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第1章 禁断の魔道士
魔道竜(第1章、25)
しおりを挟む「ね…ちょっとそこのお兄さん、あの踊り子のお姉さんたちはなぜあんな格好で踊っているの?」
厳かさゼロ、神秘性、皆無。祭りには不釣り合いきわまりない。
たまたま隣りに居合わせた別の船の船員にたずねると、予想通りの反応がかえってきた。
「昔は村娘が古来より伝わる伝統の踊りをおどっていたらしいが…これがあまりにも人目をひかなすぎた。そこで目玉となる踊り子をあぁしたらいんだが、これが大評判で」
この船員もまわりの男ども同様、好色のかたまりのように頬をそめている。
見物客の大半が船乗りであり、特にめぼしい観光スポットにもめぐまれないともなれば必然的にこうなっていったのかもしれない。
「うぉぉぉぉぉぉぉ!」
どよめきがあがった。踊り子たちがいっせいに観客にたいしてウインクしてみせたからだ。その喜びようは半端ない。
「あきれた」
男ってウインク一つでこれほど高揚する生き物なわけ?
ただ片目をつむっただけで!?
理解不能だ。
雰囲気に酔いしれ、あたりには異様な熱気がただよう。
これもセルティガに言わせれば、男がスケベをやめたら人類は滅亡する、とまで言わしめ。女性には理解しがたいことでも男性からすれば男の性(さが)の一言で片付けられてしまうのだろう。
悶々としたそのとき、トントンと肩を軽くたたかれ、ふりむくとそれは驚愕の色をにじませるセイラだった。
「ちょっとぉ………あれを見て!」
指でさししめす先をたどると、さすがのティアヌも驚きの色をかくせない。
「なッ! なに………アレ……」
祭りとは本来、豊穣と恵みをあたえてくれた神への感謝の念をあらわすための儀式のいっかんとして解釈される。神を敬うことに端をはっするとか。
しかし、意表をついた、つきまくった崇める存在にこの祭りの主旨がまったくわからなくなった。
「これは……この辺りの人たちがおかしくなったって言われても仕方がないわね」
「ティアヌ……あれって例のアレでしょう?」
ティアヌはおもむろに腕組み、小さくうなずいた。
「間違いない。アレは邪蛇(じゃだ)よ」
邪蛇とは太古の天地創造神話にもその名を登場することでも有名だ。なにせ突如として姿を消した神々のイワクにからんでくるのだから。
「…………」
このさきティアヌ予想を上回る、波乱が待ち受けようとしていた。
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