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最終章 こぼれ落ちた運命は
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ルーク様がデイヴィス侯爵家から離籍をすると侯爵夫妻に話をすると、当然揉めることになった。
デイヴィス侯爵夫妻は、関わり合いは浅くても、ルーク様に愛情を持っていないわけではなかったから。
無事に討伐が終わったのに、何故侯爵家を継がないのかと聞かれたルーク様は、わたしのことは話さずに、討伐で疲れ、王家との縁談でも疲れたので、そっとしておいて欲しいと切々と訴えたそうた。
この2つの事情はデイヴィス夫妻もルーク様に悪いと思っていたようで、とても残念そうではあったが、了承してもらえたそうだ。
そして、わたしの方はと言うと、今日はミラー子爵家で前世今世の両親顔合わせとなる。
「ルーク様が離籍して貴族でなくなるなら、わたしが子爵家に養女に来る意味ないと思うんですけど……」
ミラー子爵家の応接間に商家の両親を案内した後、わたし1人でお兄様の部屋へと押しかけて話をする。
「いやいや、養子縁組しといた方がいいって。絶対だ。それより、オレも支度が終わるからもう応接間に行くぞ。早く応接間に行って待ってろよ」
「でも、だって、緊張しちゃって……」
「年頃の娘が、男の部屋に2人っきりになるもんじゃない」
「何言ってんですか。お兄様じゃないですか」
「世間一般的には、オレとお前は他人なんだよ。まったく。淑女教育半ばで学園から離脱したからなあ。そこから再開しないといけないと思うと、オレは頭が痛い」
「だから、ルーク様だって平民になるのに!」
「いーからいーから。それに、父上と母上もニーナが養女になるのを楽しみにしているんだから、今更なかったことにはできないぞ」
「そうですけど……」
お兄様に追い出されて、わたしは応接間に戻った。
応接間のソファには、カチコチに緊張したお父さんとお母さん、それに弟のルフィが座っていた。
みんな、一張羅を着込んでいる。
お父さんはスーツにループタイ。お母さんは襟がレースになっているワンピース。
かく言うわたしも、ドレスではないけれど、フリルのついたワンピースを身に付けていた。
「ニーナ、父さん緊張してきたよ。貴族の方と商談以外で話す機会なんて、滅多にないからなぁ」
「大丈夫よ、お父さん。ミラー子爵家の方たちは、みなさんいい方ばかりだから」
お父さんとお母さんは幾分肩の力が抜けたようだが、ルフィはカチッと固まっている。
ふふ。蝶ネクタイつけた男の子が緊張している姿って、なんで微笑ましいんだろう。
わたしがルフィの隣に腰を下ろした時に、ミラー子爵家のメイドのメルと、わたしの知らない若いメイドがお茶を運んできた。
ティーセットが私たちの前に並べられた頃、ミラーのお父様とお母様、お兄様が応接間にやってきた。
「初めまして。わたしがミラー子爵家の当主です。どうぞおかけください」
ミラーのお父様は、自分が貴族であるにも関わらず、平民のわたしたちにペコリと頭を下げた。
「あ、あのっ、ニーナの父です。これはニーナの母で、あっちが弟になります。よろしくお願いします」
お父さんもぴょこりと立ち上がり、それに倣ってわたしたちも立ち上がって頭を下げた。
「ご丁寧にありがとうございます。こちらはわたしの妻で、あちらがわたしの跡を継ぐ予定の長男です」
お互いが紹介し合い、みんながソファに座って和やかに話し合いが行われるかと思われた時、お父さんが爆弾を投下した。
「うちのニーナを子爵家の養女にしてくださるとのお話、大変有り難く受け止めております。しかし、わたくしどもは、ニーナを養女に出すつもりはありませんので、申し訳ございませんがこのお話はなかったことにしていただけると幸いです」
その場が一気に凍りつく。
ええーっ!
お父さん、ここには養子縁組の手続きに来たのではなくて、お断りに来たのー!?
デイヴィス侯爵夫妻は、関わり合いは浅くても、ルーク様に愛情を持っていないわけではなかったから。
無事に討伐が終わったのに、何故侯爵家を継がないのかと聞かれたルーク様は、わたしのことは話さずに、討伐で疲れ、王家との縁談でも疲れたので、そっとしておいて欲しいと切々と訴えたそうた。
この2つの事情はデイヴィス夫妻もルーク様に悪いと思っていたようで、とても残念そうではあったが、了承してもらえたそうだ。
そして、わたしの方はと言うと、今日はミラー子爵家で前世今世の両親顔合わせとなる。
「ルーク様が離籍して貴族でなくなるなら、わたしが子爵家に養女に来る意味ないと思うんですけど……」
ミラー子爵家の応接間に商家の両親を案内した後、わたし1人でお兄様の部屋へと押しかけて話をする。
「いやいや、養子縁組しといた方がいいって。絶対だ。それより、オレも支度が終わるからもう応接間に行くぞ。早く応接間に行って待ってろよ」
「でも、だって、緊張しちゃって……」
「年頃の娘が、男の部屋に2人っきりになるもんじゃない」
「何言ってんですか。お兄様じゃないですか」
「世間一般的には、オレとお前は他人なんだよ。まったく。淑女教育半ばで学園から離脱したからなあ。そこから再開しないといけないと思うと、オレは頭が痛い」
「だから、ルーク様だって平民になるのに!」
「いーからいーから。それに、父上と母上もニーナが養女になるのを楽しみにしているんだから、今更なかったことにはできないぞ」
「そうですけど……」
お兄様に追い出されて、わたしは応接間に戻った。
応接間のソファには、カチコチに緊張したお父さんとお母さん、それに弟のルフィが座っていた。
みんな、一張羅を着込んでいる。
お父さんはスーツにループタイ。お母さんは襟がレースになっているワンピース。
かく言うわたしも、ドレスではないけれど、フリルのついたワンピースを身に付けていた。
「ニーナ、父さん緊張してきたよ。貴族の方と商談以外で話す機会なんて、滅多にないからなぁ」
「大丈夫よ、お父さん。ミラー子爵家の方たちは、みなさんいい方ばかりだから」
お父さんとお母さんは幾分肩の力が抜けたようだが、ルフィはカチッと固まっている。
ふふ。蝶ネクタイつけた男の子が緊張している姿って、なんで微笑ましいんだろう。
わたしがルフィの隣に腰を下ろした時に、ミラー子爵家のメイドのメルと、わたしの知らない若いメイドがお茶を運んできた。
ティーセットが私たちの前に並べられた頃、ミラーのお父様とお母様、お兄様が応接間にやってきた。
「初めまして。わたしがミラー子爵家の当主です。どうぞおかけください」
ミラーのお父様は、自分が貴族であるにも関わらず、平民のわたしたちにペコリと頭を下げた。
「あ、あのっ、ニーナの父です。これはニーナの母で、あっちが弟になります。よろしくお願いします」
お父さんもぴょこりと立ち上がり、それに倣ってわたしたちも立ち上がって頭を下げた。
「ご丁寧にありがとうございます。こちらはわたしの妻で、あちらがわたしの跡を継ぐ予定の長男です」
お互いが紹介し合い、みんながソファに座って和やかに話し合いが行われるかと思われた時、お父さんが爆弾を投下した。
「うちのニーナを子爵家の養女にしてくださるとのお話、大変有り難く受け止めております。しかし、わたくしどもは、ニーナを養女に出すつもりはありませんので、申し訳ございませんがこのお話はなかったことにしていただけると幸いです」
その場が一気に凍りつく。
ええーっ!
お父さん、ここには養子縁組の手続きに来たのではなくて、お断りに来たのー!?
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