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21章 責任
海辺の街
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討伐塔で抜け道を見つけたオレは、また何度もそこへ足を運び、抜け道が城下町のはずれに繋がっていることを知った。
そこから城へと逃げるのだろうか。
しかし、途中で枝分かれして城下町への出口に続いているが、本線の抜け道はまだまだ先に続いている。
オレは城下町のはずれに馬でやってきて、乗馬したまま抜け道に入った。
討伐塔の入り口からは、馬を入れられないからだ。
そのまま馬を走らせると、抜け道の終わりが見えてきた。
休憩しながら来たが、かなりな時間走ってきたと思う。
ルーク様に休みを申請しておいて良かったな。
1日で帰るには難しかっただろう。
抜け道を出ると、国の最南端の海辺の街が見えてきた。
抜け道は、海のそばにある林の中に出口があった。
馬に水をやり、林の中の木に繋ぐ。
「よーしよし。よくがんばって走ったな。オレは街を調べてくるから、休んでろよ」
馬を撫でながら餌も用意して、オレはその場を離れた。
海辺の街は平穏そのものだった。
獲れたての魚を売る市が立っており、活気がある。
……ほんとに抜け道なだけか……。
肩透かしを食った気分になり、夕刻の商店街を歩く。
干物でもみやげに買って帰るか。
ニーナは魚好きかな。多分、ジーナが好きだったから、ニーナも喜ぶかもな。
テントを張った露天のひとつに顔を出し、魚を吟味する。
「おやじ、この辺で取れるのは小振りな魚をばかりなんだな」
出てる魚はイキが良さそうだが、小さめのものばかりだった。
どちらにせよ、保冷箱も持ってきていないので、買うのは干物だけだが、なんとなく店主に声を掛けた。
「にいさん、この辺の騎士じゃねぇな? 最近、向こうにあるやんごとない人の別荘がバタバタしててよ。この辺で獲れる立派な魚は、みんなあそこに卸してるんだよ」
「そんなにたくさん?」
「ああ。なんでも水魔法の使い手を集めて強力な氷が使われた保冷庫を作って、そこに魚を貯めておくんだと」
水魔法は水を出すだけではない。
たくさんの魔力を必要とするが、水を凍らせることもできるのだ。
しかし、それを実行する者はあまりいない。
数十人の魔力の強い者をかき集め、それらの者たちが極限まで魔力を出さなければ物を凍らせることはできないからだ。
あくまで、オレたちの使える魔法は生活に根付くものでしかない。
普通の生活から逸脱したものには、それなりの対価が必要になる。
「おやじ、そのやんごとない別荘で何が行われるか知ってるか?」
オレの問いに魚屋のおやじは手近なところにあった干物を包みながら言った。
「わしらにそんなことわかるわけねぇべ。にいさんの方こそ、騎士なのに聞いてねぇのかよ」
そして、ついと包みをオレに差し出す。
「銅分貨2枚だよ」
「おいおい。オレはまだ買うとは……」
「にいさん、この干物を買うつもりで見てたろ?」
「まったく……。商売をしているものには敵わないな」
オレはポケットから銅分貨2枚をおやじに渡した。
そこから城へと逃げるのだろうか。
しかし、途中で枝分かれして城下町への出口に続いているが、本線の抜け道はまだまだ先に続いている。
オレは城下町のはずれに馬でやってきて、乗馬したまま抜け道に入った。
討伐塔の入り口からは、馬を入れられないからだ。
そのまま馬を走らせると、抜け道の終わりが見えてきた。
休憩しながら来たが、かなりな時間走ってきたと思う。
ルーク様に休みを申請しておいて良かったな。
1日で帰るには難しかっただろう。
抜け道を出ると、国の最南端の海辺の街が見えてきた。
抜け道は、海のそばにある林の中に出口があった。
馬に水をやり、林の中の木に繋ぐ。
「よーしよし。よくがんばって走ったな。オレは街を調べてくるから、休んでろよ」
馬を撫でながら餌も用意して、オレはその場を離れた。
海辺の街は平穏そのものだった。
獲れたての魚を売る市が立っており、活気がある。
……ほんとに抜け道なだけか……。
肩透かしを食った気分になり、夕刻の商店街を歩く。
干物でもみやげに買って帰るか。
ニーナは魚好きかな。多分、ジーナが好きだったから、ニーナも喜ぶかもな。
テントを張った露天のひとつに顔を出し、魚を吟味する。
「おやじ、この辺で取れるのは小振りな魚をばかりなんだな」
出てる魚はイキが良さそうだが、小さめのものばかりだった。
どちらにせよ、保冷箱も持ってきていないので、買うのは干物だけだが、なんとなく店主に声を掛けた。
「にいさん、この辺の騎士じゃねぇな? 最近、向こうにあるやんごとない人の別荘がバタバタしててよ。この辺で獲れる立派な魚は、みんなあそこに卸してるんだよ」
「そんなにたくさん?」
「ああ。なんでも水魔法の使い手を集めて強力な氷が使われた保冷庫を作って、そこに魚を貯めておくんだと」
水魔法は水を出すだけではない。
たくさんの魔力を必要とするが、水を凍らせることもできるのだ。
しかし、それを実行する者はあまりいない。
数十人の魔力の強い者をかき集め、それらの者たちが極限まで魔力を出さなければ物を凍らせることはできないからだ。
あくまで、オレたちの使える魔法は生活に根付くものでしかない。
普通の生活から逸脱したものには、それなりの対価が必要になる。
「おやじ、そのやんごとない別荘で何が行われるか知ってるか?」
オレの問いに魚屋のおやじは手近なところにあった干物を包みながら言った。
「わしらにそんなことわかるわけねぇべ。にいさんの方こそ、騎士なのに聞いてねぇのかよ」
そして、ついと包みをオレに差し出す。
「銅分貨2枚だよ」
「おいおい。オレはまだ買うとは……」
「にいさん、この干物を買うつもりで見てたろ?」
「まったく……。商売をしているものには敵わないな」
オレはポケットから銅分貨2枚をおやじに渡した。
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