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1章 特殊筋肉奇襲部隊
「来訪者達(※allマッチョ)」
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グルカさんに連れられて無機質な地下通路を進むと、やがてスライド式の鉄製の扉が現れた。
部活動とかで使う体育館の扉みたいだ。
「どういうわけだか知らないんだけどさ、なんっか時々君達の世界からやってくる人がいるんだよね」
随分呑気な雰囲気で言いながら扉をガラガラと開ける。
だんだん中が見えてきた。
照明が多いのだろう、急に眩しくなって俺は少し目を細めた。
まだ視界が光に包まれる中、耳から聞こえてきたのは
ガシャッガシャッという金属製品を動かす音、
ドッドッドッドッ…というリズミカルな打突音、
それらにフッ吹くような呼吸音、時々上がる怒号のような「掛け声」……
光に包まれたシルエット達が色を帯びできた。
……
これは……
ジムだ。
あとマッチョだ。
俺たちがこんな目に遭う前によく通ってたジムの、そのまんまの景色が広がっている。
……?!
「ルームランナーがある?!」
壁に沿っていくつか明らかにルームランナーの様相を呈した器具が配置されている。
電気なんて通ってるのか?!
無意識に声になってたようだ。グルカさんがふふ、と笑う。
「君らが以前の世界で使ってた物を再現したんだ。動力は…これも魔法だね」
「……」
確かによく見ると、地面代わりのマット部分が自動で動いている……ていうか、乗ってる人のペースが異常に速い。ほぼ短距離走だ。
そういうアスリートか?
見渡すとどこもかしくも筋肉______身長や骨格、そして発達している部位など、個々人に差はあれど、磨き抜かれた肉体を持つ者達が筋肉祭りを開催していた。
傍から見れば十二分に異様な光景だ。しかし謎だらけのこの場所に来て初めて、俺は「見慣れた光景」を目にした。
これを「俺達の世界」から来た人間が作ったのか?
一人のマッチョがグルカさんに気付いたようだ。
上裸のままでこっちへ駆け寄ってくる。
「お疲れ様です。グルカさん」
男は身長170半ば、フレームの細い長方形のカクカクした眼鏡をしている。
やや赤茶を帯びた髪が眉毛まで伸びている、普通の社会人としては標準だがこういったトレーニーの中では比較的長めの髪型に分類される髪型……
いかにも理知的な男、といった感じだ。
体躯は典型的な逆三角形ではなかった。しかし頭の先から爪先まで全身の要素が洗練されていて、まったくの無駄を削ぎ落とした、というような合理的で美しい筋肉をまとっている。
まさに理想の細マッチョだ。
「サカキくん、急にごめんね。新しい仲間だよ」
「賢木だ。よろしく頼む」
サカキさんと握手を交わしつつ俺たちも名前を告げる。
「グルカさんにどこまで聞いた?」
挨拶も早々にサカキさんは要件を聞いてくる。
「えっと...ここが日本でないことくらい...ですかね...」
「なるほど、何も知らされてないと」
...結構ざっくり言ってくるな...あってるけど。
「体調に異常はないか」
「え?」
「殴られただろ」
あ、さっきの唐突な腹パンのことか…
思い出したように殴られた箇所がズキズキと痛んできた。
「重症では...ないと思います…たぶん」
「俺は大丈夫っす」
内田は俺よりは平気そうだ。筋肉量の違いだろうか?
ボディビル大会のことを思い出してしまった。ここでも差を感じるとは…
「俺の場合は一週間アザが消えなかった」
昔を思い出し懐かしむような、うっすらとグルカさんを非難するかのようなつぶやきだった。
「や、それはさ、しょうがないじゃん、その頃は私もまだ若かったしさ、…あとサカキくん強かったし」
グルカさんはその雰囲気を感じ取ったようだ。取り繕うように矢継ぎ早に言い訳したが、劣勢が変わらないとわかると、
「じゃ、サカキくん残りよろしく、」
俺たちの方を向いて、
「やっぱ同じ境遇の人から聞いた方がわかりやすいと思うからさ、サカキ君になんでも聞いてね!」
それだけ言い残してグルカさんはそそくさと部屋の隅にある二つの扉のうちの鉄製の方を開いて消えた。
急に取り残された俺たちのなかにしばし沈黙が流れる...
サカキさんは…呆れたのか、ジト~…っとした目で扉を見つめていたが、やがてこちらに向き直った。
「...なにも聞いてないとなると俺たちがここで何をしてるかもよく分からないよな」
確かに...そういえばどうしてこの人たちはここで筋トレを...?
「この世界に来た理由はわからん。しかしここに来た理由は...戦うためだ」
戦う?
「何と...ですか?」
「侵略してくる隣国とだ。この国は常に劣勢に立たされている。主な原因は国力___すなわち魔法技術の差だ」
魔法…そりゃそうか。魔法が存在する世界だ。戦争でも使われるにきまってる。
「サカキさんは...もしかして魔法とか使えるんですか?」
随分と間抜けな質問に思えないこともないが...
「いいや、『俺らの世界』から来た人間は魔法を使えない」
そりゃあそうか。でも...
「どうやって戦うんですか?」
俺の問いに対して、サカキさんは自身の右手を挙げ、こぶしを軽くタップした。
「こいつだ」
「...対魔法筋肉特殊奇襲部隊、それがこの集団の名前だ」
部活動とかで使う体育館の扉みたいだ。
「どういうわけだか知らないんだけどさ、なんっか時々君達の世界からやってくる人がいるんだよね」
随分呑気な雰囲気で言いながら扉をガラガラと開ける。
だんだん中が見えてきた。
照明が多いのだろう、急に眩しくなって俺は少し目を細めた。
まだ視界が光に包まれる中、耳から聞こえてきたのは
ガシャッガシャッという金属製品を動かす音、
ドッドッドッドッ…というリズミカルな打突音、
それらにフッ吹くような呼吸音、時々上がる怒号のような「掛け声」……
光に包まれたシルエット達が色を帯びできた。
……
これは……
ジムだ。
あとマッチョだ。
俺たちがこんな目に遭う前によく通ってたジムの、そのまんまの景色が広がっている。
……?!
「ルームランナーがある?!」
壁に沿っていくつか明らかにルームランナーの様相を呈した器具が配置されている。
電気なんて通ってるのか?!
無意識に声になってたようだ。グルカさんがふふ、と笑う。
「君らが以前の世界で使ってた物を再現したんだ。動力は…これも魔法だね」
「……」
確かによく見ると、地面代わりのマット部分が自動で動いている……ていうか、乗ってる人のペースが異常に速い。ほぼ短距離走だ。
そういうアスリートか?
見渡すとどこもかしくも筋肉______身長や骨格、そして発達している部位など、個々人に差はあれど、磨き抜かれた肉体を持つ者達が筋肉祭りを開催していた。
傍から見れば十二分に異様な光景だ。しかし謎だらけのこの場所に来て初めて、俺は「見慣れた光景」を目にした。
これを「俺達の世界」から来た人間が作ったのか?
一人のマッチョがグルカさんに気付いたようだ。
上裸のままでこっちへ駆け寄ってくる。
「お疲れ様です。グルカさん」
男は身長170半ば、フレームの細い長方形のカクカクした眼鏡をしている。
やや赤茶を帯びた髪が眉毛まで伸びている、普通の社会人としては標準だがこういったトレーニーの中では比較的長めの髪型に分類される髪型……
いかにも理知的な男、といった感じだ。
体躯は典型的な逆三角形ではなかった。しかし頭の先から爪先まで全身の要素が洗練されていて、まったくの無駄を削ぎ落とした、というような合理的で美しい筋肉をまとっている。
まさに理想の細マッチョだ。
「サカキくん、急にごめんね。新しい仲間だよ」
「賢木だ。よろしく頼む」
サカキさんと握手を交わしつつ俺たちも名前を告げる。
「グルカさんにどこまで聞いた?」
挨拶も早々にサカキさんは要件を聞いてくる。
「えっと...ここが日本でないことくらい...ですかね...」
「なるほど、何も知らされてないと」
...結構ざっくり言ってくるな...あってるけど。
「体調に異常はないか」
「え?」
「殴られただろ」
あ、さっきの唐突な腹パンのことか…
思い出したように殴られた箇所がズキズキと痛んできた。
「重症では...ないと思います…たぶん」
「俺は大丈夫っす」
内田は俺よりは平気そうだ。筋肉量の違いだろうか?
ボディビル大会のことを思い出してしまった。ここでも差を感じるとは…
「俺の場合は一週間アザが消えなかった」
昔を思い出し懐かしむような、うっすらとグルカさんを非難するかのようなつぶやきだった。
「や、それはさ、しょうがないじゃん、その頃は私もまだ若かったしさ、…あとサカキくん強かったし」
グルカさんはその雰囲気を感じ取ったようだ。取り繕うように矢継ぎ早に言い訳したが、劣勢が変わらないとわかると、
「じゃ、サカキくん残りよろしく、」
俺たちの方を向いて、
「やっぱ同じ境遇の人から聞いた方がわかりやすいと思うからさ、サカキ君になんでも聞いてね!」
それだけ言い残してグルカさんはそそくさと部屋の隅にある二つの扉のうちの鉄製の方を開いて消えた。
急に取り残された俺たちのなかにしばし沈黙が流れる...
サカキさんは…呆れたのか、ジト~…っとした目で扉を見つめていたが、やがてこちらに向き直った。
「...なにも聞いてないとなると俺たちがここで何をしてるかもよく分からないよな」
確かに...そういえばどうしてこの人たちはここで筋トレを...?
「この世界に来た理由はわからん。しかしここに来た理由は...戦うためだ」
戦う?
「何と...ですか?」
「侵略してくる隣国とだ。この国は常に劣勢に立たされている。主な原因は国力___すなわち魔法技術の差だ」
魔法…そりゃそうか。魔法が存在する世界だ。戦争でも使われるにきまってる。
「サカキさんは...もしかして魔法とか使えるんですか?」
随分と間抜けな質問に思えないこともないが...
「いいや、『俺らの世界』から来た人間は魔法を使えない」
そりゃあそうか。でも...
「どうやって戦うんですか?」
俺の問いに対して、サカキさんは自身の右手を挙げ、こぶしを軽くタップした。
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