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特別編

(特別編)ー後宮の悪の華ー(3)

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広大なる庭院を散策していると、ふいに義妹が袖をとった。

「兄様、トンボです」

「…………」

何も珍しい光景ではない。

秋になればトンボが飛び交い、秋虫が恋を語らう長い宵が訪れる。

「あれはトンボモドキというのだそうですよ」

「ん? トンボモドキ? 何だそれは」

はは、と高らかに嗤うと妹は表情をくもらせ頚をかしげる。

「…………」

「どうした、トンボモドキのうんちくは?」

妹は口ごもった。

「わかりません。どこで聴いたのかも、どこで知ったのかも」

困惑しているのか、しきりに頤を撫でだす。

「すみません」

トンボモドキ。

昆虫のトンボであろうと、そうでなかろうとどうでもよい。

そなたが、朕の、全てだ。

故に居ても居なくてもどうでもよい。

そなたが、全て、だ。

「朕はこの時が生をうけていらい一番幸せである」

義妹には、わかるまい。

朕がどれだけ義妹によって救われてきたかも。

生きる意味全てであることも。

そしてーーーーーどれだけ愛しているのかも。

「……して。トンボモドキとはいかなるものだろうな、 さぞや美しかろう。そなたが胸に刻むほどのものだからな」

記憶にとどめなくともよい。

そなたこそが朕の生きる意味全てだ。
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