もう一度あなたに逢いたくて〜こぼれ落ちた運命を再び拾うまで〜

雪野 結莉

文字の大きさ
上 下
240 / 255
最終章 こぼれ落ちた運命は

1

しおりを挟む
ルーク様がデイヴィス侯爵家から離籍をすると侯爵夫妻に話をすると、当然揉めることになった。

デイヴィス侯爵夫妻は、関わり合いは浅くても、ルーク様に愛情を持っていないわけではなかったから。

無事に討伐が終わったのに、何故侯爵家を継がないのかと聞かれたルーク様は、わたしのことは話さずに、討伐で疲れ、王家との縁談でも疲れたので、そっとしておいて欲しいと切々と訴えたそうた。

この2つの事情はデイヴィス夫妻もルーク様に悪いと思っていたようで、とても残念そうではあったが、了承してもらえたそうだ。

そして、わたしの方はと言うと、今日はミラー子爵家で前世今世の両親顔合わせとなる。

「ルーク様が離籍して貴族でなくなるなら、わたしが子爵家に養女に来る意味ないと思うんですけど……」

ミラー子爵家の応接間に商家の両親を案内した後、わたし1人でお兄様の部屋へと押しかけて話をする。

「いやいや、養子縁組しといた方がいいって。絶対だ。それより、オレも支度が終わるからもう応接間に行くぞ。早く応接間に行って待ってろよ」
「でも、だって、緊張しちゃって……」
「年頃の娘が、男の部屋に2人っきりになるもんじゃない」
「何言ってんですか。お兄様じゃないですか」
「世間一般的には、オレとお前は他人なんだよ。まったく。淑女教育半ばで学園から離脱したからなあ。そこから再開しないといけないと思うと、オレは頭が痛い」
「だから、ルーク様だって平民になるのに!」
「いーからいーから。それに、父上と母上もニーナが養女になるのを楽しみにしているんだから、今更なかったことにはできないぞ」
「そうですけど……」

お兄様に追い出されて、わたしは応接間に戻った。

応接間のソファには、カチコチに緊張したお父さんとお母さん、それに弟のルフィが座っていた。

みんな、一張羅を着込んでいる。
お父さんはスーツにループタイ。お母さんは襟がレースになっているワンピース。
かく言うわたしも、ドレスではないけれど、フリルのついたワンピースを身に付けていた。

「ニーナ、父さん緊張してきたよ。貴族の方と商談以外で話す機会なんて、滅多にないからなぁ」
「大丈夫よ、お父さん。ミラー子爵家の方たちは、みなさんいい方ばかりだから」

お父さんとお母さんは幾分肩の力が抜けたようだが、ルフィはカチッと固まっている。
ふふ。蝶ネクタイつけた男の子が緊張している姿って、なんで微笑ましいんだろう。

わたしがルフィの隣に腰を下ろした時に、ミラー子爵家のメイドのメルと、わたしの知らない若いメイドがお茶を運んできた。

ティーセットが私たちの前に並べられた頃、ミラーのお父様とお母様、お兄様が応接間にやってきた。

「初めまして。わたしがミラー子爵家の当主です。どうぞおかけください」

ミラーのお父様は、自分が貴族であるにも関わらず、平民のわたしたちにペコリと頭を下げた。

「あ、あのっ、ニーナの父です。これはニーナの母で、あっちが弟になります。よろしくお願いします」

お父さんもぴょこりと立ち上がり、それに倣ってわたしたちも立ち上がって頭を下げた。

「ご丁寧にありがとうございます。こちらはわたしの妻で、あちらがわたしの跡を継ぐ予定の長男です」

お互いが紹介し合い、みんながソファに座って和やかに話し合いが行われるかと思われた時、お父さんが爆弾を投下した。

「うちのニーナを子爵家の養女にしてくださるとのお話、大変有り難く受け止めております。しかし、わたくしどもは、ニーナを養女に出すつもりはありませんので、申し訳ございませんがこのお話はなかったことにしていただけると幸いです」

その場が一気に凍りつく。

ええーっ!
お父さん、ここには養子縁組の手続きに来たのではなくて、お断りに来たのー!?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

もう一度あなたと?

キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として 働くわたしに、ある日王命が下った。 かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、 ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。 「え?もう一度あなたと?」 国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への 救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。 だって魅了に掛けられなくても、 あの人はわたしになんて興味はなかったもの。 しかもわたしは聞いてしまった。 とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。 OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。 どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。 完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。 生暖かい目で見ていただけると幸いです。 小説家になろうさんの方でも投稿しています。

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった! しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢? 私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...