6 / 16
1章 特殊筋肉奇襲部隊
スカウト...?
しおりを挟む
「スカウトってやつなのか...!?」
内田は衝撃に身を震わせている。
こいつ二回言った。
もとからそういうのに興味があったのだろうか、驚きながらも少し嬉しそうで、声色からも興奮している様子が伺える。
いやでも...スカウトって決まった訳じゃないよな?
来て欲しいって言っただけだし...
指摘しようか迷ったが、内田の珍しいカブト虫を見つけた時の虫捕り少年のような表情を見ると、言う気にはなれなかった。
「あの、大事な用っていうのは...?」
民衆のために働く兵士とは言えど、流石に内容も知らずについて行くには少し抵抗がある。
「スカウトであってるよ。何のスカウトかは...着いてからのお楽しみ」
スカウトで合ってた。
兵士の顔の上半部は見えないが、口元には子供のように無邪気な笑顔を浮かべている。
それにしても仕事内容はすぐには教えてくれないのか...少し不安なところはあるけど...
「どこっすか⁉︎いきましょいきましょ!」
この男、完全に乗り気だ。
こうなった内田を止めるのは容易ではない。
ほんと子供みたいな性格してるなあ...
まあ、内田がいるなら大丈夫か...
「俺も大丈夫です」
同意を求めるようにこっちを見ている内田に頷きながら、俺も応えた。
「よし、着いて来なさい」
先導する兵士の後ろを歩きながら、俺もこれから何を見る事になるのかという好奇心が湧き、わずかな不安とともに入り混じっていた。
「さて、到着した訳だが」
たどり着いたのは先ほどの巨大な建物。
入り口付近で2人の兵士が警護をしていたが、俺たちを先導している兵士の姿を見ると、すぐにさっと頭を下げて通してくれた。
ステンレス鋼の枠に囲まれたガラスの二重扉を押し、
入り口を通り抜けると、外装のイメージ通りの場所だった。
日差しがやや強く、暖かかった外の通りとは違い、ひんやりとした空気に包まれている。
職員達が規則正しく敷き詰められた大理石の床の上を慌しく動き回っており、その度にあちこちから、硬く、乾いた音がリズミカルに鳴っているのが聞こえる。
どっかの時代の宮殿の中みたいな室内に仕切りとなる壁や扉はほとんどなく、向かい側の壁が遠すぎて見えないほど広い。
ただ仕切りがないと周りの音がうるさいのでは...?
なんて事を考えていたらすでに兵士は少し遠くで受付嬢らしき人と話していた。
互いが軽い会釈をすると、兵士は
「おーい」と頭上に挙げた右腕を振りながらこっちにやって来た。
「今話はしておいたから、入館許可出たよ。さあさあ、ついてきたまえ」
兵士は壁に沿って歩いて行く。
そしてこの庁舎の隅にぽつんと立て付けられた鉄の扉を引き開け、中に入った。
少し後ろを歩いていた俺たちは、少し早歩きをして続いて中に入った。
扉の向こうは、小さな部屋だった。
砂色の岩を固めた壁に囲まれたこの部屋は、縦横2、3メートルほどの狭さで、ど真ん中に地下へと続いていそうな階段だけがあった。
「ちょっと狭いから気をつけてね」
兵士はそのまま階段を静かに降りていった。
数段下がった所で兵士の兜も暗闇で見えなくなった。
深い闇の中に吸い込まれて消えてしまったようで、少しだけ腹の奥が縮んだような気がした。
程なくして内田も小さく音を立てながら一段一段ゆっくりと降りていった。
この階段を降りた先に「何か」が待っているような予感がする。
別に俺達の命を脅かすような物ではないのだろうけど。
内田の背中が見えなくなる前に、俺も後に続いた。
長い階段をしばらく進むとやがて僅かに光が差し込んできた。
最後の一段を降りると、学校の教室よりも一回りほど大きな小部屋へ出た。
壁の材質が変わっている。
コンクリートのような色合いの壁にはところどころに照明が埋め込まれていて、地下なのに地上と変わらない明るさが保たれていた。
「さ、到着だよ」
ずっと先導して歩いていた兵士が立ち止まる。
「…ここで一体何を…?」
「入隊試験だよ」
兵士はそう告げながら兜を外した。
その下から艶のある金の髪とサファイアのように青い輝きを放つ瞳の女性の顔が現れた...
......。
俺達二人は驚きのあまり何も言えなかった。
時が止まったように沈黙が続く。
固まっていたのは長い間だったのかそれとも一瞬だったのか、ようやく俺は目の前の事実に対して反応を示せた。
いや女性だったんかい!!!
あと「入隊試験」って何!?
俺は訳が分からず内田を見た...が、しかしこの男何も気にしていないような顔をしている→( `・ω・)
ていうかこれから何をするのかワクワクしているようだ。
呑気だね。君。
兵士は小さく金属音を立てながら胴体の装備を外していった。
そして肩まで伸びている髪を1つに結いた。
ちょうど街中でよく見る、フィットネスジムの広告に出てくるスタイリッシュなお姉さんのような姿だ。
素手に上下トレーニングウェア、そして冷たく硬いコンクリートのこの部屋で裸足、という姿になった。
「...死んだら不合格ね」
兵士がボソッと発した言葉を俺(達?)は聞き逃さなかった。
え?何なになに?
………死?
兵士は軽快なステップで地を跳ねている。
何か物凄く嫌な予感がする。
胃がきゅっ、と縮むような感覚だ。
口の中が乾いていくのを感じながら恐る恐る聞いてみた。
「あの、試験ってやつの内容は…?」
背を向けていた兵士がこちらを向いた。
青く澄んだ瞳がこちらをじっと見つめている。
その奥には、無邪気な子供が放つような歓楽と、相手を前にした戦士が持つような闘志か込められていた。
内田は衝撃に身を震わせている。
こいつ二回言った。
もとからそういうのに興味があったのだろうか、驚きながらも少し嬉しそうで、声色からも興奮している様子が伺える。
いやでも...スカウトって決まった訳じゃないよな?
来て欲しいって言っただけだし...
指摘しようか迷ったが、内田の珍しいカブト虫を見つけた時の虫捕り少年のような表情を見ると、言う気にはなれなかった。
「あの、大事な用っていうのは...?」
民衆のために働く兵士とは言えど、流石に内容も知らずについて行くには少し抵抗がある。
「スカウトであってるよ。何のスカウトかは...着いてからのお楽しみ」
スカウトで合ってた。
兵士の顔の上半部は見えないが、口元には子供のように無邪気な笑顔を浮かべている。
それにしても仕事内容はすぐには教えてくれないのか...少し不安なところはあるけど...
「どこっすか⁉︎いきましょいきましょ!」
この男、完全に乗り気だ。
こうなった内田を止めるのは容易ではない。
ほんと子供みたいな性格してるなあ...
まあ、内田がいるなら大丈夫か...
「俺も大丈夫です」
同意を求めるようにこっちを見ている内田に頷きながら、俺も応えた。
「よし、着いて来なさい」
先導する兵士の後ろを歩きながら、俺もこれから何を見る事になるのかという好奇心が湧き、わずかな不安とともに入り混じっていた。
「さて、到着した訳だが」
たどり着いたのは先ほどの巨大な建物。
入り口付近で2人の兵士が警護をしていたが、俺たちを先導している兵士の姿を見ると、すぐにさっと頭を下げて通してくれた。
ステンレス鋼の枠に囲まれたガラスの二重扉を押し、
入り口を通り抜けると、外装のイメージ通りの場所だった。
日差しがやや強く、暖かかった外の通りとは違い、ひんやりとした空気に包まれている。
職員達が規則正しく敷き詰められた大理石の床の上を慌しく動き回っており、その度にあちこちから、硬く、乾いた音がリズミカルに鳴っているのが聞こえる。
どっかの時代の宮殿の中みたいな室内に仕切りとなる壁や扉はほとんどなく、向かい側の壁が遠すぎて見えないほど広い。
ただ仕切りがないと周りの音がうるさいのでは...?
なんて事を考えていたらすでに兵士は少し遠くで受付嬢らしき人と話していた。
互いが軽い会釈をすると、兵士は
「おーい」と頭上に挙げた右腕を振りながらこっちにやって来た。
「今話はしておいたから、入館許可出たよ。さあさあ、ついてきたまえ」
兵士は壁に沿って歩いて行く。
そしてこの庁舎の隅にぽつんと立て付けられた鉄の扉を引き開け、中に入った。
少し後ろを歩いていた俺たちは、少し早歩きをして続いて中に入った。
扉の向こうは、小さな部屋だった。
砂色の岩を固めた壁に囲まれたこの部屋は、縦横2、3メートルほどの狭さで、ど真ん中に地下へと続いていそうな階段だけがあった。
「ちょっと狭いから気をつけてね」
兵士はそのまま階段を静かに降りていった。
数段下がった所で兵士の兜も暗闇で見えなくなった。
深い闇の中に吸い込まれて消えてしまったようで、少しだけ腹の奥が縮んだような気がした。
程なくして内田も小さく音を立てながら一段一段ゆっくりと降りていった。
この階段を降りた先に「何か」が待っているような予感がする。
別に俺達の命を脅かすような物ではないのだろうけど。
内田の背中が見えなくなる前に、俺も後に続いた。
長い階段をしばらく進むとやがて僅かに光が差し込んできた。
最後の一段を降りると、学校の教室よりも一回りほど大きな小部屋へ出た。
壁の材質が変わっている。
コンクリートのような色合いの壁にはところどころに照明が埋め込まれていて、地下なのに地上と変わらない明るさが保たれていた。
「さ、到着だよ」
ずっと先導して歩いていた兵士が立ち止まる。
「…ここで一体何を…?」
「入隊試験だよ」
兵士はそう告げながら兜を外した。
その下から艶のある金の髪とサファイアのように青い輝きを放つ瞳の女性の顔が現れた...
......。
俺達二人は驚きのあまり何も言えなかった。
時が止まったように沈黙が続く。
固まっていたのは長い間だったのかそれとも一瞬だったのか、ようやく俺は目の前の事実に対して反応を示せた。
いや女性だったんかい!!!
あと「入隊試験」って何!?
俺は訳が分からず内田を見た...が、しかしこの男何も気にしていないような顔をしている→( `・ω・)
ていうかこれから何をするのかワクワクしているようだ。
呑気だね。君。
兵士は小さく金属音を立てながら胴体の装備を外していった。
そして肩まで伸びている髪を1つに結いた。
ちょうど街中でよく見る、フィットネスジムの広告に出てくるスタイリッシュなお姉さんのような姿だ。
素手に上下トレーニングウェア、そして冷たく硬いコンクリートのこの部屋で裸足、という姿になった。
「...死んだら不合格ね」
兵士がボソッと発した言葉を俺(達?)は聞き逃さなかった。
え?何なになに?
………死?
兵士は軽快なステップで地を跳ねている。
何か物凄く嫌な予感がする。
胃がきゅっ、と縮むような感覚だ。
口の中が乾いていくのを感じながら恐る恐る聞いてみた。
「あの、試験ってやつの内容は…?」
背を向けていた兵士がこちらを向いた。
青く澄んだ瞳がこちらをじっと見つめている。
その奥には、無邪気な子供が放つような歓楽と、相手を前にした戦士が持つような闘志か込められていた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説


もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

とある婚約破棄の顛末
瀬織董李
ファンタジー
男爵令嬢に入れあげ生徒会の仕事を疎かにした挙げ句、婚約者の公爵令嬢に婚約破棄を告げた王太子。
あっさりと受け入れられて拍子抜けするが、それには理由があった。
まあ、なおざりにされたら心は離れるよね。

とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる