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19章 闘い
真実を知ったとしても
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『オレの魂は囚われたまま、本来の寿命が尽きて転生しても、またここに魔物として産まれる』
魔物は転生し、また魔物に生まれ変わるという。
ふと、おれの頭にある考えがよぎる。
では、英雄は?
オレは、そんな屑みたいな国王の魂が……。
絶望を表すオレの表情をみて、魔物が笑う。
『おまえの魂はその国王のものではないよ。国王の魂は囚われず、輪廻の輪の中に入って行った。ま、生まれ変わり先は前世の行いが反映されるはずだから、どこに行ったか想像すると楽しいけど』
昔話を終えた魔物は、オレの目をじっと見る。
『今代の英雄よ、悪いのは魔獣達ではない。おまえの国の国王だ』
魔物が言うことを信じてもいいのか、そんな疑問がオレの頭をよぎった。
オレを殺すための嘘かもしれない。
しかし、確かにあの国王は信用するに値しない。
終わらす?
魔物とオレ達の戦いをオレが?
いや、騙されるな。
必ず英雄が魔物を倒した訳じゃない。
英雄と呼ばれる者が死した時もあったはずだ。
それなのに、魔獣は滅びなかったではないか!
オレがもう一度剣を構え直すと、魔物は悲しそうに目を細めた。
『おまえが考えていることはわかる。英雄が死ぬことがオレ達魔物を滅ぼす方法ではない。オレを受け入れて、その身にオレの苦痛を受けることが、魔物を滅ぼす方法なんだ。かつて、オレを倒した英雄は、オレを受け入れることはなかった。だから、英雄が死んだ後もなお、気の遠くなるような長い時間、オレはここに居るんだ』
魔物が一歩、オレに近付く。
『暗闇に囚われて、本来得るはずだったものを指を咥えて見ているだけ』
更に一歩近付く。
『今までの英雄たちは、オレの話をここまでちゃんと聞いてくれなかった。英雄には、王族やそれに準じる高位貴族ばかり。自分たちの利益を考え、オレを殺すことだけを考えてきた』
もう一歩。
『頼む。もう楽にしてくれ。オレだけじゃないんだ。オレの両親も、オレを思ってこの世にまだ残っているんだ。これ以上、苦しめないでくれ……! 頼む!!』
必死に願う魔物に、オレの闘志はもう萎えていた。
おそらく、魔物が言うことは真実だろう。
あの王族どもならやりかねない。
しかし、ここでオレが死んだら、そのあとはどうなる?
魔法がなくなり、全ての者の生活が変わる。
いや、そんなことはいい。
オレが居なくなったら、ニーナはどうなる?
死してなお、オレを想ってオレのところへ戻ってきてくれた、ニーナはどうなる?
……また、彼女をひとりにするのか……?
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『おまえが考えていることはわかる。英雄が死ぬことがオレ達魔物を滅ぼす方法ではない。オレを受け入れて、その身にオレの苦痛を受けることが、魔物を滅ぼす方法なんだ。かつて、オレを倒した英雄は、オレを受け入れることはなかった。だから、英雄が死んだ後もなお、気の遠くなるような長い時間、オレはここに居るんだ』
魔物が一歩、オレに近付く。
『暗闇に囚われて、本来得るはずだったものを指を咥えて見ているだけ』
更に一歩近付く。
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もう一歩。
『頼む。もう楽にしてくれ。オレだけじゃないんだ。オレの両親も、オレを思ってこの世にまだ残っているんだ。これ以上、苦しめないでくれ……! 頼む!!』
必死に願う魔物に、オレの闘志はもう萎えていた。
おそらく、魔物が言うことは真実だろう。
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しかし、ここでオレが死んだら、そのあとはどうなる?
魔法がなくなり、全ての者の生活が変わる。
いや、そんなことはいい。
オレが居なくなったら、ニーナはどうなる?
死してなお、オレを想ってオレのところへ戻ってきてくれた、ニーナはどうなる?
……また、彼女をひとりにするのか……?
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