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19章 闘い
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外から見た岩の砦は、中に入ると洞窟のように薄暗く不気味だった。
そして、もっと魔獣がうじゃうじゃしているのを想像していたのに、中に魔獣は見当たらなかった。
見当たらないのは嬉しいけど、何もない空洞のようで、本当にここが魔物の住処なのか不安だわ。
カツーンカツーンと、ルーク様とお兄様が歩く鎧の足音が岩場の奥までこだまする。
それくらい、静まり返っていた。
そういえば、ここに近くなるにつれて増えていた魔獣は、岩の砦が見えて来ると数が減ってきたっけ。
わたしを守るように両側を剣を構えながら歩くルーク様とお兄様が、眉間に皺を寄せる。
「外に置いてこれないと思って連れてきたが、失敗だったかもしれねぇなぁ」
「そうですね。魔獣がいない理由もこれですかね」
「おそらくな」
慎重に歩きながら、わたしに分からない会話をしている。
「ねぇねぇ、ルーク様。魔獣がいない理由ってなんですか?」
わたしの言葉に、ふたりはピタッと足を止めた。
「義兄上、光の術者というものは、その性質上もしかしてわからないとか?」
「いや、ニーナは鈍感だからじゃないか?」
ふたりしてじっとわたしを見つめる。
「なっ、なんですか! お兄様! 鈍感ってどういう意味ですか!?」
「鈍いって意味の他にどんな意味があるんだよ。だっておまえ、何も感じないんだろう?」
「感じるって何をですか?」
「気だよ。この奥から重苦しい気が流れてきている。おそらく、雑魚魔獣はこの気のせいでここに近寄れないんだろう。だから、この岩の砦に近付くにつれて、魔獣も近寄れずに少なくなっていったんだ」
ルーク様も黙って頷いた。
気?
気って、空気?
わたしは洞窟の奥の方へ視線をやった。
ところどころ開いている岩の窓のおかげで、光が入るから真っ暗と言うわけでもないけど、奥に行くにつれて、段々と薄暗くはなっている。
不気味ではあるけれど、何も感じない。
不思議そうにしているわたしに、ルーク様は微笑む。
「ニーナ、無理に感じようとしなくていいよ。だけど、この奥にとてつもなく強い魔物がいると思っててくれたらそれだけでいい。必要以上に怖がる必要はない。魔物にはオレが立ち向かうから、ニーナは魔物と対峙することなく、身を隠していてくれ。義兄上はオレが魔物を斬るまで、ニーナを守っていて欲しい。お願いできますか?」
ルーク様が視線をわたしからお兄様へと移す。
「そりゃ、ばかだけど可愛い妹だからな。守るけど、ルーク様のことも守るぞ」
「いや、オレは……」
「もちろん、ルーク様が安心して戦えるようにニーナのことを一番に守るさ。だが、ルーク様が危険な時はオレも剣を出すから、そのつもりでいてくれ。ルーク様も、可愛い義弟だからな」
「義兄上……」
二人の交わす視線に、わたしの知らない月日の長さを感じた。
ジーナがいなくなった後、きっと、お兄様はルーク様を支えて来たんだろう。
急にいなくなってしまった愚妹の代わりに、当主になるはずだった道を違えてまで討伐隊に入ってまで。
わたしがほんわかと二人を見ていると、急に二人が同時に剣に手をやった。
「義兄上」
「ああ、いよいよだな」
二人が同時に洞窟の奥へと視線を向ける。
魔物が、ルーク様に自分の存在を示した瞬間だった。
*****************
更新がいつもより時間がかかり、申し訳ありません。
急性胃腸炎にやられました…
ここ数日、固形物を口にできていません……。
今日から、食べていいと医師から言われているので、お昼ごはんが楽しみです^_^
みなさまも、めちゃくちゃ寒いですがお身体に気をつけて……。
そして、もっと魔獣がうじゃうじゃしているのを想像していたのに、中に魔獣は見当たらなかった。
見当たらないのは嬉しいけど、何もない空洞のようで、本当にここが魔物の住処なのか不安だわ。
カツーンカツーンと、ルーク様とお兄様が歩く鎧の足音が岩場の奥までこだまする。
それくらい、静まり返っていた。
そういえば、ここに近くなるにつれて増えていた魔獣は、岩の砦が見えて来ると数が減ってきたっけ。
わたしを守るように両側を剣を構えながら歩くルーク様とお兄様が、眉間に皺を寄せる。
「外に置いてこれないと思って連れてきたが、失敗だったかもしれねぇなぁ」
「そうですね。魔獣がいない理由もこれですかね」
「おそらくな」
慎重に歩きながら、わたしに分からない会話をしている。
「ねぇねぇ、ルーク様。魔獣がいない理由ってなんですか?」
わたしの言葉に、ふたりはピタッと足を止めた。
「義兄上、光の術者というものは、その性質上もしかしてわからないとか?」
「いや、ニーナは鈍感だからじゃないか?」
ふたりしてじっとわたしを見つめる。
「なっ、なんですか! お兄様! 鈍感ってどういう意味ですか!?」
「鈍いって意味の他にどんな意味があるんだよ。だっておまえ、何も感じないんだろう?」
「感じるって何をですか?」
「気だよ。この奥から重苦しい気が流れてきている。おそらく、雑魚魔獣はこの気のせいでここに近寄れないんだろう。だから、この岩の砦に近付くにつれて、魔獣も近寄れずに少なくなっていったんだ」
ルーク様も黙って頷いた。
気?
気って、空気?
わたしは洞窟の奥の方へ視線をやった。
ところどころ開いている岩の窓のおかげで、光が入るから真っ暗と言うわけでもないけど、奥に行くにつれて、段々と薄暗くはなっている。
不気味ではあるけれど、何も感じない。
不思議そうにしているわたしに、ルーク様は微笑む。
「ニーナ、無理に感じようとしなくていいよ。だけど、この奥にとてつもなく強い魔物がいると思っててくれたらそれだけでいい。必要以上に怖がる必要はない。魔物にはオレが立ち向かうから、ニーナは魔物と対峙することなく、身を隠していてくれ。義兄上はオレが魔物を斬るまで、ニーナを守っていて欲しい。お願いできますか?」
ルーク様が視線をわたしからお兄様へと移す。
「そりゃ、ばかだけど可愛い妹だからな。守るけど、ルーク様のことも守るぞ」
「いや、オレは……」
「もちろん、ルーク様が安心して戦えるようにニーナのことを一番に守るさ。だが、ルーク様が危険な時はオレも剣を出すから、そのつもりでいてくれ。ルーク様も、可愛い義弟だからな」
「義兄上……」
二人の交わす視線に、わたしの知らない月日の長さを感じた。
ジーナがいなくなった後、きっと、お兄様はルーク様を支えて来たんだろう。
急にいなくなってしまった愚妹の代わりに、当主になるはずだった道を違えてまで討伐隊に入ってまで。
わたしがほんわかと二人を見ていると、急に二人が同時に剣に手をやった。
「義兄上」
「ああ、いよいよだな」
二人が同時に洞窟の奥へと視線を向ける。
魔物が、ルーク様に自分の存在を示した瞬間だった。
*****************
更新がいつもより時間がかかり、申し訳ありません。
急性胃腸炎にやられました…
ここ数日、固形物を口にできていません……。
今日から、食べていいと医師から言われているので、お昼ごはんが楽しみです^_^
みなさまも、めちゃくちゃ寒いですがお身体に気をつけて……。
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