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21章 責任
王女の逃走 追う報復
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衛生兵から借り受けた馬を走らせながら、魔獣を討伐塔へと誘導していく。
誘導の手段は、ルーク様の血だ。
ルーク様が怪我をした時、手当の後でルーク様の血を拭った布をオレの剣にまとわりつかせた。
英雄の匂いが剣につくように。
英雄であるルーク様の血は、魔獣を引き寄せる。
その特性を知って、オレは魔獣を討伐塔まで連れて行くことを考えた。
うまく風魔法を操り、剣先の匂いを討伐塔の方向へと持っていく。
魔法を使いながら馬を操るのは、とてつもなく疲弊するが、なんとか持ち堪えねばならない。
あと少しで討伐塔というところで、ルーク様が上げた花火の音がした。
少し間をおいて2回。
ちっ。
もう少し時間がかかると思っていたが、案外早かったな。
女の足での山歩きは大変なはずなのに、おてんばなニーナは身軽に歩いてしまったのだろう。
これが終わったら、ニーナを淑やかな淑女にする教育もしなければならない。
今のままでは、侯爵家に嫁ぐことはできないだろう。
これは、魔物を討伐するよりも難しい気がしてきた……。
まあ、ゆっくり考えるさ。
魔獣は討伐塔の扉を突き破り、塔の中へ侵入した。
壊された扉の向こうは、負傷者と疲れ切った光の隊員達がいて、突然現れた魔獣になすすべもなく立ち尽くしていた。
オレはひらりと馬から飛び降りて塔の中に入る。
「討伐は終わった!完全勝利だ。1匹だけ逃げ出した魔獣を追っているが、外は安全だ。あの魔獣に気をつけて身を隠せ!」
叫びながら剣を振りかざし、剣先の匂いをうまく魔獣の先へと持っていく。
塔の中の階段まで誘導できれば、あとは魔獣が勝手に王女の部屋へと向かって行くだろう。
オレは一度塔に戻った時に、ルーク様の血を拭った布を王女の部屋まで辿れるように壁になすりつけておいた。
階段から先は、オレが仕掛けた血に魔獣が誘導されるという訳だ。
魔獣の後ろ姿を追いながら、王女以外の者に危害が加えられないように剣を振るう。
魔獣を追うフリをして階段を上がって行くと、王女の護衛が見えた。
討伐隊から塔の護衛を任された、ロレンスがドアの前に立っている。
一緒に護衛の任についたアランは、下で他の光の隊員を守っていたため、ロレンスがひとりでここを請け負っているのだろう。
魔獣の姿を見た、ロレンスが剣を構える。
「ロレンスっ! 引け!」
オレの声でロレンスが剣を引いた。
オレはロレンスに害が及ばないように、でも魔獣を斬りつけるように見せかけて大きく剣を振り下ろした。
剣先に纏わりつかせた風魔法が、魔獣のすぐ横の扉を傷付けた。
すると、魔獣は扉に体当たりをして壊し、王女がいる部屋へと侵入した。
あとは近衛が王女を守っているはずだが……。
いや、部屋には近衛がいない?
「ロレンス、近衛はどこに行ったんだ?」
ロレンスは、はっと我に返り剣を構える。
「はっ! 王女の近衛が3人、花火の音を聞いて部屋から出ていきました。敗戦の時の指示を王女から受けていた模様です。しかし、我々にはなんの指示もなく……」
「わかった」
逃亡する姿を近衛に見せないためだな。
オレはロレンスにそのまま階下に行き、他の者を守るように指示する。
「討伐は勝利で終わった。もう魔物はいないはずだ。じきにルーク様が帰還される。それまで、パニックになる者もいると思うが、おまえが落ち着かせるようにしろ!」
「はっ!」
ロレンスが階段を降りて行く音を聞きながら、オレは部屋の中に入る。
隠し通路への道は開け放たれ、悲鳴が聞こえた。
走って行くと、そう広くない通路で、拙い光の魔法で魔獣と対峙している王女が見えた。
誘導の手段は、ルーク様の血だ。
ルーク様が怪我をした時、手当の後でルーク様の血を拭った布をオレの剣にまとわりつかせた。
英雄の匂いが剣につくように。
英雄であるルーク様の血は、魔獣を引き寄せる。
その特性を知って、オレは魔獣を討伐塔まで連れて行くことを考えた。
うまく風魔法を操り、剣先の匂いを討伐塔の方向へと持っていく。
魔法を使いながら馬を操るのは、とてつもなく疲弊するが、なんとか持ち堪えねばならない。
あと少しで討伐塔というところで、ルーク様が上げた花火の音がした。
少し間をおいて2回。
ちっ。
もう少し時間がかかると思っていたが、案外早かったな。
女の足での山歩きは大変なはずなのに、おてんばなニーナは身軽に歩いてしまったのだろう。
これが終わったら、ニーナを淑やかな淑女にする教育もしなければならない。
今のままでは、侯爵家に嫁ぐことはできないだろう。
これは、魔物を討伐するよりも難しい気がしてきた……。
まあ、ゆっくり考えるさ。
魔獣は討伐塔の扉を突き破り、塔の中へ侵入した。
壊された扉の向こうは、負傷者と疲れ切った光の隊員達がいて、突然現れた魔獣になすすべもなく立ち尽くしていた。
オレはひらりと馬から飛び降りて塔の中に入る。
「討伐は終わった!完全勝利だ。1匹だけ逃げ出した魔獣を追っているが、外は安全だ。あの魔獣に気をつけて身を隠せ!」
叫びながら剣を振りかざし、剣先の匂いをうまく魔獣の先へと持っていく。
塔の中の階段まで誘導できれば、あとは魔獣が勝手に王女の部屋へと向かって行くだろう。
オレは一度塔に戻った時に、ルーク様の血を拭った布を王女の部屋まで辿れるように壁になすりつけておいた。
階段から先は、オレが仕掛けた血に魔獣が誘導されるという訳だ。
魔獣の後ろ姿を追いながら、王女以外の者に危害が加えられないように剣を振るう。
魔獣を追うフリをして階段を上がって行くと、王女の護衛が見えた。
討伐隊から塔の護衛を任された、ロレンスがドアの前に立っている。
一緒に護衛の任についたアランは、下で他の光の隊員を守っていたため、ロレンスがひとりでここを請け負っているのだろう。
魔獣の姿を見た、ロレンスが剣を構える。
「ロレンスっ! 引け!」
オレの声でロレンスが剣を引いた。
オレはロレンスに害が及ばないように、でも魔獣を斬りつけるように見せかけて大きく剣を振り下ろした。
剣先に纏わりつかせた風魔法が、魔獣のすぐ横の扉を傷付けた。
すると、魔獣は扉に体当たりをして壊し、王女がいる部屋へと侵入した。
あとは近衛が王女を守っているはずだが……。
いや、部屋には近衛がいない?
「ロレンス、近衛はどこに行ったんだ?」
ロレンスは、はっと我に返り剣を構える。
「はっ! 王女の近衛が3人、花火の音を聞いて部屋から出ていきました。敗戦の時の指示を王女から受けていた模様です。しかし、我々にはなんの指示もなく……」
「わかった」
逃亡する姿を近衛に見せないためだな。
オレはロレンスにそのまま階下に行き、他の者を守るように指示する。
「討伐は勝利で終わった。もう魔物はいないはずだ。じきにルーク様が帰還される。それまで、パニックになる者もいると思うが、おまえが落ち着かせるようにしろ!」
「はっ!」
ロレンスが階段を降りて行く音を聞きながら、オレは部屋の中に入る。
隠し通路への道は開け放たれ、悲鳴が聞こえた。
走って行くと、そう広くない通路で、拙い光の魔法で魔獣と対峙している王女が見えた。
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