”を生み出す因子が含まれている』そうだ。そしてこの地域はその因子の存在量が極端に少ない。いうなれば”痩せた土地”というわけだ」

俺たちを含めて、周りの空気が少し張り詰めたのを感じる。
「人に、街に、自然に、水に森に土に鉄に_その因子は含まれている。この世界の住人はそれを糧にして生きているわけだが、それが極端に少ないというのは最大の地理的不利をもたらす。国力も当然低い_食料も育ちにくく人口も増えない、技術力も軍事力も不十分だからだ」

たまたま通りかかった事務員らしき女性が、うつむいて足早に通り過ぎていった。小声で話しているが、内容は現地の人が聞いてよく思うものではない。サカキさんはずいぶんはっきりとモノを言うタイプなのかもしれない…。

「当然、周囲の国からは狙われる。私たちはちょうど『軍国主義』の流れが生まれた時代に来たようだ、先進国の技術の発展に伴い、今まで植民地支配の動きが顕著になった」
だんだん分かってきた。この国は、今侵攻されている・あるいはそれの標的になろうとしているんだ。

「ウチと対照的に、魔力(魔法因子などを指す慣用的表現)が豊富なのがエトリアの西に存在する広大な『アレス帝国』」これに付け加えたのはグルカさんだ。

「世界一の大帝国と呼ばれてる。でもエトリア西部にはホーキスト山脈っていう数千mの山脈があって、アレス側は断崖絶壁になっていてまず超えられやしなかったんだ。加えてアレス帝国領も山脈付近には魔力が薄いから生活に適していない。そのあたり自体が放置されていたんだよ」

「加えてエトリアの南と東は広大な海しかない。といってもそう遠くない未来、海の向こうから異国の民がやってくるだろうがな」

”何と戦うというのか”_俺の疑問への答えは今のにあらかた詰まっていた。

人間を襲う魔物に魔獣、そして帝国の侵略…正直聞きたいことだらけだけど、この人たちの目的はわかってきた。

ここは軍隊のようなものか。彼らは乏しい資源で絶えず危険から自分たちの生活を守っている。そして反魔法物質は現状を解決する切り札になるかもしれない。

…というかさっきの地理の説明あんまり覚えられなかったな。あとで地図を見せてもらおう。

「まぁ、足りない所はあると思うがそんなところだ……そろそろ時間だな」

サカキさんが出口側に向かい歩きだした。時計もないのに時間わかるんだ…

「お、もうそんな時間か…あっ、てかさ、二人も一緒に行っちゃえば?元気でしょ?」

サカキさんが歩きながら振り返った。
「そうですね、一度顔合わせも必要ですし」

「え、ん?何をするんですか??」

「パトロール兼ロードワーク兼新人歓迎会兼研修兼地域の方々への挨拶周りだ」


めっちゃ真面目な顔してゆうてますけど、……兼すぎじゃなぁい???
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ぽっちゃりおっさん異世界ひとり旅〜目指せSランク冒険者〜

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
酒好きなぽっちゃりおっさん。 魔物が跋扈する異世界で転生する。 頭で思い浮かべた事を具現化する魔法《創造魔法》の加護を貰う。 《創造魔法》を駆使して異世界でSランク冒険者を目指す物語。 ※以前完結した作品を修正、加筆しております。 完結した内容を変更して、続編を連載する予定です。

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

騎士志望のご令息は暗躍がお得意

月野槐樹
ファンタジー
王弟で辺境伯である父を保つマーカスは、辺境の田舎育ちのマイペースな次男坊。 剣の腕は、かつて「魔王」とまで言われた父や父似の兄に比べれば平凡と自認していて、剣より魔法が大好き。戦う時は武力より、どちらというと裏工作? だけど、ちょっとした気まぐれで騎士を目指してみました。 典型的な「騎士」とは違うかもしれないけど、護る時は全力です。 従者のジョセフィンと駆け抜ける青春学園騎士物語。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...