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第3章 精霊王
魔道竜(第3章、26)
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本来は三人のうちの誰かを残し、難破船を調べにいくべきだ。
しかし二人は先にいってしまった。
行くべきか、とどまるべきか。
大いに悩む。
が、ティアヌ自身が難破船を調べなければならない。
なぜならあの船は、ティアヌの父がこの島へ来るためにつかった船かもしれないからだ。
だとすると何かしらの手がかりが残されているはず。
ティアヌは迷いを振り払う。
「絶対に船を降りちゃだめよ! いい? 絶対よ?」
当初島へはマディソン号で乗り付ける予定ではなかった。
島の陸地はほぼ海面下にのみこまれ、神殿があったとされる山頂部のみが突き出しているという地形の特質状、海底は底知れない溪谷をつくりだしており、暗礁に乗り上げるおそれがまったくないことからマディソン号を島へ停泊させることにした。
目の端には白い浜辺に碇をおろしたマディソン号が横付けされている。
下船するならば容易にできる。
海の怖さを誰よりも熟知している彼らなら、上陸しようなどという愚行にはおよぶまい。
欲にかられた船員たちがいないかぎりは。
「じゃぁ行ってくるわ」
「ご安心を。どうかお気をつけて」
子供ではない。自分の命は自らの責任において守ってもらうしかない。
「絶対よ!」
迷いをふりきりティアヌはマディソン号をあとにした。
「おぃ、ヤロウども! 集まれ」
一人の男を囲むようにして船員たちがぞろぞろと参集した。
よく磨かれたハゲ頭。一目おかれる通称、とっつぁんの周りを取り囲む。
「本当にたどり着けるとは思わなかったな。ここが海賊の懐を満足させられるお宝があるって島だ。あの小生意気な船長気取りの小娘にしては上出来だな。なんせ、これまで誰も行き着けないとされた通説をくつがえしやがったんだから」
「お頭。どうしやすか?」
オーバンがニヤついて言う。
「そうだな。お宝を目の前に指をくわえて待つのは海賊のすることじゃねぇ」
「しかしお頭。よくあの女海賊にあっしらの素性がバレませんでしたね」
「当たり前だろぅ? 海賊船ってのは、普段は、普通の船をよそおうもんだ。何のための偽装だとおもってるんだ? 伊達に長年この海賊業をやってるわけじゃね、だろ?」
「じゃお頭。そろそろ行きやすかい?」
「ヤロウども、下船の用意しろ! 行くぞ、お宝の山をさがしに」
「アイアイサーッ!」
彼らは本来の海賊としての顔色を取り戻した。
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